美少女ゲームのヒロイン属性において「幼馴染」と並んで一定の人気を集めているのが「妹」属性。
古くは『同級生2』の鳴沢唯や『ダ・カーポ』の朝倉音夢など、数多くの妹キャラを輩出してきたのですが、これらの妹キャラはすべて”義妹”――つまり義理の妹だったんですよね。
というのも当時のエロゲ倫理規定を定めていたソフ倫によって3親等以内の血の繋がった家族とのHは禁止されていたので、義妹というのは言わば苦肉の策だったわけです。(まぁ義妹は義妹で味がありますけど)
ところが2000年代中盤に何を思ったかソフ倫の規定が緩和されて「実妹OK」のお達しが出ました。その後各社から実妹を攻略対象にした作品が発売されるようになったのですが、始めはなんとなく手探り状態でおっかなびっくり製作されていた作品も多かったように思います。
そんな中、実妹(しかも双子の妹)をメインヒロインに据えてガチの”近親相姦”をテーマにした作品が登場。それが今回紹介する『ヨスガノソラ』。”ヨ”と”ソ”にアクセントを置くのが正式な読み方みたいです。
CUFFSの姉妹ブランド・Sphere(スフィア)の製作で、原画家には人気イラストレーターの橋本タカシさんや鈴平ひろさんを起用したことでも話題になりました。
物語は両親を事故で失った主人公・悠(はるか)とその双子の妹・穹(そら)が、夏の田舎町で二人暮らしをするところから始まる純愛ストーリー。
わがままな引きこもりで空気を読まない言動の多い穹は、正直言ってあまり萌えるキャラクターではありません。なのでこのキャラを許容できるかどうかでこの作品の評価は大きく変わってきます。
この作品はHシーンを含んだTVアニメ化で一気にオタク界隈における知名度を上げ、近親相姦を意味する「ヨスガる」なんていうネットミームまで誕生するほど人気となりました。
わがままな実妹との恋愛を楽しみたい人や、都会の喧騒から離れた田舎町での生活にあこがれる人にはうってつけの作品かと思います。
- 田舎を舞台にした純愛物語
- 禁忌を犯す実妹との恋
- 橋本タカシ&鈴平ひろ両氏による美麗なグラフィック

あらすじ
都市部から遠く離れた片田舎、奥木染(おくこぞめ)。
春日野 悠(かすがの はるか)は、妹の穹(そら)を連れてその町に向かっていた。
そこは幼少の頃の夏休みに何度も訪れ、ひと夏を過ごした祖父の家があり懐かしい場所であった。
不慮の事故により両親を亡くし拠り所を失ったふたりは、今は誰も住んでいない祖父の家に引っ越し、そこで暮らしていくことを決める。
不慣れな家事に悪戦苦闘し、普段から引きこもりでなにもできない穹の面倒を見ながら、悠は大変な毎日を過ごしていく。
そ んな悠を、昔遊んでくれた近所のお姉さん・依媛 奈緒(よりひめ なお)や、転校初日からなにかと絡んでくる中里 亮平(なかざと りょうへい)、神社の巫女兼管理人をしている天女目 瑛(あまつめ あきら)、その友達の渚 一葉(みぎわ かずは)らが、温かく迎えてくれる。
小さい頃から、あまり変わってないように感じた町並みや人。
懐かしい想い出や、静かな環境が悠を癒していった。
そんな中、徐々に変化が訪れる。
幼少の頃交わしたふたりだけの秘密の約束とその後。
なくしてしまった大事な物の行方。
そして、この場所を選んだ本当の理由。
想い出として心に刻まれた時から、もう始まっていた未来。
今まで傷つき、不器用な行き方しかできなかった相手と、悠はどう向き合うのか。
日差しが強まる初夏の空の下、物語が動き始める。
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
ヨスガノソラ | 98 2000 XP Vista | 2008.12.5 | やや難 |
ハルカナソラ | 2000 XP Vista | 2009.9.25 | やや難 |
ヨスガノソラ 通常版 | XP Vista 7 | 2010.10.29 | やや難 |
パッケージ版『ヨスガノソラ』は初回版と通常版があり、初回版にはイメージソングが収録されたCDが付きます。パッと見ではどちらが初回版なのかわかりにくいのですが、パッケ絵にヒロインが2人しか描かれていない方が初回版、ヒロイン全員が描かれているほうが通常版です。
少し前までは中古価格が初回・通常版共に4000~5000円くらいで安定していたんですが、ここ最近(2025年)は謎の高騰を見せていてプレミアソフト(売価15000円前後)となってしまいました。
『ハルカナソラ』は本編でサブヒロインだった2人をメインに据えたファンディスク。初回版は特典としてぬいぐるみが入っているかなり大きな箱になっています。
今から買うならダウンロード版を推奨。古いソフトの割りに定価が若干高めですが、定期的にセールの対象になっていて、時期によっては半額以下で購入することができます。
またダウンロード版は『ヨスガノソラ』と『ハルカナソラ』セットにしたモノも配信されていて、セール時はかなりお得に買えますね。
システム
オーソドックスなAVG形式で、画面サイズは800×600。
一般的な機能は大体揃っていて特に不満のないシステムです。
音量の調整はいちいちコンフィグ画面を開くことなく、マウスカーソルをコンフィグに重ねただけで各種音量のスライドバーが表示されるので、オートモードで流しながら調整することも可能。これ結構便利ですね。
テキスト履歴はロード再開時も保存されます。それどころか履歴がそれまで読んだすべてのテキストを保存している上に、任意のシーンに巻き戻すジャンプ機能もあるので、シナリオ終盤からでも物語の一番最初まで戻ることができるのは凄いです。
ダウンロード版はプログラムのバージョンが「version 1.00」と表示されますが、多分修正パッチはすでに適用された状態だと思います。試しにパッケ版の修正パッチ(Ver.1.01)を当てようとしたらエラーになりました。
シナリオ

主人公の春日野悠と穹は血を分けた双子の兄妹。突然の事故で両親を失い親戚からの同居の提案も断って、子供のころによく遊びに来ていた山間部の田舎町・奥木染引っ越して二人暮らしをはじめる――という双子の妹・穹を中心とした恋愛物語。
ストーリー中には特殊な設定やファンタジー要素の出てこない、現実的な世界観です。
主人公たちが住んでいる奥木染はスーパーはもちろんコンビニすらなく、普段の買い物は移動式スーパーと駄菓子屋のみというかなりの田舎町。
時代的にはちょうど携帯電話が普及し始めた頃のお話ですが、登場人物の中で携帯を持っているのは主人公をはじめ一部の人間だけで、インターネットを利用できる家も少ないという設定です。
シナリオライターは太刀風雪路さんと朝倉誠理さん。
テキストには特に変なクセとかはなく、読みやすい文章だと思います。
ストーリー構成の特徴としては、いわゆる共通ルートが短めで、ヒロイン別の個別ルートに入った後もみんなで海水浴に行ったりお祭りに行ったりといった共通ルート的なイベントが続きます。
これは同じようなイベントを見せられるというデメリットもありますが、各ヒロインとの恋愛関係にいたるまでを丁寧に描けますし、変にハーレム的な展開にもならないのでルートごとのヒロインに集中して物語を楽しむことができます。こういう構成もなかなか良いものですね。
グラフィック

原画、及びキャラクターデザインは橋本タカシさんと鈴平ひろさん。担当が明記されてませんが、たぶん穹・奈緒・一葉が橋本タカシさん、瑛と初佳が鈴平ひろさん、…かな? 違うかも。
イベント絵は全部で79枚。淡い色彩と相まって非常に綺麗で爽やかな感じのするイラストです。個人的に凄く好み。
それぞれのキャラクターも穹以外は髪の色は黒中心な上、服装も良い意味で地味なデザインなので、いい感じで”田舎の娘”感が出ています。
特にキャミソールっぽいトップスを着た奈緒の私服はいいですね。別に胸の谷間とか強調してるわけではないのに、そこはかとなく「近所のお姉さん」的なエロスを感じます。
キャラクター

春日野 穹(かすがの そら)
主人公の双子の妹。二人暮らしだが家事等は一切しないワガママ娘。
両親が死亡してからは部屋に引きこもりがち。
天女目 瑛(あまつめ あきら)
奥木染にある神社に住み込みで巫女をしている少女。
実質天涯孤独の身だが、本人はあまり気にせず天真爛漫な性格。
依媛 奈緒(よりひめ なお)
近所に住む1つ年上の2年生。主人公が子どもの頃から帰省のたびに遊んでいたお姉さん。
雑な短髪にメガネという、およそエロゲヒロインらしからぬ地味な外見。
渚 一葉(みぎわ かずは)
地元の有力者の一人娘で、いわゆるお嬢様。
キャラ的にはいたって常識人で、一人暮らしをする瑛を何かと気にかけるおせっかい焼き。
乃木坂 初佳(のぎさか もとか)
一葉の家で働くメイド。ただ家事はからっきしで失敗ばかり。
就職活動に失敗して実家に戻ってきたところを親の伝手で渚家にメイドとして就職。
春日野 悠(かすがの はるか)
本作主人公で穹の双子の兄。家事の全てと穹の面倒まで見る苦労人。
そのほかの登場人物は、悠より1つ年上だが留年により同級生になった男友達・中里亮平、クラス委員の倉永梢、瑛の保護者を買って出た伊福部やひろが主なキャラクター。
梢とやひろはファンディスク『ハルカナソラ』で攻略ヒロインになっています。
あまり大きな声では言えないんですが、個人的には奈緒が好み。でもこのキャラ、ネット上の評価散々なんですよね…。
ボイス
白波遥 / 田口宏子(穹) | 月城真菜 / 阪田佳代(瑛) | 木村あやか / いのくちゆか(奈緒) | 五行なずな / 小野涼子(一葉) |
遠野そよぎ / 岡嶋妙(初佳) | 姫川あいり/ 峰岸由香里 | 一色ヒカル / 田中涼子 | |
後野祭 / 中國卓郎 |
主人公以外フルボイス。
キャストはベテランさんが多く、安心して聴いていられます。
穹役の白波遥さんは使い捨ての名義ですが、当時のエロゲファンにはおなじみの声。
ヒロイン別の個別ルートに入るとヒロイン視点で物語が進むこともありますが、その際はいわゆる”地の文”もそのキャストさんによって音読されます。
考えてみたら声優さんによるこういう朗読っぽい演技ってあんまり聴く機会がないので、結構新鮮でした。
また起動時のタイトルコールは各ヒロインがランダムで行いますが、亮平の声も混じってます。なんで入れたのかわかりませんが、起動直後の第一声が男声だとハズレ感がハンパない(笑
BGM

BGMの作曲はManack(三輪学)さん。ボーカル曲を除いた曲数は19曲とやや少なめ。
良い意味でギャルゲらしいオーソドックスな構成の曲が多いですね。それぞれの曲は基本的に途切れることなくエンドレスにループします。
個人的お気に入り曲は、まったりとしたピアノの旋律が特徴的な日常曲『優しい風が吹くあの場所で』。
タイトル画面でも流れるギターを中心とした落ち着いた曲『膝枕で過ごす放課後』。
互いの気持ちを確かめ合うような『無くならない大事な心』。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「道の先、空の向こう」 | 綾菓 | Manack | Rita | OP |
「夜明けのプリズム」 | 綾菓 | Manack | Rita | ED |
ボーカル曲を歌うのはRitaさん。
OP曲は優しく前向きになれる曲。残念ながらショートバージョンしか聴くことはできません。
ED曲は伴奏にエレキを使ったややポップな曲調。なんとなくですが90年代のOVAのエンディングとかに使われていそうな曲です。
ENDムービー中にはフルバージョンが使われていますが、何故か音楽モードではショートバージョンになっています。
ムービー
短めのプロローグの後にOPムービーが流れます。ムービー制作はKIZAWA Studio。
キャプションに使われている文字がややポップなフォントで、立ち絵やイベント絵を使ってヒロインの紹介をしていくオーソドックスな作りです。
OPムービー及びすべてのEDムービーはムービー鑑賞モードで見ることができます。
一応YoutubeにもOPムービーが非公式で上がってるんですが、どうも私の持ってるバージョン(ダウンロード版)とはちょっと使われてるCGが違うんですよね。少なくともDL版のムービーはHシーンのCGは使われていません。パッケ版のムービーは違うのかな。
攻略

本編中に3回出てくる選択肢によりシナリオが分岐します。
それぞれの選択肢にはどのルートに分岐するかがキャラアイコンで表示されるので間違えることはないかと。
選択肢の構成ややや特殊で、最初の選択肢で奈緒ルートが、2番目は瑛ルート、3番目の選択肢で一葉と初佳ルートが確定します。1・2番目の選択肢でルートが確定した後もその後の選択肢は出現しますが、その際はどれを選んでも先に確定したルートが優先される仕様です。
4人分のエンディングを見た上で最初からはじめると、序盤に穹ルートへ分岐する選択肢が追加されます。
攻略順はそんなに気にしなくてもいいと思いますが、まぁ普通に選択肢が現れる順に、奈緒→瑛→一葉→初佳→穹とプレイすればよいかと。
総プレイ時間はゆっくりやって25~30時間。シナリオゲーとして見るとちょっと短め。
Hシーン

シーン回想に登録されるHシーンは、瑛・一葉・初佳が3回ずつ、奈緒が4回、穹が5回。
尺は短めでCGの差分も少なめ。
行為自体はオーソドックスかつライトなもので特殊なプレイはありません。全員に口でするシーンがあります。
またほとんどのシーンが全裸ではなく半裸だったのは個人的に好み。
ヒロインはそこそこ卑語も言いますが、修正は音声(一部無音化)のみでテキストの修正はありません。
なんというかちょっと前まで純朴な田舎娘だった少女が、行為を重ねるうちに「一緒に気持ちよくなろ?」とか言い出すようになるのは、なかなかそそるものがありますね(笑
感想

繰り返しになりますが、この作品の評価はひとえにメインヒロインである双子の妹・穹のキャラを受け入れられるかにかかっています。
穹は世間一般で言うところの”妹キャラ”とはかけ離れていて、主人公のことを「お兄ちゃん」とは呼んでくれませんし、「もう、しょうがないなあ」と兄の世話をかいがいしく焼いてくれたりもしません。そもそも本人は自分のことを(双子なので)妹だとは思ってないですし。
家事は全部兄にまかせっきりで料理も掃除も洗濯も一切せず、物語序盤は家に引きこもっていて学校はもちろん買い物にもほとんど行きません。気に入らないことがあるとへそを曲げて部屋から出てこなくなることも頻繁にあります。なんだこのヒロイン(笑
そんな実の妹が兄に向ける禁断の恋愛感情に気付いたときどうするのか、友人たちに関係がばれたときにどうするのかが、この作品一番の見所です。
主人公がちょっとウダウダし過ぎな面もありますが、近親相姦がタブーであるということを本人がちゃんと認識しているので、ある程度は仕方ないかなと。
それを乗り越えた穹ルートでの穹のデレっぷりは、それまでのワガママキャラを吹き飛ばしてしまうほどの破壊力があります。
ただこの作品、世間の評価はあまり芳しくなく、ErogameScapeの評価点中央値は72と思ったよりも低いんですよね。
まぁ確かにメインヒロインの穹は好みの分かれるキャラですし、物語全体の印象もキャラゲーとしてもシナリオゲーとしても中途半端なので、もっとどちらかに突き抜けても良かったんじゃないかと思わなくもないですが、それにしてももうちょっと評価されても良いと思うんですよ。
私はアニメを見てからプレイしたんですが、展開はちょっと違うんですね。ゲームのほうがアニメよりもやや爽やかな終わり方になっています。
まあ、アニメはアニメで凄く出来が良いし、地上波の限界に挑んだHシーンも見物なので、ぜひ両方見てもらいたいところ。
夏の田舎の雰囲気を満喫したい人や、実の妹との真剣な恋愛を体験したい人にうってつけの作品だと思います。
ちなみにファンディスクである『ハルカナソラ』には穹ルートのエピローグ前に何があったのかを補完するシナリオが収録されているので、是非続けてプレイしてみてください。