最近はニュースを見ると、ほぼ毎日のように戦争の情報が流れてきてちょっと感覚がマヒしてしまった面もありますが、逆に戦争や平和について考えることも多くなってきました。やっぱ現実の戦争は嫌ですね。
今回紹介する作品は「―ここが平和を巡る最前線」というキャッチコピーが秀逸な『アンラベル・トリガー』。略称は「アントリ」。戦争に向かっていく世の中で、重い決断をするヒロインたちが魅力的なストーリーです。
アンラベル(unravel)というのは「絡んだ糸をほどく」という意味みたいですね。
製作スタッフは2021年にAino+Linksから発売された名作『創作彼女の恋愛公式』のメインスタッフがほぼそのまま移行しています。開発会社は大人の事情でネクストンに変わっていますが、別に喧嘩別れというわけではないっぽいですね。
物語は3つの種族(人間・獣人・吸血種)が3つの国に分かれて対立する中、3つの国の中心に位置する”フロスト中立特区”が主な舞台。戦争が勃発するかもしれない一触即発の政治状況の中で、しがない探偵の主人公と3人のヒロインの活躍を中心に描いていきます。
国家間の政治的な駆け引きだけでなく、特殊な力を持つヒュームやヴァンプによる能力バトルも熱いファンタジー作品です。
ファンタジーとリアルが上手く融合した世界観に加え、それぞれの目的をもって動く魅力的なキャラクター、物語の根底にある種族間の差別意識といったシリアスな要素を含む非常に読みごたえのある物語だと思います。
多少重い展開もありますが、熱いバトルシーンも多いうえストーリー自体はテンポよく進むため、アニメを見るような感覚で楽しむのが良いかと。『86-エイティシックス-』や『幼女戦記』あたりが好きな人には刺さるのではないでしょうか。
国家間の陰謀や水面下で暗躍する組織、様々な人間の思惑が絡み合う状況、そういったものが好きな人におすすめの作品です。
- 3つの国家の狭間で揺れる重厚な物語
- テンポが良く読みやすいシナリオ
- 3人のヒロインの精神的成長
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
アンラベル・トリガー | 10 11 | 2024.3.29 | 易 |
パッケージ版は通常版と豪華限定版があります。ちなみにパッケ絵にヒロインが6人描かれてるほうが豪華版、3人+主人公が描かれてるのが通常版です。
豪華限定版は特典として設定資料集とサントラCD、ドラマCD、追加シナリオ、アクリルキーホルダー、トレカが付属。追加シナリオ(サブキャラのHシーン3種)はダウンロード形式なのでおそらく中古品では無理ですね。
ダウンロード版(FANZA独占)も通常版と豪華限定版があり、豪華版ではキーホルダーとトレカ以外の特典がデジタルデータで付属します。
ただ正直なところこの特典内容で差額7700円というのはちょっと強気すぎる気はするかも。いやまぁ豪華は豪華なんですが、ちょっとしたエロゲが1本買えちゃう価格差ですし。
今現在(2024年11月)、パッケ版の豪華限定版がまだ残っているので今から買うならこちらを推奨。ぶっちゃけAmazonだと新品が1万円以下で買えます。
これ以外にBOOTHにて同人誌『UNRAVEL TRIGGER PROJECT STAFF NOTE -アンラベル・トリガー スタッフ本-』がデジタル販売されているのでお好みで。
システム
画面下にテキストが表示される通常のAVGタイプのシステムです。画面サイズは1920×1080のフルHD。
機能的にはほぼそろっていて、普通にプレイするうえでは特に不満はありません。
オートモードのウエイト時間もテキストの長さによって変わる安心設計。
マウスカーソルの追尾機能があるのはいいんですが、タイトル画面では必ず「START」の位置に移動します。これメッチャ誤クリックしやすいので勘弁してほしかったです。
全ての立ち絵には目パチ・口パクを完備し、台詞の読点ではちゃんと口パクも止まります。
お気に入りボイス登録機能はあるものの、バックログからは登録できないのはやや難点でしょうか。
ちょっと気になったのはこのソフト、プログラムがやや重いです。
プレイの進行自体は問題ないんですが、メモリやCPUにかなり負荷がかかるみたいで、私の古いPCだと常時CPUファンが高速回転するほど。
これでも修正ファイルでかなりマシになったらしいんですが、非力なPCやうるさいファンを使ってる方は注意してください。
また、バックログからジャンプするときは数行程度でも結構時間がかかります。PCのスペックにもよるかもしれませんが、最初フリーズしたのかと思いました。
シナリオ
シナリオライターはCanpusの『ウソシリーズ』や、萌えゲーアワード2021で大賞を受賞した『創作彼女の恋愛公式』を手掛けた工藤啓介さん。他にサブライターが3人ほど。工藤さんは企画やディレクターも兼任しているみたいです。最近ではこういう方少なくなりましたね。
綿密な世界設定
物語はヒューム(人間)・アニマ―(獣人)・ヴァンプ(吸血種)という3つの種族が、カージ合衆国・ジーミイル共和国連邦・ヴィルカール帝国という3つの国に分かれて対立する中、3つの国の中心に位置する”フロスト中立特区”が主な舞台。
3つの種族はそれぞれ特徴があって、ヒュームは科学力、アニマ―は身体能力、ヴァンプは生命力に秀でているという設定です。中でもヴァンプは他の種族の血を”主食”としているうえ、首をはねられない限り死なないほどの再生能力を持っています。そのためヴァンプは自分たちのことを優良種だと思い込み、他の種族、特にヒュームに対しては露骨に劣等種と蔑むほど。
それに対してヒューム側もヴァンプに対する反発感が最高潮に達し、数年前にヒュームの住む合衆国とヴァンプの住む帝国との間で戦争が勃発。始めは帝国が優勢で合衆国の領土を侵略するも、合衆国は新型爆弾「アーマゲドン」(核兵器みたいなもの)を使用。膠着状態になったところでアニマ―の国・連邦が介入し停戦。帝国が奪い取った領土を”中立特区”として連邦が管理している、というのが物語開始時点の状況です。
この世界の技術水準はほぼ現実世界と同じ。テレビはもちろん、ネットやスマホも普通に使っています。加えてヒュームやヴァンプの一部には特殊能力を使える者もいる、という設定です。
3つの国にはそれぞれ現実の国に即した文化や政治体制になっていて、合衆国はアメリカ+日本、連邦はソビエト連邦、帝国は第一次大戦前後のドイツ帝国がモデル。
この3つの国家による微妙なパワーバランスの変化が物語にドラマを生み出していきます。
構成&描写
物語は共通ルート6話、個別ルート3~4話のエピソード別構成で、各話終了時はエンディングテーマと共にスタッフロールが流れます。
また各話終了直前には、意味深な台詞だったり意外な展開を見せて続きが気になるところでエンディングを流すという、アニメや漫画のような幕引きの演出です。
ちょっと気になったことを言えば、物語中の戦闘描写がやや淡泊なところがあります。
各キャラクターは特殊能力を持っていることが多いので、いわゆる能力バトル展開になることがあるんですが、そのバトルシーンが正直あんまり盛り上がらないんですよね。
なんでかな~と思ったらこの作品、能力名や技名がないんですよ。「約束された勝利の剣!」とか「電磁抜刀『禍』!」みたいな。やっぱ厨二バトルは技名叫んでなんぼなとこもありますよね(笑
またバトルシーン自体も力押しで決まることが多く、せっかくの能力が単なる飛び道具扱いしかされないのはちょっと残念かも。
まぁこの作品は能力バトルがメインというわけでもないので、バトルシーンは添え物みたいな感覚でプレイしたほうがいいかもしれません。ラストバトルはちゃんと盛り上がりますし。
グラフィック
原画・キャラデザインは有葉(あるふぁ)さんとサイキライダーさん。
非情にクオリティが高いイラストで、特に凛々しい場面ではとてもカッコよく描かれています。
私、実は有葉さんの絵って00年代の『G線上の魔王』以来なんですが、あのころと比べてもずいぶん今風の絵になっていて、時代にあった画風ですね。いい意味で言われなきゃ気付かないかも。
ただ通常版パッケージ絵にある手を突き出したミリィのポーズ(いわゆる”べっかんこう立ち”)に、なんとなく00年代風味を感じます(笑
イベント絵は全部で71枚。SD絵が3枚。物語の長さのわりにCGは少なめでしょうか。
戦闘シーンのCGはポーズを決めた各キャラのアップが表示されるのみで、複数のキャラが戦っているようなCGはありません。
ちなみに戦闘シーンでは銃も描かれますが、FN P90やイングラムM10といった実在の銃がモデルになってるっぽいですね。
キャラクター
ミリセント・フリード・レオンハルト
ヴィルカール帝国の第一皇女で、通称ミリィ。帝国の全権大使としてフロスト中立特区に赴任。種族はヴァンプ。
平和を願い、他種族との共生を望む理想主義者。巨乳。
ソフィア・ノスコーヴァ
ジーミイル共和国連邦の秘密警察・CSSの中将。種族はアニマ―。子供っぽく見えるが主人公と同年代。
常に冷静で有能な合理主義者だが冷酷。状況によっては手駒を使い捨てにし、情報を聞き出すためなら捕虜の拷問もいとわない。
小花衣 レイリ
中立特区にある学園の学生で、トリガー探偵事務所のアルバイト。種族はヒューム。
活発で明るい少女だが、とある出来事によりヴァンプに対する憎しみを抱く。
榊 カイ
本作主人公で、トリガー探偵事務所に所属する探偵。種族はヒューム。
金のために仕事をするが、一度受けた仕事は最後までこなす責任感がある。
主要キャラはこの他に、ミリィの近衛騎士で幼馴染でもあるシルヴィア、ソフィアの副官でメイドでもあるアリーシャ、レイリのクラスメイトで親友の水乃宮若葉などなど。
キャラの年齢が比較的高めなのも特徴的。学生はレイリと若葉のみで他のキャラは成人済み。お酒も普通に飲みます。
かなりたくさんのキャラが出てきますが、所属や立場がハッキリしているので意外と混乱はしないかと。
各国の人物をまとめるとだいたいこんな感じ。この他にも多くのキャラが登場します。
ヒロイン | パートナー | 実力者 | 国家元首 | |
帝国 | ミリセント | シルヴィア | ヴィルレーベン卿 | ハインツ皇帝 |
連邦 | ソフィア | アリーシャ | ドルゴフ局長 | ギローイ書記長 |
合衆国 | レイリ | 若葉 | 佐藤全権大使 | パーカー大統領 |
メインからサブキャラに至るまで、それぞれの人物がそれぞれの目的で物語に深くかかわってくる、非常に考えられたキャラ配置です。
来歴に秘密のあるキャラも多く、話が進むにつれて「実はこのキャラは○○だった」みたいな展開が多いのも見どころのひとつ。
個人的お気に入りキャラは同志中将ことソフィア。普段冷静な彼女がちょっとテレて顔を赤くするシーンがたまらなく可愛いです。ただこの若さで中将という階級はちょっと違和感があるかも。ガンダムで言えばドズル・ザビと同じですし。いやドズルも28歳だけど…。
サブキャラでは喫茶店のバイトで主人公の幼馴染・ナトリがいいですね。ちょっとダウナー系でぶっきらぼうな感じが逆に主人公との付き合いの長さを感じます。
ボイス
明羽杏子(ミリィ) | 松岡侑里(ソフィア) | くすはらゆい(レイリ) | |
実羽ゆうき | 花宮楓 | 葉月ひかり | 水町まい |
夏野ぱいん | 神崎セリカ | 須藤まこ | 小倉結衣 |
南柚月 | 結城ほのか | ||
桜歌しゃち | いちごみるく | 大凶魔神天誅 | 九財翼 |
七篠響 | 蒼樹勇人 |
主人公以外フルボイス。
実力派の声優さんを揃えた安定的なキャスト陣という感じでしょうか。
センターヒロインのミリィを演じるのは人気と実力を兼ね備えた明羽杏子さん。最近お仕事がお忙しそうでエロゲの仕事も少なくなるかなとも思ったんですが、全然そんなことないようでひと安心。ミリィのような”未熟な理想主義者”演じさせたら明羽さんの右に出る者はいませんね。某アニメの少佐とキャラが被ってる気もしますがむしろそれがいい!
ソフィア役の松岡侑里さんは出演本数はそんなに多くない方なんですが、演技のほうは問題ないですね。むしろ可愛らしいのに大人びてるソフィアというキャラにぴったりです。
レイリ役のくすはらさんは、もう説明不要の実力者。いい意味で”いかにもヒロイン”という感じの可愛らしい声です。
男性声優陣ではハインツ皇帝役の大凶魔神天誅さんが異彩を放ってます。なんでこんなベテランさんが? ちなみに「嘘である」とは言いません。
パーカー大統領役のいちごみるくさんは美少女ゲーマーならおなじみの声ですね。大統領という割にちょっと頼りなさげな気もしますが。
BGM
BGMの作曲は樋口秀樹さんと西坂恭平さん。樋口さんはWHITE-LIPSの楽曲を制作されている方として界隈では有名ですね。
ボーカル曲を除いたBGMは全部で29曲。やや少なめでしょうか。
個人的お気に入り曲は、物語が動き出した時に流れる「境界線上のセレクト」。
3拍子のリズムが優雅さと神秘さを感じる「上手の猫が爪を隠す」。
緊迫した戦闘シーンで流れる「残光からの刺客」。
叩きつけるようなピアノの音が熱い勝ち確BGM「変革の弾丸」。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「Unravel Sky」 | ハラユカ。 | 西坂恭平 | 佐咲紗花 | OP |
「Contract Trigger」 | joru | 西坂恭平 | 新海雅代 | ED |
「スノウドロップ」 | joru | 折倉俊則 | 柊木環希 | ED |
「Deciding the future」 | ハラユカ。 | 折倉俊則 | Ayumi. | ED |
「Various Sky」 | ハラユカ。 | 折倉俊則 | 佐咲紗花 | ED |
OP曲「Unravel Sky」を歌うのは、アニソン・ゲーソンシンガーの佐咲紗花さん。
力強くてノリの良い曲調に、思いっきりミリィの心情を歌った歌詞が心に刺さります
新海雅代さんの歌うエピソードED曲「Contract Trigger」はカッコよくて激しめの曲。OP曲として使ってもいいくらい。
ミリィED曲「Various Sky」はEDらしい爽やかな曲調。これもミリィの心情を表した歌詞ですが、こちらは物語を通じて「成長したミリィ」の内容になっています。OP曲の歌詞と比べると面白いですね。
ボーカル曲のフルバージョンは豪華版に付属のサントラに収録されています。というか現在のところこれしか入手手段がありません。
ムービー
1話終了時にOPムービーが流れます。
ムービー制作は映像制作チームgram6design(グラムロックデザイン)のtatsumiさん。
全体的に赤色を基調にしたムービーで、動きのあるイベント絵と拳銃のイメージ映像を交互に登場させる構成。クリアした後で改めて見ると、弾丸にちゃんと意味があったんだと気づかされます。
あとソフィアがゆっくりと目を開くシーンはカッコいいですね。
すべてのムービーは(エピソード終わりのEDも含め)シーン回想で見ることができます。
攻略
共通ルートの6話終了時に出てくる選択肢で個別ルートが分岐します。選択時のセーブファイルは残しておきましょう。
選択肢といっても事実上ヒロインを選ぶだけなので迷うことはないはず。
推奨攻略順は、レイリ→ソフィア→ミリィ。
レイリルートは王道的なので最初にプレイすることを推奨。
ミリィルートはロックがかかっていて、レイリとソフィアルートクリア後に開放されます。
総プレイ時間はオートモードでゆっくりやって35~40時間。だいたい1話あたり2~3時間くらいでしょうか。
Hシーン
シーン回想に登録されるHシーンは各キャラ3回ずつ。そのうち1回はクリア後のアフターシナリオなので、本編中は2回。
行為の内容はオーソドックスなもので、尺はシナリオゲーとしては少し長めでしょうか。全員に口でするシーンがあり、ミリィとレイリは胸でするシーンもあります。この2人は元々巨乳設定ですが、胸でするときはかなり大きく描かれますね。
ヒロインは台詞中に卑語は言わないので修正等はありません。
あとこの作品、モザイクがかなり細かくて性器の形がほとんど見えちゃってます。これソフ倫的に大丈夫なんですかね?
いや女性器はともかく、男性器の形を見せられるって誰得やねん(笑
感想
この作品はゴリゴリのシナリオゲーで、扱っているテーマやシナリオ展開、キャラクターの動きなど見どころが多く、非常に読みごたえのある物語でした。個人的にこういうの好みなのでもっと増えてほしいです。
トロッコ問題
この物語、特にミリィルートでは「1人の命を犠牲にして5人を助けるか、1人の命を尊重し5人を見殺しにするか」という、いわゆる「トロッコ問題」をテーマにしています。(元ネタになっている本『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル)ではちょっと趣旨が違うんですが、まぁたいてい「多数の命のために少数の命を犠牲にするのは是か非か?」みたいな文脈で問われますね)
他の物語の世界でも(そのまんまではないものの)そういった問いをテーマにした作品は結構あったりします。有名どころだと虚淵玄さんの『Fate/zero』や、エロゲではオーガストの『穢翼のユースティア』でも似たようなテーマが扱われてました。
「少数を犠牲にするか、多数を犠牲にするか」というのは客観的に見れば結論はすぐ出そうなものです。しかし、いざ自分がその選択をする立場になったらと想像すると、その責任の重さは尋常ではありません。
他作品だとあいまいな結末にすることもよくあると思うんですが、この作品だと為政者としてハッキリ結論を出しているので好感が持てます。
各キャラクターの成長
帝国の皇女であるミリィはまさにこの「トロッコ問題」と対峙していきます。
序盤に主人公からこの問題を問われたとき、ひたすら平和を訴え「1人も5人も両方助ける」というある意味身もふたもない無邪気な答えを出すミリィ。そんな理想主義者のミリィがいざ戦争が不可避の情勢になったとき、どういう決断をするのかもこの物語の見どころのひとつ。
レイリやソフィアといったヒロインも個別ルートを通じてそれぞれの成長を描いています。レイリは他民族に対する憎しみ、ソフィアは自分の目的のために他人を駒として扱うことなど、それぞれの認識が主人公・カイと関わることによってどう変化していくかが重要なテーマ。
またこの作品、前半の共通ルートでは主人公のカイが3人のヒロインに結構モテモテになってちょっとしたハーレム状態になります。
それだけならまぁ他作品でも良くある展開なんですが、この作品の場合、個別ルートに入ると「選ばれなかったヒロインが(事実上)振られる」展開が必ず用意されているんですよ。いわゆる「負けヒロイン」であることを自覚させるというある意味残酷な流れなんですが、そういった失恋もヒロインの成長過程のひとつとして描かれています。エロゲだとこういうのあんまりないですよね。アニメでいうところの「滑り台」的な。
速すぎるシナリオ展開
様々な要素がギュッと詰まった作品ではあるんですが、ちょっと気になったことも。それは話のテンポや展開が速すぎるということ。
シナリオのテンポが速いこと自体は読みやすくていいんですが、ちょっと展開が速すぎて端折った感があるシーンもありました。例えば、キャラクターにとって割と重要な決断がいともあっさり行われていたり、危険だと言われていた帝国への訪問があっという間に成功したり。
重要な出来事が良くも悪くもトントン拍子に進むことが多いので、ちょっと拍子抜けしてしまうこともありましたね。
なので実際にプレイするときは「描かれていないだけで間にいろいろあったんだろうな」と適当に脳内補完しながら読んだほうがいいかもしれません。
ただ物語全体としてはテンポが速いぶん非常に内容が濃く、満足度の高い作品でした。
特に最終ルートであるミリィルートではグランドルートともいうべき総力戦で、「ここは俺に任せて先に行け」を地で行く王道展開に熱くなること必至。
考えさせられるテーマに綿密な世界設定、それぞれのキャラクターの思惑や国家間の駆け引きなど、非常に見どころが多くて没入できる物語だと思います。
これアニメ化とかしたら面白そうだけど無理かな…。
それよりもナトリは? ナトリのHシーンはどこ?