皆さんの「ポケット」の中には普段何が入っているでしょうか。
スマホだったり財布だったり家の鍵だったり、そういった”大事なモノ”が入っていることが多いと思いますが、では子供の頃のポケットの中は?
今回紹介するのはノスタルジックな夏の雰囲気を満喫できる作品『Summer Pockets(サマーポケッツ)』、…のアッパーバージョンである『Summer Pockets REFLECTION BLUE』。略称は「サマポケRB」。
泣きゲーメーカーとして有名なKeyの作品です。
Keyは2010年以降すっかり18禁のエロゲーから足を洗ってしまったので、この作品もHシーンの無い全年齢向けのギャルゲーになります。
無印の『Summer Pockets』からして萌えゲーアワード2018において「ランス10」や「ぬきたし」、「アメグレ」などの人気作を差し置いて、大賞及びユーザー支持賞を受賞した名作。萌えゲーアワードって全年齢もOKなんですね。
物語は主人公が夏休みに親戚の家がある離島で暮らし、島の少年少女と楽しく過ごしていく夏の田舎らしいストーリー。
日常にちょっと不思議な現象が入り込む、いい意味でKeyらしいファンタジックな恋愛アドベンチャーとなっています。
過去のKey作品をプレイした人ならゲーム開始1秒で「あ、これKeyのゲームだわ」とわかるくらい、ブランド色の濃いシナリオと演出です。
もちろんKeyの作品なので泣ける展開も満載。
今作は特に個別ルートでも感動できるシナリオが多いので、全体的な満足度も高いですね。
ネット上でも人気が高く、同人誌を作ったり聖地巡礼をしたり、果てはモデルとなった島に移住した方までいるほど。
Key作品好きの方はもちろん、Key未経験の方にも是非プレイしていただきたい作品です。
作中の季節に合わせて夏休みにプレイするのもいいかもしれません。
ただプレイ前はネタバレに注意して、あまり事前情報は集めないほうがいいかも。
ちなみに2025年にはテレビアニメ化も果たしました。
アニメ制作はfeel.、監督は『うたわれるもの』や『ティアーズ・トゥ・ティアラ』も手掛けた小林智樹さん。
過去のKeyアニメと同じく非常にクオリティが高く、原作をリスペクトした内容になっています。
- 離島を舞台にした夏休みの物語
- Key作品らしいファンタジックな作風
- 各ルートハンカチ必須の泣けるラスト

購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
Summer Pockets | 7 8 10 | 2018.6.29 | 並 |
Summer Pockets | Switch | 2019.6.20 | 易 |
Summer Pockets REFLECTION BLUE | 7 8 10 | 2020.6.26 | やや難 |
Summer Pockets REFLECTION BLUE | Switch | 2021.7.1 | 易 |
Summer Pockets REFLECTION BLUE | PS4 | 2022.7.1 | 易 |
Summer Pockets REFLECTION BLUE(通常版) | 10 11 | 2024.9.27 | 易 |
まず無印の『Sumeer Pockets』PC版には初回版と通常版があり、初回版には特典として小冊子・アレンジアルバムCD・ラバーコースター・マイクロファイバークロス・ステッカー・トレカが付きます。通常版の特典はマウスパッドのみ。
『~REFLECTION BLUE』(以下「RB」)は新たに4人分のヒロインルートと新主題歌を追加した、言ってみれば完全版。既存のシナリオにもイベントが追加され、ミニゲームも改良されています。
パッケージは3種類あり、初回限定版には(無印とは別の)小冊子・アレンジアルバムCD・ラジオCD・アクリルコースター・トレカが付属。
豪華限定版は初回版の内容に加えて、コンプリートアートブック・アクリルスタンド・Tシャツ・ネックレス・ブックカバー等の特典が付き、税抜き定価29800円の豪華仕様。
初回版・豪華限定版共に現在では定価越えのプレミア価格となっていますが、通常版は現在でも新品が購入可能です。
各種コンシューマ版はストーリーの変更はありませんが、一部のCGが規制されています。際どいCGを見たければPC版にしましょう。無印のSwitch版は3000円で「RB」にアップデートできます。
これ以外にiOS版とAndroid版、Steam版が配信中。
Steam版の「RB」は他と比べてちょっと安い(5250円)ですが、CS版準拠のためこちらも一部のCGに規制がかかっています。
今から買うなら迷いなく『REFLECTION BLUE』を推奨。
ダウンロード版はDMM(FANZA)とDLsiteの両方で配信されていますが、どちらもたまに割引セールの対象になります。さらに最近ちょっと定価が安くなったので買いやすくなりました。DMMでは一般向けフロアと18禁フロアの両方で販売されていますが、モノは共通です。(つまりFANZAで買ってもDMMのほうも購入済みになります)
無印の中古はかなり安くなってますが、プレイしたらどうせ「RB」もやりたくなるでしょうから、最初から「RB」を買いましょう。
以下、『Summer Pockets REFLECTION BLUE』のレビューになります。
発売は2020年ですが、無印が2018年のため記事のカテゴリは2010年代作品にしています。
システム
ゲームエンジンはビジュアルアーツ謹製の「SiglusEngine」。画面サイズは1920×1080のフルHD。
機能的にもUI的にも非常に使いやすいシステムで、ストレスなくプレイすることができます。
SAVE等のアイコンがやや小さめですが、右クリックで大きなメニュー画面が出てくるので問題ありません。
またマウスカーソルを右端に持っていくとセーブファイルが表示されるので、簡単にセーブすることもできます。
オートモードのウエイト時間も絶妙。文字の量によってウエイト時間が変化するのは当然として、デフォルトのウエイト時間やテキストの表示速度も凄く自分に合ったものだったので全く無調整でプレイすることができました。
オートモードが始まるとすぐマウスカーソルが消えるのもいいですね。
またこれは最近のKeyのゲームには標準で搭載されている機能ですが、マウスを動かしているときはオートモードが停止します。これ操作しやすくて非常に便利なので他のメーカーさんも真似してほしい。
またKeyらしく物語中に「卓球」や「島モンファイト(ポケモンみたいなもの)」といったミニゲームも用意されています。
ミニゲームをプレイしなくてもシナリオのクリアは可能ですが、ハマると結構面白いですし専用のエンディングも用意されているので、気分転換にプレイしてみるのもいいかもしれません。
シナリオ

企画原案は麻枝准さん、シナリオライターは新島夕さん、魁さん、ハサマさんの3人。
最初に世界設定と結末を麻枝さんが作って、実際の執筆はルートごとに3人のライターさんが分担したそうです。
瀬戸内海に浮かぶ島・鳥白島に祖母の遺品整理のために訪れた主人公・鷹原羽依里(はいり)が、島で出会った少年少女と共に夏休みを楽しく過ごしていく物語。
冒頭からしてKeyっぽい意味深なナレーションから始まり、個性的なヒロインや男性キャラたちとのやり取りに大笑いし、各ルートラストは少し不思議で感動的な展開に涙を流すという、いい意味で過去のKey作品でおなじみの作風です。
テキストウインドウ上に表示される文章が短い(長くてもせいぜい2行)ので読みやすくていいですね。
また物語中の1日がだいたい10分~20分程度で終わるので、非常にテンポよく進めることができます。
物語は基本的に主人公である羽依里視点で進みますが、たまに何の前触れもなくヒロイン視点になったりするのでちょっと混乱することも。
グラフィック

原画家はキャラごとに分担されていて、Na-Gaさん(しろは、鴎、うみ)、和泉つばすさん(蒼)、永山ゆうのんさん(紬、静久)、ふゆむんさん(美希、識)の4人。
全体的な雰囲気は共通しつつも、それぞれ絵師さんの特徴が出てる感じですね。
特に蒼担当のつばすさんは良い意味で個性的。さすが人気イラストレーター。
イベント絵は全部で115枚。
差分も多めで、10種類以上差分のあるCGも少なくありません。
イベント絵はだいたい個別ルートに入ってからのものが多いですね。
それぞれの絵もクオリティが高く、ヒロインが非常に可愛らしく描かれています。
特にこの作品は長髪のキャラが多いので、髪がファサッと舞っているような風を感じるCGが多かったのが印象的です。
また全年齢版ということでHなCGはないですが、ちょっとだけ半裸や下着姿のシーンがあります。なんというか全年齢版だとこういうシーンでも興奮してしまいますね(笑
物語の舞台となった鳥白島(とりしろじま)は香川県の直島(なおしま)・男木島(おぎじま)・女木島(めぎじま)がモデルになっていて、地元のお店や観光協会と協力して聖地巡礼スポットとして盛り上がっています。
自分もこういうの行ってみたいですねぇ。
キャラクター

鳴瀬 しろは
島に住む17歳の高校生。両親はおらず、鳥白島にある祖父の家で暮らす。
やや人見知りの性格で孤立気味だが友達がいないわけではない。
空門 蒼
島にある駄菓子屋でバイトする高校生。16歳。
性の知識が豊富でエロいが恋愛には疎い。
久島 鴎
あるものを探しに島にやってきた少女。17歳。
常に古くて大きなスーツケースを引いて島内を歩き回っている。
紬 ヴェンダース
鳥白島の灯台で生活する少女。16歳。
ドイツ人とのハーフで、性格はやや幼いが素直。「むぎゅ~」が口癖のKeyっぽい少女。
野村 美希
島の少年団で治安維持活動をする16歳。通称のみき。
常に強力な水鉄砲を携帯して不埒な輩(主に良一)を狙撃する、規律に厳しい委員長敵キャラ。
水織 静久
本土にある学校で生徒会長をしている少女。18歳。おっぱい。
自宅は本土にあるが親友の紬に会うために頻繁に島にやってくる。自称「満月を喰らいし乳房」。
加藤 うみ
主人公の親戚で夏休みの間だけ同じ家で暮らすことになる少女。12歳。
年齢のわりにしっかりしていて主人公の世話をする。得意料理はチャーハン。
神山 識
島で出会う着物を着た不思議な少女。14歳。
鬼の伝承を調べるために島にやってきたが、いつも腹を空かせて行き倒れている。
鷹原 羽依里
本作主人公の17歳。
男子校に通っている元水泳部員。
祖母の遺品整理のため、夏休みのみの予定で鳥白島を訪れる。
この他の主要キャラは、やたら服を脱ぎたがる変態だが仲間思いの三谷良一、卓球が好きすぎて毎日秘密基地で特訓する加納天善、羽依里と暮らすことになる叔母の岬鏡子、しろはの祖父の鳴瀬小鳩。立ち絵のあるキャラはこのくらい。
メインキャラの多くは高校生で、普段は本土にある高校に船で通っているという設定です。
ヒロインは8人ですが、このうち静久・のみき・うみはRBからのヒロイン昇格キャラ、識は完全新規キャラになります。
蒼・のみき・良一・天善の4人は島の少年団の仲間で幼馴染グループのような感じ。ただすごく結束力があるというわけではなく、島に同年代の子供が少ないので必然的に自然と集まっているという感じですね。
ふつうこういうのは主人公も幼馴染の一員であることが多いんですが、この作品の主人公である羽依里は完全に部外者。そんな羽依里がいつの間にか仲良くなって島の一員みたいになっていくのは良いですね。
個人的お気に入りキャラは蒼。こういう気の置けない女友達みたいなキャラ大好きなんですよ。エロいし。チョロいし。
あと男性キャラでは良一がいい奴過ぎます。
ボイス
小原好美(しろは) | 高森奈津美(蒼) | 嶺内ともみ(鴎) | 岩井映美里(紬) |
一宮朔(のみき) | 小山さほみ(静久) | 田中あいみ(うみ) | ファイルーズあい(識) |
高本めぐみ | 鈴木このみ | 花澤香菜 | |
千葉翔也 | 熊谷健太郎 | 浜田洋平 | 白石稔 |
主人公以外フルボイス。
主人公の羽依里も最初と最後だけ声が付きます。
羽依里役の千葉翔也さんはアニメ『月がきれい』や『86-エイティシックス-』で主人公を演じられた方ですね。
キャストはアニメ声優さんが中心。名前を見る限り「絶対に18禁化はしないぞ」という強い意志を感じます。
なんとな~くですが、オーディションで決めた方と指名で決めた方に分かれてそうなキャスト陣です。
蒼役の高森さんはゲームでもよく聴く声ですが、役柄にぴったりの声ですね。
静久役の小山さんは妙に上手いなぁと思ってググってみたら知ってる声でした。最初気付かなかった悔しい…。
しろはのおじいちゃん役の白石さんは、アニメやゲームでよく聴きますし決して演技は悪くないんですが、声質があんまりおじいちゃんっぽくないような…。というか声を聴くたびに中の人の顔が頭に浮かんで違和感が(笑
BGM
BGMの作曲は折戸伸治さん、麻枝准さん、どんまるさん、竹下智博さん、水月陵さん。
ギャラリーモードで聴ける曲は51曲。ギャラリーモードではCGと音楽鑑賞モードが一体化しているので、パッと見でちょっとわかり辛いです。画面右下にあるプレイヤーの一番右のボタンを押すと「TRACK LIST」が表示されて曲を選ぶことができます。
当たり前ですがBGMはKeyっぽい曲が多いですね。
個人的お気に入りは麻枝さん作曲の『Sea,You & Me』。「田舎の夏」をイメージしたようなサマポケを象徴する癒し曲です。音楽モードで聴くと意外と長い曲であることがわかります。
麻枝さんの夏の曲といえば『夏影』が有名ですが、それよりもポップというか活動的な曲ですね。中盤にかけてはちょっと行進曲的というか、子供が知らない土地をズンズン歩いて探検してるような情景が浮かびます。「ぼくのなつやすみ」とかに合いそう。
蒼のテーマである『Other side Blue』も蒼というキャラにぴったりな明るくて前向きな曲。ボーカル曲っぽいメロディーラインですが、実際に高森さんが歌うキャラソンバージョンも作られました。
加藤家で過ごすときに流れる『蝉声とともに』は時間がゆったりと流れるような落ち着いた曲。日曜の午後にうたた寝をしながら聴きたい曲です。
コーラスが強烈に印象的な『さま~あばんちゅ~る』はあれですね、リトバスEXに使われた「え~くすたし~」的な曲。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
アルカテイル | 魁 | 折戸伸治 | 中山真斗 | 鈴木このみ | OP |
アスタロア | 魁 | 折戸伸治 | 塚越雄一朗 | 鈴木このみ | ED |
Lasting Moment | 新島夕 | どんまる | どんまる | 鈴木このみ | ED |
青き此方 | 魁 | どんまる | どんまる | YURiKA | ED |
羽のゆりかご | 新島夕 | 折戸伸治 | 塚越雄一朗 | 水谷瑠奈 | ED |
ポケットをふくらませて | 麻枝准 | 麻枝准 | bermei.inazawa | rionos | ED |
夏の砂時計 | 魁 | 水月陵 | 水月陵 | 水谷瑠奈 | 挿入歌 |
RBのOP曲「アルカテイル」を歌うのはアニソン歌手の鈴木このみさん。前向きな曲調と夏を意識した歌詞が作品にぴったり。というかプレイ後に改めて歌詞を読むと何気に物語の核心に触れてるんですね。
”アルカテイル”というタイトルは造語ですが、様々な意味が考えられる意味深なタイトルです。
「アスタロア」は無印のOPですがRBではEDで使われます。イントロはゆっくり目ですが全体的にテンポが良くて力強い曲。アニメ版のOPはこちらが使われています。
個別ルートEDで使われる「Lasting Moment」は爽やかでありながら夏の思い出を振り返るような曲。
最初はEDにしてはちょっと明るすぎないかとも思いましたが、何度も聴いてると良さがわかってくるスルメのような曲ですね。
歌詞も作品世界に合わせたものになっていて非常にノスタルジック。思わず子供の頃が思い出されます。
挿入歌の「夏の砂時計」は、水谷瑠奈さんの美しい声が涙腺を刺激します。もうこの曲が流れただけで条件反射で泣けてくるくらい。
終盤のここぞというところで流れるので、この曲が流れたらその後は中断せず最後まで一気にプレイしましょう。
また挿入歌といえば一番感動するシーンで流れるのが普通ですが、この作品ではとあるルートで「何でもない幸せな日常」のシーンで流れたのが印象的でした。
こういうのってアニメとかでたまに見かける演出ですが、ギャルゲーでは(多分)見たことがなかったので新鮮で良かったです。
ムービー
プロローグの後にOPムービーが流れます。
ムービー制作はプリズムビジョン。
RBで新規に作られたムービーで、作中のイベント絵を使った比較的オーソドックスな作りです。
ギャラリーモードでは無印のOPムービーも見ることができます。
一部アニメーションしているので、正直けこっちのほうが完成度は高いですね。
攻略
物語中の選択肢と、毎日2回の場所移動によりストーリーが分岐します。
選択肢の内容はわかりやすいですし、場所移動はヒロインのアイコンが表示されるので、特定のキャラを追っていけば分岐自体は簡単です。
推奨攻略順は特に気にしなくても大丈夫ですが、しいて言うなら、
鴎→紬→蒼→静久→のみき→識→しろは→うみ、という感じで。
必ずしもこの順番でなくてもいいですが、紬は静久より前に、蒼はのみきや静久より前に、しろははメインキャラの中では後に回したほうが良いと思います。
鴎ルートは1~6周目にクリアすると一部のCGが埋まらないので、効率よく回収したいなら7周目にしたほうが良いかもしれません。
以下ほんのちょっとだけ攻略に関するネタバレ。自力で攻略したい人は以下の数行を読み飛ばしてください。
うみルートのみ分岐がちょっと特殊。
うみルートに分岐するには開始4周以内(もしくはグランドエンディングを見た後)にどのヒロインルートにも入らないと8月8日にうみルートに入る選択肢が出現します。これわかりにくいので初見では無理かと…。
序盤の場所移動マップに出てくるうみのアイコンはミニゲームモードへの入り口なので、個別ルートとは関係ありません。
4周以内(つまり4回個別エンディングを見るまで)にうみルートをクリアしないと、最終ルートをクリアするまでうみルートに分岐できなくなる(BADエンド直行)ので注意してください。
そもそもうみは立ち位置がやや特殊なため、メインのお話が終わった後で補完的な意味でプレイするのがいいかと。
総プレイ時間はシナリオだけゆっくり読んで50~60時間。
かなりのボリュームですが、各個別ルートはゆっくりやってもだいたい5~6時間で終わると思うので、コンパクトにまとまっていると思います。
またこのゲームは選択肢やミニゲームの結果次第で”称号”を得ることができるます。
言ってみればトロフィーみたいなものですが、全ての称号を集めようとすると相当な手間になりますね。
感想

非常に雰囲気の良い世界観で、物語前半は友達と遊んだり、島の中を探検したり、街のお祭りに参加したりと、「島で過ごす夏休み」の空気を満喫できる作品です。
他のギャルゲーだとこういった日常シーンはダレてしまうことも多いんですが、この作品は登場人物のキャラクター性やシナリオのテンポの良さも相まって飽きずに楽しむことができました。
むしろずっとこの世界にひたっていたくなるほど居心地がいいぶん、物語後半の「夏休みの終わり」により哀愁が漂います。
完成度の高い個別ルート
各個別ルート後半もKeyらしく非常に感動的で、ルートによっては涙を禁じ得ない展開も。
悲しい別れが待っている物語もありますが、最後は笑顔で終わることが多いのでそれほど鬱にはなりません。
特に良かったのは識ルート。RBで追加されたシナリオとは思えないほど完成度が高く、島の歴史にも深くかかわったSFチックな泣ける物語です。
そして家族をテーマにした終盤ルートは正に泣きゲーブランドKeyの真骨頂といった感じ。若い人よりも30代以上の人のほうが刺さるのではないでしょうか。
過去のKey作品同様、細かな設定は意図的にぼかされている感じなので、プレイ後は「結局あれは何だったんだ?」みたいな疑問もわくと思います。気になる人は考察サイト等を巡りましょう。
あと無印「Summer Pockets」の公式サイトにキャラ別のショートストーリーが掲載されているので、プレイ後に読んでおくのもいいかも。色んな謎や設定が補完されています。
Keyらしいシナリオ
ただ難点というほどでもないですが、過去のKey作品と比べるとややシナリオのインパクトが弱いかも。
この作品もこれまでのKey作品と同じように、いわゆるTRUEルート的なものがあるのですが、『AIR』のSummer編以降や『CLANNAD』のAfterStoryと比べるとボリュームも少なめ。
内容的にも『AIR』や『CLANNAD』と良くも悪くも少し被ってるところがあるので、過去作プレイ済みの人からするとちょっと新鮮味に欠けるかもしれません。
もちろん面白くないわけでは決してないので安心してプレイしてもらって大丈夫。
特に後半は「え?これどうなるの?」とかなり不安になりましたが、ラストは「良かった…本当に良かった」と思えるほど優しいハッピーエンド。
00年代のKey作品だとヒロインが悲しい結末を迎えることが多かったのですが、今作では感動しつつも読後感の非常に良い物語になっています。
そういう意味では過去作を知らない新規さんに対して、「これがKeyのゲームなんだよ」と安心して薦められる作品といえるかと。
♪来年もきっと遊ぼうね
他ブランドの泣きゲーと比べてもそれほど鬱にはならない、爽やかで前向きな涙を流せる作風です。
子どもの頃、親戚の家やサマーキャンプ等に行ったりしたときに、”年に1度しか会わない友達”がいた人にはより刺さるのではないでしょうか。
毎年夏になると再びプレイしたくなるような、そんな作品でした。
エンディングに流れる「Lasting Moment」の歌詞がまさに作品の雰囲気を象徴しているんですよねぇ。
駆け抜けた毎日 追いつけない夏が来て
「Lasting Moment」より
夏が終わって 手を振って別れる
「来年もきっと遊ぼうね」叫ぶ一瞬に
笑顔に涙 浮かべていた