今回紹介するのは2022年1月‐3月期に放送されたTVアニメ『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』。略称は「着せ恋」。
私最初はその少女マンガ然としたキャラデザに「女子向け作品かな?」と敬遠していたんですが、ネット界隈でも話題になっていたので中盤の一挙放送を観たらドハマリしてしまいました。これは男女関係なく楽しめる作品ですわ。
原作はヤングガンガン連載の漫画で作者は福田晋一さん。男っぽい名前ですが女性らしいです。そりゃそうだ、この作品は男には描けません。
元々原作はかなり評価が高かったみたいで、2020年の電子コミック大賞男性部門賞受賞、全国書店員が選んだおすすめコミックでは3位。Amazonのレビュー数では全巻が3000を超えているという人気っぷり。
物語は雛人形職人を目指す男子高校生・五条新菜に、新菜のクラスメイトで今どきのギャルでありながらオタクでもある喜多川海夢(まりん)がコスプレ衣装の制作を依頼するところから始まる青春ラブコメ。
掲載誌がヤングガンガンということで一応男性向けに描かれてはいますが、キャラクターは比較的現実的で過度にデフォルメされることはなく、主要な男性キャラは主人公のみですが、ヒロインも実質一人なのでハーレムを形成するというわけでもありません。
でもラブコメの王道とも言うべき「くっつきそうでくっつかない」2人の距離感が凄くいいんですよ。
アニメの制作はCloverWorks。監督はTVアニメ『A3!』や映画『BLACKFOX』を手がけた篠原啓輔さん。すいません私知らない方だったんですが、アニメのクオリティは問題ないどころかメッチャ高いと思います。今後の活躍も楽しみな監督さんですね。
ちなみに2024年には深夜枠で実写ドラマ化も果たしていますが、うん…、まぁ…、ねぇ…。漫画やアニメのドラマ化は難しいですね…。

原作 | 福田晋一 (ヤングガンガンコミックス) |
監督 | 篠原啓輔 |
シリーズ構成 | 冨田頼子 |
キャラクターデザイン | 石田一将 |
制作 | CloverWorks |
放映日時 | 2022.1.9~ |
おすすめ度 | 80 |
シナリオ傾向 |
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あらすじ
雛人形の顔を作る、「 頭師(かしらし)」を目指す男子高校生・五条新菜(わかな)。
真面目で雛人形作りに一途な反面、同世代の流行には疎く、中々クラスに馴染めずにいる。
そんな新菜にとって、いつもクラスの輪の中心にいる人気者・ 喜多川海夢(まりん) はまるで別世界の住人。
けれどある日、思わぬことをきっかけに、海夢と秘密を共有することになって……!?
決して交わるはずのなかった2人の世界が、動き出す――!
シナリオ

シリーズ構成は冨田頼子さん。本格的なシリーズ構成はこの作品が初めてみたいですが、結構昔から脚本の仕事はされているみたいなので経験は豊富。
この作品ではサブの脚本家さんは使わずに、各話の脚本も冨田さんが全話担当しています。
物語は家業が雛人形店で控えめな性格の高校1年生・五条新菜が、いつもクラスの中心にいる陽キャのギャル・喜多川海夢にふとしたきっかけでコスプレ衣装の制作を頼まれるところから始まります。
メインテーマのひとつである”コスプレ”の描写が結構凝っています。衣装の製作過程はもちろんのこと、ウイッグの加工やメイクの仕方、撮影の方法などかなり細かい部分にまで言及されていて、作者のコスプレに対するリスペクトを感じますね。
ヒロインの海夢は今どきのギャルでありながらアニメやゲームを愛するオタクで、それまでオタク趣味に興味がなかった主人公の新菜を振り回していく、という構図はまぁ言ってみればよくあるっちゃあるパターンです。ただ海夢はオープンな性格でオタク趣味を隠そうともしないですし、新菜も海夢に薦められた作品を純 粋に楽しんでいるので、陰湿な雰囲気はほとんどありません。
また海夢は今どきのJKということなので、女子高生が使う”ギャル語”が頻繁に出てきます。こういう台詞が自然に出てくるのも女性作者さんならではですね。
ギャル語を知らなくても雰囲気でなんとなく言ってることはわかると思います。ギャル語の知識が”チョベリバ”で止まっている私でもだいたい理解できたくらい(笑
グラフィック

キャラクターデザインは石田一将さん。
原作に忠実なキャラデザで違和感は全くありません。作画も安定しているので安心して見ていられます。
所々でサービスシーン的なものもありますが、あまり下品なものではなく、爽やかなエロを感じます。
『健康的な下乳を見ると健康になれる』(喜多川海夢)
これは名言過ぎる(笑
キャラクター

五条 新菜
雛人形職人を目指す高校1年生の主人公。
真面目過ぎて友達はいないが、手先は器用で家事全般もこなす。
喜多川 海夢
新菜のクラスメイトで今どきのギャル。クラスの中心人物で友達も多い。
読者モデルのバイトをするほど美人で活動的だが、他人を見下したりはせず誰に対しても対等に付き合う。
アニメやゲームを嗜むオタクだがコスプレ衣装の自作に失敗したため、ふとしたきっかけで新菜に衣装の制作を依頼する。
乾 紗寿叶
海夢が憧れるコスプレイヤー。高校2年生でコスネームは「ジュジュ」。
パッと見は小学生に見えるほどのロリ体型だが、性格は堂々としている。
乾 心寿
紗寿叶の妹で中学生。一眼レフカメラで姉のコスプレ写真を撮るカメラマン役。
色んな意味でデカくでとても中学生に見えない。ばいんばいん。
ヒロインの海夢はいわゆるギャルなんですが、彼女のキャラ付けが凄く自然です。
これが男性作家さんの書くラノベや漫画だと、どうしても記号化された”「あーし」キャラ”になっちゃいがちなんですよね。聞く所によると自分のことを「あーし」とか言うギャルは実在しないそうですよ?
ボイス
石毛翔弥(新菜) | 直田姫奈(海夢) | 種﨑敦美(紗寿叶) | 羊宮妃那(心寿) |
若手中心のキャスティングですね。正直、種﨑さん以外は初めて見る名前ですが、演技のほうは全く問題ありません。石毛さんは元々舞台等で活躍されていた役者さんだそうです。
しかしメインキャストの中では種﨑さんが一番声優歴が長いんですね。ラジオ等で先輩声優扱いされている種﨑さんを見ると、エロゲファンとしては感慨深い・・・。
BGM
BGMの作曲はアニメ「アラド戦記」や「魔法少女 俺」も担当した中塚武さん。この方はSMAPや広瀬香美さんなど多数の一般アーティストに楽曲提供したり、有名なCM音楽もたくさん(CMだけで200曲以上)手がけているベテラン作曲家さんです。
残念ながらサントラは発売されておらず、BDに特典として付属するのみのようですね。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
「燦々デイズ」 | 幹葉 | 寺西裕二 | If I | スピラ・スピカ | OP |
「恋ノ行方」 | NA.ZU.NA | NA.ZU.NA | NA.ZU.NA | あかせあかり | ED |
「君に伝えたいことがあるんだ」 | 幹葉 | 寺西裕二 | If I | スピラ・スピカ | 挿入歌 |
OPテーマ「燦々(さんさん)デイズ」はいかにも若者向け恋愛アニメといった感じの前向きで明るい曲。歌詞は男の子側の視点に立ったものですね。良い曲ですがおじさんには眩しすぎる・・・。
MVはアニメに沿ったドラマ仕立てになっていて、実写版着せ恋みたいになっています。五条君役の子がイケメンすぎる気がするけど(笑
あかせあかりさんの歌うEDテーマ「恋ノ行方」は正に恋する女の子の心情を歌ったもの。きゅん♪きゅん♪きゅ~ん♪
MVではあかせあかりさん本人が海夢のコスプレをして歌ってます。コスプレ衣装も本編そのまま。
それにしても、最近はアニメ放送と同時に主題歌のMVが公式チャンネルで公開されるのが当たり前になってますね。良い時代になったものだ・・・。
ムービー
OPムービーは海夢のかわいさを中心に構成された作り。海夢に振り回されつつ衣装作りにも真摯に取り組む五条くんにもスポットが当てられるという、本編のストーリーを凝縮したものになっています。
EDムービーはパステル調にデフォルメされたキュートなキャラデザが特徴的。曲のリズムに合わせて踊る海夢の動きに癒されます。きゅん♪きゅん♪きゅ~ん♪
感想

この作品はいわゆる「オタク女子に主人公が振り回される」というパターンで、こういう作品はこれまでにもいくつかあったりするんですが、この『着せ恋』では少女マンガ風に描くことによってこれまでの男性向けラノベや漫画とは違った面白さがあります。
もう私みたいなおっさんが見ても胸がきゅんきゅんするんですよね。様々なところで「ヒロインは五条くん」なんて言われていますが、女性視点で楽しめるのも女性作者さんならではの作品かと思います。
作品タイトルが『その着せ替え人形”は”恋をする』であることからもわかるようにように、最初に恋心を抱くのはヒロインである海夢なんですよね。
五条君のほうは漠然と好意は抱いているものの、控えめな性格が災いして海夢に対しどこか一線を引いている感じ。ラノベで良くある鈍感主人公というわけではな いのも好感が持てます。こういう間柄って他作品ではあんまり多くないと思うんですよね。”ヒロインから一方的に好意を持たれるモテモテ主人公”、というのとはまた違う感じですし。
五条君と海夢の仲を裂くようなシリアス展開もほとんどないので、安心して見ていられます。キャラゲー好きのエロゲファンにはぴったりの作品かと。
紗寿叶や心寿との絡みも結構ありますが、今のところ三角関係的な展開にもなりません。ちょっと心寿と五条君が2人っきりになっただけでヤキモチを妬く海夢がカワイすぎる!
とりあえず非モテの男とギャルがイチャイチャしてるとこを見てきゅんきゅんしたい人には必見の作品です。
私の拙い語彙力ではこの作品の良さを1パーミルも伝えられないと思うので、ちゃんとしたライターさんのレビューを参考にするといいよ!
■『その着せ替え人形は恋をする』の魅力。“オタクに優しいギャル”漫画ではなく一途なギャルの高純度ラブコメ!(マンガフル)
■冬アニメ『その着せかえ人形は恋をする』放送終了後レビュー・感想|令和の“ハイブリッド”ラブコメ、爆誕。(animateTimes)
それにしても本編中盤で紗寿叶の着替え中に五条君がばったり入ってしまうという、ラブコメお約束のラッキースケベシーンがあるんですが、これがまた秀逸すぎる!
五条君が全裸の紗寿叶の股間を見てしまった直後に子どもの頃の回想シーンが突然差し込まれ、製作途中の雛人形を見た子ども五条が祖父に一言、
「どうしてこのお雛様には毛が生えてないの?」
このシーン、アニメオリジナルの演出らしいんですが、これ考えたの誰だよ! 天才すぎるだろ!(笑