雑記

90年代のエロゲー制作現場を描く漫画『16bitセンセーション』(若木民喜)

1990年代のエロゲー制作現場を描く(であろう)アニメ『16bitセンセーション』が間もなく(23年秋)放送される運びとなりました。
当時を知る古参エロゲオタクも、最近エロゲにハマった新規さんも、ちょっとでもエロゲに興味のある人なら視聴必須な作品です。

アニメオリジナルの主人公が現代的なタブレットらしきものを持っているのに対して、「ワープロ」や「ビデオ」といった文字が見える90年代の背景になっているのが意味深です。
「美少女は、時代(とき)を超える」というキャッチコピーから考えるともしかして…?
何にしても90年代の美少女ゲーム業界が描かれるのは間違いなさそう。

90年代(特に前半)と言えばまだWindowsも普及しておらず、パソコン業界はNECのPC-9801シリーズ(通称「キューハチ」)全盛の時代。
当時のパソコンはどんなに安くても20万以上する上に、今と比べるとできることも少ないため普及率は10%ちょっと。
そんな中、エロゲーはどんな作品でも飛ぶように売れてたというんですから、今から考えると凄い時代です。まさにエロゲバブル。

そんな90年代という正にエロゲー業界が花開いた時代が舞台となる(であろう)物語ですが、アニメのほうは今現在ほとんど情報が公開されていないので、今回は予習ということで原作漫画『16bitセンセーション 私とみんなが作った美少女ゲーム』を紹介したいと思います。

概要

作者は『神のみぞ知るセカイ』等でおなじみの若木民喜さん。原案はアクアプラス(Leaf)の原画家・みつみ美里さんと甘露樹さん。みつみさんたちはあくまでキャラデザとストーリー原案程度で、本編はほとんど若木さんが書かれているみたいですね。
主人公の女の子はみつみ美里さんをモデルにしてそうな気もしますが、そういうわけではないそうです。

私が最初にこの漫画を知ったのはエロゲVTuber望月ひまりチャンネルで紹介されたときなんですが、若木先生ってめっちゃ90年代のエロゲに造詣が深いんですね。(逆に最近のエロゲはあまりわからないらしい…)

この漫画は元は同人誌で発表されたもので、商業版1巻が同人版Vol.1からVol.4まで、2巻がVol.5からVol7までをまとめたものになります。
商業化に際して作中に出てくる商品名の許諾がいくつか取れなかったらしく、一部のネタにカットや修正が入っているみたいですね。

ちなみに同人誌での連載は今も続いていて、今年の夏コミでVol.8が発売、秋のCOMIC1でVol.9、冬コミのVol.10で完結予定だそうです。デジタル配信はされていませんが、とらのあなの通販で購入することができます。
何やら諸事情によりこれ以上の商業化は無理らしいので、商業版の続きを読みたい場合は同人誌を買いましょう。完結後に7巻以降をまとめた総集編2も頒布予定だそうです。ちょうどアニメ放送と重なるので争奪戦になりそうですね。

物語は1992年、19歳の大学生・上原メイ子がパソコンショップでアルバイトを始めたところ、実はその店の本業はエロゲー制作で、メイ子もなし崩し的にグラフィッカーとして手伝うところから始まります。

若木民喜『16bitセンセーション1』より

登場人物は主人公のメイ子のほかに、先輩グラフィッカーの下田かおり、シナリオライター兼スクリプターのキョンシーこと五味川清、「てんちょー」こと社長の六田勝、てんちょーの息子でプログラマーの六田守(10歳)など。
話が進むにしたがって会社の規模も大きくなり、社員も増えていきます。

漫画部分は半分くらい四コマで残りは通常のストーリー漫画。
だいたい1つのエピソードごとに1年が経過していくので、毎回その年に発売された有名エロゲーが実名で登場します。
やっぱり『ときメモ』や『同級生』シリーズが世に出たときはクリエイターの皆さんにとっても衝撃的だったみたい。

『16bitセンセーション1』より

またエピソードの合間には今俊郎さんによる美少女ゲーム業界コラム、巻末には若木民喜さんとゲストさんによる対談も掲載されていて、結構勉強になりますね。

90年代のエロゲー制作現場

物 語の舞台が90年代ということで、非常に時代を感じる描写が多数出てきます。CPUがペンティアムですらなく286だったりとか、ハードディスクが 120MB(←ギガじゃなくてメガ)で5万円とか、PCの電源を切る前にSTOPキーを押さないといけないとか。当時を知ってる人にとっては涙が出るくら い懐かしくなるのではないでしょうか。

『16bitセンセーション1』より

90年代前半のエロゲー制作の現場も今とはずいぶん違っています。
CGを描く際はペンタブなんて便利なものはないですからマウスを使って1ドットずつ塗っていく必要があったり、同時に使える色は16色しかないので微妙にドットを混ぜながらグラデーションを表現したりという、今では考えられない職人芸のような作業だったそうです

『16bitセンセーション1』より

逆にここから数年たつと使える色数も256色に増えて、ペンタブやフォトショップも普及して自由に描けるようになるわけですから、技術の進歩って凄いですね。

『16bitセンセーション2』より

またエロゲー業界全体も90年代は非常に儲かってたことが語られてます。
何 せどんなゲームであっても「出せば1万本売れてた」そうですからね。さらに制作人数も少なく(数人程度)、今よりも低予算で開発できる(ボイスも歌もな い)うえ、ひとつの会社が1年に3~4本発売するのも当たり前。なんともうらやましい時代です。そりゃアリスソフトもハニービル建てるわ。

『16bitセンセーション2』より

物語全体を改めて見ても、新人クリエイターである主人公・メイ子を通じて当時の制作現場の苦悩やトラブル、そして何より美少女ゲームの可能性やすばらしさを描いています。
当時の牧歌的というか、文化祭のような制作現場の雰囲気が伝わってきて、クリエイターとは全く関係ない私でもなんだか懐かしさを感じましたね。

また作中に登場する有名エロゲーについては時折若木さんによる解説コラムが挿まれていて、『同級生2』や『To Heart』がいかにエポックメイキングな作品であったかが熱く語られています。
私自身は90年代のエロゲはほとんどプレイしておらず、せいぜいelfとアリスソフト、F&C辺りのタイトル名を知ってるくらいなんですが(同級生2と下級生だけはちょっとプレイした)、勉強になると同時に新鮮な気持ちで楽しむことができました。

10月から始まるアニメはオリジナルストーリーになるっぽいですが、これを機に少しでも美少女ゲームに興味を持ってもらえる人が増えたら…いいなぁ…。

とりあえず、

『16bitセンセーション2』より

今の業界にもすごい風吹いてくれ!

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