アニメ

エロゲープレイヤーが見るべきアニメ『瑠璃の宝石』(スタジオバインド 2025年)

よくHANDSあたりでミネラルショーとかやってるじゃないですか。
水晶とかアメジストの原石が展示販売されてるやつ。私あれ結構好きなんですよね。
宝石として成形されていないんだけど、幾何学的な結晶が武骨な石に刺さってるのが逆に良い。
買ったことはないけど思わず見入ってしまう不思議な魅力を感じます。ああいう結晶ってあそこまで成長するのに何万年もかかるらしいですね。

今回取り上げるのは鉱物をテーマにしたアニメ『瑠璃の宝石』。
『ゆるキャン△』や『ヤマノススメ』のようなゆるふわガールズアニメでありながら、『Dr.STONE』や『はたらく細胞』のような勉強アニメでもある作品です。
私は今回何気なく見始めたんですが、個人的に2025年の夏アニメの中では一番の作品だと思ってます。

制作スタジオは『無職転生』などを手掛けたスタジオバインド。監督は『お兄ちゃんはおしまい!』でも監督を務めた藤井慎吾さん。
アニメとしても非常に完成度が高く、背景や動きの細かさはまるで劇場版かと思わせるほどのクオリティです。

物語は女子高生の主人公が綺麗な石を集めるために入った山で大学院で鉱物の研究をしている女性に会い、鉱物の調査や採集をしていく――というシンプルなもの。
原作は渋谷圭一郎さんによる同名漫画作品。この原作者の方は大学で鉱物学を専攻し、教師として働いた経験を持つ移植の経歴の持ち主。なので作中では鉱物や地学に関する結構専門的な解説がなされます。
この解説がすごくわかりやすいので、見ているだけで鉱物に対する興味が増していくんですよね。

そしてキャラクターを通して知らないことやわからないことを調べて、考えて、発見して、理解していく研究活動の楽しさが伝わってきます。
理系に限らず、研究者に憧れるすべての若い人に見てもらいたい作品です。
将来「このアニメを見て鉱物の研究者になった」という人もひょっとしたら出てくるかも。

  • 鉱物や地学に関する専門的な解説
  • 調査や研究の楽しさが伝わるストーリー
  • 微細で美しい背景描写
原作渋谷圭一郎
(ハルタコミックス)
監督藤井慎吾
シリーズ構成横手美智子
キャラクター
デザイン
藤井茉由
制作スタジオバインド
放映日時2025.7~
おすすめ度85
シナリオ傾向

シナリオ

綺麗な石が大好きな瑠璃

アニメのシリーズ構成は『げんしけん』や『侵略!イカ娘』『SHIROBAKO』『からかい上手の高木さん』など、数多くの名作アニメを手掛けたベテラン脚本家の横手美智子さん。

物語は高校1年生の谷川瑠璃が綺麗な石を採るために山に入ったところ、鉱物学を専攻する大学院生・荒砥凪に出会うところから始まります。
凪と一緒に山に入って鉱物を探したり、川で砂金などを採取したりしながら鉱物や地学を学んでいくストーリーです。
要所要所で鉱物や地学に関するやや専門的な解説がありますし、CM入り前後のアイキャッチには原作にもあった解説ページ「凪の小憩」が挿まれます。アイキャッチは数秒しか表示されないので一時停止しないと読めませんけど。

作中では主人公の瑠璃が頻繁に凪の研究室を訪れるようになります。個人的にこういうの凄く憧れるんですよね。
最近の大学の研究室は入館証がないと入れないところが多いと思いますが(休日は特に)、こういう若い人が気軽に入れる研究室があればもっと理系人気も高まるような気がします。というか私が行きたいです。いやけっしておっぱい見たいわけでは…。

グラフィック

大学院生のおっぱい荒砥凪

キャラクターデザインは若手アニメーターの藤井茉由さん。今作が初めてのキャラデザ・総作監みたいですね。
ややのっぺりとした原作のデザインがポップで明るい感じになっています。というか瑠璃かわいい。

凪や伊万里のスタイルは原作よりかなり胸とお尻が大きく描かれています。
演出的にも大きな胸を強調したアングルで描写されることが多く、男性諸氏の目をくぎ付けにしてしまいますね。しょうがないよ、男の子だもん。

逆に瑠璃は原作では結構胸がある描写がありますが、アニメでは控えめ。その代わりと言っては何ですが、ちらっと見える脇やおへその描写がちょっとエロい。
パッと見は小学生かせいぜい中学生くらいにしか見えないロリっぽいデザインですが、れっきとした高校生です。

原作ではパンツもろ出しのシーンがありますが、アニメではそういった直接的なサービスシーンはあまり描かれていません。胸は強調するけどパンツはダメという、謎のこだわりがある作品って好き(笑
最近はノイズがどうこうという話が盛り上がってますが、この作品では大正解かと。
というかこの手の変更は他作品でも普通に行われていますし、個人的にはそんなに騒ぐほどのものでもないと思います。

ただ最終回には原作にもあった温泉回があります。これを最終回に持ってきたのは、ここまで見続けてきた視聴者へのサービスかもですね。

そしてこのアニメは尋常じゃないくらい背景描写が美しい。
ただ単に細かいだけでなく、流れる水の描写や木漏れ日の動きなど、非常に自然で奇麗なんですよね。劇場版アニメでもここまでのクオリティってそうそうないのではないでしょうか。アニメスタッフの「自然」に対するリスペクトをすごく感じます。

キャラクター

採集活動をする(左から)瀬戸、伊万里、瑠璃。伊万里に対する2人の目つきの違いに注目。

谷川 瑠璃
本作主人公でキラキラした奇麗なものが好きな女子高生。
明るく元気な性格で行動力がある。年上相手にも物怖じしないが少し図々しい面も。

荒砥 凪
大学院で鉱物学を専攻する女性。爆乳。
落ち着きがあり優しい性格で、初対面の瑠璃に対し鉱物のレクチャーをする。

伊万里 曜子
凪の後輩で同じ研究室に所属する大学4年生。巨乳。
凪と比べてやや頼りない面もあるが、鉱物に関する知識は豊富。

瀬戸 硝子
瑠璃と同じクラスの委員長。貧乳。
きっちりした性格で時折瑠璃を嗜める。趣味で鉱物採集をしていて、将来の夢は研究者。

笠丸 葵
瑠璃のクラスメイトで幼馴染。巨乳のギャル。
いつも一緒に遊んでいた瑠璃が付き合いが悪くなったのを不思議がる。

主要キャラが全員女の子なのはこの種のアニメのお約束。男はいりません。

メインに登場するのは葵を除く4人ですが、素人の高校生である瑠璃と瀬戸、研究者である凪と伊万里という感じでバランスが取れてます。

しかも瑠璃は凪のことを、瀬戸は伊万里のことをまるで師匠のように尊敬しているのが特徴的。
伊万里は凪ほどの知識や経験はないのですが、瀬戸にとっては伊万里が最初に接した鉱物の専門家なので、まるで刷り込みのように信奉する様子がほほえましかったです。
最初に出会った先達を親のように尊敬してしまうのって実社会でも割とあるあるですよね。

ボイス

根本京里(瑠璃)瀬戸麻沙美(凪)
宮本侑芽(伊万里)林咲紀(瀬戸)山田美鈴(葵)

瑠璃役の根本さんは若手の方みたいですが、すごく瑠璃というキャラに合った元気な声と演技ですね。
瀬戸麻沙美さんは『青ブタ』や『盾の勇者』などでメインヒロインを数多く務める、もうベテランといってもいいくらいのキャリアの持ち主。大柄でがっしりした見た目の凪というキャラとはいい意味でギャップのある優しげな声です。

伊万里役の宮本さんはどっかで聞いたことある声と思ったら『水星の魔女』のニカ役の方なんですね。調べてみたらこの方も結構なベテランさんです。
瀬戸役の林さんは正真正銘の新人さん。これからの活躍が楽しみです。

主題歌

タイトル作詞作曲編曲備考
「光のすみか」安田レイ大濱健悟玉井健二 南田健吾安田レイOP
「サファイア」矢野水音宅見将典宅見将典Hana HopeED

OP曲「光のすみか」を歌うのは数々のドラマやアニメで主題歌を歌うシンガーソングライターの安田レイさん。ゆったりした曲調で地球の長い歴史の神秘さと壮大さを感じます。
歌詞も一見一般向けでありながらちゃんとアニメの内容にリンクしているうえに、言葉の一つ一つに重みを感じるんですよね。

 影の向こう 真実の色
 見つけ出すよ 光のすみかを
 ひとつでもかけていたら
 きっと出会えていなかったね

「光のすみか」より

様々な偶然と膨大な時をかけて生まれた石との出会いと、そんな石を探すことで出会った凪や瀬戸たちとの仲を「光のすみか」と表現する歌詞のエモさが素晴らしい。

ムービー

オープニング映像の演出はHeroさん。ゆったりした主題歌に合わせて瑠璃や凪たちが様々な場所で石を探すという、まるで異世界を冒険しているような雰囲気も感じます。さすが『無職転生』を制作したスタジオ。
もう冒頭の美しい川の描写からして「このアニメのクオリティは普通じゃない」と思わせるムービーです。

エンディング映像は画質やフレームレートをわざと落として、手書きのようなアナログ感を出す演出です。
水の中で膝を抱えて丸まっていた瑠璃が、凪たちに影響されて立ち上がってダンスのように回りだすというイメージ映像になっています。これってよく錯視映像なんかで見られる動きですが、これは右回りでいいんですよね?(笑
これはこれでOPとはまた違った神秘さを感じます。

感想

顕微鏡で鉱物を調べる凪と瑠璃

私は最初このアニメを知ったとき、よくある「女子高生に男の趣味をやらせるゆるふわ日常アニメ」だと思って気楽に見始めたんですよ。それこそ『ゆるキャン△』みたいな。
しかしいざ見てみると思いのほか(と言っては何ですが)クオリティが高く、鉱物の専門的な知識はもちろんのこと、調査や研究の楽しさもしっかり描かれていました。
こういうアニメがもっと増えれば将来研究職を目指す若い人も増えるかもしれませんね。

以下ちょっと最終回付近のネタバレに触れます。
このアニメはあまりネタバレとか関係ないと思いますが、まっさらの状態で見たいという方は以下の感想を読み飛ばしてください。

研究者としての成長

鉱物の素人だった瑠璃がだんだんと鉱物や地学の知識を吸収していく過程が良かったです。こういう子供のように知識に貪欲な子を見ているとなんだかほほえましい。
始めはそこまで鉱物に興味を持っていなかったのに、凪に上手く導かれることによって自分から「なぜ」を追及していきます。これこそ研究というか学問のあるべき姿ですよね。

前半は凪という教師役に手取り足取り教えてもらっていた瑠璃たちが、後半になると自分で調べたり考えたりするようになっていきます。作劇上、適当な用事を作って意図的に凪たちを外し、瑠璃や瀬戸に調査をさせるという上手い構成でした。こういう自分で興味のあるものを探して、自分で考え、調査していくのは自由研究感があっていいですね。

しかも第1話ではヒラヒラのスカートにサンダルで山に入っていた瑠璃が、回を重ねるごとに少しずつ装備を整えていく。作中ではあまり言及されませんが、こういうさりげない描写って好きです。
始めは鉱物のことを何も知らなかった瑠璃が、最終話付近では「これ磁鉄鉱?」といっぱしの鉱物マニアになっているのも成長を感じます。普通の女子高生は磁鉄鉱なんて知りません。
短い期間にどんどん知識が増え、成長している実感を視聴者に与えます。こうして少しずつ凪たち研究者に近づいていっているんですね。

強制させない夢

そんな瑠璃も一人の高校生として進路に迷います。
ただ楽しくて鉱物採集を続けていた瑠璃。そんな楽しい時間がずっと続くと思っていたのに、凪や伊万里は大学卒業後のことを真剣に語り、瀬戸はもうすでに進路を鉱物の研究者と決めている。
そんな3人に対して瑠璃が戸惑いや焦りを感じるのも仕方ないことかもしれません。高校1年で進路を決めている人のほうが少ないでしょうし。

最終話では白衣を着て楽しそうに駆け出す瀬戸を笑顔で迎え入れる凪たちのイメージ映像が流れます。そしてそんな3人を後ろから眺める瑠璃の様子が彼女の不安を如実に表してますね。
すでに進路を決めている瀬戸に対する瑠璃の「おいていかれ感」。「先に凪たちと知り合ったのは自分なのに」という嫉妬のようなものも、ひょっとしたらあったかもしれません。

ちなみに作中で凪は瑠璃に対して一言も「夢を持て」とも「進路を考えろ」とも言っていないんですよね。ただ鉱物の知識や魅力を語っているだけ。別に瑠璃を研究者の道に誘っているわけでもない。
最近は教師が子供に対して「夢を持て」と強要することに対する反発感もよく目にします。ただ強要させずにすべて自分で決めさせるというのは理想的ではあるけど、むしろある意味厳しい導き方なのかもしれません。

楽しさの有限性

最終話では時間と楽しさが有限であることが語られます。
作中では鉱物の採集や調査の様子が楽し気に描かれますが、そんな楽しい時間もいつか必ず終わる。これは研究だけでなくアニメやゲームのような趣味の世界でも同じでしょう。

アニメはだいたい1クールで終わるし、漫画だっていつか最終回を迎える。エロゲだって始まりがあれば終わりがある。対戦ゲームやMMORPGは割と長く続くけど、それだって永久に続くわけじゃない。ソシャゲだって突然サ終になることがある。
楽しいものが終わってしまうのは寂しいけど、終わってしまうからこそ次の楽しいものを見つけることができる、というのはまさに至言ですね。

 なんでもみ~んな終わっちゃう。ずっと同じまま、楽しいが続けばいいのに。
 たぶん、違った。
 もし一つの楽しいが終わらなかったら、私は次の楽しいを必要としなかったと思う。
 隕石を探すワクワクも無かったし、そこから新しいことを知ることも無かった。
 前の楽しいがちゃんと終わってくれて、楽しいの数だけ自分を変えてこれたから、
 今こうやって――。

『瑠璃の宝石』第13話より

最終回ではラストに一瞬だけ瑠璃の成長した後ろ姿が描かれます。
おそらく一人で山を登って、凪と同じようなスレッジハンマーを背負い、今よりがっしりとした体つきで思い出の岩を眺める瑠璃。
研究者になったのかもしれないし、なってないのかもしれない。
いずれにせよ、たくさんの「楽しい」を見つけてこられたからこそ、ここまで成長したんだろうなと想像させる素晴らしいエンディングでした。

研究にしろ、アニメにしろゲームにしろ、たくさんの「楽しい」を見つけるからこそ人って成長していくんですね。

自分はもう将来の夢を描く歳ではなくなったけど、いろんな作品に触れていろんな「楽しい」を見つけていきたいものです。

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