「遊べるエロゲー」を多数創り出している老舗ブランド<アリスソフト>制作による地域制圧型SLG『大悪司』。
この作品はこの後、同様のコンセプトで『大番長』『大帝国』とシリーズ化された人気作です。(ストーリーのつながりはありません)
ゲーム内容は戦闘してシマ(つまり領地)を広げてオオサカ統一を狙うというシンプルなSLG。システム的には後に発売された名作SLG『戦国ランス』のベースになっているので(もっと言えば1996年の『鬼畜王ランス』がその原型)、イメージとしては「信長の野望」的なものを想像していただければ良いかと思います。
発売が2001年とかなり古く、キャラクターボイスも主題歌もありませんが、ゲームとしての完成度は非常に高いので現在でも十分楽しめます。
何より特筆すべきはその自由度。大まかなストーリー展開はルートによってそれほど変わらないものの、男女合わせて総勢50人以上の登場キャラたちをどう扱うかはプレイヤー次第。戦闘で捕らえた女性キャラは懐柔して仲間にしたり、手篭めにして愛人にしたり、拷問して秘密を聞き出したり、調教して娼婦として働かせることもできます。
クリアした後のやりこみ要素も多く、1回のプレイ時間もそれほど長くない(2周目以降は数時間程度)ので、気が向いたときに気軽に遊べるエロゲとしてPC1台に1本はインストールしておきたいゲームです。
シナリオ傾向 |
あらすじ
「わかめ組」の次期組長として英才教育を受けてきた主人公・山本悪司。
公式サイトより
文武両道に秀でて、さらに女をこましていいなりにさせたり、暴力、恐喝、拷問…ありとあらゆる悪事を働くが、
弱肉強食の世界でそういう行為が当たり前と育てられたので罪悪感は一切無いのだ。
プレイヤーはそんな山本悪司として、同業者の他、進駐軍、怪しげな宗教団体や、
さらに賄賂を要求してくる政治家達を相手に自分のシマを増やすべく
金と部下と女を使い戦後の荒れた土地を奪い合い、殺って、犯って、やるまくる!!
最終目的はオオサカ統一だ!
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
大悪司 | 95 98 Me 2000 XP | 2001.11.30 | 並 |
大悪司(廉価版) | 98 Me 2000 XP | 2006.5.26 | 易 |
パッケージ版は紙製パッケージの通常版とトゥールケースサイズの廉価版がありますが、内容に違いはありません。
今となってはかなり古いソフトなので、これから買うならDL版を推奨。
DL版なら現行のOS(Win10)にも正式対応していますし、定価もかなり安くなっています。ちょくちょく500円セールの対象になったりもするので、見かけたら有無を言わさず買いましょう。
またFanzaの定額遊び放題の対象にもなっています。
システム
ゲームエンジンはアリスソフト謹製のSystem3.9。画面サイズが640×480と小さいので、フルスクリーン表示させるとさすがに画質が荒いです。すぐ慣れますけど。
古いゲームということもあって、最近のゲームと比べると操作性が不親切なところもあります。
まずテキストログを表示することが出来ません。これは地味にきつい。
そのほかにもシステムの設定がほとんど変えられなかったり(そもそもコンフィグ画面がありません)、右クリックに強制スキップが割り当てられてたり、セーブスロットが12個しかなかったり(明らかに少なすぎ)、オートモードやゲーム終了の際には画面上のメニューバーを表示させる必要がある(逆に画面の上をクリックしたいときはメニューバーが邪魔)等、ちょっと使い勝手が悪いですね。
ゲームの目的は舞台となる架空都市・オオサカの全ての地区を攻め取るターン制の地域制圧型SLG。ただターン数に制限があり、一定のターンが経過すると強制的にラスボス的な勢力との戦闘となるので、必ずしも自力で全ての地区を攻め落とさなくてもクリアすることは出来ます。(むしろ制限時間内に自力で全部攻め取るほうが難しい)
ゲームの進行はマップ上での地区イベント、売春宿の運営、仲間ユニットの処遇及び配置、戦闘、捕虜の処遇といったことを1つのターン内で順番にこなしていきます。
始めのうちは何をすればいいのかわかりにくいかもしれませんが、システム自体はシンプルなものなので、こういったSLGに慣れている人であれば適当にやっていくうちに自然と理解できると思います。わからなければゲーム画面を見ながらマニュアルを熟読しましょう。
マニュアル以外にも、ゲーム起動直後にチュートリアル的なモードを見ることができるので、アリスソフトにしては親切設計です。
ゲームバランスは簡単すぎず難しすぎないちょうど良い塩梅。いろいろ試行錯誤していけば、攻略サイトを見なくてもクリア自体はおそらく誰でも出来ると思います。
ただ戦闘で死んでしまったキャラは敵味方関係なく基本的に復活することがないので、ファイアーエムブレム的な緊張感がありますね。重要キャラを死なせずに進めるとなると、ある程度の慣れと計画性が必要です。
シナリオ
シナリオライターはアリスソフトの”とり”さんと上田庄吾さん。
物語は架空の国家”ニホン”が女性上位主義国家である”ウィミィ”に戦争で敗北、戦地から復員してきたヤクザの跡取り息子・山本悪司が”オオサカ”の地に戻ってきたところから始まります。
舞台となるオオサカの街は市議会から委託を受けたヤクザ組織等が地域管理組合として統治しているという設定。
悪司の実家だった”わかめ組”は組長の愛人であった市橋蘭に乗っ取られているため追い出され、路頭に迷っていたところをミドリガオカにある小さな地域管理組合”奉仕青年団”に拾われた後、幹部の女性たちを次々と”こます”ことにより青年団を乗っ取り、わかめ組をはじめとする様々な組織と対抗していく、という流れ。
シナリオは大まかに分けると最初にプレイすることになる通常ルートのほかに、イハビーラルートと殺ルート、一発ルートの4つ。どれも終盤まではほぼ共通で個別イベントとラストの展開だけ異なるという感じなので、実質的には一本道のシナリオです。
まぁこの作品は国取りのゲーム部分がメインなので、シナリオは添え物程度と思ってもらったほうが良いかもしれません。
グラフィック
原画家は超昂シリーズの”おにぎりくん”さん、ランスシリーズ(後期)の織音(ORION)さん、妻みぐいシリーズのちょも山(黒田晶見)さん、魔女の贖罪 やシェル・クレイルのMIN-NARAKENさんの4人。今から見るとアリスソフトが誇る精鋭イラストレーターが揃ってます。特に織音さんはこの作品を きっかけにしてランスシリーズに抜擢されたそうです。
バラエティ感を出すためか、キャラデザはあえて統一せず、原画家4人の個性が前面に出ています。特に瞳の描き方が特徴的なMIN-NARAKENさんの絵はわかりやすいですね。
イベント絵の枚数は非常に多いですが、差分はほとんどありません。名前付きのキャラはそれぞれ立ち絵もありますが、1種類のみで変化はなし。これはアリスソフトのSLGによくある仕様です。
キャラクター
山本悪司
本作主人公。腕っ節が強く、女を”こます”テクニックも一級品。
敵対する相手を殺そうが犯そうが罪悪感はなし。アリスソフトらしいダークな主人公。
岳画殺(たけが さつ)
血筋的には悪司の叔母で13歳の中学生。殺ルートのみ年齢不詳(笑
物言いは大人びていて悪司に対しても上から目線。戦闘でもかなり使える有力ユニット。
白民華
悪司が出征する前から惚れていた中華料理屋の看板娘。
割と簡単にプロポーズできるものの、結婚すると民華以外とはH出来なくなる上に売春宿も閉鎖されるので難易度が跳ね上がる。
加賀元子
悪司の幼馴染ですが、わかめ組の幹部のためゲーム開始時は敵対関係。捕えれば娼婦にすることもできる。
話の流れ的には最も結婚しやすいキャラですが、仲間にするのはちょっと難しい。というか知らなきゃ無理。
ドラクエ5で言うところのビアンカ的な立ち位置。立場も性格も全然違うけど。
乃木喜久子
アシヤにいる乃木大将の孫。世間知らずの箱入り娘。
序盤にアシヤの乃木邸に通えば簡単に結婚できます。ドラクエ5で言うところのフローラ。
この作品は特定のキャラと”結婚”をすることができるので、結婚できるキャラが事実上のヒロイン扱いになります。
結婚できるのは上記4人以外に、ウィミィ人のプリシラ・ヴァドルとアンリ・ペロリ。殺と結婚できるのは殺ルート限定、プリシラはイハビーラルート限定。アンリは民華と結婚してクリアすると2週目以降に登場させることができますが、結婚するための難易度は高いです。
ヒロイン以外にも膨大なキャラがいるのもこの作品の特徴。しかもどいつもこいつもキャラが立ってて個性的。
SLGパートにおいてたいていのキャラはきちんと育てれば使えるようになりますが、中でも戦闘で使いやすいキャラを挙げてみます。これらのキャラはできるだけ仲間にしましょう。
岳画殺 貴重な遠距離攻撃キャラ。レベルアップに必要な経験値が少ないのでモリモリ成長する。必中の固有スキル「死ぬがよい」は回避の高い敵に便利。気力が少ないのが玉に瑕。
長崎旗男 序盤で捕獲&懐柔できる高ステータスキャラ。何より固有スキル「手加減」がメチャクチャ便利。こいつがいるのといないのではキャラの捕獲難易度が雲泥の差なので必ず仲間にしましょう。
野山めぐる 遠距離攻撃キャラの割に気力が多く命中率も高い。この子がいれば雑魚キャラはノーダメージで一蹴できる。
山沢麻美 近距離攻撃キャラだが回避が比較的高く、ほとんどの属性に相性が良いので雑魚キャラ相手にはめったに攻撃を受けない。何よりスキル「ハイクラッシュ」(攻撃力3倍)が超強力。
山林吹雪 仲間になった直後は全く使えないが、戦闘で瀕死になるとパワーアップするというサイヤ人みたいなキャラ。3回パワーアップさせると元々の気力の高さも相まって最強キャラの一角に。
イルラカムイ 2週目以降で雇うことができる傭兵。デフォルトの体力が驚異の150。傭兵探索はとりあえずホッカイドウにしましょう。
ボイス
この作品にはキャラクターボイスは付きません。
BGM
パッケージ版の音楽はCD-DAで演奏されますが、DL版は当然データ化されてるのでエンドレスに曲がループします。
BGM作曲はDragonAttakさん。曲数は全部で20曲。ノリが良くてアリスソフトらしいロック調の曲が多いですね。
お気に入りは大悪司を象徴するような曲、『がんばれ悪司』。楽器ごとに短いフレーズの掛け合いを繰り返す楽しい楽曲です。ずっと聴いていても飽きません。
この他にも畳み掛けるようなイントロが特徴のわかめ組のテーマ『わかめ養殖場』、独特なノリの戦闘BGM『敵は、しばく』と『来たらしばく』、ネガティブなイベントのときに流れるBGMのため条件反射でビビッてしまう『しすてむぱにっく』あたりは印象に残る良曲。
主題歌
この作品には主題歌はありません。
ムービー
起動直後に毎回OPムービーが流れます。
一般的な美少女ゲームのムービーとは違い、作品の舞台や歴史を説明するプロローグムービーのような感じになっていますね。
攻略
初回プレイ時のシナリオは通常ルート固定。1回クリアすると2周目以降のスタート時に「変化をつけるかどうか」を訊いてくるので、これに応じて変化をつければ様々なイベントが追加(難易度もやや上昇)されます。
クリア時にある条件を満たすとイハビーラルートが開放、イハビーラルートをクリアすると殺ルートが開放、殺ルートクリアで様々な勢力でプレイできる”無茶苦茶モード”が開放されます。
また2周目以降にイハビーラ・殺ルートに行かなければ一発ルートに入ります。
SLG パートの難易度はそれほど高くありません。ただあまりのんびりしていると「遅刻ペンギン」が襲ってくるようになるので出来るだけ早めに侵攻するようにしま しょう。支配地域を増やさない限り遅刻ペンギンは出続けるので、場合によっては詰んでしまう可能性もあります。また戦闘で悪司か殺、夕子が死ぬとゲーム オーバーになります。
シナリオ中に出てくる選択肢はちょっと意地悪で、即ゲームオーバーになるのはまだマシなほう。場合によっては選択肢を選んだ数ターン後にゲームオーバーが確定してしまうものもあるので、初回プレイ時は念のため数ターンごとにセーブファイルを残しておきましょう。特に市長選挙の候補者を選ぶときは必ずセーブしておいてください。
またそれ以外にも、キャラが強制的に離脱してしまうような「知らなきゃ回避できない」ネガティブイベントも少なくありません。とあるキャラは「運の最大値が3以下」だと強制的に死んだりします。こんなの普通気付きません(笑 というか最初に回避条件発見した人凄い!
ただこういう理不尽な要素があるのもアリスソフトのゲームならでは。一般のゲームで同じ事やったらクソゲー認定されそうですが、アリスソフトだと「まぁ仕方ないか」と思えてしまうのは不思議なところ。
とはいえクリアするだけなら攻略サイト無しでもギリギリいける絶妙な難易度。このバランス調整はさすがアリスソフトといった感じです。緊張感を得るためにも初回プレイはなるべくリセットはせず、各種攻略サイトも見ずにプレイする事をお勧めします。
Hシーン
固有の立ち絵があるほとんどの女性キャラにHシーンがあります。陵辱シーンが多く、純粋な和姦と呼べるのは数えるほどしかありません。
Hシーン自体はかなり短めで、イベント絵の変化もありません。ぶっちゃけ質より量という感じです。
捕虜として捉えた後のHは悪司が強制的にヤってしまう感じですが、悪司のテクニックが凄すぎるので大抵のキャラは最初嫌がっていたとしても最終的にはほだされてしまいます。なんて羨ましい・・・。
また娼婦として売春宿へ送った後の調教・売春Hも多くのキャラに用意されています。戦闘で捕らえた女性はもちろんのこと、同じ組織の一員として一緒に戦った仲間や、密かに想いを寄せる幼馴染、たまたま悪司と関わってしまった何の罪もない女の子まで容赦なく娼婦へ落とす事ができます。こういうのはなかなかそそりますね(笑
これ以外にも情報を聞き出すための拷問シーンや、イベントでの悪司以外による強姦・輪姦シーンがあります。このあたりはちょっとえぐいので見るのは辛いかもしれません。拷問シーンは基本的に「死んでもかまわない」という扱いですし。
感想
『鬼畜王ランス』や『戦国ランス』と並ぶアリスソフトの地域制圧型SLGの代表作『大悪司』。
この作品の後シリーズ化もされて『大番長』と『大帝国』が作られましたが、独特の世界観と絶妙な難易度からシリーズの中でも最も古い作品ながら一番の名作として名高い作品です。
作品の魅力を引き立てているのが、主人公の山本悪司というキャラクター性。他のゲームではなかなかないアンチヒーローな主人公です。アリスソフトといえば<ランスシリーズ>のランスもアンチヒーローな主人公として有名ですが、ランスが常に自分の欲望のために女性を襲うだけで 基本的に傷つけることも無かったのに対し、悪司はあくまで組織のために女を利用します。街を歩いている女学生を拉致して好事家に売りつけたり、捕虜の女性に死んでも構わないほどの過酷な拷問まで行う冷酷さを持ちながら、どこか憎めない不思議な魅力も併せ持つ独特な主人公です。
ゲームシステムも単純なルールながら難しすぎず簡単すぎない絶妙なゲームバランス。行動制限や人数制限、ターン制限があるため、じっくり準備して攻める事ができず、限られたリソースを上手く使って効率的に攻略する事が求められます。
SLGとしては事実上侵攻順が固定されているため戦略的な自由度は低かったりするんですが、誰を仲間にして誰を娼婦にするかなどはプレイヤーに委ねられています。またクリア後のやりこみ要素も多数用意されているので、手を変え品を変え何度も遊べる仕様になっています。
今からプレイすると正直言って古いゲームならではの解像度の低さやUIの使いにくさはあるかもしれません。ただそれを補って余りある独特のノリの良さとキャラクター及び世界観の雰囲気は、美少女ゲーム界隈が一番盛り上がっていた00年代前半特有の自由さと面白さを味わえる古典的名作と言えるかと。
今の技術でリメイクしたら面白そうだな~とは思うものの、まぁ多分無理でしょうね・・・。