エウシュリーの看板RPG『戦女神』シリーズの3作目『戦女神ZERO』。
このシリーズは剣と魔法の世界を舞台にした、エロゲーでは数少ない純粋なロールプレイングゲームです。
「ZERO」の名の通りエピソード・ゼロの物語で、前作までの『戦女神I&II』の前日譚、・・・というより時系列的にはかなり昔の話になります。
戦女神の主人公・セリカがなぜ女神の肉体を持ち、”神殺し”と言われるようになったのかが描かれる、正にシリーズの起点となる物語です。
悩ましいのはシリーズを通してプレイする場合、シリーズの原点である『戦女神I』(のリメイク作品である『天秤のLaDea』)と『戦女神ZERO』の どちらからプレイするかということ。純粋にストーリーを楽しみたいなら『ZERO』からプレイすることをおすすめしますが、『天秤』からプレイしても問題ありません。
私は『天秤のLaDea』からプレイしたため、言わば大まかな結末は知った状態で『ZERO』をプレイすることになりました。そのためさすがに新鮮さは無かったかもしれませんが、逆に「あのキャラとの関係はこういう経緯があったのか」というパズルのピースを埋めるような楽しさを味わえました。
いくつもの作品をまたにかけた壮大なファンタジーストーリーの原点となる作品なので、この種のJRPGが好きな方は是非プレイしていただきたいところ。
純粋にストーリーを楽しみたければ、プレイ前に各種販売サイトやWikipediaの類は見ないほうが良いかもしれません。どうしてもキャラ紹介で軽くネタバレせざるを得ないんですよね。
- 複数の世代をまたぎ、シリーズの根幹をなす物語
- やりごたえのあるRPGパート
- 綿密に構築された世界観とキャラクター設定

ブランド | エウシュリー |
ジャンル | ファンタジーRPG |
初回発売日 | 2008.6.13 |
DL版価格 | 6,600円 |
シナリオ | 矢田影見 松江旺來 |
原画 | 鳩月つみき |
おすすめ度 | 85 |
シナリオ傾向 |
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あらすじ
神々の戦いにより二つの世界が融合して創生された「ディル=リフィーナ」と呼ばれる世界。
そこで生まれた剣士セリカ(主人公)は、嵐の神の使いとして、剣と魔法の腕を磨き、魔物や民族の争いによって苦しめられる人々の為に戦っていた。
そんなある日、セリカは邪悪な神器を浄化する方法を探すよう、神殿より依頼を受ける。
廃都で出会った謎の少女サティアや、姉のカヤと神殿の仲間たち。そしてセリカと出会った多くの人々はやがて、神器と神の力を奪い合う運命の戦いへと巻き込まれていく。
後の世に「神殺し」と呼ばれる伝説の神格者となったセリカは、神の肉体を奪った者として時に畏怖され、またあらゆる者に忌み嫌われ、生き続ける。
人や魔、神にまで、その肉体を狙われながら――。
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
戦女神ZERO | 2000 XP Vista | 2008.6.13 | 並 |
発売されているパッケージは1つだけ。他のエウシュリーのゲームと同じくコンパクトな箱です。
通販ならまだ新品でも購入できるところもありますが、さすがに今となってはやや割高。
中古価格はかなり安く(1000円程度)なっていますが、流通量がやや少ないので若干手に入り辛いかも。入手困難というわけではないですが、パッケージ版が欲しければ通販を利用したほうが良いかもですね。
また本編以外に、エウシュリー恒例のアイテムやオマケステージを収録したアドペンドディスクが付属する『戦女神ZEROコンプリートガイドブック』も発売されています。
というわけで今から買うなら中古のパッケージ版、なければダウンロード版を推奨。ダウンロード版はたま~に半額セールやまとめ買いセールの対象になることがあるので、どうせならセール時にシリーズを一気買いしましょう。
ただダウンロード版はアドペンドディスクを適用できないので、追加したい場合はパッケージ版を。
システム

基本的となるシステムはダンジョン探索型のRPGです。ドラクエのようにフィールドを歩き回るわけではなく、一枚絵のマップから行き先を選べばすぐにダンジョンを探索することが出来ます。
モンスターとの戦いはいわゆるランダムエンカウント方式。エンカウント率はやや高めで、場合によってはキャラをちょっと動かしただけでエンカウントしてしまうこともあります。
街の中は一枚絵のマップになっていて商店や教会等の施設をクリックするだけですぐ中に入ることが出来ます。またダンジョンを出た段階でHPやMPが全回復するので宿屋の類はありません。
テンポよく進むシステムだと思うのですが、ユーザーインターフェースがやや独特なので、操作に慣れるのに時間がかかるかもしれません。基本的な操作は右ク リックしたときに出てくるリングコマンドのようなものを使うんですが、最初装備や編成を変えたいときにどうやってやるのかよくわかりませんでした。微妙に直感的じゃないんですよね。一応チュートリアル的なものはあるんですが。
またこれは私だけかもしれませんが、インストール時からゲームの実行ファイルが消滅してしまうことが度々あって難儀しました。こういう場合はだいたいセキュリティソフトが悪さをしている時が多いので、セキュリティソフトとネット接続を切ってプレイしていたら症状は無くなりました。どうもウチの環境だと相性が悪かったみたいです。
シナリオ

企画はエウシュリーの代表であるつるぎゆきの(藤原行宏)さん、シナリオライターは矢田影見さんと松江旺來さん。
物語はエウシュリー作品の共通世界であるディル=リフィーナを舞台に、主人公のセリカがバリハルト神殿の依頼で、呪われた神器「ウツロノウツワ」の浄化方法を探す旅の途中、赤髪の少女・サティアと出逢うところから始まる正統派RPGといった感じ。
ストーリーは全10章の章別構成で、大まかに4つの世代(序章~第3章、第4章~第5章、第6章~第7章、第8章~第10章)に分かれています。それぞれの世代間で場合によっては数十年から百年以上時間が経過することもある壮大な物語です。
グラフィック

原画家はエウシュリーではおなじみ、鳩月つみきさん。イベント絵の枚数は143枚。
2008年の作品なので、今から見ると若干時代を感じるキャラデザですが、旧作の戦女神I&IIから比べるとずいぶんあか抜けた感じになっています。
戦闘シーンのグラフィックは、味方キャラはちびキャラ、敵キャラはTRPGのコマのようになっていて(ちゃんと台座もあります)、攻撃時は左右にイラストの書かれたカードが表示される形になっています。かなりTRPGを意識したデザインですね。
キャラクター

セリカ・シルフィル
バリハルト神殿の戦士で、戦女神シリーズの主人公。
物語開始時は女神の体をもたない普通の人間。
サティア・セイルーン
序盤でセリカが出会うことになる少女。
戦闘では貴重な回復役。
カヤ
セリカと共に暮らす姉でバリハルトの神官。服装がエロい。
魔神ハイシェラ
すべての世代に登場し、圧倒的な力で主人公に立ちふさがる魔神。
ハイシェラの秘密が明かされるのも、この作品における重要な要素でもあります。
この他にもたくさんのキャラクターが登場しますが、世代をまたいで登場するキャラははそんなに多くありません。
パーティーメンバーも頻繁に入れ替わるため、セリカ以外のキャラは育て甲斐が無いですね。というかぶっちゃけセリカ以外のキャラはあんまり役に立たないというか、むしろ足手まといになるキャラも多いですし・・・。
ボイス
かわしまりの | 芹園みや | 中野志乃 | 逢川奈々 | 広森なずな |
緒田マリ | 野神奈々 | 雪都さお梨 | 岩泉まい | 知七 |
民安ともえ | 奥田香織 | 新堂真弓 | 神崎ちひろ | 大波こなみ |
海原エレナ | 富樫ケイ | 青山ゆかり | 岩泉まい |
女性キャラフルボイス。他のエウシュリー作品でもよく見かける名前が多いですね。
大半の演技は問題ないんですが、一部の声優さんはちょっと拙い感じに聞こえることもありました。
特に魔人ハイシェラ役の知七さんは微妙に棒読みチックで最後まで慣れませんでした。ハイシェラ役は『天秤のLaDea』では別の方に変更になっていて、その方が上手いだけに『天秤』からプレイした私にとっては違和感マシマシ。
BGM
BGM制作はクワイア。ボーカル曲を除いた曲数は32曲。
耳に馴染むものが多く、プレイ後もはっきり覚えているほど印象的な曲ばかり。
個人的お気に入りは、曲名の通り敵に襲われたときに流れる「敵襲! 剣を持て!」。
これから攻め込むぞと言うときに流れる「己が剣は誰がために」。
ダンジョン探索のテーマで一番聞く回数が多いであろう「血路を開け」。
コーラスが印象的なラスボス戦BGM「慈悲深き虚ろなるもの」。ア~ア~ア~ア~~ア~~♪
主題歌
タイトル | 作詞・作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「約束の剣」 | ちづ | SNOW | ちづ | OP |
「足跡」 | ちづ | SNOW | ちづ | ED |
主題歌を歌うのは”ちづ”さん。2曲ともBGM鑑賞モードでフルバージョンを聴くことができます。
OP曲「約束の剣」は作品のイメージに合った壮大な曲。ぶっちゃけ歌詞の半分くらいは良く聞き取れません(笑
END曲「足跡」はまさにエンディングにふさわしいしっとりとした悲しげな曲。なんとなくバッドエンドっぽい曲ですね。
ムービー
起動直後のアバンタイトルで毎回ムービーが流れます。
内容はゲーム中のイベント絵を加工して表示するものですが、非常に動きを感じる勇ましい作りです。
ムービー自体は4:3の比率で作られていますが、映像部分は16:9で表示され、下の部分には歌詞も表示されます。正直OPテーマは歌詞が聞き取りにくいので有難かったです。
攻略

ストーリー自体は一本道で個別ルート的なものは無いため、誰がやってもエンディングまでたどり着くと思います。
ADVパートでは選択肢も何度か出てきますが、基本的にシーン回収用です。
総プレイ時間はゆっくりやって40~50時間。分岐が無い割りに結構なボリュームです。ダンジョン探索や戦闘シーンをサクサクこなせばもっと短くなるかもしれません。でもダンジョンにある宝箱を全て回収したくなるのはゲーマーのサガ。
RPGパートでは慣れないうちは結構手間取るかもしれません。相手と自分の武器の属性を上手く合わせないとダメージがほとんど通らなかったりします。また何気に雑魚キャラも結構強かったりするので、めんどくさがってCtrlキーで演出をスキップしてたりするといつの間にか全滅してしまったりすることも。1ターンで倒しきれない敵が4体以上出てきたら要注意。
ボス戦も強敵が多いですが、初戦で「こんなん絶対無理だよ・・・」と思ったボスでも属性や戦術を上手く練り直すと結構勝てることが多いので、いろいろ工夫するのも楽しいですね。
ただラスボスとその一歩手前のボスは反則級の強さ。さすがに心が折れそうになりました。ボスが回復や蘇生をやってきますし、なによりセリカ以外のキャラが弱すぎる・・・。
Hシーン

シーン回想に登録されるHシーンは41個。全員ではないですが、立ち絵のある女性キャラにはだいたいHシーンがあります。陵辱シーンも結構あるので苦手な方は注意してください。
行為自体は割とオーソドックスなもの。セリカは性魔術が使えるので意図的に相手に快感を与えることが出来ます。
ストーリーに絡んでくるHシーンも多いんですが、個人的には正直あんまりそそるシーンが無かったので、使いどころが難しかったです。立ち絵の状態でおっぱい丸出しのキャラもいるんですが、むしろそっちのほうがエロい・・・。
感想

この作品は戦女神シリーズの出発点となる物語であるだけでなく、他のエウシュリー作品の世界観のベースとなる重要な作品でもあります。(時系列的には2番目に古い物語ですが、一番古い「創刻のアテリアル」が三神戦争前の物語なので、ディル=リフィーナの物語としては現在のところ最も古いお話になります)
私はシリーズ最新作である『天秤のLaDEA』を先にプレイしていて、そのときは正直言って古神(いにしえがみ)と現神(うつつかみ)の違いもよくわかって いなかったんですが、『ZERO』をプレイしてようやく作品全体の世界観であるディル=リフィーナのあらましがわかったような気がします。
残念ながらエウシュリー作品にしてはやりこみ要素が少なく、2週目以降の楽しさがイマイチなんですが(一応レベルやアイテムの引継ぎは出来る)、ストーリーの壮大さはシリーズ随一。
ぶっちゃけセリカに関わった者たちは結構悲惨な最期を迎えることも多いのですが、そのたびにセリカにのしかかる宿命の重さを感じることが出来ます。
物語は実質4部構成で、足掛け百年以上にわたる物語は、戦女神I&IIで示された様々な設定を裏付けるのに必要十分。これだけの設定を処女作の「戦女神I」のときから思いついていたのだとしたら凄いですね。まぁ正直なところ大半は後付けなんでしょうけど・・・。
なんにしても戦女神シリーズを楽しむためにはこの作品は必須。過去作(戦女神I&II)プレイ済みの人にとっては「セリカたちにはこんな過去があったのか」 物語に深みを与えますし、未プレイの人にとっては「この先セリカたちはどうなるのか」という期待を持たせる作りになっているので、いわゆる”エピソードゼロ”の物語としては最高の作品かと思います。