「起立! 精! 着床――」
いやもうこの号令でやられました(笑
こういうバカバカしいセリフ大好き。
今回紹介する作品は2018年に彗星のごとく登場したQruppo制作の『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?』。公式略称は「ぬきたし」。
萌えゲーアワード2018にてシナリオ賞金賞、及びニューブランド賞受賞。(ちなみに続編の『ぬきたし2』では2019年の大賞を受賞)
Getchu.com美少女ゲーム大賞2018ではシナリオ部門3位、キャラクター部門3位、ミュージック部門2位。2018年5chベストエロゲ―投票では2位(得票数では1位)。
2018年は他にも『ランス10』や『サマポケ』・『アメグレ』といった名作ソフトが発売された近年まれにみる豊作の年でしたが、その中でも『ぬきたし』は突出して話題になった作品です。
制作ブランドであるQruppoは「はとのす式製作所」という同人ゲームサークルを前身としているのですが、この作品で鮮烈すぎる商業デビューを果たして一気に注目ブランドに上り詰めました。
物語は人々が”性産的行為”として日常的にセックスが推奨され、不特定多数の相手とセックスしないと罰せられてしまう制度「ドスケベ条例」が制定された常夏の島・青藍島が舞台。島の治安維持を担うSHOや学園の風紀委員であるSSに追われながらも「誇り高き童貞」を自称する主人公・橘淳之介が体制に反抗し、ドスケベ条例を潰すために仲間の女の子たちの共に行動していく、というのが大まかなストーリー。
設定とあらすじだけ見るとおバカな抜きゲーのように見えますが、実際は手に汗握る熱い展開が魅力の燃えゲーです。このギャップがまたいいんですよね。荒唐無稽な設定なのにキャラクター本人たちは大真面目だからこそ物語に引き込まれていきます。
感覚的にはトリガー制作のアニメ『キルラキル』に近い感じでしょうか。ああいうノリと勢いで突っ走る熱い物語が好きな人におすすめの作品です。
作中ではモブキャラが日常的に人前でセックスしてアンアン喘いでますし、ちんこだのまんこだの下品な下ネタワードが頻出するため、正にエロゲーでしか描けない物語の筆頭作品。
それなのに扱っているテーマは割と真面目なものだったりするので、プレイ後は「正義とは何か」「マイノリティとは何か」ということを考えさせられる内容です。
そしてなんと2025年には絶対不可能と思われていたTVアニメ化を果たしました。
アニメの制作はパッショーネ。監督は『恋愛フロップス』や『ソウナンですか?』を手掛けた長山延好さん。
内容があまりにもエロ過ぎたせいか、画面全体に規制がかかる地上波向けの「全面規制ver.」、一部の画像に規制がかかるネット配信向けの「配信限定ver.」、AT-XとBlu-rayのみで見られる規制なしの「青藍島ver.」の3種を用意。それでも問題があると思われたのか、配信はDMMとアニメフェスタの2社のみ。さらに地上波も4社のみで、TOKYOMX1に至っては「音声のみ放送」という前代未聞の展開となりました。
- ドスケベ条例という下ネタ全開のぶっ飛んだ設定
- セックスをさせようとする敵との熱い攻防
- マイノリティとどう向き合うかという真面目なテーマ

シナリオ傾向 |
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購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?(初回版) | 7 8 10 | 2018.7.27 | 並 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?(通常版) | 7 8 10 | 2018.8.31 | 易 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?2(初回版) | 7 8 10 | 2019.7.26 | 並 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 1+2パック | 7 8 10 | 2019.7.26 | やや難 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?2(通常版) | 7 8 10 | 2019.10.11 | 易 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? Remaster 1+2パック | 10 11 | 2024.6.28 | やや難 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? Remaster | 10 11 | 2025.2.28 | 並 |
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 2 Remaster | 10 11 | 2025.2.28 | 並 |
無印『ぬきたし』は初回版である「LIMITED EDITION」と通常版の「NORMAL EDITION」の2つがあります。パッケージの大きさが全く一緒なのでパッケ絵で区別してください。女の子がいっぱい描かれているのが初回版、夕日をバックに主人公とヒロインが1人ずつ描かれているのが通常版です。
初回版には特典としてサントラCD・設定資料・書き下ろし小説が付属します。
『ぬきたし2』は続編的なファンディスク。無印メインヒロインのアフターストーリーと、無印でサブキャラだったSSビッグスリーとのIFストーリーが収録されています。こちらも初回版にはサントラ・設定資料・書き下ろし小説が付属。
『1+2パック』は文字通り無印と『2』を同梱したもの。それぞれの初回版に付属した冊子類と主題歌CDが付属。
『Remaster』版はUIを刷新し、いくつかの機能を追加したもの。それぞれ初回版の特典を再収録し、『Remaster 1+2パック』にはBOOTHで販売されたサイドストーリー『スス子ルートアペンド』も収録されていますが、現在はややプレミア化。
残念ながらコンシューマ版は発売されてません。当然ですね。ていうか無理ですね(笑
今から買うなら続編と一緒になった『1+2 Remaster』版を推奨。
ダウンロード版(FANZA独占)が確実ですが初回特典の冊子は付きません。ちなみに旧版のダウンロード販売は停止されているので、今販売されているのは全てRemaster版になります。
単品のダウンロード版はサントラ付きでも販売されていますが、サントラは別に購入することも可能です。
ダウンロード版の値段はそんなに高いわけでもないですが、滅多に割引にならない(なっても10%OFF程度)なのでやや割高。
なので安く済ませたいなら旧版のパッケージ版を中古で。初回版はちょっと前まで1万越えのプレミア価格でしたが、今では値段もこなれて買いやすくなっています。
システム
画面下にテキストが表示されるオーソドックスなADVタイプのシステムです。使用エンジンは椎名里緒。画面解像度は1600×900。
キーボード操作にも対応しているのでキーボード派の人も安心。
普通にプレイするうえで必要最低限の機能は備えています。Remaster版ではお気に入りボイス登録とバックログからのジャンプ機能が追加されました。
オートモードのウエイト時間はテキストの長さによって微妙に変わるっぽい? ただそんなに大きく変わるわけではありません。それよりも台詞のボイスを聞いた後にもちょっとウエイト時間があるのはややテンポが悪いですね。
セーブ/ロード画面にはそれぞれのファイルの下にデリートボタンがあるのですが、間違って押さないようにしてください。確認メッセージの類は出ずに即削除されます。
一度見たエピソードは全てタイトル画面の「シナリオ選択」から振り返ることが可能。その際エピソードのタイトルが「非処女は童貞に恋してる」とか「文学少女とハメたがりの生徒」みたいに人気のエロゲやアニメのパロディになっています。これ元ネタ全部わかる人いるんでしょうか。
ちなみに奈々瀬ルートに至っては「ドスケベの中の戦争」とか「小さな包茎戦」といった感じでほとんどがガンダム関係のサブタイトルになってます。
エピソードの合間にはアイキャッチとタイトルコールが入ります。その際のタイトルコールは直前までのキャラやシーンに合わせた個別のもの。例えばエロいキャラが出てきたシーンではそのエロいキャラのエロい声で「ぬ・き・た・し♡」みたいなコールになります。こういうのアニメっぽくていいですね。
ちなみにRemaster版の動作環境はCPUがCore i 8000以降、メモリが16GB以上、ビデオチップがGeForce GTX1660Ti以上という2Dゲーにしては結構なスペックを要求してきますが、さすがにそこまでの性能は必要ないと思います。ただPC性能が低すぎると動きがカクカクになる恐れはあるので、心配なら体験版を動かして確認したほうがいいかも。それで無理そうなら旧版にしましょう。
シナリオ

企画はナガトサチさん、シナリオライターはQruppoの倉骨治人さんと神近ゆうさん。同人時代から書かれている倉骨さんがメインっぽいですかね。
物語は不特定多数の人間とセックスすることが半ば強要される島・青藍島へ主人公の橘淳之介と妹の麻沙音が2人で引っ越してくるところから始まります。
しかし淳之介は恋人でもない女性とセックスをするのを良しとせず、妹に至ってはガチレズのため異性とのセックスができない兄妹。学園内でもセックスを強要してくる生徒や風紀委員から妹を守るため仲間を募って秘密組織NLNSを立ち上げ、特殊なアイテムや作戦を立ててセックスから逃れていくドタバタアクションストーリー。
一見するとそれこそ抜きゲーのようなハチャメチャな設定ですが、ドスケベ条例が島に施行された経緯や島の治安を守るSHOとその下部組織であるSSなど、意外と(?)細かいところまで作り込まれています。こういう「バカなことを真面目にやる」作品っていいですね。
加えて島に入るときは全員厳格な性病検査が行われ、女性には避妊用のピルを支給、同意のない凌辱行為や一定の年齢に達していない子供との行為は処罰対象になったりと、ちゃんと一定のルールが存在します。
テキストは最初からコメディ重視全開。下ネタやエロネタはもちろん、漫画やアニメなどのオタクネタやエロゲ業界ネタまで頻繁に出てきて笑わせにきます。
特に下ネタに関しては台詞中に卑語が多く、日常的にちんこだのまんこだのといった下品な言葉が飛び交う抜きゲーチックな空気。作中に出てくる用語にも「体イク祭」や「大感射精祭」みたいにいちいちエロワードが入るほど。
ただ物語が進むにつれてだんだん感覚がマヒしてきてそれが当たり前になってくるんですよね。なんだか自分も島の住人になった気分になって、思わず日常生活でも「孕めオラ!」とか言ってしまいそうになります。気をつけましょう、あなたの住んでいる世界は青藍島ではありません。
また敵となるSSやSHO隊員との戦いも乳首ローターで悶絶させたり膣やアナルにバイブを突っ込んで一瞬で昇天させたりと、あまりにバカバカしいのに一周回って逆に熱いくらい(笑
シナリオ終盤はさすがに真面目なシーンも多くなりますが、要所要所で笑わせてくるのですごくバランスの良い作風です。
ある種おちゃらけた作風ですがテキストのクオリティは非常に高いです。文章自体は非常に読みやすく、誤字脱字もほとんどありません。
また「須臾」「峻拒」「敷衍」「白晳」「惹起」「逍遥」「隘路」「畢竟」「喫驚」など、読みはもちろん意味もちょっと分からないような難しい言葉が結構出てきます。エロゲーのライターさんって難しい言葉を使いたがる人も多いですが、今作は特に難しかったかも。これ分からないの私だけじゃないですよね?
ちなみにWikipediaの作品ページには続編を含む全ルートの詳細なあらすじが書かれているのでプレイ前は見ないようにしましょう。というかあれ書いたの誰だよ(笑
グラフィック

メインの原画家は浮丸つぼねさん。一部のサブキャラに如月千幸さん。
メインキャラはほぼ浮丸さんが描かれているみたいですが、キャラによってすごく個性が出ています。ヒナミや美岬は目がクリッとしたかわいい表情をしていますが、奈々瀬はどこか悪女っぽい顔立ちをしています。こういう顔をメインヒロインで描く人ってあんまりいないですよね。
イベントCGは全部で69枚。その他に背景を自由に変えられるキャラごとの戦闘シーンCGが11枚。
日常的なシーンも描かれますが、どっちかというとHシーンのCGが多め。
戦闘シーンのCGは終盤まで同じものが使いまわされるのがちょっと残念です。
あと背景画像も同じものが多いですね。作中では日本家屋や地下室のシーンが結構あるんですが、違う建物でも基本的に同じ背景が使われます。
主人公たちの敵となるSSの制服は胸丸出しの煽情的なデザインですが、見慣れてくるとアレが普通に感じるようになるから不思議。
キャラクター

渡会 ヒナミ
見かけはロリっ子だけどメンバーの中では最年長の3年生。口癖は「ロリじゃないですけど!」
小学生並みの外見から”性産年齢”に達していないとみなされ未だ処女。
片桐 奈々瀬
主人公と同い年の2年生。家事が得意で、バイトしている家事代行サービスとして主人公の家にやってくる。
ギャル風の派手な見た目と言動から学園一のカリスマビッチとして有名だが実は処女。
畔 美岬
主人公とクラスは別だが同級生の2年生。体型を気にしていて、ふくよかなお腹の肉がコンプレックス。
存在感がなさすぎて誰にも相手されないため未だ処女。性に対する認識は他の島民と変わらず、人前でも平気でオナニーしたりする。
橘 淳之介
本作主人公の少年。両親の事故死をきっかけに生まれ故郷である青藍島に帰ってきた。
エロゲを愛するオタクでビッチを嫌う処女厨。ドスケベ条例に反抗し「誇り高き童貞」を貫くため反交尾勢力NLNS(No Love No Sex)を立ち上げる。
メインヒロイン3人と淳之介の実の妹である麻沙音を加えた5人がNLNSのメンバー。
加えて学園の風紀を取り締まるSSのTOPである冷泉院桐香・糺川礼・女部田郁子が中心的な登場人物。
さらにアダルトグッズショップの手嶋やドスケベ条例を制定した仁浦知事、NLNSのスポンサーである本名不詳の老人といった男性キャラも物語に深く関わってきます。
メインヒロインの中では奈々瀬が個人的にお気に入り。
こういう主人公と対等な立場で互いに信頼しているキャラって大好きです。対等というかどちらかというと少しお姉さんっぽいポジションでしょうか。「もう、しょうがないわね」とか「あんたがリーダーなんだから、あんたが決めなさい」みたいな優しくもあり厳しくもある女性にずっとそばにいてほしい。なんとなくですが往年の名作『パルフェ』(戯画)に出てきた夏海里伽子を彷彿とさせます。
またヒロインではないにもかかわらず、SSの幹部3人も非常に魅力的に描かれています。
鬼教官のように規律に厳しい礼に、自由奔放ながら戦闘力はトップの郁子、1年生ながら圧倒的な能力とカリスマ性を持つ桐香。もうこっちがメインヒロインでもよくね?と思うくらいキャラが立ってます。
特に礼はとあるルートで過去までがっつり描かれ、まるでヒロイン級の扱いです。普段厳しい礼がふとした拍子に顔を赤らめるのが可愛すぎる…。
残念ながら本編では攻略対象ではありませんが、SSの3人は続編の『2』にて個別シナリオが用意されているので是非こちらもプレイしましょう。本編では描かれなかった3人の過去や思いが綴られます。
ボイス
飴川紫乃 / 小澤みのり(ヒナミ) | 柳ひとみ / ―(奈々瀬) | こはる凪 / 岡本理絵(美岬) |
そらまめ。/ 小秋あこ | 沢野ぽぷら | 花澤さくら / ― |
水野七海 / 藍羽七海 | 倉田ありあ/ 井ノ上奈々 | 天知遥 / 浜るちあ |
伊ヶ崎綾香 / 伊咲芽衣 | ||
インプレッサ次郎 | 椨もんじゃ | 出雲醒 |
椨もんじゃ |
主人公以外全キャラフルボイス。
キャスト陣はベテランさんもいますが、どちらかというと若手の方や同人がメインの声優さんが多いですね。いかにも新規ブランドっぽいですが、演技のほうは全く問題ありません。
一部のキャストさんはモブキャラも兼ねてますが、クレジットにはどのキャラを担当したのか全て表示されます。わかりやすいキャラもあれば全く気付かないものもありますね。
ちなみにアニメ版では一部のキャストさんが全くの別人に変更になっています。
ヒナミ役の飴川紫乃さんは今でこそ出演作品の多い人気声優さんですが、この作品が出たころはまだデビュー間もない若手。なんだか時代を感じます。
奈々瀬役の柳ひとみさんといえば後に出演した『ハミクリ』(まどそふと)の妃愛が人気ですが、この作品のような「気の置けない同い年の仲間」感のある演技もいいですね。アニメ版で全く別の方に変更になってしまったのがちょっと残念です。いやアニメ版の方もこれはこれでいい感じですけど。
一番大変そうだったのが主人公の妹である麻沙音役の”そらまめ。”さん。ダウナー系のだらけたシーンや兄にベッタリのブラコンシーン、気に入らない相手に毒舌を吐きまくるシーンや戦況を的確に把握して淳之介たちに指示を出すオペレーターとしてのシーンなど、状況やテンションの激しく変わるキャラを見事に演じ切っています。
特に興奮して「オタク特有の早口」になるシーンは必聴です。これぞプロの技(笑
そらまめ。さんはぬきたしの公式WebラジオでもMCを務められているのでこちらもお勧め。
BGM
BGMの作曲は金閉開羅巧夢(現名義はえびかれー伯爵)さん。
音楽鑑賞モードで聴ける曲は35曲。このモードはループ再生ができず、1ループでぶつ切りになるのでちょっと使いづらいです。
全体的にウッドベースのリズムが目立つジャズっぽい曲が多いのが特徴的です。
音響もまるで室内で演奏しているかのようなちょっとこもった感じになっています。
個人的お気に入り曲は日常シーンで流れる「AM」一昔前の探偵ADVで流れるようなシックな曲です。
敵との攻防時に使われる「ケツ路を開け」は緊張感と共にどこか楽しんでいるようなピアノのメロディーが印象的。
SSのテーマともいえる「Magicians」はジャズテイストあふれる良曲。なんだか『カウボーイビバップ』みたいなハードボイルドな空気を醸し出します。
戦闘シーンで使われる「強きモノども」は静かなイントロで始まり、まるでアドリブで演奏しているような中盤のピアノのメロディーが続き、終盤の壮大さを感じるメロディで〆る構成が見事。
主題歌
タイトル | 作詞・作曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|
「非実在系女子達はどうすりゃいいですか?」 | 金閉開羅巧夢(えびかれー伯爵) | 綾瀬理恵 | OP |
「THE APPLE IS CAST!」 | 金閉開羅巧夢(えびかれー伯爵) | 夢乃ゆき | OP |
「May day+」 | 金閉開羅巧夢(えびかれー伯爵) | 雪(綺良雪) | ED |
綾瀬理恵さんの歌う1stOP「非実在系女子達~」はキャラゲーチックでコミカルな曲。いい意味で軽いノリの雰囲気ですね。
夢乃ゆきさんによる2ndOP「THE APPLE IS CAST!」は燃えゲーOPに相応しい激しめの曲。歌詞も英語が多くぶっちゃけ何言ってるのかよくわからないですが、その辺も1stOPとのギャップが激しくて互いに引き立てている感じでしょうか。
ちなみに音楽モードではボーカル曲を聴くことはできません。聴けるのはOP曲のインストVerのみ。なんで?
その代わりYoutubeの公式チャンネルから2ndOPのフルバージョンが配信されています。
ムービー
長めのプロローグの後、最初のOPムービーが流れます。
ムービー制作はSyamoさん。
コミカルな主題歌に合わせてNLNSとSSのSDキャラが走り回る楽しいムービーです。途中でスーパーマリオなどのファミコンゲームのパロディがあるあたり制作者の年代が垣間見えます(笑
そして個別ルート開始時に満を持して流れる2ndムービー。
バトルものであることを強く意識した内容で、多分制作側としてはこっちが本命のムービーなんでしょうね。
途中までは赤と黒を基調としたシルエット中心の激しくももシックなつくりですが、どのシルエットもちゃんとキャラがわかるようになっています。
そして中盤で間奏が始まったと思ったら突然キャラの声が聞こえて視聴者をびっくりさせた後、作中唯一声がつく淳之介の「いくぞ!エンゲージ!」の掛け声とともに一気にキャラに色がつく演出は見ていて気持ちがいい。
1分半の(エロゲーにしては)短いムービーですが、制作者であるSyamoさんのセンスがあふれる、熱くてカッコいいムービーとなっています。
攻略
共通ルート終盤に出てくる一つの選択肢で個別ルートが分岐します。
どのヒロインを最初に助けるかを選ぶだけなので迷うことはありません。
推奨攻略順は奈々瀬→美岬→ヒナミ
奈々瀬ルートは登場キャラが少ないので最初に。
美岬はラスボスの都合上、ヒナミより先にプレイしたほうがいいと思います。
以下シナリオ構成に対する説明になるので、まっさらな状態でプレイしたい方は次の数行を読み飛ばしてください。
…といってもタイトルメニューのシナリオ選択画面ですでに匂わせているので言っちゃっても大丈夫かと思いますが、3人の個別ルートをクリアするといわゆるグランドルートが解放されます。
個別ルートをクリアした後は改めてNEWGAMEを選んでください。
冒頭で新たなイベントが挿入された後、しばらく既読の文章が続きますが、共通ルート終盤の選択肢(誰でもいい)を選んだあと、グランドルートに分岐する新たな選択肢が出現します。
ちなみに一度プレイしただけではCGモードや回想モードに抜けがあるので注意してください。
エンディングを見た後、シナリオ選択画面の奈々瀬ルートとヒナミルートの最後にイベントが追加されているのでそれを見るとフルコンプになります。
総プレイ時間はゆっくりやって40~45時間くらい。
共通ルートを含めた1週目が約15時間、2週目以降の個別ルートがそれぞれ8~10時間くらいでしょうか。
意外と結構なボリュームがあります。
Hシーン

シーン回想で見られるHシーンは合計27回。そのうちヒロインとのHは4~5回で、その他はSSやSHO隊員とのHになります。
SS隊員とは共通ルートの序盤からHしますが、だいたい各キャラ2~3回くらい。
SSとのHはやや強引というか、窮地を脱するために仕方なくするというのがほとんど。淳之介の基準では愛のないセックスはカウントに含まれないのでいつまでも童貞のままだそうです。
行為自体は意外とオーソドックスなものが多く、尺はやや短め。1回の行為で1回出して終了というケースが多いですね。
Hの最中は卑語も言いますが、伏字やP音による修正は一切ありません。まぁ日常的にチンポチンポ言ってる子がほとんどですし。
ヒロインの中でも美岬やヒナミは生まれたときから青藍島で育っているので、恋人同士になった後もそれほどHに抵抗はありません。むしろ見た目ギャルビッチの奈々瀬のほうが初々しいかも。
感想

タイトル通り抜きゲーチックな設定ですが、その実非常に丁寧に作られたことがわかる作品でした。エロもコメディもストーリーもテーマ性も、全てのベクトルに全力で振り切っている感じ。
各個別ルートはストーリーの方向性みたいなものは同じですが、展開やラスボスが違うので飽きずにプレイすることができるのもいいですね。
ドスケベ条例という設定
ドスケベ条例という荒唐無稽な世界設定が特徴的な作品ですが、一見バカゲーっぽい設定だからこそ、ストレートな展開やテーマが映えます。これがもし真面目な設定だったらここまで刺さらず、ありきたりな結末となっていたのではないでしょうか。
淳之介たちNLNSのメンバーはオナホを模した煙幕弾でけむに巻いたり、バイブやローターを使って「敵を一瞬でイかせる」ことで倒すという凄い攻撃手段で戦います。もう終盤の戦闘シーンでは燃えていいのか笑っていいのかわからないくらいの展開。でも本人たちは大真面目に戦っているからこそ読んでる我々からは笑えて熱くなれるんですよね。
NLNSと対立するSS隊員たちも銃や刀で武装していますが、基本的に銃はゴム弾、刀は逆刃刀なので別に殺し合いに発展することはありません。互いに真剣ではありますが、人が死ぬわけではないので後味の良い結末になります。こういうのは有川浩の『図書館戦争』1における抗争を彷彿とさせますね。
正義とマイノリティ
終盤では互いの意地と正義がぶつかり合うラストバトルが展開します。各ルートにラスボスがいるものの、根っからの悪者というわけではなく、(一部を除いて)みんな島のためを思っている人間ばかり。まさに「正義の反対は別の正義」を地でいく王道展開で、思わず「正義とは何か」を考えさせられます。
またマジョリティとマイノリティの対立もこの作品の主なテーマ。
島民のほとんどは誰とでもセックスしたいという煩悩丸出しの人間ばかりで、NLNSメンバーのような特定の恋人としかセックスしないという人や麻沙音のような同性愛者は極めて少数派。でもそんな状況がそっくり入れ替わってしまったらどうなるか、というのもこの作品の見どころのひとつ。
こういうことって歴史的にもよくあったりしますよね。極端な例でいえば戦前の日本は戦争して欧米列強に対抗していくことが大多数の正義だったのに対し、戦後は一転して戦争反対・平和主義を唱えるのが正義になりました。
また最近でもちょっと前まで消費税の減税や廃止を唱えるのは一部の野党だけだったのに対し、このところ(2025年現在)はむしろ減税するのが当たり前みたいな風潮になってきて、時代は変わっていくんだなぁと実感します。
そう考えると世の中の正義やマジョリティというものは案外簡単にひっくり返ってしまうものなのかもしれません。
王道的な燃え展開
終盤は変に捻らず王道的で熱い展開が楽しめました。ぶっちゃけ結末は予想しやすいですが、こういう少年漫画的な物語は個人的にすごく好み。
かつて戦っていたライバルと共闘したり、ピンチな状況から助けが来て大逆転したり、「ここは俺に任せてお前は先に行け」みたいな台詞があったり。ある種定番ではありますが、むしろこういう展開が燃えゲー好きに望まれているからこその内容なのだと思います。王道こそ燃えゲーの真骨頂。
まさに笑いとシリアスと燃えと萌えが上手くミックスした、エロゲーならではの物語でした。
いわゆる燃えゲーってFateにしろ村正にしろバルドにしろ真面目な作風が多いだけに、笑いながら燃える作品って凄く新鮮。
ドスケベ条例という一見出オチのような設定をノリと勢いで最後まで走り切ったすがすがしい作品ですね。
こういうぶっ飛んだ作品がたまに出てくるからエロゲはやめられません。
- 『図書館戦争』:検閲が合法化された世界で、不適切な本を取り締まるメディア良化隊と図書館の自由を守る図書隊の抗争を描く物語。2008年にTVアニメ化、2013年に実写映画化。 ↩︎
・関連作品リンク
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