2020年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『放課後シンデレラ2』(HOOKSOFT 2022年)

エロゲーのジャンルはおおざっぱに、「ストーリー重視のシナリオゲー」「ヒロインとのラブコメやイチャラブを重視するキャラゲー」「実用性を重視する抜きゲー」の3つに分かれますが、今回紹介するのはゴリゴリのキャラゲー『放課後シンデレラ2』。2022年萌えゲーアワード純愛系作品賞受賞。

制作は甘々なイチャラブゲーをメインに作っていることで人気のHOOKSOFT。
2020年発売の『放課後シンデレラ』の続編になりますが、ストーリー上のつながりはないので『2』からプレイしても問題ありません。

この作品はとある普通の学校に転入してきた主人公がヒロインと仲を育み、やがて恋人同士になってイチャイチャしていく王道純愛イチャラブゲー。
特に放課後の「下校」にスポットを当てていて、「気になる女の子と一緒に帰る」という学生時代しか味わえないドキドキ感を体験することができます。

奇跡も魔法も無く、ロボットや猫耳メイドも出てこない、普通の高○生が経験する普通の恋愛を描いています。
何でもない普通の恋愛をして、等身大のヒロインとイチャイチャしたい、という人におすすめの作品です。

  • ヒロインとの下校から始まる恋愛物語
  • どこにでもありそうな等身大の恋愛
  • 良くも悪くも平坦なシナリオ
ブランドHOOKSOFT
ジャンル下校がロマンの純愛学園ADV
初回発売日2022.9.30
DL版価格9,520円~
シナリオ此ノ花しな
浅黄アキ モーリー
原画RINKS
おすすめ度80
シナリオ傾向

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
放課後シンデレラ28 10 112022.9.30
放課後シンデレラ1+2パック8 10 112022.9.30
放課後シンデレラ2PS4 Switch2023.6.29
放課後シンデレラ2 ミニファンディスク
~君と踊る初めてのハッピーハロウィン~
10 112023.6.30

単品パッケージの初回版はオーソドックスな紙箱に特典として主題歌CDとトレカが付いたもの。通常版の類は出ていません。
『放課後シンデレラ1+2パック』は文字通り前作の無印『放課後シンデレラ』とセットになったもの。これにも主題歌CDとトレカが付属します。

CS版はHシーンをカットしたもの。生産限定版には主題歌CDに加えB2タペストリーが付属。
Switch版はPC版と同じく『1+2セット』も出ています。

『ミニファンディスク』は本編のアフターストーリーを収録したもの。限定版にはアクリルコースターとポスターが付属。

今から買うなら初回版の中古がいちばんお手頃ですね。流通量も潤沢なので簡単に手に入ると思います。中古価格は『2』より前作の『無印』のほうが高め。

ダウンロード版には通常版と豪華版があり、豪華版には主題歌データとヒロインによるボイスアクセサリが付属。数百円しか違わないので買うなら豪華版にしましょう。定価は少々割高ですが、定期的に割引セール(30%OFF)の対象になっています。

システム

基本的には通常のADVスタイル。画面サイズは1280×720。
エンドロールをムービー化した「演出強化パッチv1.01」がメーカーから出ています。修正ファイルも兼ねているのでパッケ版の人は当てておきましょう。

システム概要

システム的にはコンフィグも細かく設定できますし、プレイするうえで大きな不満はありません。しいて言うなら「次の選択肢に進む」機能が欲しかったところでしょうか。既読スキップ結構使うので。

あと何故かプレイ中はコンフィグ画面を経由しないとセーブ・ロード画面を開くことができません。ただ一度セーブ画面を開いた後はその状態が記憶されるので、次からは右クリックでコンフィグ画面を開けば即セーブ画面になります。

この作品、というかHOOKSOFTはマウスカーソルの挙動が非常に良く出来ています。
設定により自動消去したり選択肢で自動追尾するのはもちろんのこと、マウスカーソル自体が画面の邪魔になりません。例えばクリックしているだけのときはカーソル消去が継続していたり、選択肢を選んだ後はカーソルが「元あった位置」に一瞬で戻ったりします。これすごく使いやすいので他のメーカーさんもマネしてほしい。

演出面

演出面ではすべての立ち絵に瞬きをする「目パチ」が搭載。残念ながら「口パク」はありません。
また通常のテキストは画面下に表示されますが、学校内で「ガヤガヤしてる」ときなどはモブの台詞が画面の左右に吹き出しのような形で複数同時に表示されます。こういう演出はADVゲームならではですね。

今どきの作品では珍しくなくなりましたが、この作品でもヒロインとスマホのメッセアプリで会話したりします。ちゃんとテキスト履歴にも反映されますが、画面上のアプリのデザインがダサいというかシンプル過ぎるような気が…。スタンプもないですし、あんまり若者が使っているようなアプリには見えないかも。

下校パート

この作品の一番の特徴が「下校パート」。
これは毎日放課後になったらプレイヤーが任意に主人公の”下校コース”を選んでいくもので、10ヶ所以上ある下校スポットから4つ選んでヒロインを探していきます。

上手くヒロインと出会えたら、今度は一緒に帰りながら会話していく「ガーリートーキング」モードが開始。大げさな名前が付いていますが、これは単に会話内容をヒロインに合わせて選択していくもの。上手く会話内容がヒロインの好みに合うと「ピロリン♪」という効果音が鳴りますが、会話内容が変わるだけで特にストーリー上の変化はないみたいです。

ただこういうのって昔の恋愛アドベンチャーみたいな雰囲気でいいですね。

シナリオ

ディレクターは宅本うとさん。シナリオライターは此ノ花しなさん、浅黄アキさん、モーリーさんの3氏。此ノ花しなさんのみ前作からの継続です。

物語はそれまでバイト漬けてロクな青春を送ってこなかった主人公の公住新(くずみ あらた)が母親の転勤で引越し、転入した新しい学園で理想的な学生生活を送るために放課後の下校時に様々な場所に寄り道をしていくというもの。
まぁ要するに放課後にヒロインと交流して彼女を作っていく王道恋愛アドベンチャーです。

全体の構成は大まかに序盤のプロローグと、中盤の共通ルート、終盤の個別ルートの3つに分かれます。
共通ルートはまず学園内でのコメディチックな日常イベントがあり、その後は放課後の下校イベント、最後に主人公が部屋で独り言をつぶやく、というのが1日のサイクル。
特定のヒロインと下校をかさねていき好感度が一定値に達すると、下校時にそのヒロインとの”進展イベント”が自動発生します。

ヒロインとの好感度がMAXになると”告白イベント”が発生し、無事恋人関係へ。その後は個別ルートとしてヒロインイベントを8回ほど繰り返していきます。
セーブ時にはイベントの通し番号も表示されるので、「あとどのくらいで終了するのか」がわかりやすくていいですね。

ひとつ気になったことを言えばこの作品、テキスト中に「ら抜き言葉」が結構多いんですよ。「見れる」とか「食べれる」とか「寝れる」とか。
もちろん現実には「ら抜き言葉」は普通に使われますし意味も通じるんですが、物語中に使われると違和感があるんですよね。実際アニメや漫画だと台詞中でもほとんど使われないですし。

キャラ付けの一環としてわざと使ってるのかなとも思ったんですが、同じキャラでも使ったり使わなかったりするのでそういうわけでもなさそう。またルートによってはほとんど使われなかったりもするので、ライターさんの癖なのかもしれません。

グラフィック

原画は前作に引き続きRINKSさん。
イベント絵は全部で89枚、ヒロイン1人当たり16~17枚になります。SD絵の類はありません。
全体的に良い意味でオーソドックスで万人受けしそうなキャラデザインです。一人原画ですが表情の書き分けもしっかりしていて、それぞれ個性が出ています。
この種のキャラゲーだと胸の大きさが極端になってしまうこともありがちなんですが、この作品では大きすぎず小さすぎずのちょうどいいスタイル。

髪の毛の色は割とカラフルで、髪の外側と内側の色が違うインナーカラーのようになっています。まぁ多分これは染めているわけではなくゲーム的な演出なのでしょう。
例えばみくるの場合、外側は黒髪ですが内側は青紫っぽい色で塗られています。これによって髪の毛が立体的に見えるようになってるわけですね。

キャラクター

小瀬おぜ 葉月はづき
主人公の家の隣に住んでる大家さん。キャッチコピーは「小瀬葉月はお世話好き」。
優しくて包容力のある3年生で、他人のために行動するお人好し。

夏越なつごえ 千穂
主人公の同級生でクラスのマスコット。キャッチコピーは「夏越千穂は懐っこい」。
誰とでの仲良くなれる性格で、特にクラスメイトのヨルとアイとは大の仲良し。

車井くるまい みくる
口数の少ないクール美人のクラスメイト。キャッチコピーは「車井みくるはクール系?」。
常にマスクをつけている姿は発売当時の世相を反映してますね。

渡良瀬わたらせ 寧々
小生意気でウザがらみしてくる1年生。キャッチコピーは「渡良瀬寧々をわからせる」。
いわゆるメスガキとはちょっと違うかもしれませんが、デレるとカワイイ。

窓川 芹香せりか
主人公たちとは別の学校に通う2年生。キャッチコピーは「窓川芹香を惑わせる」。
蠱惑的な言動で主人公を振り回す、からかい上手の窓川さん。

公住くずみ あらた
本作主人公の2年生。父親は離婚済みの母子家庭で、母親の仕事の都合で引っ越してくる。
前の学校ではバイトばかりしていたが、新たな学校で青春を謳歌することを決意。

ヒロインは5人。同級生2人、先輩1人、後輩1人、他校の生徒1人とバランスのよさそうな配置です。
各ヒロインの名前はキャッチコピーをもじったものになりますが、不自然さはありません。

サブキャラは千穂の親友であるアイとヨル、主人公のクラスメイトになるイブキとピース、占い部部長の天ノ川ミルキィ。立ち絵のあるサブキャラはこの5人。
この他に主人公の母親や、一部のヒロインの両親も登場します。ほとんどのルートで親公認の付き合いになるのは、ほのぼのしてていいですね。

ボイス

鶴屋春人(葉月)冬峰小鈴(千穂)東上ゆう(みくる)東シヅ(寧々)
鹿瀬紫卯(芹香)葉月ひかり月森ねねみる
富永修平六条太助

主人公以外全キャラフルボイス。
経験豊富な方から新人さんっぽい方までいますが、演技のほうは特に問題はありません。
2020年以降にデビューした声優さんが結構いるのは時代を感じます。

エンドロールにはこの他にも10人弱の声優さんがクレジットされているので、立ち絵のないサブキャラも兼ね役にせず基本的に個別の声優さんが担当しているっぽいですね

個人的には寧々役の東シヅさんの演技が良かったです。鼻にかかったような特徴的な声質が小生意気な寧々というキャラにもピッタリ。デレたときの声はとろけそうになります。

BGM

音楽担当は”SONO MAKERS”(SHOT MUSIC)。
Musicモードで聴ける曲はボーカル曲を除くと25曲。やや少なめでしょうか。
テンポの良い日常曲が多い印象です。

個人的お気に入りは「Good morning」。タイトル通り爽やかな朝をイメージした曲で、小鳥がさえずるようなグロッケン(?)みたいな音が印象的。
ゆったりとした曲調の「time after time」は公園で恋人とまったりしたいときに聴きたい曲。

主題歌

タイトル作詞作・編曲備考
「ブルーカーペット」永原さくらA-dashYukaccoOP
「むすんで、ひらいて、はばたいて。」永原さくらA-dashS☆猫挿入歌
「Cinderella Street」永原さくらしっぽり虎太郎
McKurokurosuke
YukaccoED

OP曲「ブルーカーペット」は作風に合わせたポップで明るい曲。イントロとサビのメロディが同じで非常にノリがいいですね。

挿入歌「むすんで、ひらいて、はばたいて。」は非常にしっとりとしたバラード。なんというかキャラゲーにはもったいないくらい感動的でメッセージ性の強い曲です。これシナリオゲーで流れたら絶対泣くやつ。

ED曲「Cinderella Street」は爽やかな青春ソング。学生時代をなぞるような若々しい曲です。どことなくOP曲っぽいなぁと思ったら、これ前作『放課後シンデレラ』のOP曲なんですね。

ムービー

プロローグの後にOPムービーが流れます。ムービー制作はyo-yu(feat.works)さん。
キャラゲーらしくヒロインの紹介に重きを置いたムービーです。
キャラ紹介時にスマホで撮影したような縦長の映像になるのは今風の感じが出てていいですね。

全体的に立ち絵やイベント絵をLive2Dのようなもので動かして臨場感のある作りになっています。体や髪が上下に自然に動く下校時の演出は、本編に取り入れてもいいんじゃないか?と思うくらい。

攻略

下校パートでヒロインと一緒に帰ることで好感度が上がっていき、好感度が9に達すると告白イベントが発生して個別ルートに入る、という流れになります。

下校パートではヒロインがいそうな下校スポットを選択していくのですが、事前に天ノ川ミルキィの占いでヒントを聞くことができます。まぁヒントというかほとんど答えのようなものなので難しいことはありません。むしろあえてヒントを聞かずに探していくというのもドキドキ感があって楽しいかも。2週目以降はヒントなしでもボタンひとつで目当てのヒロインと下校することができます。

推奨攻略順は特にありません。お気に入りのヒロインから攻略してもらって大丈夫かと。
15回の下校イベントが終了しても個別ルートに入れなかったときはBADENDになります。
ただし15回全てで占いのヒントを聞いていると、とあるシークレットキャラのルートに入ることができます。

総プレイ時間はゆっくりやって25~30時間。
全ての個別ルートをクリアするとCGが全部埋まるはずです。

Hシーン

Hシーンは1ヒロインあたり3~4回。全部で20回。
だいたい1シーンあたり2枚くらいのCGが使われます。
行為自体はいたってオーソドックスなもの。ヒロインによって口でしたり胸でしたり足でしたりと個性を出している感じ。

行為中は設定により、ヒロインの服を半裸にするか全裸にするかを切り替えることができます。デフォルトでは全裸になっているのですが、テキストは半裸を前提に書かれていることが多いのであらかじめ切り替えておいたほうがいいかもしれません。
ちなみに芹香は黒タイツを履いてますが、行為の際は半裸設定でもほとんど脱いでしまいます。なんともったいない…。

フィニッシュ時には毎回「中に出す」か「外に出す」かの選択肢が表れますが、設定によりどちらかに固定することもできます。
他の作品だと中に出したときはフィニッシュと同時に中から飛び散る精液が描かれることが多いんですが、この作品では中に出してしばらくたった後に結合部からドロッとあふれ出る描き方になっています。なんかこういうの、膣中に浸み込んでいる感じがしていいですね(笑

ちなみに初回のHシーンでは破瓜表現があります。ただテキスト上では「一筋の血が流れた」みたいに書かれますが、CG上では割とがっつり出血するんですよね。この辺は好みが分かれるかも。

感想

私は普段シナリオゲーをメインにやっているので、こういったキャラゲー、特にイチャラブメインの作品はあんまり触手もとい食指が伸びませんでした。
でもこういうシンプルな恋愛ゲームも良いものですね。日頃疲れた心を癒してくれるようです。
欲を言えば手軽にイチャラブシーンを堪能するために日常イベントのシーン回想が欲しかったところでしょうか。まぁそんなに多くはないのでその都度セーブファイルを残しておけば代用はできますが。

等身大の恋愛物語

この作品は普通の学生が普通の女の子と恋愛する物語です。
特殊な設定や世界観のない、現実的で等身大の恋愛を楽しむことができます。
主人公とヒロインとの関係もいきなりモテモテになるわけではありません。むしろ最初はちょっとぎこちなかった下校時の会話が、回数を重ねていくうちに徐々に仲良くなっていく過程が良かったですね。
登場するヒロインも変な口癖や過剰な萌えキャラ設定がないので(多少ゲームっぽい味付けはありますが)、いい意味でプレーンな恋愛ゲームとして味わうことができます。

ヒロインとのデートコースもアウトレットモールや商店街、学校近くのレジャープール施設など、全て近場で済ましているのも特徴的。海に行ったり旅行に行ったりはしません。
そのぶん各ヒロインルートでの行動が被っていることも多いんですが、その辺はヒロインの個性で差別化している感じでしょうか。

良くも悪くもイチャラブキャラゲーに特化しているのでシナリオ自体は平坦なものです。驚天動地の展開も無ければ、涙が出るほど感動できるというわけでもありません。まぁこの種の作品にそういうのを求めている人も少ないでしょうけど。
その代わりヒロインとの仲を裂くようなイベントがないので、安心してイチャラブを楽しむことができます。

キャラ同士の関係性

ヒロインとの恋愛に特化しているせいか、基本的にヒロイン同士の絡みはありません。千穂のみ多少絡むかなという感じ。各ヒロインに集中させるために意図的にキャラを独立させてるのかもしれません。

共通ルートにおいてバカ騒ぎするときはサブキャラのヨルやアイ、男性キャラのイブキとピースが中心。クラスメイトである千穂とみくるもある程度混ざりますが、他の3人はほとんど出てきません。共通ルートと個別ルートは基本的に別物という感じですね。
各ヒロインルートでは付き合い始めたことがクラスメイトにバレるという展開が必ずあるんですが、他のクラスメイトは独り身ばかりなのでちょっとした優越感が味わえます(笑

個人的に一番良かったのは千穂ルート。
ヒロインの中ではいちばん”普通の女子校生っぽい”キャラ設定に親近感がわきました。
特に千穂の親友であるアイとヨルとの距離感が絶妙でいいんですよ。仲は良いけど束縛するほどではない、みたいな。
作中では3人の馴れ初めは語られないんですが、2人とも千穂のとある秘密を知ってるのと、アイのみクラスが違うのにいつも一緒なのが3人の絆をうかがわせます。
主人公と付き合い始めた千穂に対してもそれまでと変わることなく、当たり前のように一緒に帰っているのもいいですね。

願うのは普通の幸せ

各ヒロインルートも終盤では少ししんみりしますが、最後は全て前向きなラストなので読後感も非常に良かったです。
それぞれのヒロインが望むものが”普通の幸せ”なのもいいですね。誰もが願う当たり前の恋愛を堪能できる作品でした。

まぁ現実の世界だと我々のような人間はそういった”普通の幸せ”のハードルが高いんですけどね。私なんて中学以降は女の子と下校したことなんて一度もないですし。
来世ではこの作品の主人公のような学生生活を送ってみたいですねぇ…。

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