雑記

エロゲ―業界の行きつく先

『エロゲーが売れなくなってきた』というのは狭いエロゲ業界でもこれまでさんざん言われてきたことで、10年以上プレイしているようなベテランエロゲーマーにとっては認めざるを得ない事実だと思います。

特に実店舗のパッケージ販売が壊滅的で、今や買えるところは本当に限られてる。最近エロゲを始めた人には信じられないかもしれませんが、以前(2000年代 前半くらい)は家電量販店の一角にエロゲのコーナーが(結構な面積で)あったり、郊外のゲームショップやリサイクルショップなんかでも割と平然にエロゲが売られていたりしました。

まぁ実店舗に関しては本屋やCDショップなど他の業界も同じで、通販やデジタル販売に押されて最早その手のショップは絶滅危惧種になってたりしますが、エロゲの場合はデジタル販売を含めても大幅に市場規模が小さくなってる感じ。
エロゲが売れなくなった理由は少子化に加えてスマホゲーの台頭やそもそもPCを買わなくなったというのもあるでしょうが、それに加えて要因のひとつとして挙げられるのは旧来のテキストアドベンチャーシステム、俗に言う「紙芝居ゲー」が飽きられたしまったこと。

この辺のことは開発者側も当然わかっていて、アリスソフトのTADAさんも以前から憂いていたみたいです。

2012年 ---------

エロゲーが売れなくなってきた
完全な衰退期に入った

エルフは解散した
エロ抜きでも勝負出来るメーカーは一般ゲームへ鞍替えした
実力のあるライター、絵描きは、ラノベ業界に向かった

まぁ、同じようなエロゲーばかりで
進化も変化も無くなった
エロ絵だけならインターネットでいくらでも見れるし
一本道ADV、それならラノベやアニメが手軽となるのも当然
時代についていけなくなり飽きられてきたのだ

ハニワ開発室(ゲームデザイナーの隠居生活)

またケロQ/枕で最新作「サクラノ刻」の発売を間近に控えるすかぢさんも同様のことをつぶやいておられます。



要するにエロゲが売れなくなったのは同人ゲームにパイを奪われたのではなく、
・適当に作ったADVゲームが売れなくなった
・同人だろうが商業だろうが丁寧に作った作品はそれなりに売れている
…ということみたいです。

商業ゲームと同人ゲームの棲み分け

ネット上の言説では「商業エロゲを買うくらいなら同人エロゲを買う」という意見もちょくちょく聞かれる話ではあるんですが、じゃあ同人エロゲが商業エロゲの完全上位互換か?と言われると、決してそんなことはないと思うんですよ。

私は同人界隈はあまり詳しくないんですが、ざっと見た限り同人ソフトって良くも悪くも”ニッチな作品”なんですよね。
個人的な好みに刺さればいいけど、残念ながら万人受けはしにくいし、クオリティ的にもボリューム的にもまだまだ同人エロゲは商業エロゲにかなわないものが多い。これは同人エロ漫画と商業エロ漫画の関係と同じだと思います。

同人ソフトとしては異例の大ヒットとなった『奴隷との生活』や『DemonsRoots』にしても、キャラやシナリオは物凄く作りこまれていて商業エロゲに勝るとも劣らないクオリティだと思いますが、だからと言って商業エロゲの代わりになるかというとそんなことはないはず。
個人的な感覚ではフルプライスの商業エロゲ―と安い同人エロゲ―は今のところ棲み分けができているように思います。一部のロープライス抜きゲーはちょっと被ってるかもしれませんが。

ただ金銭的にはともかく、プレイヤーのゲームに使える時間は有限なので、長編の同人エロゲが増えてくると商業エロゲに使われる時間が奪われる、ということは今後ありうるかも。

丁寧なソフトメーカー

丁寧にやってる会社さんが業界を盛り上げる鍵というのは正に同感で、00年代に名作を作り続けてきた会社が解散してしまったり、ソシャゲや一般ゲーに移行していってる中(別にそれはそれで悪くない)、コツコツと作品を作り続けて高い評価を得ているブランドもありますね。
老舗ではパープルソフトウェアやSAGA PLANETS、ゆずソフトなど。2010年以降のメーカーでも、きゃべつそふと、まどそふと、Qruppoあたりが結構頑張っていると思います。


AMBITIOUS MISSION(FANZA)
SAGA PLANETSの2022年最新作でシナリオは『金恋』のさかき傘さん。
主人公とヒロインが追手をかわしながら”怪盗”として活躍していく、
怪盗モノのお約束を詰め込んだ物語。

ヘンタイプリズン(FANZA)

デビュー作『ぬきたし』が一世を風靡したQruppoの新作。
前作同様、エロゲーでしか表現できない物語で、
エロと笑いと燃えがうまくミックスした作品です。

もちろんこれらのメーカー以外が丁寧でないとは言わないし、ファンディスク商法や分割商法だって立派なビジネスモデルだとは思うけど、一作ごとに集中しているメーカーさんはなんとなくファンとして応援したくなる気持ちにはなりますね。
仮に作品が好みに合わなくても「次は大丈夫かも」という気にさせてくれますし。

エロゲーライターの今

これはクリエイター個人に関しても同じことが言えて、00年代はエロゲを2~3作ヒットさせたらその後はラノベやアニメ業界に移行するのが割と既定路線でした。
でも10年代のクリエイターさん、特にシナリオライターさんは(ラノベ出してる方もいるにはいますが)ずっとエロゲやギャルゲ業界に残ってくれている方が多いように思います。
有名どころだと冬茜トムさん、かずきふみさん、さかき傘さん、海原望さん、早瀬ゆうさんあたり。


ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-(FANZA)

『アメグレ』や『さくレット』をヒットさせた冬茜トムさんの最新作。
序盤から伏線張りまくりのトムさんらしいシナリオはこの作品でも健在。

アマナツ(FANZA)

SMEEで数々のイチャラブゲーを世に送り出してきた早瀬ゆうさんの作品。
夏の田舎町を舞台に、ヒロインとの甘々な恋愛を非常に丁寧に描いていきます。

私は業界人ではないので詳しくはわからないんですが、今はエロゲのシナリオライター専業で食べていけることができるんですかね?
昔は虚淵玄さんや丸戸史明さんのような有名ライターさんがアニメ業界に行ったときは「人材の流出が~」とか嘆いている人も多かったんですが、逆にアニメに進出するライターさんがほとんどいないというのもそれはそれで寂しい気も…。いやまあ、エロゲ作り続けてくれるのはうれしいけど。

エロゲー業界の今後

エロゲ―業界が衰退しているというのは2010年あたりから言われてきましたが、それから10年たってもなんだかんだで残ってますし、過去の名作に負けないくらい面白い作品も出続けています。
業界が一番盛り上がっていたのは多分Fateやマブラヴが発売された00年代中盤あたりだと思うんですが、さすがにあの頃の勢いを取り戻すのは無理にしても、少なくとも今の状況を維持してほしいなと個人的には思います。
Twitterとか見てると最近エロゲ始めたって人が結構いますし、そう悲観的なものばかりでもないのかと。

「エロゲーのシステムは20年前から変わってないから廃れるのは当たり前」なんてこともよく言われますが、それを言うなら漫画や小説だって同じですし。
個人的にはエロゲは「紙芝居ゲー」と言われる今のシステムこそが至高だと思ってるので、別にこのシステムに飽きたということは全くないですね。同人RPGだって基本的なシステムは30年前のドラクエと変わらないのに、今でも結構な人気です。

むしろLeafが『雫』や『痕』で”ビジュアルノベル”形式を発明して以来、ゲーム性を廃してプレイヤーに物語を読ませることに特化した作品が大勢を占めるようになったからこそ、00年代のエロゲーブーム(?)を巻き起こしたともいえるわけで。
開発側からしてもシナリオと絵を描ける人さえいれば簡単…ではないにしても比較的デビューしやすいというのはあると思いますし。もし紙芝居ゲーのシステムがなかったら、麻枝准さんも奈須きのこさんも竜騎士07さんも丸戸史明さんも世に出ることがなかったかもしれない。

楽観的かもしれないけど、なんだかんだでこれから先もエロゲ―業界って続いていくような気もします。市場規模はさらに小さくなってるかもしれないけど。
結局我々ユーザーにできるのはエロゲーを買い続けるということだけなんですけどね。
出来れば泣きゲーとか燃えゲーも増えてほしいなぁ。

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