今回紹介する作品は2015年に発売された枕の名作『サクラノ詩(うた)』の続編、『サクラノ刻(とき)』。略称は「サク刻(さくとき)」。
もちろんシナリオライターは前作から引き続き”すかぢ”さん。彼の描く独特の雰囲気はエロゲ界にとっても唯一無二。
良くも悪くも非常に個性的な物語なので、正直なところあまり万人におすすめできる作品ではありません。
続編ものなので当然、前作『サクラノ詩』のプレイは必須。というかプレイしていないとわけがわからないと思います。
それでいて前作の物語が気に入った人のみ今作もプレイするようにしましょう。ある意味では前作よりも尖った作品になっています。
物語は前作(のメインの話)から10年後。弓張学園を卒業した主人公・草薙直哉が母校で美術教師として赴任し、教え子である咲崎桜子が中心となって美術部を復活させるところから始まります。なので正確には前作最終章の直後、ということになりますね。
この作品は美術、ひいては芸術そのものに真正面から向き合った硬派で真面目な作風です。
少なくとも可愛い美術部員とキャッキャウフフする物語ではないので、そういうキャラゲーチックな展開を期待してはいけません。
むしろ恋愛要素はかなり少なめ。
一般的な美少女ゲーム好きには全く刺さらないかもしれないけど、すかぢ作品好きには思いっきり刺さりまくる、そんな極端に評価が分かれる作品だと思います。
ちなみに紹介するうえで少しだけ前作の内容を含みますのでご注意を。
- 美術がテーマの作品
- 主人公・草薙直哉と夏目圭の物語
- 白熱の芸術バトル

あらすじ
二人の天才。
夏目圭と草薙直哉の本当の物語。
何故、彼らは死後あるいは筆を折っても、未だに人々を魅了し続ける芸術家であり続けるのか?
美の具現化そのものである画家、御桜稟。
彼女は何故、彼らが止まったその先を進もうとするのか?
氷川里奈は? 川内野優美は? 鳥谷真琴は? そして夏目藍は?
あらゆる人間の思いが交差する。
購入ガイド
| タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
|---|---|---|---|
| サクラノ刻 初回限定版 | 8 10 11 | 2023.2.24 | 易 |
| サクラノ刻 通常版 | 8 10 11 | 2023.2.24 | 易 |
パッケージ版は初回限定版と通常版があります。
通常版の特典はモノクロ冊子とミニ色紙、初回限定版はそれに加えてフルカラー冊子、書き下ろし小説、OPアレンジCD、ドラマCDが付属します。通常版のモノクロ冊子はパッケージの外に同梱されるので中古で買う場合は注意してください。パッケのみという中古も結構見かけます。
ダウンロード版の配信はFANZA独占。ブラウザプレイにも対応しています。
ダウンロード版にも通常版と特典付き版があり、特典付き版は限定版につく特典が(ミニ色紙以外)すべてデジタルデータで同梱。販売ページは特典付き版と特典なし版で別になっています。
特典の内容はどちらかというとファン向けで「絶対必須」というものでもないため、物語を楽しむだけなら通常版で十分です。
特典付きはお値段と相談しながら。特典の質と量を考えると割と良心的な価格(税込み14,080円)で、2026年現在でも新品で購入可能です。すかぢ作品好きなら特典小説は読んだほうがいいかも。
システム
テキストが画面下に表示されるごく一般的なAVGのシステムです。画面サイズは1920×1080のフルHD。
必要な機能は十分揃っているのでプレイには特に問題ありません。
コンフィグの設定量は標準的。メチャメチャ細かく設定できるわけではないですが、普通にプレイするぶんには十分かと思います。
テキストフォントは明朝体・ゴシック・源柔ゴシックから選べますが、物語の雰囲気的にデフォルトの明朝体が一番ですね。
ただこれは前作からそうなんですが、オートモードのウエイト時間が文字数にかかわらず一定なので、長い文章を読むときはちょっと焦ります。
あとメッセージウインドウ上に表示されているセーブやロード等のアイコンが良くも悪くも目立たないデザインなので、背景によってはかなり見にくくなりますね。
一応画面上に大きなアイコンを表示させることもできますが、さすがにこちらは大きすぎてちょっと邪魔。
ちなみに私、普段エロゲーの類は古いWindows7でプレイしてるんですが、このゲームは起動はしたものの頻繁に強制終了を繰り返すので仕方なくWindows10でプレイしました。
エロゲーってサポート外の古いOSでも結構動くことが多いんですが、さすがに最近のゲームは難しくなってきましたねぇ…。
シナリオ

シナリオライターはもちろん”すかぢ”さん。
今回はサブライターは置かず、全編1人で執筆されたみたいです。
ストーリーの時系列はⅠ章が前作より10年近く前の過去話(鳥谷静流や夏目藍の学生時代)で、本編のⅡ章は前作最終章直後(つまり前作V章から約10年後)。
弓張学園の美術教師となった主人公・草薙直哉の下で『櫻達の色彩の足跡』を完成させた少女たちが、かつて夏目圭や御桜稟が在籍した美術部を復活させるため部員を集めていくところから始まります。
公開されている人物紹介では前作のネタバレを防ぐために夏目圭関連の話がぼかされていますが、前作の展開を踏襲するものと考えてください。
物語は全6章の章別構成。(ただ6章はエピローグなので実質全5章)
途中のIII章で個別ヒロインルートに分岐し、IV章以降がTRUEルートになるという、前作とほぼ同じ構成です。
各章終了時にはENDムービーが流れます。
ちなみに前作以上に美術に関して真面目でストイックな展開が多いです。
登場人物たちの教養が非常に高いので、美術史の解説だったり、有名な小説や戯曲、哲学書からの引用が多数出てきます。
可愛らしい少女が突然ハイデガーの著作を諳んじたりしますし、中年のおっさんが10分以上延々と美術や音楽について講釈したりすることも。
作中では絵画コンクールの名前が結構出てくるのですが、多くが実在のコンクールをモデルにしたものになっています。
例えば作中の「文展」は『日展』、「三科展」は『二科展』、「小松良二賞」は多分『小磯良平大賞』、「FIRST展」は『FACE展』、といった感じ。
ちょっと調べてみたら、絵画コンクールって大きいものから小さいものまで国内でも結構たくさんあるんですね。
ただ作中の一番重要な賞であるムーア展に関しては完全にオリジナルでしょうか。調べてもそれっぽい元ネタは見当たりませんでした。一応ヘンリー・ムーアという彫刻家がいるみたいですが関係ないっぽいですね。
シナリオ自体にかなりボリュームがあり、1シーンがかなり長いのも特徴です。
あるシーンが始まってから次の場面転換まで、オートモードで2~30分程度かかるのが普通。他のシナリオゲーと比べてもかなり長いほうだと思うので、中断するタイミングが難しい。
正直ちょっとテンポが悪いかなと思うことはありますね。
女の子と楽しく話してるならまだしも、中年のおっさんと美術論議を延々とされるとさすがに辟易してしまうことも。
グラフィック

原画家はいぬきら(狗神煌)さん、籠目さん、基4さんという前作と同じ面子。いぬきらさんと籠目さんがメインキャラを担当されています。いぬきらさん担当の心鈴や桜子といったキャラは憂いを帯びたような目が印象的。
全体的に前作からは少しクセが無くなって一般受けしそうな感じになりました。
ほとんどのキャラは新たに書き下ろされてますが、一部のキャラは前作からそのまま流用してるっぽいですね。
イベントCGは全部で128枚。ちょっとしたシーンにもイベントCGが使われる大ボリュームです。
書き込みが繊細で非常に美麗なCGが多いですね。
作中にはバイクのベスパに2人乗りをしているイベント絵が3枚ほどあって、全く同じ構図で人物や背景を変えて描いています。
こういう「受け継がれていく意思」みたいなのを表すイベント絵って大好き。
また一般的なエロゲーだと背景絵にはモブキャラは描かれないか、描かれたとしても目立たないようにぼかしていることが多いと思うんですが、この作品では背景 のモブキャラも服装から髪型、表情に至るまではっきり描かれています。こういうの珍しいですね。もしかして他作品のゲストキャラだったりするんでしょう か。
キャラクター

草薙直哉
本作主人公の青年。年齢は正確に公表されてませんが20代後半。
少年時代は天才と称されたが現在は筆を折り、母校の弓張学園で美術教師として働く。
夏目圭
幼少期から直哉を目標に美術の腕を磨いてきたライバルであり親友。
この作品におけるもう一人の主人公と言えます。
夏目藍
夏目家の長女で、直哉にとっては姉のような存在。職業は教師。
以前は系列校に飛ばされていたが、再び弓張学園に赴任。
本間心鈴
弓張市の隣町にある聖ルーアン女学院に通う中村(本間)麗華の娘。顔立ちは母親にそっくり。
類稀なる美術の才能があり、相手に恐怖心を与える恐ろしい目を持つ。
鳥谷真琴
前作ヒロインで、現在は美術雑誌「アートスクール」の編集者。
取材のため再び弓張に戻ってくる。
鳥谷静流
直哉の行きつけである喫茶店「キマイラ」のオーナーであり真琴の従姉妹。
世界中を旅していて前作では名前だけ出ていたが、今作では再びマスターとして働く。
御桜稟
前作メインヒロイン。絵画の才能を開花させ、ムーア展の最高金賞プラティヌ・エポラールを受賞した天才画家。
現在は海外に拠点を移し、夏目雫と暮らす。
長山香奈
前衛芸術集団ブルバギに所属する女性画家。
直哉とは同世代で、自分が凡才であることを誰よりも理解している。
これ以外にも非常にたくさんのキャラクターが登場します。
弓張学園美術部にも咲崎桜子、栗山奈津子、氷川ルリヲ、川内野鈴菜、恩田寧、柊ノノ未といった魅力的なキャラがいますが、実は全員サブキャラ扱い。
草薙直哉は教師でありながら自分の生徒には手を出さないという、エロゲーの主人公とは思えない倫理観の持ち主です(笑
前作の人間関係も複雑でしたが、今作ではそれに輪をかけて複雑になっています。(だいたい中村章一のせい)
結婚等で苗字が変わったり、雅号(ペンネーム)が本名と違ったりするキャラもいるので非常に紛らわしいんですよね。
とりあえず”家”でグループ分けしてみます。
| 中村家 | 中村章一 中村(本間)麗華 |
| 本間家 | 本間礼次郎 本間心鈴 |
| 鳥谷家 | 鳥谷(中村)紗希 鳥谷真琴 鳥谷静流 |
| 恩田家 | 宮崎破戒 恩田放哉 恩田霧乃 恩田寧 |
| 夏目家 | 夏目藍 夏目(中村)圭 夏目雫 |
| 草薙家 | 草薙健一郎 草薙(中村)水菜 草薙直哉 |
夫婦関係や親子関係が絡むためヨーロッパの王族並に複雑です。
さらにここから対立関係や協力関係、師弟関係等があるので頭がこんがらがります。これ公式から人物相関図出すべきですよ。
また今作では芸術家がたくさん登場するのですが、それぞれの実力差を意識させるストーリーになっています。
「このキャラよりあのキャラのほうが上手い」みたいなことを考えると人間関係により深みが増しますね。
ちなみに私が勝手に決めた画家としての実力ランキング。草薙直哉をどこに入れるかかなり迷ったのであえて外しました。
S 草薙健一郎
A 御桜稟 宮崎破戒
B 宮崎みすゞ アリア・ホー・インク 夏目圭
C 村田清彦 坂本彰三
―――世界的画家の壁―――
D 氷川ルリヲ 恩田寧 長山香奈
ボイス
| 澤田なつ(藍) | 夏和小(心鈴) | 五行なずな(真琴) | ||
| 歩サラ | 鈴谷まや | 桜川未央 | きのみ聖 | 北大路ゆき |
| 秋野花 | 手塚りょうこ | 綾音まこ | 萌花ちょこ | 早瀬ゃょぃ |
| 小倉結衣 | 猫村ゆき | 大花どん | ||
| 藤神司朗 | 牛蛙キタロウ | やじまのぼる | 星一人 | 野☆球 |
主人公を除く主要キャラフルボイス。
主人公の草薙直哉も終盤のみ声が付きます。というかいきなり直哉に声が付いたときはビビりました。
前作から引き続き出演されてる方がほとんどですね。どの方もベテランなので安心して聞いていられます。
桜川未央さんはなぜか鳥谷紗希と氷川ルリヲの二役なんですが、声のトーンや雰囲気が全く違うので言われなきゃ気付きません。というか言われても同じ声優とは思えない。声優さん凄い。
前作で氷川里奈役を務めていた藤森ゆき奈さんは声優業引退により猫村ゆきさんに交代になっています。ちょっと声質が違うので前作から連続してプレイすると違和感があるかも。
先日引退を表明された萌花ちょこさんは続編ということで引き続き出演してくれた模様。
最近はほとんど声を聞かなくなったきのみ聖さんや大花どんさんもお元気そうで何よりです。
BGM
BGM作曲のメインは松本文紀さん。他にも何人か作曲者がいるみたいです。
作中ではBGMのボリュームが少しずつ小さくなってフェードアウトしていく演出が何度かあります。急に変わるよりこっちのほうが話の転換点がわかりやすくていいですね。
Musicモードで聴けるのは43曲。物語の長さに比べると若干少なめでしょうか。
一部の曲は前作からの流用です。
またムソルグスキーの「展覧会の絵」や「禿山の一夜」、サティの「ジムノペディ」といったクラシックのアレンジ曲もあります。
個人的お気に入りは「風景はせわしく明滅し」。世界観に合ったピアノによる癒し曲です。
非常に壮大で爽快な「夢浮の大地」も印象的。RPGとかで新たな大陸に渡ったときにありそう。
「我々は弱いから此処に来た」は冒頭からテンションマックスな燃えBGM。ぶっちゃけこの作品の中ではかなり異色の曲ですがメチャメチャ印象に残ります。
主題歌
| タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 「刻ト詩」 | すかぢ | 松本文紀 | Luna | OP |
| 「櫻ト向日葵」 | すかぢ | 松本文紀 | 狩野七夏 | ED |
| 「幾望-既望-希望」 | すかぢ | viewtorino | viewtorino | ED |
| 「虚無の先で愛を見つける」 | すかぢ | viewtorino | はな | ED |
| 「Mon Panache!」 | すかぢ | 松本文紀 | Luna | ED |
| 「櫻ノ詩-2023Mix-」 | すかぢ | 松本文紀 | はな | ED |
ボーカル曲は全部で6曲。各章の終わりにENDテーマが流れます。
全ていい曲なのにMusicモードで聴くことができないのが残念です。
OP曲「刻ト詞」は疾走感と力強さを感じる前向きな曲。まさに人生を駆け抜けていくようなイメージ。
正直最初に聴いたときはそんなに印象に残らなかったのですが、最後までプレイしてから改めて聴くと凄く物語に合った曲であることがわかります。この辺はシナリオライターであるすかぢさんが作詞をしている強みが出ている感じ。聴けば聴くほど良さがわかる名曲です。
溜めに溜めて最後一気に発散するサビの終わりは一緒に叫びたくなりますね。と~きと~~うた~~~~!!!
「櫻ノ詩-2023Mix-」は言わずと知れた前作のOP曲のリミックスバージョン。とはいえそんなに曲調は変わってないですね。もう何度聞いたかわからないくらい、2010年代のエロゲソングを代表する名曲中の名曲です。
ムービー
II章終了時にOPムービーが流れます。ムービー制作はMju:Zの癸乙夜(みずのと いつや)さん。
作中のイベント絵を加工して作られていますが、非常に動きを感じるムービーです。
キャラの紹介というよりは、ストーリーに沿った構成ですね。いい意味でパッと見では誰が攻略対象なのかわからないかも。
ヒロインもさることながら、主人公である草薙直哉も結構出てきます。つまりこの作品はあくまで草薙直哉の物語であることを表しているのでしょうね。
印象的なのはラストで幕開けと共に各章サブタイトルが連続して表示されるシーン。正に「これから物語の幕が上がりますよ」という感じが出ています。
攻略

公式サイトでは「誰が攻略ヒロインか」をあえて示さない形で登場人物を紹介しているので、攻略対象を知りたくない人は以下の文章を読み飛ばしてください。
主にⅢ章に数回出てくる選択肢でルートが分岐。上手く選ばないとBADエンドになります。
選択肢を選んだ直後は特にイベントが起こるわけではなく、どの選択肢がフラグになっているかわかり辛いため、最近のゲームにしては攻略難度がやや高いです。
私結構この手のゲームに慣れているつもりですが、それでも何度かBADエンドになりました。
いわゆる「個別ルート」があるのは本間心鈴と鳥谷真琴のみ。
推奨攻略順は心鈴→真琴。2つのルートを終えるとⅢ章に選択肢が追加されてⅣ章以降に進むTRUEルートが解放されます。
総プレイ時間はゆっくりやって40~50時間。かなりのボリュームなのでじっくり時間をとってプレイするようにしてください。
Hシーン
シーン回想に登録されるHシーンは13個。そのうち一つは主人公の絡まない百合Hです。
伏字・P音による卑語修正が入ります。
行為自体は基本的にオーソドックスなものですが、尺自体は長め。一つのシーンでだいたい2~3枚くらい(差分含めず)イベントCGが使われます。
胸は一部のキャラを除き大き目。
正直なところ、自分は抜き目的ではほとんど使えませんでした。なんというかあまり刺さるシーンがなかったので。
胸の大きさが大きいキャラと小さいキャラで極端に分かれていて、ちょうどいい大きさのおっぱいがなかったのも残念です。
また個別ルートでは一度Hシーンが始まると終わった後もあまり間を置かずに次のHシーンが始まることが多く、ぶっちゃけた話「早く終わって話を進めてくれ」と思うこともありましたね。
感想

まずはこの「サクラノ刻」という作品を世に出してくれたすかぢさんをはじめ、ケロQ/枕のスタッフに感謝。
この作品は一応美少女ゲームの体をとっていますが、本質的な部分では草薙直哉と夏目圭がメインの物語になります。
プレイし終わった後は、なんというか「シン・エヴァンゲリオン」を観た後の気持ちに近…くもないけど遠くも無いような、そんな満足感に浸ると同時に、「あぁ、終わってしまったんだな」という寂しさもちょっと感じました。
今作の特徴
今作では「実は昔こういうことがあった」という物語を補完するような過去の話も多く、個々のキャラクターや物語全体に深みを与えています。
前作では性格の歪んだ悪役として描かれていた中村麗華や、名前しか出てこなかった鳥谷静流は本作をプレイすると印象がだいぶ違ってきますね。
あえて難点を言えば、個別ルートでは恋愛描写がやや唐突なので、「え?もうHしちゃうの?」と思うことも正直ありました。
まぁこの作品は恋愛メインの物語ではないのでしょうがないかも。ただでさえ長いのにこれ以上恋愛描写に尺は取れないでしょうし。
また前作は個別ルートにファンタジックな設定もありましたが、今作では基本的にリアリティのある展開がほとんどです。終盤にちょっとだけ不思議な展開があるくらい。
逆に言えば終盤のあの展開いるかな?と思わなくもない。
良くも悪くも前半(Ⅲ章まで)と後半(Ⅳ章以降)では話の雰囲気が大きく異なるのも特徴です。
後半は直哉の物語に集中するあまり、弓張美術部のメンバーがほぼ空気になってしまうのはちょっと残念ですね。
また前作は「絵画を生み出す」シーンがメインだったのに対し、今作では「絵画で対決する」シーンが多くあります。
そのため美術というある意味地味で静的な題材ながら、派手で動的な展開が目新しかったですね。
作家性の高さ
美術とは何なのか、天才とはどういう人間なのか、なぜ画家は絵を描くのか、幸福とは何か、そんな真面目なテーマを扱いつつ、主人公・草薙直哉の進む”幸せの先”を示す結末です。こんな作品が読めるのはエロゲ―業界広しといえどもすかぢさんだけ。
そういう意味では前作を含め、非常に作家性の強い作品と言えますね。
なのでこの作品は人によってかなり向き不向きがあるはずです。人によっては全然楽しめなかったということもあるかもしれません。
少なくとも前作のストーリーが好きな人には強くお勧めします。ある意味この作品は『詩』と『刻』でワンセット。2作品をプレイして初めて「サクラノ詩」と「サクラノ刻」というタイトルの意味や、すかぢさんの描きたかったテーマも伝わってきます。
正にシリーズの完結編として草薙直哉と夏目圭の物語を綺麗に終わらせているので、前作「サクラノ詩」のファンであれば間違いなく満足できる結末かと。リアタイでプレイしてた人には前作から8年待った甲斐があったというもの。
ちなみに公式発表ではないみたいですが、シリーズ3作目の『サクラノ響(おと)』も制作されるようです。
1作目に11年、2作目に8年かかっていることを考えると3作目はいったいいつになるのか、エロゲ―業界はそれまで生きているのか心配になりますが、気長に待つとしましょう。


