
シナリオ重視のエロゲの場合、かつてはメディアミックス化が規定路線。最近は何故か少なくなりましたが、数年前まではエロゲを原作にしたTVアニメが結構放送されていていました。
ただまぁ正直なところ、今も昔もアニメ作品というのは玉石混交。特に2000年代前半のエロゲ原作アニメは声優が全くの別人に変更になっていたり、ストーリーや設定が悪い意味で改変されていたり、作画が崩壊していたりしていたことも良くあって、エロゲアニメ=駄作というレッテルを貼られていた時期もありました。
でもそんなエロゲアニメ界隈でも2000年代中盤辺りから良作アニメも増えてきて、中には一般のアニメファンからの評価も高い作品も出てくるようになりました。
今回はそんな中から「エロゲープレイヤーならこれは見とけ」という良作のエロゲ原作アニメをいくつかピックアップしたいと思います。
現在でも各種配信サイトで見られる作品も多いので、是非視聴してみてください。
『君が望む永遠』(2003年 全14話)

原作 | age |
監督 | 渡邊哲哉 |
シリーズ構成 | 金巻兼一 |
初回放送日 | 2003.10~ |
制作 | スタジオ・ファンタジア |
キャスト |
谷山紀章 栗林みな実 石橋朋子 上原ともみ 浅井清己 吉田恭子 窪田聡子 北都南 小林まりこ 伊藤美紀 |
学園に通う主人公・鳴海孝之と、孝之に想いを寄せる少女・涼宮遙、遥の親友・速瀬水月の3人を中心にした三角関係物語。
現在よりも深夜アニメの数が少なかった2003年に放送された作品です。
制作は”スタジオ・ファンタジア”というちょっと聞いたことの無いアニメスタジオ。残念ながらもうすでに無くなっているのですが、当時としてはアニメのクオリティはそんなに悪くないというか、むしろエロゲアニメとしては良いほうなんじゃないかと思います。
ストーリーやキャラデザは原作準拠、声優も持ち上がり(名義もPC版と同じ)な上に、原作ゲームで語られなかった1章と2章の間を補完するエピソードがあったり、2章では水月視点で社会人としての生活も描かれていたりと、非常に原作をリスペクトした内容になっています。
そして各回ラストにはショートコメディ『あゆまゆ劇場』が追加され、本編を見て鬱になった心を癒してくれるという、至れり尽くせりな内容。
実は私、このアニメをきっかけに深夜アニメを見だしたので、個人的にも思い入れのある作品です。
ただ今から見ようとすると配信サイトが限られるのがネックでしょうか。

『AIR』(2005年 全12話+2話)

宿無しの主人公・国崎往人と、友達のいない少女・神尾観鈴を中心とした壮大なファンタジー物語。
人気泣きゲーブランドKeyの名作です。
原作ゲームは非常に長大なのですが、それをわずか12話にまとめるという奇跡のような構成に加えて、ストーリーはもちろんキャスト(CS版)やBGMに至るまで原作ゲームを忠実に再現する徹底っぷり。
特に主題歌の『鳥の歌』は原作と同じバージョンがアニメでも使われています。この曲はシングルカットされていないにもかかわらずNHKのラジオ番組「今日は一日アニソン三昧」で放送され、「エロゲの曲がNHKで流れたwww」とファンを驚かせました。
アニメ化を担当したのはあの京都アニメーション。当時の京アニは元請作品の制作を始めたばかりで、元請2作目であるこの『AIR』では下請けを使わずに京アニが全話制作したそうです。
アニメとしてのクオリティも非常に高く、当初はBSのみという限られた放送枠ながら、年間のDVD売り上げでは2位を記録するなどファンの間でも評判で、京アニブランド躍進のきっかけにもなりました。

『うたわれるもの』(2006年 全26話)

原作 | Leaf |
監督 | 小林智樹 |
シリーズ構成 | 上江洲誠 |
初回放送日 | 2006.4~ |
制作 | OLM |
キャスト |
小山力也 柚木涼香 沢城みゆき 桐井大介 中原麻衣 渡辺明乃 大原さやか 釘宮理恵 浪川大輔 小山剛志 田中敦子 三宅華也 |
物語は少しだけ日本によく似たファンタジー世界が舞台。記憶を無くした仮面の青年・ハクオロがとある小さな村に助けられた後、新たな国・トゥスクルを建国し周辺国と渡り合っていく戦国大河ロマン。
Leaf(AQUAPLUS)が2002年に制作した名作SRPGを原作にして全編がアニメ化されました。
後に発売された続編『偽りの仮面』と『二人の白皇』もともにアニメ化され、非常に息が長くファンからも高評価を受けた作品です。
アニメ自体のクオリティが高く見ごたえがあるのはもちろんのこと、小山力也さんや柚木涼香さん、沢城みゆきさんに釘宮理恵さんなど、声優陣も非常に豪華なキャスティング。
Suaraさんの歌う主題歌「夢想歌」も壮大さとノスタルジックさを感じる名曲です。キン!キン!キン!キン!
続編も含めると80話近い長大な物語になりますが、ファンなら一度は通しで見てほしいアニメです。

『School Days』(2007年 全12話)

原作 | オーバーフロー |
監督 | 元永慶太郎 |
シリーズ構成 | 上江洲誠 |
初回放送日 | 2007.7~ |
制作 | ティー・エヌ・ケー |
キャスト |
平川大輔 河原木志穂 岡嶋妙 井本恵子 永見はるか 田中涼子 たかはし智秋 栗林みな実 古原奈々 祭田絵理 松本吉朗 |
主人公の学生・伊藤誠と、女友達の西園寺世界、誠が憧れる少女・桂言葉を中心とした三角関係をめぐる愛憎劇。
元のゲームも全編アニメーション演出という意欲作で、ただでさえ主人公のクズっぷりと悲惨な結末が特徴的でしたが、TVアニメ化では主人公がさらにクズになり、原作がマイルドに思えるほど凄惨な展開がまっています。
あまりの凄惨さにより最終回の地上波放送が中止になったほどで、放送枠では替わりに延々とフィヨルドを渡る船が映し出されたため、「Nice boat.」という流行語まで生まれて話題になりました。
ちなみに今は、ABEMAがこの作品を毎年クリスマスの時期に無料配信するのが恒例行事となっています。
イブの夜にみんなで「誠ざまああああああああwwwww」とつぶやくのがオタクの嗜み。

『ef – a tale of memories.』(2007年 全12話+12話)

原作 | minori |
監督 | 大沼心 |
シリーズ構成 | 高山カツヒコ |
初回放送日 | 2007.10~ |
制作 | シャフト |
キャスト |
下野紘 田口宏子 泰勇気 岡田純子 高城元気 やなせなつみ 浜田賢二 後藤麻衣 遠近孝一 中島裕美子 伊藤静 あおきさやか |
大震災後の街を舞台にした青春群像劇であるminoriの名作『ef – a fairy tale of the two.』をアニメ化した作品です。
原作は『the first tale.』と『the latter tale.』の2部構成でしたが、アニメの方も『a tale of memories.』と『a tale of melodies.』の分割2クール構成になります。
アニメ制作は『化物語』や『まどマギ』シリーズ等で有名なシャフト。この作品でも独特なキャラの構図や抽象化した背景など、”シャフトらしい演出”がふんだんに取りいれられています。
エンディングが各ヒロインのキャラソンになっているのも特徴的。普段あまり歌声を聴くことの少ない声優さんの歌声を聴くことができます。そういえば『化物語』シリーズでも主題歌はキャラソンでしたね。
原作では4章+αのストーリー構成でしたが、アニメでは第2章をほとんどカット。1クール目では第1章と第3章を、2クール目では第4章と終章を同時並行的に描いていきます。
ストーリー自体もアレンジが加えられていますが、それが良いほうへ転がった数少ない作品です。

『恋姫†無双』(2008年 全12話+12話+12話)

原作 | BaseSon |
監督 | 中西伸彰 |
シリーズ構成 | 雑破業 |
初回放送日 | 2008.7 |
制作 | 動画工房 |
キャスト |
黒河奈美 西沢広香 後藤麻衣 青葉りんご 鳴海エリカ 本井えみ 前田ゆきえ 浅井晴美 吉田愛理 壱智村小真 櫻井浩美 瑞沢渓 田中涼子 やなせなつみ ひと美 水橋かおり いのくちゆか 友永朱音 萩原えみこ 中村繪里子 檜山修之 矢島晶子 |
登場人物のほとんどが女の子になった三国志を描いた作品『恋姫†無双』シリーズのアニメ作品です。
制作は当時まだ設立したばかりで、後に「ゆるゆり」や「NEW GAME!」等の人気アニメを多数作ることになる動画工房。
原作ゲームは現代に生きる主人公(♂)が女の子だらけの三国志の世界にタイムスリップして他国と戦っていくという内容でしたが、なんとアニメ版では思い切ってその主人公を削除!
ストーリーも原作とは別物でシリアス成分は基本的に終盤のみ。序盤から中盤にかけては笑いありエロあり百合ありバトルありというかなりはっちゃけた展開なんですが、これが大当たり!!
エロゲー原作のアニメとしては異例の3期まで作られ、アニメ化企画としては大成功した作品だと言えます。

『ヨスガノソラ』(2010年 全12話)

原作 | Sphere |
監督 | 高橋丈夫 |
シリーズ構成 | 荒川稔久 |
初回放送日 | 2010.10~ |
制作 | feel. |
キャスト |
下野紘 阪田佳代 いのくちゆか 小野涼子 岡嶋妙 田口宏子 峰岸由香里 田中涼子 |
両親を失い、山間部の田舎町に引っ越してきた双子の兄妹を中心とする純愛物語。
この作品はアニメでありながら途中でシナリオが分岐する、いわゆる”アマガミ方式”を採用。序盤で共通ルートを描いた後、ヒロインごとに数話ずつの個別ルートが別に描かれる、というオムニバス形式です。
また各話終了後にはデフォルメキャラによるショートコメディアニメが追加され、その主題歌は当時メジャーデビューしたてのももいろクローバーが担当していました。
そして何よりこのアニメ、エロシーンもがっつり再現するという、地上波の限界に挑戦しています! もちろん実妹の穹(そら)ともいたします!! しかも玄関で!!!
地上波や配信版ではさすがに静止画&謎の光が入りますが、ディスク版ではがっつり見せるし動くし喘ぎます!!
ちなみにこの作品は栃木県足利市がモデルだったのですが、アニメの内容を知らない街の人が聖地巡礼スポットとして町おこしに利用しようとしたところ、アニメスタッフが慌てて止めに入ったという逸話も残っています(笑

『俺たちに翼はない』(2011年 全12話)

原作 | Navel |
監督 | ウシロシンジ |
シリーズ構成 | 鴻野貴光 |
初回放送日 | 2011.4 |
制作 | NOMAD |
キャスト |
下野紘 吉田真弓 三浦祥朗 小野涼子 諏訪部順一 後藤邑子 稲田徹 又吉愛 代永翼 高口幸子 日野聡 大津田裕美 |
池袋みたいな街・柳木原を舞台に、羽田鷹志・千歳鷲介・成田隼人の三人の主人公を中心とするちょっと不思議な群像劇。
ちょくちょくアバンタイトルに原作には無いおバカなサービスシーンが入ったりと、原作よりも結構エロティックなシーンが多いです。いいぞもっとやれ!
原作はある意味ゲームだから成り立つ物語だったりするので、いったいどうやって映像化するのか気になりましたが、わりと普通にアニメ化されました。主人公のキャラデザに苦心の跡が伺えます。
ネタばらし的な展開になるのが4話なので、原作未プレイの人はいわゆる”3話切り”をしないようにしましょう。
そして原作シナリオを手がけた王雀孫さん脚本によるアニメ第7話「栄えある王の凱旋だ!」は、正に伝説の神回!!
抱腹絶倒のギャグ回と思いきや、ちゃんとシナリオ上も重要な意味を持つという見事な脚本です。王雀孫天才過ぎる・・・。

『グリザイアの果実』(2014年 全13話+1話+10話)

原作 | フロントウイング |
監督 | 天衝 |
シリーズ構成 | 倉田英之 |
初回放送日 | 2014.10 |
制作 | エイトビット |
キャスト |
櫻井孝宏 田中涼子 田口宏子 水橋かおり たみやすともえ 清水愛 友永朱音 やなせなつみ 鳴海エリカ 瑞沢渓 |
訳ありの主人公・風間雄二が、生徒が5人しかおらず壁に囲まれた学校・美浜学園に転入するところから始まる物語。
「ワルキューレロマンツェ」のアニメ化を成功させたエイトビットが、シリーズ構成に人気脚本家の倉田英之さんを据えて制作されました。またアニメのキャラクターデザイン担当は原作と同じ渡辺明夫さんなので、見た目の違和感もなく楽しむことができます。
原作ゲームは『果実』『迷宮』『楽園』の三部作になっていますが、そのメインストーリーを全てアニメ化。TVアニメでは珍しく、画面が横に長いシネマスコープの比率で作られているのも特徴的。
ストーリーも適度にアニメオリジナルエピソードを挟んだり、原作で賛否のあったラストの展開をわかりやすいものに改変したりしています。
普通こういう”アニオリ展開”ってネガティブな結果になりがちなんですが、この作品に関しては「むしろ原作より良い」と言われるほど評価の高い作品となっているので必見です。
あと睡眠の重要性!

『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』(2014年 全26話)

原作 | TYPE-MOON |
監督 | 三浦貴博 |
シリーズ構成 | ufotable |
初回放送日 | 2014.10~ |
制作 | ufotable |
キャスト |
杉山紀彰 川澄綾子 植田佳奈 下屋則子 門脇舞以 神谷浩史 中田譲治 諏訪部順一 てらそままさき 神奈延年 浅川悠 田中敦子 小山力也 関智一 |
ご存知、7人の魔術師が過去の英霊を従えて戦いを繰り広げる人気バトル作品。
原作ゲームは主に3つのシナリオ(通称セイバールート、凜ルート、桜ルート)があって、3本ともそれぞれ別々のアニメとして作られているという稀有な例ですが、中でもおすすめなのが凜ルートこと[Unlimited Blade Works]編。略称は「UBW」。
前日譚の物語である「Fate/zero」の設定も一部取り入れられているので、先にそっちを見ておくのもアリかもしれません。
制作は後に「鬼滅の刃」で一世を風靡することになるアニメ制作会社ufotable。Fateシリーズでもそのクオリティの高さは遺憾なく発揮されています。
クオリティが高すぎて、最初に制作されたセイバールートのアニメ(通称「DEEN版」)が相対的にしょぼく見えてしまうほど。
続く桜ルート[Heaven’s Feel]編は3本の劇場アニメとして制作されましたが、クオリティがさらにアップ。もう動く!動く!!
私はアニメ素人ですが、正直初めて作画で感動して鳥肌が立ちました。

今回も10作品ということでかなり数を絞りました。
この他にも良作エロゲアニメといえば『ななついろ★ドロップス』『リトルバスターズ』『Kanon(京アニ版)』などなどたくさんありますし、全年齢作品まで広げれば『CLANNAD』『Steins;Gate』『ひぐらしの鳴く頃に』は必ず押さえておきたいところ。
Hシーンやサービスシーンの扱いは、今回紹介したものの中では『AIR』『君望』『Fate』あたりの真面目な作品は基本的にエロなし(あってもストーリー上必要なもの)なのに対し、『恋姫』『ヨスガ』『俺つば』辺りは割とがっつりヒロインの裸が出てきたりと、作品の傾向によって分かれている感じです。
それにしても、2010年代前半辺りまでは各クールに少なくとも1作品くらいはエロゲやギャルゲ原作アニメがあるくらいたくさんの作品がアニメ化されましたが、その後はホントにぱったりと無くなりましたね。
2020年以降に放送されたフル尺のエロゲアニメは『マブラヴオルタネイティブ』くらいでしょうか。ただオルタにしても15年越しのアニメ化ですし、新作エロゲのアニメとなると2020年の『レヱル・ロマネスク』がありますがこれは『まいてつ』スピンオフ。さらに遡ると2017年の『Dies irae』がありますがこれも10年越し。
最近(2024年以降)になってようやく『ハミダシクリエイティブ』や『9-nine-』、『ぬきたし』などのアニメ化が発表されて少しずつ復権しつつありますが、全盛期と比べるとまだまだですね。
昔はよかったなぁ・・・(おっさん目線)。
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