シナリオライター丸戸史明氏が自ら企画をLeafに持ち込み、全精力を挙げて作り上げた恋愛物語『WHITE ALBUM 2』。略称は「ホワルバ2」もしくは「WA2」。
ユーザーからの評価が非常に高く、通販サイトげっちゅ屋の2011年美少女ゲームランキングではシナリオ・BGM・キャラクター及び総合部門で第1位、名作の 多かった2011年2chベストエロゲ投票でもぶっちぎりの1位、批評サイトErogemeScapeの中央値ランキングでは現在のところランス10に次 ぐ歴代2位と、短くないエロゲ史においてもシナリオゲーの中では”最高傑作”に推す人も多い名作中の名作。
この作品の後、Leafスタッフは全年齢作品に移行、丸戸氏もラノベや一般アニメ作品に軸足を移されたようなので、彼らにとっては事実上最後の18禁作品ということになります。
「WHITE ALBUM 2」のタイトルが示すように、作品としては一応Leafの過去作である「WHITE ALBUM」の続編という形になっていますが、世界観が共通という程度でストーリー上のつながりは全く無いため、前作をプレイしている必要はありません。 せいぜい前作キャラの名前やボーカル曲が出てきたときにニヤッとする程度です。そういう意味では「痕~きずあと~」や「Routes」もプレイしておくとよりニヤッとできます。
内容は主人公が学生時代に結成した軽音楽同好会のメンバーである2人のヒロインを中心とした三角関係がメイン。どのルートでも必ず”捨てられるヒロイン”がいるため、ヒロインに感情移入すればするほどプレイヤーの心が深く抉られる鬱ゲーとして有名な作品です。人によっては「二度とやりたくない名作」とまで言われることも。
一般に美少女ゲームというと、仲間と共に力を合わせる青春物であったり、たくさんのキャラが入り乱れるドタバタラブコメだったり、主人公が特殊能力を持っているヒーロー物だったりするのが良くも悪くも王道テンプレなのですが、この作品は現実的な恋愛一辺倒。一昔前の月9ドラマを彷彿させる純粋な恋愛物語は、エロゲ業界広しと言えども実はそう多くはありません。
そんなある意味”飾り気の無い”作品で、今や名実共に歴代トップクラスの作品として評価されるわけですから、ライターさんの実力や作品としての完成度の高さが伺えます。
また作中では重要な場面で頻繁に雪が降り、ボーカル曲の歌詞にも”雪”や”冬”という単語が多く出てくるほど雪が重要な要素のひとつになっているので、是非冬にプレイしてもらいたいところ。むしろエロゲ界では冬と言えば「WHITE ALBUMの季節」と言われるほど象徴的な作品となっています。
- 一人の男を巡る三角関係を描いた非常に重い物語
- プレイヤーにつらい決断を迫る選択肢
- 物語を彩る多くの名曲

購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
『WHITE ALBUM2 -introductory chapter-』 | XP Vista 7 | 2010.3.26 | 易 |
『WHITE ALBUM2 -closing chapter-』 | XP Vista 7 | 2011.12.22 | 易 |
『WHITE ALBUM2 セット版』 | XP Vista 7 | 2011.12.22 | 易 |
『WHITE ALBUM2 幸せの向こう側』 | PS3 | 2012.12.20 | 易 |
『WHITE ALBUM2 幸せの向こう側』 | Vita | 2013.11.28 | 易 |
『WHITE ALBUM 2 EXTENDED EDITION』 | 7 8 10 | 2018.2.14 | 易 |
本作は当初 『-introductory chapter-』(以下IC)と『-closing chapter-』(以下CC)の分割販売となりました。それぞれの初回版には特典としてサイドストーリーを収めたハードカバー小説が付いています。予約して購入した人には予約特典としてドラマCD「祭りの日」が付属。非売品なのでもう新品では手に入れることはできませんが、中古ショップで見かけたら是非手に入れましょう。またそれとは別に、ソフマップの予約特典としてピロートークCDがありますが、これはLeafの公式サイトから無料でダウンロー ドできます。
『セット版』は文字通り2つを統合したパッケージ。DL販売サイト等でタイトルが単に「WHITE ALBUM2」となっているものも基本的にこのセット版です。単に同梱しただけではなく、システム的に統合されているので1つの作品としてプレイ可能。また初回特典だった小説もデジタルデータとして再収録されています。
『EXTENDED EDITION』はセット版のリパッケージ版。ゲーム本編以外に、過去に予約特典等で収録されたドラマCDのほとんどを同梱したもの。DVDケースサイズですが凄く分厚くなってます。
家庭用の『幸せの向こう側』はPC版からHシーンを省略していくつかの機能と追加エピソード、さらに各種特典として配布されたノベルやドラマCDを収録したもの。ちなみにVita版では”名場面”が近付いていることを教えてくれる機能があるそうなんですが、正直これはどうなんだろう(笑
今から買うなら迷わず『EXTENDED EDITION』を推奨。お値段も比較的お手頃ですし。
もっと安く済ませたいなら『セット版』の中古が投げ売り価格になっています。
私はFANZAのDL版を購入したんですが、これは『セット版』に準拠。ちゃんと特典小説のpdfデータも付いてきました(というかそれとは別にゲーム内にもスペシャルコンテンツとして同じ小説がデジタルノベルとして収録されています)。
機能やコンテンツの追加された家庭用版もそれはそれで魅力的ですが、この作品に関してはHシーンが非常に重要な意味を持つので、18歳未満でなければできるだけPC版をプレイしたほうが良いかと。
システム
システムはLeafオリジナルの物で、画面下のウインドウに文章が表示されるAVGタイプ。ウインドウのデザインが綺麗ですね。
最低限の機能は備えていますが、欲を言えば再開時のバックログは保存してほしかったところ。画面サイズは1280×720のワイド画面。
長いシナリオにもかかわらずスキップがちょっと遅いので2周目以降のプレイに時間がかかります。
あとこれは好みの問題かもしれませんが、バックログやシステム設定から抜けるときの「シュッ」という効果音が、なんだか黒板を紙やすりで削っているような音でちょっと耳障りに感じました。
物語を盛り上げる演出面に関しては非常に凝った作りになっています。
要所要所で舞い落ちる雪の表現や特殊な選択肢を用いた演出が印象的ですが、特に素晴らしいと思ったのが音に関する演出。
シーンに合わせた効果音が使われるのは当然ですが、例えば電車の中のシーンでは会話の進行具合によっていわゆる「ガタンゴトン」の音が段々ゆっくりになっていくことにより時間の経過を表現し、最終的には停車しドアの開く音によってテキストで表現しなくともプレイヤーに電車のシーンが終わることを伝える演出になっています。
またあるルートでは電話越しに楽器を演奏するシーンがあるのですが、視点が変わるたびに(クリックのタイミングに関わらず)流れている曲が生音から電話越しのこもった音へとスムーズに変化する演出はちょっと感動しました。
他にもバックグラウンドボイスで流れる何気ないラジオのDJや雑踏の声にもちゃんと意味があって後々の展開に絡んできたりと、細かいところまで綿密に作りこまれています。
シナリオ

シナリオライターはエロゲ界きっての純愛ライター・丸戸史明さん。安易な奇跡やファンタジー設定に頼らずにプレイヤーを感動させる手腕はこの作品でも十二分に生かされています。
丸戸さんといえば様々なパロディネタを散りばめた作風の明るいラブコメを書かれることが多いのですが、この作品ではシリアス一辺倒。話を進めるごとに胃の痛くなるような辛い選択を迫られ、プレイヤーの心を全力で折りにきます。
物語は峰城大付属3年生である主人公の北原春希が文化祭でバンド演奏をするために、学園のアイドル・小木曽雪菜とピアノの天才・冬馬かずさを軽音楽同好会に引き入れるところから始まる青春ラブストーリー。・・・なんですが、爽やかなのはせいぜい「-introductory chapter-」の中盤までで、それ以降はドロドロの三角関係へと発展。3年後を描いた「-closing chapter-」ではさらに別のヒロインも登場し、主人公とプレイヤーに過酷な展開が待っています。
足掛け5年に及ぶ長期間の物語なので恋人との付き合い方がリアルに変化するのも特徴です。
ほぼ毎日同じ学校で顔を合わせる付属時代。
その気になれば四六時中一緒にいることもできるが避けようと思えば全く会わなくなる大学時代。
就職したことにより会えるのがせいぜい週に1回となる社会人時代。
それぞれの環境に特徴的な関係性が描かれるのでプレイしていても間延びせず新鮮な気持ちでプレイすることができます。
作品の舞台は東京のようですが、細かい地名は架空のものがほとんど。それ以外に、台詞中にポッキーやチョコベビーのような商品名が入る場合には伏字とピー音が入ります。これ結構耳障りな上にちょっと醒めるので何とかならなかったもんですかね。
テキストに関して言えば、これは丸戸さんの癖というか意図的なテクニックだと思いますが、キャラの台詞と直後の地の文の流れをあえて繋げずにそれぞれ独立して話が進むことがよくあります。慣れないうちは「何の話してたっけ?」といちいちバックログで確認することも多いかもしれませんが、そういう場面では地の文のほうを重視して読めば相手の言葉が届いていない主人公の気持ちを上手く理解できるかと。
また、ICクリア後に読めるデジタルノベルはその名の通りノベルタイプなので、AVGタイプである本編とは全く文体が違います。当たり前といえば当たり前ですが、ライター志望の人は読み比べると勉強になるかもしれません。
グラフィック

キャラクターデザインはLeaf所属の「なかむらたけし」さん。全体的に体のラインが華奢で口が小さく、顎のちょっと尖った少女マンガっぽいデザインです。
全体としては非常に綺麗なCGなんですが、一部ちょっとバランスの悪い構図のCGもある気がします。当時はちょうどワイド画面への移行期だったので、制作側も手探りで描いてたのかもしれません。
また、ICとCCとでちょっと絵が変わっているところがあります。
というかぶっちゃけ胸の話で、ICでは雪菜の胸は幾分控えめに描かれているのですが、大学編であるCCではどういうわけか結構大きめになってしまっていて、かずさにいたっては元々大きかった胸がさらに大きくなってます。いくらなんでも成長しすぎです。いや大きくするならせめて依緒も大きくしてあげてくださいよ(笑
ただ絵の雰囲気は非常に物語に合っていて、髪の毛の色は全員黒、または茶色。服装も年齢相応に落ち着いていて肌の露出もほとんど無し(冬だから当たり前ですが)。良い意味でエロゲーらしからぬ地味な外見が逆に物語に彩を添えている気がします。
またイベント絵を上手く使った演出も見所のひとつ。
重要なシーンでもあえて顔ではなく足もとをアップにしたり、キャラを遠景にして表情がわからないようにしたりと、プレイヤーの想像力を描き立てる構図になっています。
それに加えてイベント絵の差分を上手く使った対比の演出が印象的。特にとあるルートの最後に使われる窓越しの雪菜を描いたイベント絵はエロゲ史に残る名演出かと思います。あのシーンで涙を流した人も多いはず。
キャラクター

小木曽 雪菜
主人公である春希とクラスは違うが峰城大付属3年の同級生。
歌が好きで軽音楽同好会に参加することになる学園のアイドル。
冬馬 かずさ
有名ピアニスト冬馬曜子の娘で1年前まで音楽科に所属していたが、素行が悪いため普通科に転科。
春希のクラスメイトとなるが相変わらずサボり魔で口も悪く、成績も壊滅的。
杉浦 小春
大学編であるCCより登場する3つ年下の峰城大付属3年生。
春希に似た性格でおせっかいで規律を重視する委員長。
和泉 千晶
CCで登場する峰城大文学部3年生。春希と同じゼミ生だが、いつも寝てばかりいて成績は進級ギリギリ。
春希とは異性を感じさせない友人関係。
風岡 麻理
CCで登場する春希のバイト先の上司。有能だがワーカーホリックな雑誌編集者。
北原春希
本編主人公。仕切り屋で説教癖のある委員長。
三角関係物の宿命ですが、はっきり言ってクズ主人公です。物語の全ての原因はコイツにあると思っていいかと。
まぁそれでも孝之(君が望む永遠)や誠(SchoolDays)よりはかなりマシですけど。
この他にも春希の親友である武也、雪菜の親友である依緒、かずさの母親・曜子、雪菜の両親と弟の孝宏、春希のバイト先の同僚などたくさんのキャラが登場しますが、ほとんどのキャラがストーリーに関わってくる重要なキャラばかり。
CCのヒロインである小春・千晶・麻里の3人は、それぞれ後輩・同級生・年上というバランスの良い配役。ちなみにこの3人はシナリオが独立しているのでほとんど絡みません。小春と千晶が一回だけ話す程度で、麻里にいたっては最後まで2人と面識すらありません。学校やバイト先等で全く異なる人間関係を構築するというのはある意味リアルと言えばリアルですね。
またこの作品ではエロゲーには珍しく、キャラに明確な年齢設定があります。無論全員18歳以上ですが。
ボイス
主人公含め、全キャラフルボイス。
PC版はキャスト情報非公開なのですが、波形レベルで声の似ているCS版やアニメ版の主なキャストは以下の通り。
米澤円(雪菜) | 生天目仁美(かずさ) | ||
永田依子(小春) | 羽吹梨里(千晶) | 浅川悠(麻里) | |
中上育実 | 小野涼子 | 夏樹リオ | 柏木美優 |
水島大宙(春希) | 寺島拓篤 | 杉山紀彰 | 梶裕貴 |
なんというか、渋いキャスティングです。
にわかアニメファンでしかない私では女性陣は一部の人の声と名前が一致しません。
いわゆる”エロゲ専業”の方をあえて使っていない感じですが、もちろん実力は必要十分。どの方も見事な演技です。
特に作中では男女問わず感情を爆発させて叫ぶシーンが多いので、そういった修羅場の演技も聴き所のひとつ。メインヒロインは言わずもがなですが、個人的には雪菜の親友でもある依緒役の中上育実さん(アニメ・ガールズ&パンツァーの秋山殿)の演技には引き込まれました。
主人公である春希役の水島大宙さんの声は近年稀に見るベストマッチな配役ではないでしょうか。”真面目だが優柔不断”である春樹の性格を非常によく表現されています。もう他のアニメで水島さんの声を聞いても春樹にしか聞こえません(笑
水島さん以外の男性キャストも実力派ぞろいですね。この種のゲームで梶さんの声初めて聞いた気がする…。
BGM
BGM作曲は松岡純也さん、衣笠道雄さん、中上和英さん、石川真也さん、監修は社長の下川直哉さんというLeaf作品ではおなじみのメンバーです。
音楽モードで聴ける曲は63曲ありますが、その中からボーカル曲やそのインストバージョンを除いた純粋なBGMは26曲。作品のボリュームの割りにやや少なめですが良曲を厳選した感じですかね。意外と明るい曲が多く、シナリオの鬱要素の多さに比べると暗いBGMの種類はそんなに多くはありません。
また作中ではかずさがクラシックのピアノ曲(ショパンの英雄ポロネーズ、リストの「ラ・カンパネラ」など)を弾くのですが、なぜか音楽モードで聴くことはで きません。良い曲が多いので通しで聴きたかったのですけどね。アニメ版からは「かずさのクラシックピアノ集」というCDが発売されているものの、選曲はほとんど別。
個人的お気に入り曲は日常シーンで流れる「いつか見た景色」。落ち着いたピアノの旋律が癒されます。
シリアスシーンで流れる「言葉にできない思い」は、前半は暗い曲調ですが、後半はやや前向きな曲調に変化する良曲。
「吐露」は聴くだけで胃が痛くなるシーンが思い出されるほど印象深い曲。
終盤で流れる「Answer」はまるでボーカル曲のような構成ですが、実際にCS版では歌が付きました。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
「届かない恋」 | 須谷尚子 | 石川真也 | 松岡純也 | 上原れな | OP |
「WHITE ALBUM」 | 森川由綺 | 石川真也 | 飯塚武也 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 |
「SOUND OF DESTINY」 | 須谷尚子 | 中上和英 | 飯塚武也 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 |
「深愛」 | 水樹奈々 | 上松範康 | 松岡純也 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 |
「After All ~綴る想い~」 | 未海 | 石川真也 | 衣笠道雄 | 上原れな | 挿入歌 |
「Twinkle Snow」 | 須谷尚子 | 松岡純也 | 衣笠道雄 | 津田朱里 | ED |
「幸せな記憶」 | 須谷尚子 | 石川真也 | 衣笠道雄 | 上原れな | OP |
「優しい嘘」 | 須谷尚子 | 松岡純也 | 松岡純也 | 上原れな | ED |
「愛する心」 | 須谷尚子 | 衣笠道雄 | 衣笠道雄 | 津田朱里 | ED |
「Routes」 | 須谷尚子 | M.I.S.N. | 松岡純也 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 |
「あなたを想いたい」 | 須谷尚子 | 石川真也 | 松岡純也 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 |
「POWDER SNOW」 | 須谷尚子 | 下川直哉 | 小木曽雪菜 | 劇中歌 | |
「時の魔法」 | 北原春希 | 冬馬かずさ | 冬馬かずさ | 小木曽雪菜 | ED |
「心はいつもあなたのそばに」 | 須谷尚子 | 下川直哉 | 衣笠道雄 | 津田朱里 | ED |
「closing」 | 須谷尚子 | 下川直哉 | 衣笠道雄 | 上原れな | ED |
歌が物語のテーマのひとつでもあるのでたくさんのボーカル曲が使われます。しかもどれも名曲揃い。
ICのOP曲である「届かない恋」は作品を象徴する曲。歌詞も恥ずかしいくらいストレートに登場人物の心情を表しています。ちなみにこの曲は劇中歌としても使われていて、春希が作詞したという設定なのですが、その割りにちょっと女の子っぽい内容ですね。それにしてもこの曲を雪菜に歌わせるなんて春希鬼畜すぎ る・・・。
個人的なお気に入りはICのED曲「Twinkle Snow」とCCのED曲「優しい嘘」。プレイした人はわかると思いますが、前者はかずさの、後者は雪菜の感情を表現した曲になっています。もう思いっきり失恋した女の子の曲で、これらの曲を聴いただけで泣きそうになるのは私だけではないはず。
「WHITE ALBUM」と「SOUND OF DESTINY」、及び「POWDER SNOW」はLeafの過去作『WHITE ALBUM』からの楽曲。これらを含め、劇中歌は基本的にメインヒロインの雪菜が歌っています。実際に雪菜(CS版)の中の人である米澤円さんが歌ってい るのですが、これがメチャクチャ上手い。ボーカルアルバム再販希望!
また、作中で雪菜がカラオケボックスで歌った「深愛」はTVアニメ 「WHITE ALBUM」の主題歌。声優の水樹奈々さんがNHK紅白歌合戦でも歌われた名曲なのですが、まさかエロゲーで聴けるなんて思いもよりませんでした。ちなみにTVアニメ版の同シーンでは中島みゆきの「悪女」になっています。なんちゅう選曲(笑
ムービー
OPムービーはICにひとつ、CCにふたつ。作中で流れた後は起動後のアバンタイトルでも流れるようになりますが、ムービー鑑賞モードはありません。
ICのムービーは静止画をつなげた構成でキャラ紹介も兼ねたオーソドックスな作りですが、CCの1つ目のほうはかなり力が入っていて全編アニメーションで構成されています。多少本編のキャラと雰囲気が違うような気がしますが、さすがに仕方ないところでしょうか。
攻略
シナリオ構成が非常に特殊なので注意してください。
まず序章であるICは選択肢なしの一本道。ただし、1周しただけでは全てのイベントを見ることができないので、ICクリア後にもう1回最初からプレイし直すことにより、1周目では見ることのできなかった「一方その頃」的なサイドストーリーを見ることができます。
IC をクリアするとそのままシームレスに本編であるCCが始まります。ここで初めて選択肢が出現し、各ヒロインの個別イベントが発生。十数個の選択肢を選んだ後、CC共通ルートラストの選択肢で千晶・小春・麻里及び雪菜の各個別ルートへ分岐が決定します。また、かずさルートは雪菜ルートへ入った後、改めていくつかの選択肢を選んで分岐します。
ちなみに千晶ルートのみロックがかかっていて、先に千晶Nomalエンドを見ていないと千晶Trueエ ンドを見ることができません。なんでこんな面倒くさい構成にしたのか最初は疑問に思うかもしれませんが、これも演出のひとつで、2週目に千晶視点のシーンをいくつか挟むことによって同じシーンでも全く違う印象を与える作りになっています。何気ない千晶の言動が伏線になっていたりするので既読スキップは使わないほうがいいかもしれません。
また、千晶ルートクリア後にICを再プレイするとちょっとした新規イベントが挿入されます。
推奨攻略順はICを2周した後、千晶→小春→麻里→雪菜nomal→雪菜True→かずさnomal→かずさtrue。
CC のヒロイン3人に関しては特に順番は気にしなくてもいいと思います。ただし雪菜とかずさは必ず他のCCヒロインを終えてからにしてください。大事なことなのでもう一度言います。雪菜とかずさは後まわしにしてください。雪菜ルートの後では気持ち的にとても他の3人のルートをプレイする気にはなれません。
問題は雪菜ルートとかずさルートのどちらを先にやるか、というか正確にはどちらのルートを最後に残すかということですが、これはプレイヤーでも意見の分かれるところです。最後に大団円ですっきり終わりたい、というのであれば雪菜ルートを最後にすることを推奨しますが、作品の構成的にはどうもかずさルートを最後に持ってこさせるような作りになっている気がします。実際プレイしていても、先に雪菜エンドを見ていることによりかずさルートにおいて「あったかもしれない雪菜との未来」をプレイヤーが明確に意識することができ、かずさと春希の言動がより味わい深いものになっていると思いますし。
プレイ時間はICとCC全部合わせて50~70時間。ホントにこれくらい時間がかかる大ボリュームです。私はゆっくりやっていたので軽く100時間以上かかりました。
攻略難度はそんなに難しくありませんが、選択肢を見ただけではその後の展開がちょっとわかりにくいものもあるので、できるだけ選択肢でセーブする癖をつけておきましょう。
ただ、かずさルートに関しては分岐させるのがやや難しいかもしれません。というのも、かずさルートにはNomalエンド(いわゆる浮気ルート)とTrueエンドがあるのですが、素直にかずさ寄りの選択肢を選んでいると大抵Nomalエンドになると思います。かずさTureエンドを見るためには、雪菜には少しだけ誠実さを残しつつかずさ寄りの選択肢を選び、なおかつ一線は越えないという絶妙なフラグ管理が必要になります。困ったら攻略サイト等を参照してくださ い。
全てのルートをクリアするとキャストのボイスメッセージを聴くことができます。またスペシャルコンテンツのデジタルノベルはICクリア後に読んでおきましょう。
以下ちょいネタバレ。
ストーリーのネタバレではないですが、まっさらの状態でプレイしたい方は読み飛ばしてください。
CCの個別ルートへ入る直前に、いかにも重要そうな選択肢が出現しますが、実はこの選択肢はダミーです。後で選びなおそうと思っても2回目以降は選択肢そのものが出てこないという幻の選択肢。おそらく(私も含め)多くのプレイヤーが必死になって”あったはずの選択肢”を探したことだろうと思いますが、実はそれすらも演出の一環だったということを知ったときはさすがに脱帽せざるを得ませんでした。全くなんて罪作りな物を作るんやこのスタッフは・・・。
Hシーン

CCのヒロインである3人のHシーンはだいたい1キャラにつき3回ほど。物語の中心である雪菜とかずさはさすがに数が多くでそれぞれ6~7回。行為は純愛作品らしくオーソドックスなもの。尺の長さも普通で卑語もあまり言いません。ほぼ全員に”口でする”シーンがあります。
また、一部のキャラに関してはちゃんと避妊しています。使用済みのコンドームを弄ぶヒロインってなんだかそそりますね。
ちなみにPC版のデフォルト設定ではHシーンでも主人公の声が流れるようになっています。Hシーン中のみ男性ボイスをOFFに出来るよう設定できるので、嫌な人はあらかじめ切っておきましょう。油断してると突然春希が「ああぁっ!」とか喘ぎ出します。
感想

名実共に純愛エロゲの頂点を極めたと言っても過言ではないこの作品。
シナリオが素晴らしいのはもちろんのこと、音楽やグラフィック、キャラ造形や声優さんの演技もあわせた総合的な完成度も他のエロゲーとは一線を画すクオリティになっていると思います。私としても紹介したい要素が多すぎてずいぶん長文になってしまいました。
三角関係を描いた作品としてはこれまで『君が望む永遠』や『SchoolDays』等が有名でしたが、これらの作品が徹底的に鬱なラストだったのに対して、この『WHITE ALBUM 2』では少しだけ救いのある終わり方になっているのも読後感の良さに繋がっていると思います。
ただそれでも辛い選択を迫られるのは確か。今の幸せを優先して過去の想いを断ち切るか、あるいは全てを捨てて1人の女性と添い遂げるか、どちらを選んでも厳しい展開が待っています。特に後者に関しては心身ともにボロボロになっていく春希たちを見るにつれクリックする手も鈍くなり、辛いシーンの連続に何度強制スキップしようと思ったか数知れず。エンディング後は”選ばれなかったヒロイン”の幸せを願わずにはいられませんでした。
昨今では美少女ゲームと言えばヒロインと甘々べったりのイチャラブゲーが人気になっていて、プレイヤー側からも「ゲームの世界まで鬱になりたくない」という意見も多いようですが、たまにはこういうガツンとした作品で魂を揺さぶられるのもいいものです。
正直、あんまり褒めちぎると期待値が高くなりすぎて、プレイしても「なんだこんなものか」と拍子抜けされてしまう恐れもありますが、多分このクラスの作品は今後そうそう世に出ることはないと思うので、純愛ゲームの金字塔として是非プレイしてほしい作品です。
ちなみに私はかずさ派。