今回紹介するのは、前回あえて紹介しなかったエロ無し全年齢向けギャルゲーの名作たち。
「パソコンの美少女ゲーム=エロゲー」というイメージの方も多いと思いますが(間違っちゃいない…)、数は少ないながらエロ無しの一般向けギャルゲーもあるんですよ。
(ちなみに美少女ゲーム界隈ではエロ有りの18禁アダルトゲームを”エロゲー”、エロ無しの一般向け作品を”ギャルゲー”と呼んで区別しています)
今ではエロ無しの全年齢ギャルゲーも珍しくは無くなりましたが、当時は「多少強引にでもエロシーンを入れないと売れない」というのが当たり前の認識でした。なのでPCゲームでエロ無しギャルゲーを出すのはかなりの勇気と作品に対する自信が無ければ発売できなかったと思います。
また全年齢向け作品だと声優さんもアニメ等でおなじみの方を起用することが出来るので、聞き慣れた声で楽しむことが出来るだけでなく、TVアニメ化もされやすいというメリットもあります。(00年代ではエロゲーがTVアニメ化されると声優も全くの別人に変更になることが珍しくありませんでした)
変な話、エロ無しギャルゲーはユーザーをエロで釣ることが出来ないので、純粋なシナリオ勝負の作品がほとんど。そのため物語の完成度が高い作品が多い気がします。
シナリオメインで楽しみたい方は一般ギャルゲーにも挑戦してみてはいかがでしょうか。
『Ever17 -the out of infinity-』 (KID 2002年)
ブランド | ジャンル | 発売日 |
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KID | SF恋愛アドベンチャー | 2002.8.29 |
初めはPS2とDCで発売されたキャルゲーなんですが、後にPCにも移植(エロ無し)。その後PSPやXbox360にも移植された名作です。
舞台は西暦2017年の近未来(発売は2002年)、海洋テーマパーク”LeMU(レミュウ)”の事故により海底に閉じ込められた6人の生存者が脱出を目指すアドベンチャーストーリー。
序盤で主人公を大学生・倉成武と記憶喪失の少年のどちらかから選ぶんですが、選んだ主人公によって展開が異なります。はじめは武ルートからプレイしてください。
この作品はその根幹たるトリックが非常に秀逸で、真に物語を楽しめるのは初回プレイの一回のみ。プレイ後は誰もが「記憶を消してもう一度プレイしたい」と思うことでしょう。
なので事前に調べるときはネタバレに注意してください。というか公式サイトや販売サイト以外見る必要はありません。Wikipediaなんて絶対に見てはダメです。一生後悔します。
物語の構成上、映像化が不可能なのでアニメ化もされておらず、他の作品と比べて一般向けの知名度がちょっと劣るのが残念ですね。
残念ながらPC版のダウンロード販売は全て終了してしまっています。したがって今からプレイする場合は中古のパッケージ版を探すしかなありません。各種CS版も同様。
実は一部のパッケージイラストは盛大にネタバレしているんですが、初見だと気づかないのもミソです(笑
■参考:衝撃のどんでん返し神ゲーEver17の紹介とレビュー【名作ゲーム】(なりひら/名作情報チャンネル)
『ひぐらしのなく頃に』 (07th Expansion 2002年~2006年)
ブランド | ジャンル | 発売日 |
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07th Expansion | サウンドノベル | 2002.8.16~ |
時代は昭和58年、とある田舎の山村・雛見沢村を舞台に繰り広げられる惨劇を描いた連作ミステリー作品。
序盤は愉快なキャラクターたちとの面白おかしい日常が描かれますが、ある事件をきっかけに徐々に日常がほころび始め、おどろおどろしいサイコサスペンスな物語が展開します。
システムは一般的な美少女ゲームとは違い、選択肢はおろかイベント絵もほとんど存在しない純粋なデジタルノベル形式です。
キャラデザがちょっと個性的すぎるので、この絵が苦手な人はCGがリファインされたSteam版を推奨。
この作品は当時同人作家だった竜騎士07さんが相方のBTさんと作り上げた同人ゲーム。一作目の「鬼隠し編」は2002年のコミックマーケットにおいて100円で頒布され、ネットの口コミで評判に。2006年に本編が完結すると、コンシューマゲーム化や漫画化、TVアニメ化など様々な媒体にメディアミックスされ、00年代後半にはオタクならだれもが知る一大作品群を形成するに至りました。
■参考:「すごい同人ゲームが出た!」 1通のメールから始まった「ひぐらしのなく頃に」狂想曲 (ねとらぼ)
PC版の本編はDMMやSteamでエピソードごとに単品販売されています。いわゆる出題編が『鬼隠し編』→『綿流し編』→『祟殺し編』→『暇潰し編』、解決編が『目明し編』→『罪滅し編』→『皆殺し編』→『祭囃し編』という構成になっているので、必ずこの順番でプレイしてください。
『シンフォニック=レイン』 (工画堂スタジオ 2004年)
ブランド | ジャンル | 発売日 |
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工画堂スタジオ | ミュージックアクションゲーム | 2004.3.26 |
一年中雨の降る街で、主人公が音楽学校の卒業演奏のためのパートナーを探していく物語。
これだけ読むと爽やか青春ストーリーのように見えますが、実は結構な鬱ゲーです。一時期「シンフォニックレイン」で検索しようとすると「トラウマ」がサジェストされたくらい。
発売当初はコンシューマ機に移植されてないPC限定の作品だったためかギャルゲープレイヤー以外の知名度がイマイチですが(最近になってようやくSwitchに移植)、物語の完成度(特にメインルート)は折り紙つき。
参考:キャラクターゲーム考現学第四回:歌と心とギャル(4Gamer.net)
またこの作品は主題歌やBGMを作曲した故・岡崎律子さんの事実上の遺作としても知られています。もうそれだけでアニメファンは泣けてきますね。岡崎さんの死後に発表された最後のオリジナルアルバム『for RITZ』はこの作品のセルフカバーアルバムです。
『CLANNAD』 (Key 2004年)
ブランド | ジャンル | 発売日 |
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Key | 恋愛アドベンチャー | 2004.4.28 |
泣きゲーメーカー・Keyによる初めての一般向けギャルゲーです。
不良高校生の主人公・岡崎朋也が様々なヒロインと出会う学園恋愛ストーリーを、Keyらしいファンタジックな幻想世界で包み込んだ作品になります。
テーマはズバリ”家族”。これで泣けない人はいないんじゃないか?と思えるほどの感動ストーリーが展開するので、終盤はタオル必須。
プレイ時間が50時間を超えるほどの大作ですが、長い積み重ねがあるからこそラストの感動もひとしおです。
京都アニメーション制作によるアニメ版も非常に出来がいいので是非観ましょう。ロンブーの淳さんも号泣したほど。
参考:ロンブー田村淳、ついにアニメ「CLANNAD」を完走 「ヤバイくらいに泣きました」と人生を学ぶ(ねとらぼ)
物語後半は泣けるポイントの連続なんですが、実は私が一番泣けたのは朋也と父親とのやり取り。年くってきた人は特に涙腺に響くんじゃないかと。あれは反則だ…。そりゃ『CLANNADは人生』とか言われるわ…。父ちゃん母ちゃんありがとう…。
今からプレイする場合はPC版は中古のパッケージ版(フルボイスVer.)を。CS版(Switch・PS4)はダウンロード版も配信されています。
PC版はSteamでも一応配信されていますが今のところ日本語非対応。去年日本語化が発表されましたが、今現在(2024年11月)まだ対応していません。
『STEINS;GATE』 (ニトロプラス/5pb. 2009年)
ブランド | ジャンル | 発売日 |
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5bp./ニトロプラス | 想定科学ADV | 2009.10.15 |
もはやオタク界では知らない人はいないであろう、タイムリープを題材にした想定科学アドベンチャー”シュタゲ”こと『シュタインズ・ゲート』。
アニメやゲーム等のオタク文化が一番盛り上がっていた00年代後半の秋葉原を舞台に、偶然過去にメールを送る装置を開発してしまった主人公・岡部倫太郎とその仲間たちが壮大な事件に巻き込まれていく物語。
先の読めない展開と、物語を盛り上げる演出の数々は正に00年代美少女ゲームの代表作といえます。
参考:これは“神ゲー”かも。「ゲームで泣くとか(笑)」という人にこそお勧めしたい「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」レビュー(4Gamer.net)
初出がなぜかXBox360版のみという、言っちゃあなんですが日本ではマイナーなプラットフォームで発売されたものの、「なんか凄いゲームが出た!」「Ever17を超える作品!」と評判になり、翌年にPC版が発売。
そして2011年のアニメ化を機に大ブレイク。各種コンシューマ機にも移植され、多くのスピンオフ作品や続編が作られるほど人気となっていきます。当時を知る人間としては、まさに「コンテンツが育っていく」過程をリアルタイムで体感できた作品でした。
というわけで00年代の名作ギャルゲーをピックアップしてみました。
「ひぐらし」「クラナド」「シュタゲ」に関しては、もはや説明不要なくらい有名な作品ですね。
やはりエロゲーと比べると数が少ないので私のアンテナでは5作品しか挙げられませんでしたが、探せばもっとあるはず。「Ever17」や「シュタゲ」はそれ ぞれ「infinity」シリーズ(『Never7』『Remember11』など)や「科学ADV」シリーズ(『CHAOS;HEAD』 『CHAOS;CHILD』など)のひとつなので、各シリーズの他の作品もプレイすると幸せになると思います。
2010年以降は全年齢ギャルゲーも一般的になり、多くの作品がリリースされるようになりましたが、やっぱり00年代のギャルゲは(思い出補正も含めて)輝いて見えますね。