美少女ゲーム傑作選

2000年代名作エロゲー10選

エロゲー界隈が一番盛り上がっていた時代といえば、おそらく00年代(特に序盤から中盤にかけて)と答える方も多いのではないでしょうか。
このころは正に百花繚乱という感じで次々と新作タイトルが発売され、毎月最終金曜日には新作を買うべくファンがショップに長蛇の列を作り、場合によっては深夜販売を行うことも珍しくないほど盛り上がってました。
なにせ郊外のゲームショップや家電量販店でも普通にエロゲ売ってた時代ですからね。

クリエイター側を見ても、のちにアニメやラノベ界隈等で活躍されるシナリオライターがたくさんデビューされたのもこの時期です。後にアニメ『まどマギ』を生み出すことになる虚淵玄さんや『冴えカノ』の丸戸史明さん、『よう実』の衣笠彰梧さんに『ゆゆゆ』のタカヒロさん、そして『Fate』シリーズの奈須きのこさんなど、有名なライターさんがエロゲのシナリオを書いていました。

今回はそんな00年代に発売された名作・大作エロゲーの数々を紹介したいと思います。

ただこの辺りの作品はさすがにちょっと古くて、最近のOSでは動作するかどうかちょっと微妙。(ただ全く動かないわけではないですし、一部はWindows10にも対応しています)
なので初心者さんにいきなり薦めるのは憚れるのですが、そこは00年代というエロゲー業界が一番輝いていた時期に発売された名作たち。ストーリーのクオリティは20年近くたった現在でも色褪せません。

今でもネット上ではたびたび名前が出てきますし、オタクの教養として押さえておきたい作品です。

『AIR』(Key 2000年)

ブランドジャンル発売日
Key恋愛アドベンチャー2000.9.8

今や泣きゲーブランドとして確固たる人気と地位を築くKeyが制作した伝説の作品『AIR』。
00年代のエロゲー業界はこの作品から始まったと言っても過言ではありません。
友達のいない少女・観鈴と即興の人形劇で日銭を稼ぐ主人公・往人を中心としたストーリーは、パッと見よくあるギャルゲーのように見えます。しかし中盤以降は非常に壮大な世界観と共に、命や親子の絆をテーマにした感動的な物語が展開するため号泣必須。私自身の経験から言っても、初めてゲームで号泣した作品です。

感動的なシナリオはもちろんのこと、それを彩る音楽のクオリティが非常に高いのも特徴的。特にOPテーマの『鳥の詩』と挿入歌の『青空』は聞くだけで涙が出てくるくらいの超名曲。
エロゲーの演出で、一番盛り上がるシーンに挿入歌を入れるようになったのも多分このころからですね。

残念ながらPC18禁版は現在のところダウンロード販売も終了していて、中古価格も値上がり気味。解像度も低く、ボイスもないのであまりお勧めしません。
なので今からプレイする場合はSwitch版かAndroid版を推奨。全年齢版なのでHシーンはないですが、元々PC版のHシーンもあってないようなものなので問題ないかと。

『君が望む永遠』(age 2001年)

ブランドジャンル発売日
age多重恋愛アドベンチャー2001.8.3

白陵大付属柊学園に通う主人公・鳴海孝之と、孝之の友人で活発なスポーツ少女・速瀬水月、水月の親友で内気な少女・涼宮遙を中心とする三角関係物語。
ストーリー後半は非常にドロドロとした愛憎劇が繰り広げられ、優柔不断な主人公の言動も相まってどのエンディングも手放しでは喜べない”鬱ゲー”として有名です。

物語は大まかに1章と2章の2つに分かれているのですが、発売前に1章を丸ごと体験版として配布。(ちなみに当時はネット環境が貧弱だったのでCDで配布してました)
その第1章のラストが衝撃の展開&演出だったため非常に話題になりました。今でもあれを超える演出はないと思っています。

またこの作品は、後にアニサマ常連となるアニソンシンガー・栗林みな実さんのデビュー作としても知られています。彼女の歌う主題歌『Rumbling hearts』はエロゲ史に残る名曲。

つい最近(2024年10月)、全年齢のリマスター版である『Enhanced Edition』がSteamで配信されたので今からプレイするならそちらで。値段もかなり安くなっています。

『家族計画』(D.O. 2001年)

ブランドジャンル発売日
D.O.ハートフルコメディーアドベンチャー2001.11.2

様々な事情を抱えた7人の男女が、疑似家族を形成してひとつ屋根の下で生活していくハートフルコメディー。
面白おかしい日常生活を楽しみつつ、シナリオ後半は家族の絆をテーマにした涙なしには見られない感動的なストーリーが展開します。
かなり長い物語ですが、うんざりするほど濃ゆいキャラ達とのくだらない日常シーンがあるからこそ、後半のシリアス展開が心に響くんですよね。プレイ後はオムライスを見ただけで泣けてくるほど。

今となってはかなり古い作品ですが、現在もダウンロード版は販売されていて、定期的に500円セールの対象となっているため手に入りやすくなっています。
実質的な続編である『家族計画〜そしてまた家族計画を〜』も一緒にプレイしてください。

『D.C. ~ダ・カーポ~』(CIRCUS 2002年)

ブランドジャンル発売日
CIRCUSこそばゆい学園恋愛AVG2002.6.28

一年中桜が咲き続ける初音島を舞台にしたちょっと不思議なファンタジーストーリー。
”手から和菓子を出す魔法”を使える主人公が可愛らしいヒロインたちと学園生活を繰り広げていく、萌えと感動が上手く融合した00年代らしい作風です。
なにより可愛らしい義妹やロリっ娘、猫耳メイドなど、良い意味で萌えゲーの定番設定をてんこ盛りにした作品が、その後20年以上続く人気シリーズになるとは当初誰が予想したでしょうか。
関連作品がたくさん出ていますが、初代からプレイするならキャラやシナリオを追加した『D.C.P.C. 〜ダ・カーポ〜 プラスコミュニケーション』からプレイすればOKです。

シナリオやキャラクターだけでなく、作品全体の雰囲気も非常に居心地が良いためいつまでもこの世界に浸っていたくなる魅力がある作品です。それゆえに多数の続編やファンディスクが制作され、”曲芸商法”なんて揶揄されるほど。でもファンなら当然全部買ってますよね?
今から全シリーズを通しでプレイするのはかなり時間がかかりますが、キャラやストーリーも多少繋がっているので1作ずつゆっくりプレイしてほしい作品です。

『CROSS†CHANNEL』(FlyingShine 2003年)

ブランドジャンル発売日
FlyingShine学園青春アドベンチャー2003.9.26

主人公たちの通う学園の放送部。バラバラだった部員たちが様々な対立を乗り越え一つにまとまっていき、放送アンテナを組み立ててラジオ放送を成功させる青春物語。…というのが公開されているあらすじなんですが、これは本当に序盤の序盤。物語本編は衝撃の展開が待っています。

まぁ正直「この後衝撃の展開が」という情報自体ある種のネタバレなので、純粋に物語を楽しめたのは発売当日に学園青春モノだと信じて購入した人だけかもしれませんけどね…。

この作品は「物語は主人公視点で語られる」「途中の選択肢でシナリオが分岐する」「主要キャラ以外のモブキャラは描かれない」といったゲーム媒体独特のシステムや暗黙の了解を逆手に取った、正にゲームでしか表現できない物語の先駆けでもあります。そういう意味でもその後の作品に強い影響を与えたと思われる歴史的名作です。

『Fate/stay night』(TYPE-MOON 2004年)

ブランドジャンル発売日
TYPE-MOON伝奇活劇ビジュアルノベル2004.1.30

7人の魔術師がそれぞれ過去の歴史や神話の英雄を”サーヴァント(使い魔)”として召喚し、”聖杯戦争”と呼ばれる殺し合いを繰り広げる伝奇バトル作品。正義の味方に憧れる主人公・衛宮士郎が偶然自宅の土蔵で剣の英霊”セイバー”の少女を召喚したところから物語は始まります。英霊たちとの手に汗握るバトルシーンは、今でも”燃えゲー”の代表格。

そしてシナリオライター奈須きのこ氏による独特の筆致と練り込められた世界観は正に唯一無二。英霊が放つ宝具(言うなれば必殺技)や、英霊を縛る令呪の設定は、実に男の子の心をくすぐります。
その後の厨二バトル作品の指針になったともいえる作品で、現代のオタクでこの作品を知らない人はさすがにいないでしょう。
スピンオフ小説や漫画などの関連作品も数多く作られ、特に人気スマホゲーム『Fate/Grand Order』の原典になった作品としても知られています。

PC18禁のパッケージ版は流通量が潤沢なので今でも中古ショップでよく見かけますが、時期によって値段が上下する生モノみたいな作品です。最近(2024年)フルボイスの全年齢向けリマスター版がSteamで配信し始めたので、今からプレイするならこちらで。

『車輪の国、向日葵の少女』(あかべぇそふとつぅ 2005年)

ブランドジャンル発売日
あかべぇそふとつぅヒューマンドラマAVG2005.11.25

罪を犯した者が特別な”義務”を科せられる国で、義務を負った3人の少女と、彼女らを指導監督する”特別高等人”候補生である主人公との物語。
シナリオライターは同人出身で、現在は漫画『無能なナナ』の原作者でも知られる”るーすぼーい”さん。冒頭からびっくりする展開を仕込んだり、テキストにちょっとした仕掛けを施したりする”るーすぼーい”らしさはこのころから健在。

全体としての物語はもちろんのこと、ヒロインそれぞれの個別ストーリーも非常によくできていて、人間とは・社会とはどうあるべきかを問われる内容。思わず熱くなったり涙してしまうような展開も多く、実に読ませる作品です。

キャラクターでは主人公の上司である法月将臣がプレイヤーに強烈な印象を与え、台詞の一つ一つに考えさせられる内容を含んでいます。

「よく覚えておけ……管理とは、成長させることだ。現状を維持することではない」

↑世の中の管理職全員が心にとどめておきたい言葉。

『マブラヴ オルタネイティヴ』(age 2006年)

ブランドジャンル発売日
ageあいとゆうきのおとぎばなし2006.2.24

『君が望む永遠』を制作したageが放つ長編SFスペクタクル。作品としては無印『マブラヴ』(2003年発売)と『マブラヴオルタネイティブ』の分割販売になります。
無印『マブラヴ』の前半(エクストラ編)は良くある王道学園アドベンチャー。でもそれは後の壮大な物語のプロローグでしかありません。
『マブラヴ』後半(アンリミテッド編)からは世界観が一変。地球を侵略する地球外生命体”BETA”と、戦術機と呼ばれる人型ロボットを駆使する人類が壮絶な戦いを繰り広げていきます。

そして延期に延期を繰り返して発売された完結編『マブラヴオルタネイティブ』では、ついに人類とBETAとの戦いが最終局面へ。物語としてはここからが本番です。
仲間のため、国のため、人類のために文字通り命をかけて戦う兵士たち。その雄姿に思わず目頭が熱くなります。また、トラウマ級にショッキングなシーンもあるので、心を強く持ってプレイしてください。ガチで仕事や勉強が手につかなくなります。

『オルタナティブ』は選択肢もほとんどない一本道のシナリオですが、普通にプレイして50時間くらいかかる大作です。大長編映画を観るような心積もりでじっくり楽しんでください。
全年齢版はSteamで配信されていますし、PC18禁のパッケージ版も中古ショップで比較的よく見かけるので入手性は問題ないかと思います。
この作品なくして00年代のエロゲは語れません。その後も数多くのスピンオフや関連作品が制作された名作中の名作です。

『BALDRSKY』(戯画 2009年)

ブランドジャンル発売日
戯画サイバーパンクアクションADV2009.3.27

物語はほとんどの人類が脳にチップを埋め込み、生活の多くを仮想空間に依存する近未来の世界が舞台。『攻殻機動隊』のようなサイバーパンクな世界観です。
記憶を失った傭兵の主人公・門倉甲が過去の記憶と現在を行ったり来たりしつつ、戦いながら記憶を取り戻していく重層的なストーリー。様々な組織が敵味方に入り乱れ、ルートによって全く異なる展開が待っています。

この作品はストーリーの合間にアクションパートが挿みこまれる、エロゲーでは非常に珍しいアクションゲームです。
仮想空間で人型ロボット”シュミクラム”を駆り、大量の敵ロボットやウイルスを倒していくゲームシステムは非常に爽快感があります。数十種類ある武装を好きに組み合わせて連続技(コンボ)を開発していくという戦術性とやり込み要素が楽しすぎて、気付いたらプレイ時間が100時間を軽く超えていた、なんてこともザラ。

パッケージは『Dive1』と『Dive2』の分割2部構成(+ファンディスクの『DiveX』)。ただ残念ながら開発元の戯画がエロゲー制作から撤退してしまったためダウンロード版は販売終了しています。CS版も販売されていないため、中古のパッケージ版しか選択肢がないのがネックでしょうか。
一応Steamでも配信されていますが、音声以外は日本語対応していません。なんで?

『装甲悪鬼村正』(Nitroplus 2009年)

ブランドジャンル発売日
ニトロプラススラッシュダークADV2009.10.30

戦後の日本のような架空の国・大和を舞台に、魂が宿る鎧・劔冑(つるぎ)をまとった武者たちが戦いを繰り広げる和風バトル作品。
練り込まれた世界観や劔冑の設定は非常に重厚で読みごたえがあります。特に「劔冑」に関してはロボットと鎧の中間のような設定が絶妙。

特に武者同士の手に汗握る熱い戦いや、複数の組織や人物の思惑が複雑に絡み合うストーリー展開、「どうしてこうなった…」と思わざるを得ない救いのない結末など、物語として非常に魅力的。
『これは英雄の物語ではない』というキャッチコピーが示す通り、単なる勧善懲悪ではないダークヒーローものともいえる物語です。

物語が非常に長大で読むのに時間がかかる作品ですが、内容が濃密なため一度読み出したら止まりません。のめり込んでいるうちにいつの間にか朝になっていた、ということが普通にあり得えます。
あと小野正利さんの歌う主題歌『MURAMASA』がメチャメチャ熱いので必聴です。


さすがに過去の名作を選ぶとなると、どれを入れてどれを外すのかかなり迷いました。
「あれが入ってないのはおかしい」という意見もあるでしょうが、今回はとりあえず個人的な思い入れも含めてこの10作品ということで。
ジャンル的には泣きゲーが5つ、萌えゲーが1つ、燃えゲーが4つといった感じでしょうか。君望って泣きゲーに入るのかな?

もちろん今回紹介した作品以外も有名作品はたくさんあります。
SFも取り入れたファンタジーSRPG『うたわれるもの』(Leaf 2002年)
やり込み度抜群の『RanceⅥ-ゼス崩壊-』(アリスソフト 2004年)や『戦国ランス』(2006年)といったランスシリーズ
ヒロイン全員個性が強すぎる『つよきす』(きゃんでぃそふと 2005年)
メインヒロインは月のお姫様『夜明け前より瑠璃色な』(オーガスト 2005年)
全編アニメーションの意欲作『SCHOOL DAYS』(オーバーフロー 2005年)
爽やか感動ストーリー『ショコラ』(戯画 2003年)『パルフェ』(2005年)『この青空に約束を―』(2006年)のいわゆる”まるねこ3部作”
学園ロックバンドストーリー『キラ☆キラ』(OVERDRIVE 2007年)
”魔王”との頭脳戦が熱い『G線上の魔王』(あかべぇそふとつぅ 2008年)
池袋っぽい街で繰り広げられる群像劇『俺たちに翼はない』(Navel 2009年)
などなど、挙げだしたらキリがありません。

中にはシステムが古くてプレイしにくかったり、FANZAのような大手配信サイトで18禁版がDL販売されていないものもありますが、この辺の作品をプレイしていればとりあえず古参ぶることはできるかと(笑

もちろんエロゲーオタクだからといって必ずしも古い作品をプレイすべきとは思いません。
ただ最新作をプレイしていても「あ、これはあの作品に影響されてるな」みたいなことを感じることが結構あるので、過去の名作をプレイしておいて損はないはず。

なにより20年近く語り継がれる作品なわけですから、その面白さは折り紙つき。
レビューサイトや感想サイトも山のようにありますし、多くの人に感動を共有してほしい作品たちなので、ぜひプレイしてみてください。

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