アニメ

エロゲープレイヤーが見るべきアニメ『リコリス・リコイル』(A-1 Pictures 2022年)

2022年夏アニメの中で一番話題になった作品といえばやはり「リコリコ」こと『リコリス・リコイル』でしょう。
私も何気なく第1話を見た瞬間「これは来る!」と確信して毎週楽しみに観てました。

物語は東京の下町にある「喫茶リコリコ」の2人の看板娘が実はとある組織の戦闘員で、幼稚園の手伝いから暴力団の抗争まで様々な依頼をこなすという女子高生バディ&ガンアクションアニメ。そしてちょっと百合(←これ大事)

物語や設定自体はそんなに突飛なものではないというか、まぁぶっちゃけよくある話だったりするのですが、アニメ自体は非常に丁寧に作られていて見ごたえがあります。
制作スタジオはA-1 Picturesで監督は足立慎吾さん。90年代から活躍しているベテランアニメーターさんらしいのですが、なんとこのアニメが初監督作品だそうです。

”少女と銃”というと名作アニメ『GUNSLINGER GIRL』がありますが、「ガンスリ」が超シリアス路線だったのに対し「リコリコ」はかなり明るい雰囲気でストーリーが進みます。この辺はスタッフさんもかなり意識してライトな作りにしたみたいですね。

原作
原案
Spider Lily
アサウラ
監督足立慎吾
シリーズ構成足立慎吾
キャラクターデザインいみぎむる
制作A-1 Pictures
放映日時2022.7~
おすすめ度85
シナリオ傾向

あらすじ

平穏な日々――その裏には秘密がある
犯罪を未然に防ぐ秘密組織――「DA(Direct Attack)」。
そのエージェントである少女たち――「リコリス」。

当たり前の日常も、彼女たちのおかげ。

歴代最強のリコリスと称されるエリート・錦木千束、
優秀だけどワケありリコリス・井ノ上たきなが働く喫茶「リコリコ」もその支部のひとつ。

ここが受けるオーダーは、コーヒーやスイーツの注文から、
こどものお世話、買い物代行、外国人向けの日本語講師etc、
「リコリス」らしからぬものばかり。

自由気ままな楽天家、
平和主義の千束とクールで効率主義のたきな、
二人の凸凹コンビのハチャメチャな毎日がはじまる!

シナリオ

主人公の千束(左)&たきな(右)

原作者名にある「Spider Lily」(英語で彼岸花)というのはオリジナルアニメにありがちの共同名義で、原案は『ベン・トー』等で知られるラノベ作家のアサウラさん、シリーズ構成は監督も務める足立慎吾さん。
タイトルにある『リコリス』というのも彼岸花の学名(Lycoris radiata)からとられています。

物語は秘密組織「DA」が「リコリス」と呼ばれる女子高生戦闘員を使って人知れず犯罪者を抹殺し続けることで治安を守っている日本が舞台。天才的な戦闘能力で歴代最強リコリスと言われる主人公・錦木千束ちさとが所属するDAの支部「喫茶リコリコ」に、独断専行で左遷させられたリコリス・井ノ上たきながやってくるところから始まる、女子高生ガンアクションアニメ。

DAやリコリスに関する細かい設定は本編中ではあまり語られず、Youtubeの公式チャンネルで説明するという割り切った構成になっています。でもまぁ細かい設定は気にせず、ふわっとした認識でも大丈夫。一応本編中でもさりげなく語られますし。
例えばリコリスは実力に応じてファースト・セカンド・サードの3階級に分かれていてそれぞれ制服の色が違うんですが(ファースト=赤 セカンド=紺 サード=ベージュ)、それが初めて言及されるのは3話で行われた千束とフキの口喧嘩の最中だったりします。

グラフィック

斜めに銃を構える千束

キャラクターデザインは『この美術部には問題がある!』等で知られる漫画家の”いみぎむる”さん。
なんとなくですがデザインに京アニっぽいテイストがある気がします。京アニ全然関係ないけど、それくらいクオリティの高い作画で終盤まで安心して観ていられます。

千束とたきな以外のリコリスは意図的に「あんまり可愛くない」デザインになっています。フキとかめっちゃチンピラ顔なんですが、慣れてくると「これはこれでいい!」とか思えてくるから不思議。

リコリスたちが扱う武器は基本的に拳銃なんですが、千束の銃の構え方がいわゆる「CARシステム」というやつでかなりカッコいいですね。近接戦に特化している千束の戦闘スタイルにも合いますし、銃身が斜めになっているので表情も見やすくてアニメ映えします。

キャラクター

喫茶リコリコの面々

錦木千束
歴代最強のファーストリコリス。性格は明るく天真爛漫で超前向き。
モットーは「いのち大事に」で、敵に対しても非殺傷のゴム弾を使う。
類稀なる洞察力と反射神経で至近距離で発砲されても弾を”避ける”ことができる戦闘の天才。
「主人公に弾が当たらない」というのはアクション映画あるあるですが、それを特技に設定してるのは面白いですね。

井ノ上たきな
真面目で効率主義のセカンドリコリス。作戦中の独断専行を咎められリコリコに左遷。
はじめはリコリコでの仕事も嫌々やってたのですが、だんだん心を開いて千束のことをかけがえのない相棒として認識していきます。

クルミ
見た目は幼女だが凄腕ハッカー。実年齢不詳。
なんだこの生き物可愛すぎる!

中原 ミズキ
元DAの情報部員で現在はリコリコの店員をしつつ千束たちのサポートも行う。ばっちこーい!
結婚願望が高く、毎日晩酌しながら結婚雑誌を読む27歳。

ミカ
リコリコの店長で48歳の温和な黒人男性。

この他にたきなの元パートナーでファーストリコリスの春川フキ、セカンドリコリスの乙女サクラ、蛇ノ目エリカ、篝ヒバナ、DAの司令官・楠木が登場します。
登場人物の名前は基本的に植物からとられているみたいですね。
千束→ニシキギ たきな→ギボウシの別名 ミズキ・クルミ・フキ→そのまま 
サクラ→乙女桜 エリカ→ジャノメエリカ(ツツジ科) ヒバナ→シクラメンの和名 

ボイス

安済知佳(千束)若山詩音(たきな)小清水亜美(ミズキ)久野美咲(クルミ)
河瀬茉希小市眞琴八神結香三重野帆貴
沢海陽子大谷理美榊原優希
さかき孝輔上田燿司松岡禎丞

軽いノリで明るい千束役の声優は『響け!ユーフォニアム』の高坂麗奈役などでおなじみの安済知佳さん。最初たきなが安西さんだと思ってました。なんかたきなのほうが麗奈っぽいし。
たきな役の若山詩音さんは『DYNAZENON』で南夢芽役を演じて以来主要キャラを担当することが多くなってきた期待の若手声優さん。
この二人の掛け合いの良さがある意味この作品全体のムードを作り上げています。

クルミ役は最近のアニメで幼女役といえばこの人、久野美咲さん。ただクルミは見た目と実年齢が乖離しているという設定なので、いつもと違った久野ちゃんを聴くことができます。
フキ役の河瀬茉希さんは妙にイケメンボイスだなと思ったらこの方、『ゾンビランドサガ』の純子役の方なんですね。声優さん凄い。

そしてミズキ役の小清水さんはもう説明不要のベテランさん。独り言のようなセリフはだいたいアドリブみたいです。デュクシ!

BGM

BGMの作曲は睦月周平さん。「Fairy gone」や「SPY×FAMILY」の劇伴を手掛けてこられた方です。
残念ながらサントラがBD特典のみなんですが耳に馴染む曲が多いですね。やはりBGMを聴いただけで作中の場面が思い出されるのは名作の証。
特に”勝ち確BGM”と称され千束の戦闘シーンで使われる「反撃開始」はテンション上がります。

主題歌

タイトル作詞・作曲編曲備考
「ALIVE」重永亮介重永亮介ClariSOP
「花の塔」さユり宮田“レフティ”リョウさユりED

OP曲「ALIVE」は勢いがありながらどこか憂いもあるこの作品にぴったりな良曲。力強いサビの部分は非常に勢いがあって何度聞いても飽きません。
歌っているClariSも女の子2人組ですからキャラ的にもベストマッチですね。あと最近のClariSって顔出しOKなんだ…。

ED曲「花の塔」はメロディもさることながら歌詞が凄く秀逸。

『窓に飾った絵画をなぞってひとりで宇宙を旅して それだけでいいはずだったのに
 君の手を握ってしまったら 孤独を知らないこの街には もう二度と帰ってくることはできないのでしょう
 君が手を差し伸べた 光で影が生まれる 歌って聞かせて この話の続き 連れて行ってみたこともない星まで』

この歌詞、一見するとたきなの千束に対する心情を表したもののように見えますが、アニメを最後まで見てから改めて歌詞を読むと千束がたきなにあてた思いと解釈することもできます。
つくづく良い歌詞ですなぁ。

ムービー

OPアニメの演出は監督の足立慎吾さん。
リコリスとしての千束とたきなの日常を描いたムービーで、作品全体の雰囲気をよく表してると思います。大勢の名も無きサードリコリスが爆発に巻き込まれていくシーンはなかなかにショッキング。
後半に出てくる千束とたきながまるでファッションショーのように私服を披露します。アニメキャラの私服ってちょっとダサかったりすることもままあるんですが、この作品は結構センスがいいですね。

そしてOPを見た誰もがニヤニヤするラストの「ケツキック」。千束がイタズラ心で軽くたきなにケリを入れると、ムッとしたたきなが思いっきり蹴り返すという何とも微笑ましいシーン。千束は避けようと思えば簡単に避けられるはずなのに、あえてケリを受けてるっぽいのも良いですね。表情はちょっとしか見えないんですが、まるで2人の台詞が聞こえてくるようです。実に尊い…。
ちなみにこのシーン、映画『スタンド・バイ・ミー』のオマージュらしいですね。

EDアニメの演出も足立慎吾さん。EDアニメに入るときは主題歌のイントロが本編に被さるという、「シティーハンター」のような導入になっています。
前半はたきなたちのプライベートタイムをポップな絵柄で描いていて、自室でちょっとダラッとしたたきなが新鮮。
またムービーの後半にはその回のダイジェスト映像が流れます。こういう演出最近では珍しいですね。

感想

放送当初から非常に話題になり、早くも「2022年アニメの覇権」なんて噂もあるこのアニメ。私も少なくとも22年夏アニメの中では一番の作品だったと思います。
この作品はいわゆる原作のないオリジナルアニメだったこともあってストーリーの予想や考察が面白く、リアルタイムで毎週アニメを見るという行為自体が楽しいということを再認識させられるアニメでもありました。

女子高生とガンアクションがコンセプトの作品ですが、中盤は派手なアクションシーンは控えめ。
その代わり千束とたきなの関係性の変遷を非常に丁寧に描いています。
リコリコに来た当初のたきなはDAに戻ることしか考えていなくて、千束に対してもどこか壁を作ったように接していたのですが、3話でその壁が取り払われて以降は友人として仲良くなるだけでなく、仲間としてだんだん千束のことを信頼し、最終的には掛け替えのない相棒として強固な絆を感じるようになっていく。この2人の関係性がたまりません。

恋愛と呼べるかは微妙なので、いわゆる百合とはちょっと違うかもしれませんが、あまりベタベタしてるわけではないのが逆にイイ! この関係があるからこそ、12話でのたきなの絶叫シーンが視聴者の心を抉るんですよね。あのときの若山詩音さんの演技は正に神がかってます。「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

ぶっちゃけ後半のストーリー展開や細かい世界設定はちょっとガバガバというか粗のある部分もありますが、この作品はそういう綿密な設定やメッセージ性を読み解くものではなく、千束とたきなのキャラクター性やガンアクションを楽しむものだと思うので、純粋にエンターテイメント作品として肩肘張らずに観るのが正解なのかなと思います。
エロゲーで言うと「グリザイアの果実」や「暁の護衛」に近い感じでしょうか。

物語のラストもいくらでも続編が作れる終わり方だったので、これは是非2期や劇場版に期待したいところ。

あとクルミちゃんかわいいよね。一家に1人クルミちゃん欲しい。

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