2020年代作品美少女ゲームレビュー

ギャルゲーレビュー『魔法少女ノ魔女裁判』(Acacia 2025年)

「女の子」と「魔法」を扱った作品は数多くあります。
「魔法」と「ミステリー」を扱った作品は多くはないけど意外とある。
では「女の子」と「魔法」と「ミステリー」は?

今回紹介するのはそんな「女の子」と「魔法」と「ミステリー」が絡まった全年齢向け作品『魔法少女ノ魔女裁判』。公式略称は「まのさば」。「まほさば」ではないのでハッシュタグつけるときなどは注意してください。

制作ブランドは「Acacia」。ここはシナリオ制作を請け負う会社「Re,AER」が新たに立ち上げたブランドで、今作が処女作になります。
制作にあたってはクオリティアップのためのクラウドファンディングを行ない、約5000人の共犯者、もとい支援者から6600万円の資金を集めたことでも話題になりました。

物語は生まれながらに魔法を使える13人の少女が強制的に牢屋敷に閉じ込められ、隔離生活を送るうちに殺人事件が発生。”魔女裁判”を開いて少女たちの中から犯人を特定し”魔女”として処刑していくという、かなり物騒な議論ミステリ&デスゲームものの作品です。

あまりグロいシーンこそありませんが、少女が殺人事件の被害者として殺されたり、または犯人として処刑されたりする以上かなり鬱になる展開が多いのも特徴的。キャラクターが魅力的に描かれているだけに、自分のお気に入りキャラが惨殺されるとマジで凹みます。
公式からしてこんな感じなので、もう確信犯ですね(笑

全体的な設定や物語の進め方、犯人を特定する魔女裁判パートなどは明らかにコンシューマの名作『ダンガンロンパ』がモチーフになっています。
もちろんただの焼き直しではなく、魔法の存在や女の子同士の人間関係などこの作品ならではの要素も豊富なので、新鮮な気持ちで楽しむことができるかと。

ただ作品の性質上、ネタバレが致命的になるので情報収集の際は注意してください。
SNS上だけでなく、Steamのレビューやコミュニティコンテンツでもしれっとネタバレしたり終盤のCGをアップしていたりしていることも。

公式側がネタバレ行為を禁止していないので仕方のないことではあるんですが、うっかりネタバレを喰らう危険性は他の作品より高いと思います。
こういう作品の場合、本人にネタバレの意識は無く投稿しているつもりでも、未プレイの人間からすればネタバレになってしまうことも往々にしてあるんですよね。例えば犯人だけでなく生き残るキャラの情報もネタバレになってしまいますし。

もう変に調べずに、「魔法議論ミステリ」や「魔女裁判」というワードが気になったら即プレイしたほうがいいかもしれません。
定価3000円台の作品ですが、ロープライスとは思えないほどのボリュームがあります。内容的にも気軽にプレイはできないかもしれませんが非常に満足感や達成感の高い作品です。

ちなみにですがnoteで『魔法少女ノ魔女裁判』を検索すると感想記事が山のように出てきます。普段美少女ゲームをやらなそうな方もプレイしているので、結構需要の掘り起こしになっているのかもしれませんね。

  • 閉鎖空間で次々と起こる殺人事件
  • 魔法の絡んだ議論ミステリ―
  • 13人の魅力的な少女たち
ブランドAcacia
ジャンル魔法議論ミステリーADV
初回発売日2025.7.18
DL版価格3,500円
シナリオ喜多南 滝口流
原画梅まろ
おすすめ度85
シナリオ傾向

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
魔法少女ノ魔女裁判10 Mac2025.7.18

現在のところ、販売されているのはSteamによるダウンロード版のみ。
発売直後から期間限定で20%OFFセールになっていたので、これからも定期的にセールになるかもしれません。
Steamストアページの表記ではOSがWindows10しか対応していないのですが、11でも問題なく動くと思います。それどころかMacにも対応しているのは珍しいですね。

Switch版も開発中で、2026年に販売予定だそうです。

システム

システムは主に物語を進めるADVパートと、事件を解明し犯人を追及する裁判パートに分かれます。画面サイズは1280×720。

ADVパートは通常の美少女ゲームとほぼ同じ。…なんですが必要最小限のごく基本的な機能しかないので、最近のノベルゲーム慣れているとやや不親切かも。
「バックログからのジャンプ」や「次の選択肢に進む」機能もなく、クイックセーブやオートセーブもありません。選択肢が頻出するゲームなだけに、この辺は用意しておいてほしかったです。

またスキップ機能が基本的に[Ctrl]キーしか対応していません(裁判パートのみスキップボタンが出現)。デフォルトの設定では既読のみのスキップになっていますが、普通のノベルゲームでは[Ctrl]キーは強制スキップになっていることがほとんどなので、最初は本当に未読で止まるのか不安になりますね(笑

そしてこの作品を象徴する裁判パート。
「審問開始」の合図とともにキャラの証言が画面に大きく表示され、特定の言葉に色がつきます。気になる言葉をクリックして反論したり証拠を提示したり、ときには偽証して犯人にカマをかけて追及したりする、というシステム。
正解の選択をするとキャラのカットインが入るのでわかりやすいです。仮に間違えても何度かやり直すことができるので、(簡単ではないですが)そんなに難しいということはありません。ただ時間制限があるので緊張感はありますね。ちなみに時間内に正解しないと主人公が処刑されてしまいますが、専用のCGもあるので一度は見ておきましょう。

プログラムは一般的なノベルゲームよりやや重め。
特に裁判パートでは非力なPCを使っていると演出がややカクつくかもしれません。というか自分がそうでした。CPUファンもフル稼働してましたし。
最近のPCなら特にゲーミングPCでなくても多分大丈夫だと思います。
Steamのストアページにはグラフィックの推奨環境がRTX2060となっていますが、さすがにそこまでの性能は必要ないんじゃないかと。

シナリオ

メインシナリオを担当するのはストーリーパートは喜多南さん、裁判パートが滝口流さん。両者とも「Re,AER」の所属で、他にもサブライターが数人います。

物語は主人公の少女・エマが見知らぬ牢屋のベッドで目覚めるとこから始まります。
鍵の開いた牢から出て、エマを含め13人の少女たちがリビングに集まり困惑する中、1羽の喋るフクロウ・ゴクチョーが現れ、「君たちは世界に害をなす魔女になると認定されたため囚人として隔離される」「いずれこの中で殺人事件が起こるのでその時は魔女裁判を行い犯人を処刑する」と告げられる。しばらくは戸惑いながらも何事もなく生活していた少女たちだが、ある日牢屋内で一人の少女の遺体が発見される――。

基本的には閉鎖空間でのミステリーものです。
集められた少女たちの中に必ず被害者と犯人がいるため、事件が起こるたびに人数が減っていくデスゲームものの物語でもありますね。
ミステリーとしては割と王道的で、証拠や証言を集めたのち、裁判で密室トリックやアリバイトリックを崩していきます。ただし少女たちは体を浮かせたり炎を出したりといった”魔法”がそれぞれ使えるので、多くの事件で魔法が絡む展開に。ただ魔法で事件そのものを解決するのではなく、「この犯行を行なえるのはこの魔法が使えるこの子しかいない」という感じで特定し、証拠を突きつけて犯人を追い込んでいきます。

物語は陰鬱な空気で進みますが、キャラ同士の会話は時折クスッとさせてくれるので一服の清涼剤になることも。とくに裁判パートで間違った指摘をすると固有のやり取りも用意されていて、時折漫才のようなツッコミもされるので笑ってしまいます。そのせいで「炙りビン」というプレイヤーしかわからないネットミームも誕生しました(笑

シナリオはバッドエンドに分岐する以外は基本的に一本道。
一応章別構成になっているみたいですが、章番号的なものは表示されません。
ただ物語は前半と後半にハッキリと分かれています。この後半に入るときのインパクトが絶大なので、思わず「うわ、こう来たか!」という驚きが味わえました。

ちなみにですが、前半と後半で地の文がちょっと違います。ぶっちゃけ私は気付かなかったんですが、後になってその意味が分かるようになっているんですよね。これ初見で気付く人凄い。

グラフィック

原画&キャラクターデザインはAcacia所属のイラストレーター梅まろさん。
少しボヤっとしたアナログ感のある画風ですね。どこか退廃的な雰囲気がただよう表情も印象的。
13人全員がゴシックテイストの個性的な衣装を着ているのも特徴的です。これは作劇的な都合もあるんでしょうが、作中でも毎日同じ服が支給されていることが明言されます。
各キャラにパーソナルカラーのようなものが設定されていて、初見でもキャラの判別がつきやすいようになっていますね。

多くのキャラに殺害シーンや処刑シーンがありますが、思ったほどグロくはありません。
屋敷内では魔法で血液が蝶になるという設定のため、残酷度が抑えられています。むしろ遺体に蝶が集まっているようにも見えるため、どこか神秘的な雰囲気も感じられますね。

ちなみに登場人物は女の子ですが、サービスシーン的なものはありません。服装の露出度も低めで、下着の描写もなし。一部のキャラに少し胸の谷間が見えるくらい。

キャラクター

桜羽 エマ
本編の主人公でボクっ子。元気はあるが寂しがり屋。
学校でいじめられていたことがトラウマになっている。

二階堂 ヒロ
エマの小学校時代からの幼馴染。エマに対しては並々ならぬ思いがある。
正義感が非常に強く、「正しくないもの」が許せない性格。

夏目 アンアン
ほとんど言葉を話さない引きこもりの少女。
筆談でコミュニケーションをとるが、性格はやや尊大。

城ケ崎 ノア
世界的に有名だが正体不明なストリートアーティスト。バンクシーみたいな感じでしょうか。
浮世離れした性格で、気分次第で所かまわず絵を描いてしまう。

蓮見 レイア
中性的な顔立ちで人気のある役者の少女。
セリフもどこか芝居がかっていて、常に自分が目立っていないと気が済まない。

佐伯 ミリア
スタイルが良くてギャル風の少女。巨乳。何故か一人称が「おじさん」。
他人に意見するのが苦手でおどおどしていることが多い。

宝生 マーゴ
人を騙すことにたけた詐欺師の少女。大人びて見えるが他の少女と同じ15歳。
常に悠然と振舞い、人を食ったような話し方をする。

黒部 ナノカ
神出鬼没で口数の少ない少女。牢屋敷について何か知っている節がある。
常に銃を背負い、誰ともつるまず自分の身は自分で守る。

紫藤 アリサ
マスクやフードで顔を隠す、不良の家出少女。
他人に対して攻撃的でなれ合いを嫌い、誰にも心を開かない。

橘 シェリー
ミステリーが好きな自称名探偵の少女。
明るく好奇心が旺盛だが空気は読めず、謎があればたとえ殺人事件でも喜んで調査する。

遠野 ハンナ
ですわ調のお嬢様言葉で話す少女。
見た目も着飾っているが実は貧乏な家の生まれで性根は優しい。

沢渡 ココ
配信活動をするストリーマーの少女。一人称は「あてぃし」。
推しのことが大好きな気分屋で、表裏の激しい性格。

氷上 メルル
他人の言動に敏感で臆病な少女。
自己肯定感が低く、何かあるとすぐに泣きだしてしまう。

ゴクチョー
牢屋敷を管理し、魔女裁判を開廷するフクロウ。
あくまで仕事として囚人である少女たちと接し、感情的な面は一切見せない。

メインキャラは13人の少女とゴクチョーのみ。
ゴクチョーはただの管理者なので、基本的に事件は13人の少女の中で完結します。

この作品の特徴の一つがこの個性的なキャラクターたち。
あまり萌え萌えっとした見た目ではないですが、優しい性格からきつい性格までバリエーションが広く、それぞれとてもキャラが立っているので「推し」のキャラが見つかりやすいかと。
まぁそういった推しキャラを容赦なく殺してしまうのがこの作品なんですけどね…。

個人的お気に入りは真っ黒な衣装に身を包んだ孤高の少女・ナノカ。
まぁぶっちゃけ『まどマギ』のほむらっぽいキャラなんですが、私こういう子大好きなんですよね。武器も銃ですし。

ボイス

三木谷奈々(エマ)東雲はる(ヒロ)葵あずさ(アンアン)井口裕香(ノア)
小清水亜美(レイア)高森奈津美(ミリア)樹冬華(マーゴ)大熊和奏(ナノカ)
石井未紗(アリサ)柊優花(シェリー)石崎紗彩(ハンナ)比良坂芽衣(ココ)
山下七海(メルル)名塚佳織
中尾隆聖(ゴクチョー)

主人公含め全キャラフルボイス。
キャスト陣を見ると、若手とベテランにハッキリ分かれている感じでしょうか。
このうち三木谷奈々さん、東雲はるさん、樹冬華さんはAcaciaの所属になります。

新人さんも上手い方ばかりなので演技のほうはほとんど問題ありません。ベテランさんの演技と比べても遜色ないのがすごいですね。
ただ録音環境が異なるのか、一部のキャラは若干音質に違和感があるかも。慣れれば気にならないレベルですが。

この種のミステリーだとベテランの役者が演じているキャラが犯人だったり黒幕だったりしますが、この作品ではそれは当てはまりません。新人だろうがベテランだろうがざっくり殺されたりします。

屋敷の管理者であるゴクチョー役は、フリーザ様でおなじみの中尾隆聖さん。『ダンガンロンパ』のモノクマ(cv大山のぶ代)や『ペルソナ4』のクマ(cv山口勝平)もそうですが、この種のマスコットキャラは大ベテランさんがキャスティングされることが多いですね。

BGM

作中BGMの作曲は近藤佑輔さん。
一部の曲にはボーカルがついたりして荘厳な雰囲気が漂います。なんとなくですが梶浦由記さんの曲に近い感じの作風でしょうか。歌詞が造語なので物語の邪魔にはなりません。
ずっと聴き続けて耳慣れたBGMに物語終盤でボーカルがつくとゾクッとしますね。

残念ながら音楽モードがないので正確な曲数や曲名がわからないのですが、サントラに収録されているのはボーカル曲を含め50曲。
一部の曲はYouTubeの公式チャンネルから聴くことができます。

個人的お気に入りは壮大さと神秘さ併せ持つ「Sar-gedy -流-」中盤以降はおとぎ話のような幻想的な展開になります。まるで歌劇のようなクラシカルな曲ですね。
人形劇のような「ボクとワタシの」は曲だけ聴くのとプレイ後に聴くのとで全く印象が異なるであろう曲。思わず「なんでだよおおお!!!」と叫びたくなります。
裁判後半の直接対決で流れる「Guil me N’o sinruits-火-」はRPGのボス戦のような燃える曲。物語後半ではボーカルが入る激熱の曲です。

主題歌

タイトル作詞・作曲・編曲備考
「LaVI-Bavellabion」SLAVE.V-V-R三木谷奈々OP
「MAdEaR MAdEaR」SLAVE.V-V-R東雲はるOP
「愛の残滓」佐高陵平藍月なくる挿入歌
「救いを求めるヒトの詩」近藤佑輔有世華望挿入歌
「bloom」daiki torii三木谷奈々ED

OPテーマ「LaVI-Bavellabion」を歌うのはエマ役の声優でもある三木谷奈々さん。歌詞は「フィクスマージ語」という架空言語で書かれているため意味はわかりません。日本語訳が欲しい人はサントラを買いましょう。
リズムは良いのに不安感をあおる曲調で、なんとなくALI PROJECTを彷彿とさせる雰囲気です。
制作はボカロPとして活躍するSLAVE.V-V-Rさん。フルバージョンはボカロ曲としてYouTubeで公開されています。

2ndOP曲「MAdEaR MAdEaR」は過酷な運命も感じさせる熱くて激しい曲調。
アニメのOPとしても使われそうなカッコイイ曲ですね。

ムービー

プロローグ的なエピソードの後、OPムービーが流れます。
キャラクターが紙細工の人形のように表示されるのがこの作品らしくて雰囲気出てますね。
映像の所々でノイズが走ったりキャラクターの顔がかき消されたりと、まるで誰かの記憶を覗き見ているかのような演出になっています。
キャラが殺された映像も一部出てくるので、ネタバレにこだわる人はプレイ前に見ないほうがいいかも。

攻略

基本的に一本道のシナリオですが、ADVパートに出てくる選択肢で即BADエンドに分岐します。BADエンドの数は30個。クラファンでたくさん資金が集まったのでBADエンドの数も増えたそうです(笑

ヒント機能というか、BADエンドに繋がる選択肢にはドクロマークがつく(設定で消すことも可能)のでわかりやすいと言えばわかりやすいです。が、BADエンドでも読ませるストーリーがありますし、BADエンドでしか見られないCGもあるので、フルコンプを目指すならその都度BADエンドを見ておいたほうがいいと思います。どうしても後回しにしたい場合は選択肢のセーブファイルを全て残しておきましょう。頭から再プレイして回収するのは物凄く大変なので。

裁判パートの難易度は簡単すぎず難しすぎないちょうどいいバランス。
反論ポイントや提示する証拠の種類が多いと迷いますが、慣れてくると「だいたいこの辺かな?」とある程度絞ることができます。
審問のパートでは何も選ばないとちょっとしたヒントも聞けるので、各審問の1回目はあえて反論せずに証言を全て聞いたほうが攻略しやすいと思います。ぶっちゃけ前半の反論ポイントは不正解であることが多いですし。

私は1回だけタイムオーバーになりましたが、残りは全て時間内に攻略することができました。ただタイムオーバーによるBADエンドにも専用のCGがあるので一度は見ておきましょう。

総プレイ時間はゆっくりやって30~35時間。
ロープライスながらちょっとしたフルプライス作品並のボリュームです。

感想

この作品はよく『ダンガンロンパ』とコンセプトが同じと言われますが、それだけでなく魔女がらみの設定はおそらく『魔法少女まどか☆マギカ』の影響を受けていますし、シナリオ後半の入りは某有名ラノベを彷彿とさせます。パクリとかそういう意味ではなく、過去の有名作の良いところを集めてオリジナリティのある作品に仕上げた、という感じでしょうか。
魔法を持つ少女を閉じ込めて殺人事件を起こさせて裁判の後に処刑する、という突飛な設定も過去の名作で慣れ親しんでいるからこそスムーズに受け入れやすくなっているのではないかと。

シナリオ構成の妙

物語は前半と後半にハッキリ分かれていますが、全体としては上手く起承転結の形になっています。前半の事件が連続するところが「起」、黒幕や魔女の秘密が明かされる「承」、驚きの演出と共に文字通りターニングポイントとなる物語後半の「転」、最後に物語を締める「結」。
いい意味で物語の動くポイントがわかりやすいんですよね。結構長い物語ですがダレずに読み進めることができました。これがもし事件が連続するだけなら途中で飽きてしまっていたかも。

登場人物は何かしらの魔法を持つという設定ですが、別に魔法バトルになったりするわけではありません。最初から最後まで一貫して魔女裁判にこだわっているのがこの作品らしくていいですね。
ラストもちゃんと魔女裁判で決着をつけます。王道的といえば王道的なのであまり意外性はないですが、きっちり話が終わるので凄惨な事件が続く割に読後感は非常に良かったです。

ミステリー要素の独自性

この作品は「閉鎖空間に閉じ込められた少女たちの起こす殺人事件」を扱っていますが、犯人だけでなく被害者も予想外の人物だったりします。これが『名探偵コナン』とかだと(蘭ねーちゃんにしろ少年探偵団にしろ)身内の人間が殺されたりすることはさすがにないですよね? でも『まのさば』の場合は誰であっても被害者になる可能性がある。そういう緊迫感があるので「次は誰が犠牲になるんだ?」とドキドキしながらプレイしてました。予想外の人物が殺されると、主人公と一緒に「なんでこの子がああああ!!」とショックで頭を抱えたりすることも。

この作品ならではの「魔女」の設定もいい味を引き出しています。
いくら何でも出会って間もない少女たちが殺し合うなんて少々無理があるんですが、魔女の設定を上手く使うことである程度説得力を持たせているんですよね。仲良くしていた少女が突然殺人を犯したり、ともすれば主人公ですら人を殺してしまうかもしれないという緊張感がヒリヒリと伝わってきます。

殺人事件自体も魔法と上手くからめているのが特徴的。
トリックのメインは不可能性で、誰がやったかはもちろん、どうやってやったのかも全く分からないので先が非常に気になる展開が多いんですよね。
先にトリックを解明してそれに使われた魔法を根拠に犯人を追い詰めていくケースが多いのですが、犯人を追及する裁判シーンは『古畑任三郎』のような面白さがあります。

キャラゲーとしてのまのさば

この作品は13人の各キャラクターが非常に個性的かつ魅力的に描かれています。
美少女ゲームによくあるヒロインの悩みやトラウマ克服のシーンを全員分詰め込んだ感じ。それぞれのキャラの内面をしっかり掘り下げているので、キャラに対する愛着も沸くんですよね。ErogameScape等で「この作品はキャラゲーだ」という感想をよく見るんですが、割といい得て妙だと思います。

しかも特定のキャラに偏ることなく、13人いるキャラがちゃんと平等に扱われているんですよね。殺されてしまうキャラもちゃんとスポットがあてられるので、物語構成の上手さを感じます。多分プレイした人は13人全員の顔と名前が一致するくらい正確に記憶に残るのではないでしょうか。

キャラが魅力的なぶん、そのキャラが死んでしまった時の喪失感も非常に強いです。
事件の被害者はもちろん、犯人として処刑されてしまうのは非常に胸が痛い。
前半の事件で某キャラが処刑されてしまうシーンはみんなのトラウマ。

女の子同士の関係性

登場人物は基本的に全員女の子ですが、イチャイチャするような百合展開になることはほぼありません。
ただ人によっては百合ゲーと認識している方もいるみたいです。確かにカップリング的なものはありますし広い意味では百合と言えるかもしれませんが、恋愛とまではいかないかも。

恋愛要素がない代わりに女の子同士の友情や確執を描いていきます。多少、というかかなりギスギスはしますが、殺人事件が起こるほど異常な空間である割にサバサバした人間関係なのはライターさんが(多分)男性っぽいからでしょうか。いい意味で「男性が描く女性関係」みたいな感じ。

アニメで言うと『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』(シリーズ構成:綾奈ゆにこ)よりも『ガールズバンドクライ』(シリーズ構成:花田十輝)に近いんじゃないかと。
この2つはどちらも女の子しか出てこないギスギスした展開の多いアニメですが、雰囲気がちょっと違うんですよね。人間関係の描き方が『MyGO』はドロドロした関係(喧嘩したら生理的に受け付けないレベルまでこじれる)なのに対し、『ガルクラ』はサバサバした関係(喧嘩しても最後は仲直り)みたいな。これ多分脚本家さんの性別も無関係ではないと思うんですよ。(もちろん『まのさば』とストーリーは全く違うんですが)


少女が少女を殺し、別の少女がそれを暴くというかなりインモラルな物語ではありますが、読後感は意外と悪くなく、ラストも王道的で非常にすっきりとする作品でした。
制作元のAcaciaでは早くも次回作が発表されているのでこれもめっちゃ楽しみです。
ただ個人的には今作のキャラで面白おかしい日常を描くような平和なキャラゲーも所望したいところ…。

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