2010年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『あけいろ怪奇譚』(シルキーズプラス 2016年)

2014年に『なないろリンカネーション』(以下『ななリン』)で鮮烈なデビューを果たしたブランド・シルキーズプラス WASABIの第2作『あけいろ怪奇譚』。萌えゲーアワード2016ミステリアス作品賞を受賞。
前作『ななリン』とメインスタッフが同じで、舞台や世界観もほぼ共通なのですが、ストーリー上のつながりはほとんど無いので『あけいろ』単体でも一応問題なく楽しめます。ただ前作のキャラクターも何人か登場するため、両方プレイする予定であるなら先に『ななリン』からプレイしておきましょう。

今作の物語は主人公が仲間と共に生徒が立て続けに自殺した学校で、学園七不思議の謎を追ううちに幽霊に呪われてしまうというサスペンスホラーな内容。前作『ななリン』よりもオカルト要素が強くなり、ちょっとした異能力バトルのような展開もあります。
ちょうど椎名高志の『GS美神 極楽大作戦!!』あたりが好きな人におすすめ。

また前作よりもホラーテイストが強めで、度々恐怖を煽るような演出がでてきます。エロゲでホラーってそんなに多くないですよね。

前作のような”泣き”要素は少なくなったものの、シナリオのボリュームは大幅に増えているので、読み応えのある物語になっています。
オカルト好き・ホラー好きの方は是非プレイしていただきたい作品です。

  • ホラー要素強めのサスペンスストーリー
  • 前作主人公との邂逅
  • ”旧校舎の幽霊”との息詰まる対決
ブランドシルキーズプラス
WASABI
ジャンル学園七不思議解決ADV
初回発売日2016.3.25
DL版価格7,537円
シナリオかずきふみ
原画すめらぎ琥珀
おすすめ度80
シナリオ傾向

あらすじ

四人の女学生が立て続けに自殺した。
その衝撃的な事件は一部の学園生たちの間で不謹慎な盛り上がりを見せ、いつしかこう噂されるようになった。
四人の女学生は学園の七不思議の一つ、“旧校舎の幽霊” に呪い殺されたのだ……と。

多くの者にとってはくだらない噂であったが、主人公・佐伯社には無視しきれない理由があった。
四人の女学生が自殺してから、奇妙な夢にうなされるようになったのだ。
熟睡することができず、日に日に自覚できないほど緩やかに衰弱していくなか、社の前に一人の少女が現れる。
ベルベットと名乗った不思議な少女は、社に告げる。

――あなた、呪われている。

公式サイトより

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
あけいろ怪奇譚XP Vista 7 8 102016.3.25
なないろリンカネーション&あけいろ怪奇譚 マルチパックXP Vista 7 8 102016.12.2やや難
シルキーズプラス5周年記念豪華BOX7 8 10
2018.7.27
やや難

パッケージ版は初回版通常版の違いはなく、特典の類もありません。
『~マルチパック』と『~5周年記念BOX』は他作品との同梱パッケージですが、今では手に入りにくいと思います。正直私は実物を見たことがありません。『マ ルチパック』ドラマCDが、『5周年記念BOX』にはそれぞれのサントラCDが付属します。「あけいろ」のサントラはこれでしか手に入りません。

通常のパッケージ版はショップでもちょくちょく見かけるので手に入らないことは無いと思いますが、無ければDL版(Fanza独占)を推奨。たま~に半額セールやまとめ買いの対象になることがあります。(季節ごとの定期セールではめったに半額になりません)

システム

画面サイズは1280×720。発売当初はネット認証が必須だったのですが、今はオフィシャルサイトから解除パッチが配布されているので中古品でもプレイできます。
前作『ななリン』とほぼ同じシステムですが、やや演出が凝っているので非力なPCだと動作が重くなることがあるかもしれません。私の場合(古いノート PC)、デフォルトの設定だと重くて難儀していたのですが、オプションで画面効果速度を”速い”にして背景演出ムービーをOFFにしたらちょうど良くなりました。

この作品の特徴としては、シナリオの分岐ポイントが一目でわかるフローチャートをいつでも見ることができます。さらにオフィシャルサイトで配布(DL版はFANZAで配布)されている「ナビゲーションモード付きアップデートパッチ」を導入すると、各個別ルートへ入るための必須イベントが表示されるようになるため攻略が簡単になります。(むしろこれが無いと攻略が困難)

またこのフローチャート上ではイベントのマスをクリックすると任意のイベントから再開できるのですが、別ルートのイベントに飛んでしまうとフラグ管理の整合 性が取れなくなるせいか、場合によってはエラーが出て強制終了してしまう事があります。2週目以降は素直にはじめから(もしくは最初の選択肢から)プレイ したほうが良いかもですね。
既読スキップ以外にシナリオジャンプ機能もあるので、2週目以降もテンポ良く進めることができます。

ちなみにパッケージ版のアンインストーラーはセーブファイルも無警告で削除しやがるので注意してください。私は昔のゲームはファイルを退避させてからアンインストールするんですが、これは最近のソフトだからさすがに大丈夫だろうと完全に油断してました。もうあのプレイデータは2度と戻ってこない・・・。

シナリオ

企画及びシナリオは前作から引き続き”かずきふみ”さん。
ストーリーは立て続けに4人の女生徒が自殺した学校で、主人公の佐伯社がクラスメイトの佳奈と修司、及び学校からの依頼で調査に来た霊能探偵事務所に所属す る少女ベルベットと共に”学園七不思議”の噂を調査していくうちに、社自身も幽霊に呪われていることが判明するというホラー要素のあるサスペンス作品。
前作の主人公は大学生で街の心霊トラブルを解決するお話でしたが、今作は高○生を主人公にした学園モノです。

物語の核となる七不思議が強大な力を持つ”旧校舎の幽霊”で、共通ルートでさまざまな調査をした後、最終的な解決方法が各個別ルートで違うという構成になっています。
シナリオの雰囲気はホラー一辺倒というわけではなく、サスペンス的な要素やバトル的な要素、ほっとする日常シーンや面白可笑しいコメディシーンもあってメリハリがきいています。一部のシーンは胸糞悪いイジメの描写もあるので覚悟をしておいてください。

あと、これはライターさんの個性だと思いますが、登場人物のギャグシーンのセリフで「○○やめよ? ××して○○するのやめよ?」みたいなフレーズが頻繁に 使われます。これは前作でもよく使われてたんですが、特定のキャラの口癖というわけではなく、キャラをまたいで使われると個人的にちょっと違和感がなくもないかも。まぁ面白いからいいんですが。

グラフィック

原画・キャラデザはこれも前作から引き続き”すめらぎ琥珀”さん。非常にクオリティの高いCGを描かれる方です。
イベント絵は全部で78枚。一部ちょっとグロいCGがあるので苦手な人は注意してください。

この作品は結構登場人物が多いんですが、それぞれきちんと描き分けられています。特にメインヒロインは全員表情が違います。普通エロゲーのキャラって良くも悪くも似通った顔になってしまうことが多いんですが、1人原画家でここまではっきり描き分けている作品ってそう多くないかと。
ただヒロインのCGは正面からの構図が多いのでちょっと髪型がわかりにくいかも。私は佳奈がポニーテールだったことに後半まで気づきませんでした。

ちなみに前作『ななリン』と同様に全ヒロインに裸の立ち絵も用意されています。やっぱ裸の立ち絵はエロい…。

またこの作品では主人公の社のCGもはっきり描かれています。しかもメガネに癖毛という、エロゲーの主人公にしては結構個性的なデザインです。

キャラクター

ベルベット
学校に調査に来た葛城探偵事務所所員。貧乳。
真面目で物静か。

雛森佳奈
主人公のクラスメイトで一緒に七不思議の調査をすることになる少女。巨乳。
前作の舞台である加賀見家に居候中。

葛城葉子
年齢不詳の葛城探偵事務所所長。巨乳。

久住美里
年の離れた主人公の幼馴染で姉的存在。巨乳

るり・るか
七不思議の調査中に出会うことになる不思議な双子少女。貧乳。

佐伯社
本作主人公。
呪われたことにより一時的に霊が見えるようになる。

この他に一緒に七不思議の調査をすることになる社の親友・修司と前作にも登場した加賀見家のメンバー(伊予・葵・芙蓉・アイリス・加賀見真)が主な登場人物。
前作『ななリン』から2年がたっているという設定なので、前作の主人公の真くんが精神的に結構逞しくなってます。立派になったなぁ。
ちなみに前作のヒロインは名前がちょっと出てくるだけで物語中には出てきません。前作のどのENDからの続きなのかはあえて明示してない感じですが、強いて言うならおそらく琴莉ノーマルEND(リンカネーション)でしょうか。

ボイス

風音(ベルベット)萌花ちょこ(佳奈)杉原茉莉(葉子)上田朱音(美里)
結衣菜(るり・るか)みる
真宮ゆず桜川未央御苑生メイ藤咲ウサ
土門熱

主人公以外フルボイス。
経験豊富なベテランさんが多いですね。
加賀見家の面々も当然ながらキャストは引き継いでいます。

男性キャラもフルボイスなので前作の主人公の真にも声が付きます。実際聞いてみるとイメージピッタリのベストな配役かと。

BGM

BGMの作曲も前作に引き続き未来さんとCroissant(クロワッサン)さん。曲数は50曲。一部は前作の曲をそのまま使用しています。
前作の雰囲気を引き継いでいる曲が多いですが、今回の作風に合わせたおどろおどろしい曲も多くなっています。音楽モードがちょっと使いづらいのが玉に瑕。

個人的お気に入りは、夜の学校などで使われる「Serious night」。エンディング近くで流れる「Moving」。
「リンカネーション(MusicBox-Ver.2)」は前作をやっているとちょっとグッと来るものがありますね。

主題歌

タイトル作詞作・編曲
「緋色の空」mio/croisantcroissantmioOP
「青碧の向こう」mio/croisantcroissantmioED
「濡羽色の瞳」croissant/chocolantycroissantmioED
「Fictional love」miocroissantムーサン・ベリーED
「満月にて」Black mist ilandcroissantムーサン・ベリーED
「Day dreamer」miocroissantムーサン・ベリーED

ボーカル曲を歌うのはmioさんとムーサン・ベリーさん。
OPテーマの「緋色の空」は良い意味でオープニング曲っぽくない落ち着いた曲調のシックな曲ですが、サビの部分は力が入ってますね。歌詞もシナリオに合った内容になってます。

この作品はBADエンドにも固有のエンディングテーマが流れるのが特徴ですので、めんどくさがらずに全てのエンディングを見てください。

ムービー

プロローグ後にOPムービーが流れます。
作中のCGを加工したシンプルなものですが、OPテーマに合わせたシックな作り。
本編中に登場する幽霊も出てくるので、ちょっと恐怖も煽られるムービーです。

またこれ以外に本編の途中でも別のムービーが流れます。ベルベットルートに行く途中で流れるもので、逆にこれが流れなかったらBADエンドルートだと思ってください。

攻略

選択肢によっていわゆる”フラグ”を立てていくことによって分岐するタイプの作品なんですが、攻略が非常に難しいです。ノーヒントでプレイすると初回はほとんどBADエンドになってしまうと思います。
どのイベントがどのルートに必須なのかがわからない上に、1つでも必須イベントを取りこぼすとBADエンドになってしまうんですよね。
なのでスムーズにプレイしたい場合は「ナビゲーションモード追加パッチ」は必須。これを導入するとフローチャートに必須イベントがキャラアイコンで表示されるようになります。

BADエンドを含めた総プレイ時間はゆっくりやって35~40時間くらい。前作と比べるとかなりボリュームがあります。
推奨攻略順は、ベルベット→るりるか→葉子→美里→佳奈。ベルベットルートは言わば”表”のシナリオなので最初に。
葉子ルートはちょっと後味が悪いので美里の前に。佳奈は最後のほうがいいと思います。
すべてのTRUEエンドを見ると事件の真相が明かされる最終ルートが開放されます。

Hシーン

Hイベントは各ヒロイン3~4回ずつ。サブキャラに1回だけ陵辱シーンがあります。伏字やP音等による卑語修正はありません。
行為自体はオーソドックスなものですが、なんというかねっとりとした行為が多いような気がしますね。

1シーンあたり2~3回はするので結構ボリュームがあります。
また一部は避妊具の描写がありますが、CG上ではそんなに目立ちません。
シーン回想モードではHシーン以外のイベントも見ることができます。

ちなみにメインキャラの胸の大きさは貧乳キャラは極端に小さく、巨乳キャラは極端に大きく描かれています。ちょうど良いおっぱいのヒロインがいない・・・。

総評

名作『ななリン』の実質的な続編ということでファンにとっては期待が大きく、製作側にはプレッシャーがかかったと思いますが、色んな意味で想像以上の作品となった『あけいろ怪奇譚』。
続編でありながらシナリオの方向性を変えてきたのは結果的に凄く良かったと思います。別に前作がダメだとかではなく、同じ世界観でありながら両方新鮮な気持ちで楽しめるシリーズになっているかと。

この作品はシナリオの構成がやや特殊で、各個別ルート前半で学園七不思議の謎を解決した後にヒロイン別の個別シナリオが始まります。これは長めのエピローグみたいなものなので、ルートによっては盛り上がりが中途半端でちょっとダレてしまうかも。それぞれ良いお話ではあるんですけど。

前作は幽霊となってしまった人の悲壮感や死生観をメインに扱っていたのに対し、今作では幽霊に対する謎解きやバトル要素が多め。学園七不思議のラスボスとも言える”旧校舎の幽霊”をどう倒すかが各ルートでのポイントになります。
幽霊となった人自体は自分が死んでいることをすでに受け入れているのでそんなに悲壮感は無いのですが、一部の幽霊は亡くなった経緯が壮絶なのでプレイヤーの心が抉られるかもしれません。

成長した前作の主人公・真との関わりもこの作品の注目点のひとつ。真を始めとした加賀美家の鬼たちがシナリオに関わってくるのは一部のルートのみなのですが、あの真が立派に霊能探偵として一人前となり今作の主人公・社にアドバイスしている姿は、非常に感慨深いものがあります。

前作の雰囲気を残しつつ、ややベクトルを変えてボリュームアップしたような作品なので、続編でありながら非常に新鮮な気持ちでプレイできる作品かと思います。

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