今回紹介するのは、抜きゲーからシナリオゲーまで幅広く制作するフロントウイング最大のヒット作『クリザイアの果実』。
萌えゲーアワード2011大賞部門金賞、シナリオ賞・主題歌賞・ユーザー支持賞・純愛系作品賞金賞。2chベストエロゲ投票では4位でしたが、2011年は他に『ホワイトアルバム2』や『穢翼のユースティア』等の超名作(この2つは萌えゲーアワード不参加)が発売された稀にみる豊作の年だったので仕方ないかと。
物語は経歴不詳の主人公・風見雄二が、壁に囲まれたいいわくつきの学校・私立美浜学園に転入するところから始まる学園ストーリー。といっても学園には生徒が主人公含めても6人だけしかいないので、あんまり学園感はないかも。個別ストーリーは学園外の話になることが多いですし。
主人公は特殊な訓練を受けているため、少々のトラブルは自力で解決できる実力の持ち主です。そんな主人公が特殊な事情を抱えた5人のヒロインと向き合っていく、という流れになります。
雰囲気としては前半コミカル後半シリアスな王道展開。ヒロインもそれぞれ個性的で、個別シナリオはバラエティに富んでいるうえにテーマもはっきりしているため、エロゲー初心者さんにもお勧めの作品です。
この作品はシリーズの一作目で、前日譚を描いた二作目『グリザイアの迷宮』、完結編である三作目『グリザイアの楽園』という三部作の構成になっています。
物語としては一応『果実』だけでも完結しているので、必ずしも三作すべてプレイしなければいけないわけではありません。ただ『果実』のみだといろいろ回収しきれていない伏線がてんこ盛りなので、『果実』が気に入れば是非『迷宮』以降もプレイしていただきたいところです。
- 個性的なヒロインと独自性のあるストーリー
- 戦闘力と問題解決能力のある魅力的な主人公
- 三部作全編プレイを推奨

あらすじ
──その学園は、少女達の果樹園だった。
外敵から隔離された学園にやってきたのは、生きる目的をなくした一人の少年。
守るべき物を見失い、後悔と贖罪のみに費やされる人生の中で、その少年に残されたのは首に繋がれた太い鎖と、野良犬にも劣る安い命。
そして少年は、その学園で少女達と出会い、新たな希望を見つけ出す。
──その少女は、生まれてきたことが既に間違いだった
逆らった罪──
──生きながらの死
誰も守ってなんかくれない──
──そして生き残った罰。
そこは、少女達の果樹園。
彼女達は、後悔の樹に実った懺悔の果実。そんな少女達に、俺はいったい何が出来る…?
それは、一人の少年が夢見た永遠の希望──
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
グリザイアの果実 | XP Vista 7 | 2011.2.25 | 易 |
グリザイアの迷宮 | XP Vista 7 | 2012.2.14 | 易 |
グリザイアの果実 | PSP | 2012.2.14 | 易 |
グリザイアの楽園 | XP Vista 7 8 | 2013.5.24 | 易 |
グリザイアの果実 | VITA | 2013.8.8 | 易 |
アイドル魔法少女ちるちる☆みちる 前編 | Vista 7 8 | 2014.8.15 | 易 |
アイドル魔法少女ちるちる☆みちる 後編 | Vista 7 8 | 2014.12.26 | 易 |
グリザイア・コンプリートボックス | 2017.1.27 | やや難 | |
グリザイアの果実 -SIDE EPISODE- | VITA | 2017.7.27 | 易 |
グリザイアの果実・迷宮・楽園 フルパッケージ | Switch | 2019.11.7 | 易 |
グリザイア クロノスリベリオン | 10 11 | 2023.4.28 | 易 |
グリザイア・リマスタードボックス | 10 11 | 2024.11.29 | 易 |
PC版パッケージは特に初回版・通常版の表記はありませんが、初回ロットには特典としてトレカとOPムービーのフイルムが付属します。また予約特典には小冊子が付きますが、これは中古ショップでも結構見かけますね。
流通量も多いため、中古・新品共に問題なく手に入るかと思います。
また通常パッケージ以外に、ベッドシーツやファイバータオル等の特典を同梱した『SOFMAP LIMITED EDITION』も発売されています。箱が巨大(ちょっとしたゲーム機並み)なので、ショップではショーケースに陳列されてることも多いですね。
『迷宮』と『楽園』は形としてはファンディスクですが、実質続編といえるシナリオが収録されています。『迷宮』が本編(『果実』)の前日譚、『楽園』は本編後のラストエピソードといった感じです。それぞれ予約特典には小冊子が付きます。
ただ正直なところ、「楽園」のシナリオはハーレム感と厨二病感満載の少々派手な展開なので、「果実」の雰囲気が好きな方は「迷宮」以降は手を出さないというのも1つの選択肢だと思います。私はメッチャ好きですけど。
コンシューマ版はPSPとVITAでそれぞれ『果実』『迷宮』『楽園』が出ています。移植にあたりCGがいくつか追加。
それ以外に全年齢向けのサイドストーリーとして『グリザイアの有閑』(アニメ『グリザイアの果実・第3巻』初回特典)、『グリザイアの残光』(アニメ『グリ ザイアの楽園・第5巻』初回特典)、『グリザイアの旋律』(PCゲーム『果つることなき未来ヨリ』初回特典)が発表されています。
『有閑』『残光』『旋律』に関してはダウンロード配信限定のソフトで、もうすでにダウンロード期限は過ぎているのですが、3つをまとめたものが『グリザイアの果実 -SIDE EPISODE-』としてVITAで発売されています。
『アイドル魔法少女ちるちる☆みちる』はヒロインの1人松嶋みちるを主人公にした魔法少女モノのスピンオフ作品。エロ無しの全年齢向けで、キャラ設定やストーリーは本編と全く関係がないコメディ作品です。VITA版も出ていて、こちらは前後編がセットになっています。
『コンプリートボックス』はシリーズ全作に加えてイラストブック・全作品のサントラCD・アクリルスタンド・缶バッジ等の特典を同梱したもの。こちらもかなり大きなパッケージなのでお店のショーケースに入ってたりします。
Switch版の『フルパッケージ』は文字通りCS版の全作品を収録したもの。『果実』『迷宮』『楽園』だけでなく、サイドストーリーである『有閑』『残光』『旋律』も収録されています。(『ちるちる☆みちる』は未収録)
『リマスタードボックス』は本編3部作『果実』『迷宮』『楽園』及び短編の『有閑』『残光』『旋律』を現行OSに対応させて解像度もフルHD化したもの。本編のサントラとアクリルスタンド・ミニ色紙が付属します。
これ以外に『グリザイア:ファントムトリガー』という全年齢向けの作品もありますが、これは舞台が共通した別作品と思ってください。シナリオの雰囲気もかなり違ってバトル要素多め。基本的にVol.1~Vol.8までの分割販売ですが、ダウンロード版は3本ずつのセット販売もあるので基本こちらで。
この他に本編やファントムトリガーのキャラが登場する『グリザイア クロノスリベリオン』と『グリザイア 戦場のバルカローレ』というアプリゲームが配信されましたが、どちらも1年足らずでサービス終了。
『クロノスリベリオン』はストーリー部分を編集して買い切りのADVゲームとして販売されています。
今から買うなら本編(果実・迷宮・楽園)の中古のパッケージ版かダウンロード版を推奨。ダウンロード版はたまに割引セールやまとめ買いの対象になっているので、安くなっているときに買いましょう。
まとめ買いはたいていフロントウィング作品5本を8000円くらいで買えるというセールなので、本編3部作とファントムトリガーのセット2本を買えば、1作あたり2000円以下で買えますね。
サイドストーリーもプレイしたければ、『リマスタードボックス』の新品が今でも通販で購入可能です。エロ無しでよければ全部がセットになったSwitch版を。
ちなみにSteamでも各作品が配信されていますが、音声以外は全て英語で、日本語対応はしていません。
システム
画面下にテキストが表示されるオーソドックスなADVタイプ。一通り必要な機能は揃っていて、オーソドックスなシステムです。画面サイズは1024×576のワイド画面。
パッケージ版もインストール時にネット接続が必要になりますが、中古でも問題なく起動します。
基本的なシステムは揃っていますし、「次の選択肢に進む」「前の選択肢に戻る」機能もあるので周回プレイが苦になりません。
しかも選択肢の場所まで直接飛ぶだけでなく、”選択肢のあるシーンの頭”に飛ぶことも出来ます。これは便利。
さらに次の選択肢まで飛んだときは、その間のテキスト履歴もちゃんと残っている親切設計です。(そのぶんちょっと時間がかかります)
セーブ時はテキスト履歴も保存され、前の選択肢に戻ることもが可能。
おまけモードは最初から解放されていて、回想モードでは一度見たほとんどのエピソードを読み返すことが出来ます。
ただCGモードでBGMを変えることが出来ないのはちょっともどかしいですね。特に使用中は(笑
シナリオ

シナリオ担当は複数ライター制で藤崎竜太さん(天音ルート・蒔菜ルート)を中心に、木緒なちさん(由美子ルート)、桑島由一さん(みちるルート)、かづやさん(幸ルート)の4人。
物語は生徒が5人の少女たちしかいない私立美浜学園に、主人公・風見雄二が転入するところから始まる学園ストーリー。
序盤から中盤にかけての共通ルートは笑いの絶えない小さなエピソードを積み重ねていきます。この共通ルートはちょっと長いんですが、これがまた面白いんですよ。ギャグシーンは下ネタも多く、女子校のような雰囲気です。お湿りなう。
そして後半の個別ルートに入ってからは基本的にシリアス一色。
各個別ルートはかなり鬱になる重い話だったり、工作員と戦う熱い展開だったり、涙なしでは見られない話だったりとバラエティに富んでいる上にボリューム満点で飽きさせません。
所々でミリタリーや車に関するマニアな蘊蓄が挿入されますが、これは多分ライターさん(特に藤崎さん)の趣味ですね。
そのほかにも「子猫に市販の牛乳を与えてはダメ」とか「ザリガニは食べる餌で体の色が変わる」といった役に立つ(?)トリビアがちょいちょい出てきます。
グラフィック

原画は渡辺明夫さんとフミオさん。ギャグシーンのSD原画は”ななかまい”さん。
渡辺明夫さんはTVアニメ『化物語』のキャラデザをしたことでも有名なアニメーターさんですね。言われてみればどこかアニメチックでわかりやすいキャラデザです。
キャラデザインも原画の2人が分業しているそうですが、違和感はほとんどありません。言われてみれば目の描き方がちょっと違うかなと思うくらい。むしろ個性があって良いかと。
一部変な構図のCGがあって時折ネットでネタにされますが(「グリザイア ジョジョ立ち」で画像検索してみてください)、絵自体は非常に高品質です。
キャラクター

榊 由美子
他者との交流を拒み、主人公に対してもカッターナイフで威嚇するほどきつく当たるが、実は寂しがり屋。
美浜学園の設立にも関わっているので、クラスメイトの中では一番の古株。文房具を振り回す某アニメキャラに似てるとか言っちゃダメ。(まぁキャラデザ同じ人だし…)
周防 天音
下ネタ大好きエロ担当巨乳ねーちゃん。車の運転と料理が得意で、面倒見もよく寮内でのまとめ役。
主人公との絡みも多く、あえてメインヒロインを選ぶとしたらこの子になるかも。
松嶋 みちる
バカ。愛すべきバカ。狂おしいほどにバカ。
真のツンデレを目指すため、キャラ作りでわざわざ髪を金色に染め、いちいち「そんなんじゃないんだからね!」などとツンデレ台詞を叫ぶので、他のメンバーもあきれ気味。だがそれがいい!
入巣 蒔菜
主人公のことを「おにいちゃん」と呼ぶロリ担当。
出逢った当初は人見知りな感じですが、主人公に心を許した後はボケもツッコミもこなすめっちゃハイテンションなキャラになります。
小嶺 幸
常にメイド服を着て寮の雑務を一手に担うが、れっきとした美浜学園の学生でクラス委員。
頼めば何でもこなす有能な少女で、最終章の『楽園』でも大活躍します。
風見 雄二
風見学園にやってくる転校生の主人公。
自称「市ヶ谷の会社」で「掃除のアルバイト」をする「普通の学生」。
主なヒロインはこの5人。この他に学園長の橘千鶴、主人公の仕事先の上司である春寺由梨亜が主なキャラクター。それ以外に各個別ルートでそれぞれのヒロインに関係する重要なキャラも出てきます。
メ インである5人のヒロインは非常にキャラが立っていて、日常シーンもドタバタした学園コメディが楽しめます。比較的落ち着いたキャラの由美子と天音に対 し、ハイテンションなみちると蒔菜が引っ掻き回し、マイペースな幸がボケるという、キャラ配置のバランス感覚がすばらしいですね。誰一人かけても美浜学園の雰囲気は成り立ちません。
ボイス
一色ヒカル/田中涼子(由美子) | 雪見そら/田口宏子(天音) | 羽仁麗/水橋かおり(みちる) | 民安ともえ/たみやすともえ(蒔菜) |
岡村美佳沙/清水愛(幸) | まきいづみ/やなせなつみ | 楠鈴音/鳴海エリカ | 青山ゆかり/友永朱音 |
桜城ちか / 月ヶ瀬あかね |
主人公以外フルボイス。
メインキャラはもちろんのこと、サブキャラにも実力派のベテラン声優さんを揃えています。
あわよくばアニメ化を狙いますよ、という意思を感じるキャスティングで、実際声の良く似たCS版キャストによってアニメ化されました。
名義がちょっとわかりにくい方もいますが、雪見そらさんは00年代前半から純愛ゲーを中心に活躍されている方。
羽仁麗さんも毎回名義の変わる方ですが、声質が特徴的なのですぐわかりますね。
岡村美佳沙さんはおなじみ車の人。名前の元ネタは岡村製作所の「ミカサ・ツーリング」。マニアックすぎる(笑
BGM
BGM担当はElements Gardenの藤田淳平さん。
曲としてはオーソドックスで、まったりしたシーンからギャグシーン、緊迫したシーン等にあわせた曲が全30曲。
個人的なお気に入りは、由美子のテーマとも言える「瓶詰めの空」や「月が見ている」。落ち着いた雰囲気の日常曲が素晴らしい。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「終末のフラクタル」 | 桑島由一 | 藤間仁 | 飛蘭 | OP |
「ホログラフ」 | riya | 菊地創 | eufonius | ED |
「HOME」 | 桑島由一 | 菊田大介 | 橋本みゆき | ED |
「SKIP」 | 桑島由一 | 中山真斗 | 茶太 | ED |
「迷いの森」 | 桑島由一 | 藤田淳平 | 佐藤ひろ美 | ED |
「この日のままで」 | 桑島由一 | 母里治樹 | NANA | ED |
OP曲は飛蘭さんらしい疾走感のある良曲。グリザイアシリーズの曲中では唯一シングルカットされています。
EDはルートそれぞれに個別の曲が用意される豪華仕様。作曲者は菊池さん以外みんなElements Gardenの所属クリエイター(当時)。しかも歌い手さんたちも00年代のエロゲソングオールスターといった感じですね。
参考までに、続編である「グリザイアの迷宮」「グリザイアの楽園」でも当然たくさんの曲が収録されたのですが
タイトル | 作詞 | 作曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「ワールドエンド」 | 桑島由一 | 藤間仁 | 佐咲紗花 | 迷宮OP |
「創世のタナトス」 | 桑島由一 | 菊田大介 | 飛蘭 | 迷宮ED |
「FISSION」 | 奥井雅美 | 藤間仁 | 奥井雅美 | 楽園OP |
この3曲が特に素晴らし過ぎる! テンション上がりまくりで24時間聴き続けても全く飽きません!
作曲の藤間さんと菊田さんはElements Gardenのエースともいえる方で、声優の水樹奈々さんや茅原実里さんにも楽曲提供されています。言われてみると、なるほど雰囲気がそんな感じです。
奥井雅美さんはアニソン界で知らぬ人はいない超有名人ですが、エロゲの曲もちょくちょく歌うんですね。
ムービー
OPムービー制作はURAさん。序盤とラストには少しですがアニメーションが入ります。
曲に合わせたテンポの良い構成であるのはもちろんのこと、キャラ紹介では単に絵を繋ぐわけではなく、イメージビジュアルとゲーム内CGを上手く加工して凝った演出になっています。
この作品に限らず、URAさんのムービーはいつ見てもセンスが良いですね。
特に「グリザイアの迷宮」のOPムービーは見事としか言いようがありません。ゲームしない人でも一見の価値ありかと。
作品中のCGやイメージビジュアルを加工したものでも、ここまでカッコイイムービーが作れるんですね。
攻略
選択肢は少なく、攻略自体は簡単。中盤に出てくる”それっぽい”選択肢を選べば素直に個別ルートへ入ることが出来ると思います。
各個別ルートには最後の選択肢があり、それぞれGOODエンドとBADエンドに直行するんですが、これはちょっと判断に迷う場合もあるのでセーブ必須。BADエンドにも固有CGがあるので結局両方見ることになると思いますが。
プレイ時間は初回プレイで約15~20時間、トータルで30~40時間程度。
全てのエンディングを見るとシステムボイスや壁紙、Twitter等に使えるアイコンを入手することが出来ます。
攻略順で気を付けるのは天音ルートの扱いですね。このシナリオは他と比べてかなり重い話なので最初と最後には持ってこないほうがいいかと思います。
由美子→蒔菜→みちる→天音→幸、という感じが無難かと。
Hシーン

Hシーンは1ヒロインあたり2~4回。行為自体は割とオーソドックスです。
胸は小さいキャラから大きいキャラまでよりどりみどり。
ただ回想モードが一般のシーンを含んでいるため、使おうと思ってもすぐにHシーンがはじまらないことが多いのがもどかしい。Hシーンだけ別にしてくれればいいのに。
感想

この作品は何か重厚なテーマがあったり号泣するほど感動的というわけではありません。
むしろあまり深く考えずに、気楽にプレイするための作品です。そういう意味では、笑って燃えてちょっとしんみりしたりもする、良い意味でラノベのような作品だと思います。
2010年くらいまでは、こういう良い意味で”ラノベっぽい”作品も多くて楽しかったですねぇ。
この作品の魅力はまず風見雄二という主人公のキャラクター性。少々世間ズレはしていますが、特殊な訓練を受けているのでメッチャ強くて頼りになる主人公です。
主 人公が「学生だけど実は組織のエージェント」というのは割と昔からよくある設定で、エロゲの世界でもLeafの『Routes』やAXLの『恋する乙女と 守護の楯』などの名作にも見られますし、ラノベの世界でも賀東招二の『フルメタルパニック』や佐島勤の『魔法科高校の劣等生』にも通じるものがあると思うので、ああいう作品が好きな人には特におすすめ。
やっぱオタクたるもの、女の子に絡んできたチンピラを一瞬で倒したり、学校に潜入したテロリストを一人で全滅させたりすることくらい、誰しも経験していますよね?
各ヒロインのキャラクター性も非常に個性的…というかクセの強すぎる性格で共通ルートでは面白おかしい日常を堪能できます。後半の個別ルートは非常に重い話が多くなりますが、楽しかった共通ルートとの落差が良い意味で際立つんですよね。
各個別ルートそれぞれ全く違うテイストなのでプレイヤーを飽きさせません。
ヒロインは全員”訳あり”の人生を送っていて、その理由や経緯からその後の決着まで、非常に丁寧に描いています。この描写があるからこそ、続編の『迷宮』や『楽園』のストーリーが味わい深くなるんですよね。
特に天音個別ルートである「エンジェリック・ハウル」は他とは毛色の違うシナリオでかなり鬱なストーリーなんですが、ファンからの評価も高く、『迷宮』以降のストーリーにも関わってくる重要な物語です。
また物語の構成や方向性が、しゃんぐりらすまーとの『暁の護衛』シリーズと似ているのでよく比較されます。
『暁の護衛』は正直やや尻切れトンボだった感じが否めませんが、『グリザイア』は三部作を通して最後までしっかり描ききっているので、非常に読後感がさっぱりして良いですね。
第一作の『果実』で5人のヒロインを掘り下げ、第二作の『迷宮』で主人公を掘り下げ、そして最終作の『楽園』で全ての決着をつける、この構成が見事にはまっている作品です。
『迷宮』では”名言製造機”こと雄二の師匠・日下部麻子が登場しますし、『楽園』は全編を通じて激熱の物語なので、是非最後まで通してプレイして欲しいところ。
ただ『楽園』のラストは少々ぶっ飛びすぎているので、正直アニメ版のほうが良改変されていてファンの評価も高いかも。
ちなみに『迷宮』以降のシナリオは『果実』で「特定のヒロインとくっつかなかったけどヒロインの問題はすべて解決済み」という体裁で話が進みます。まぁちょっとご都合主義的ですが割り切って楽しみましょう。
むしろこっちのほうが美浜学園独特のハーレム的な雰囲気が出ていて良いんですよねぇ。
三部作通して振り返ると、笑いあり、涙あり、鬱あり、熱い展開あり、エッチなシーンも当然ありと、エンタメとしてのエロゲーの要素をぎゅっと詰め込んだ作品なので、多くの人が楽しめる幕の内弁当のような作品かと思います。