2010年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『サノバウィッチ』(ゆずソフト 2015年)

今回紹介するのは、鬱や寝取られ要素のない安全と安心のエロゲーブランド<ゆずソフト>が放つ至高のキャラ萌えゲー『サノバウィッチ』。(”サノヴァビッチ”ではありません)
ゆずソフトというのは初心者さんに何かエロゲーを薦めるとき、「とりあえずゆずソフトやっとけ」とよくいわれるほど安定した作品を作るブランドで、その中でも一・二を争うほどの人気を誇るのがこの作品です。
2015年Gethu.com美少女ゲーム大賞・総合部門2位、グラフィック部門・ムービー部門・キャラクター部門で1位。萌えゲーアワード2015・キャラクターデザイン賞受賞という、そうそうたる受賞暦が完成度の高さを物語っています。

物語はヒロインがある願いをかなえるために魔女となり、人々の悩みを解決ときに出現する”心の欠片”を集めるという、ファンシーでわかりやすい設定のいわゆる魔法少女モノ。
序盤でヒロインが主人公に自慰行為を見られるというエロ漫画のような導入ですが、本編はそこまでエロばかりというわけでもありません。
物語的には手に汗握るバトルや号泣するような展開こそないものの、恋人との甘々なイチャラブストーリーと適度なシリアス展開の後のハッピーエンドのバランスはさすがゆずソフトといったところ。

メイドや幼馴染といったベタなキャラは出てこないにもかかわらず、良質な”キャラ萌えゲー”として評価されることが多いのは、日常シーンの掛け合いの妙とキャラクター造形の見事さの現れでしょう。

良い意味でオーソドックスな作品なので、エロゲー初心者さんにも安心して薦められます。適度にHなのも良いよね(笑

  • 可愛らしいヒロインとのイチャラブストーリー
  • 読み応えのある寧々ルート
  • 適度にエロいHシーン
ブランドゆずソフト
ジャンルおなやみ解決!魔女っ子ADV
発売日2015.2.27
DL版価格6995円
シナリオ天宮りつ
保住圭 籐太
原画むりりん こぶいち
おすすめ度85
シナリオ傾向

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
サノバウィッチ-Sabbat of The Witch-Vista 7 82015.2.27

パッケージは1種類のみ。特に初回特典の類もなく、今でも同じものが新品で購入可能です。
この作品に限らず、ゆずソフトは続編やファンディスクの類も作らないので、その後の展開もありません。

今から買うならDL版FANZA独占を推奨。定価は7000円弱ですが、クーポンやポイント還元を駆使すれば実質6000円前後で買えるかと。もっと安く済ませたい場合はたま~に行われる割引セールを待つか、中古のパッケージ版で。

これ以外に、テキストを英語に翻訳(日本語表示も可能)した海外版『Sabbat of the Witch』がSteamで配信されています。これは国内版に比べるとかなり安い(定価3995円)のですが、基本的に全年齢版です。Hシーンを追加するパッチもあるにはあるんですが、日本からだと何故かパッチの配布サイトにアクセスできません。いわゆる”おま国”という奴ですね。

システム

画面下にテキストが表示されるシンプルなAVGスタイル。画面サイズは1280×720のワイド画面。
システム的には必要十分な機能が搭載されていますが、オートモードのウエイト時間がメッセージの長さに関わらず一定(調整自体は可能)なのはちょっともどかしいです。

バックログはデータロード後も保存されますし、ログの任意の位置までシーンを戻すジャンプ機能もあります。
このシーンジャンプはチャプター単位で一気に戻ることも出来るので、終盤からでもチャプター1の一番最初まで戻ることが可能です。

便利なところではマウスジェスチャ機能があり、右クリックを押しながらマウスを動かすことによってセーブ画面に簡単にアクセスしたりオートモードやスキッ プモードに移行することが出来ます。この頃(2010年代中盤)からこの手のマウスジェスチャ機能を搭載する作品が増えてきましたね。

また好きな台詞を保存できる”お気に入りボイス”機能を使えば、気に入った台詞はいつでも聴くことができます。知らないうちに寧々の声ばかり集めてしまうのは男のサガ。

シナリオ

企画兼メインライターは天宮りつさん。サブで保住圭さんと籐太さん。
ヒロインが妖精的なものと契約して魔女に変身し、人々の悩みを解決することによって出現する”心の欠片”を魔具と呼ばれるアイテム(寧々の場合は銃)を使って回収してまわるという、魔法少女モノの作法にのっとった設定なので非常にわかりやすい世界観だと思います。

魔女になった代償として、寧々の場合は所構わず発情してしまうという体質になってしまいまうのはいかにもエロゲーといったところ。
お約束としてライバル的な魔女も出てきますが、対立関係にはならないというかむしろ協力して心の欠片を集めることになるので、昨今の魔法少女作品に良くあるバトル的な展開はありません。

物語は章別構成で、各ルートだいたい7~10章くらいのボリューム。そのうち4章後半までが共通ルートになります。
主人公が所属することになる”オカルト部”は、「部員が主人公以外全員女の子」という一見するとラノベとかで良くありそうなハーレムサークルです。ただ共通 ルートではお互いに恋愛対象として見ていないので、(ラッキースケベ的なイベントはありますが)ラブコメっぽい展開はそれほど多くありません。

それが個別ルートに入ると一気に急接近して告白イベントを経て恋人同士になり、甘々なイチャラブストーリーが展開するという、メリハリの利いた構成になっています。
それまで互いに名字で呼び合ってたのが、恋人同士になったら下の名前で呼び合うようになってみんなに冷やかされる、というのは定番ながら思わず顔がにやけ てしまうほど微笑ましい。共通ルートで恋愛描写がないので他のキャラからの嫉妬等もなく、安心してイチャラブを楽しめます。

グラフィック

メインの原画家はゆずソフトの看板イラストレーターである”むりりん”さんと”こぶいち”さん。SD原画に”こもわた遙華”さん。
CG数はイベント絵が92枚、SD絵が30枚。
やや淡い彩色でほわほわっとした、良い意味でいかにもギャルゲといった暖かみのある雰囲気の絵柄ですこの可愛らしいキャラデザこそゆずソフトのゆずソフトたる証。

この作品はイベント絵以外にも立ち絵が結構作りこまれていて、メインキャラの主な服装は制服・外出着・部屋着の3種類(このほかに魔女服やコスプレもあり)なんですが、それぞれの服装で髪形が違います。
さらに立ち絵の表情が会話中にコロコロ変わるので臨場感があります。だいたい句読点ごとに目線や口の形が変わるので結構手間がかかっていますね。

そして各キャラ裸の立ち絵も常備されてます。裸の立ち絵ってなんとなくHシーンのイベント絵よりもエロいですよね・・・。

キャラクター

綾地寧々
主人公のクラスメイトで、男女とも人気がありすぎてちょっと近付き難い少女。
ある願いをかなえるために魔女になり心の欠片を集めるオカルト研究部部長。
ネット上での通称は”オナ地”さん(笑

因幡めぐる
主人公達より1つ年下の1年生で、垢抜けた感じのする後輩。
派手そうに見えて、モンハンや乙女ゲーを嗜むゲーマー。

椎葉つむぎ
主人公のクラスに転向してくる男装の少女。何気に巨乳。
寧々と同じくある理由のために心の欠片を集める魔女。

戸隠憧子
主人公達より1つ年上の3年生で学生会長。
見た目はおっとりしているが仕事は出来る先輩。

保科柊史
本作主人公。他人の気持ちを感じることが出来る能力を持つが、考えを具体的に読むことはできない。
ヒロインの自慰行為に遭遇したり着替え中の部屋に乱入したりと、ある意味主人公らしい主人公。

このほかのサブキャラには柊史のクラスメイト和奏と海道、喫茶店「シュバルツカッツェ」の店長七緒など魅力的なキャラが登場します。
中でも気の置けない女友達の和奏は一応サブキャラなんですが、わざわざ個別ルートが作られる(しかも唯一挿入歌がある)ほどスタッフに愛されてるキャラ。ちっぱいは正義。

またこの手の物語だと主人公の両親は海外赴任したりしているのが定番ですが、この作品の主人公は父親の太一と同居してます。しかも主人公に恋人が出来る と、小遣いをくれたり家を空けてくれたりといろいろ察してくれるめちゃくちゃ良い父親。でも恋人と部屋でイチャイチャしようと思った時に限って突然帰ってくるのもお約束。

ボイス

桐谷華(寧々)遥そら(めぐる)黒咲そら(紬)明科まなさ(憧子)
小鳥居夕花(和奏)沢村かすみ村田サナ桃山いおん真宮ゆず
寺竹順鳩マン軍曹

主人公以外フルボイス。男女とも実力派の声優さんが多いですね。
特にメインキャラには2010年代のエース級の声優さんを揃えています。

紬役の黒咲そらさんと憧子役の明科さんは使い捨ての名義ですが、中の人は共にエロゲ声優としては大ベテラン。ちなみに明科さんの声で魔法少女モノの先輩&巨乳キャラだと「まさかマミるのか?」と一瞬心配になりますが、そういう展開はないのでご安心を。そもそも憧子先輩は変身しないですし

そして注目はなんと言っても寧々役の桐谷華さん。もうこの作品は桐谷さんの桐谷さんによる桐谷さんのための作品といっても過言ではないくらい、エロゲ声優・桐谷華さんの魅力に満ち溢れています。どこか初々しくてとろけるような桐谷ボイスは寧々というキャラクターにぴったり。

BGM

BGM制作はゆずソフトのFamishinさん。曲数はボーカル曲のインストverを含めて41曲。
まったりとした日常系の曲が多めです。

お気に入りは、ほんわかとした曲調がぴったりな寧々のテーマ「sweet treasure」。この曲に限らず、各キャラクターのテーマBGMは歌詞をつけてキャラソンとして発売されています。


その他にもアコギのメロディーとコントラバスの低音が癒される「Schwarze Katze」、悲しいシーンに流れるピアノソロ曲「叶わぬ願い」もいい曲ですね。

主題歌「恋せよ乙女!」のアコースティックギターバージョンも非常に雰囲気の良い曲です。ギターあったら演奏してみたい。(出来るとは言ってない)

主題歌

タイトル作詞作曲編曲備考
『恋せよ乙女!』RirykaFamishin井ノ原智米倉千尋OP
『Without You』神代あみFamishinYasuo Asai神代あみ挿入歌
『Re:Start~君とまた出逢えて~』神代あみFamishin椎名俊介神代あみED
『天使の羽とクリスタル』RirykaFamishin井ノ原智RirykaED
『スカート』葉月Famishin椎名俊介葉月ED
『君がくれた光』カサンドラFamishin新井健史カサンドラED
『大好き』中山マミFamishin佐々倉マコト中山マミED

OPテーマ『恋せよ乙女!』を歌うのは、アニソンシンガーのちっひーこと米倉千尋さん。ポップで明るい歌詞と曲調はこの作品にぴったり。何気に米倉さんって結構エロゲソングも歌うんですよね。ちなみにこの曲は米倉さんの25周年ベストアルバムにも収録されています。

EDテーマはそれぞれ歌手の方が作詞もされてるんですが、ちゃんと各ヒロインルートの内容に合わせた歌詞とタイトルになってます。

ムービー

プロローグ後に流れるムービーはほぼ全編アニメーション。
絵コンテは”ろど”さん、制作は代々ゆずソフトOPを手掛けてきた同人サークル・フロンティアチャイルド。
作中のイベントをアニメで再現した構成になっているので、むしろ共通ルートを見た後で改めて見ると感慨深いですね。

一般的にこの手のアニメムービーってキャラデザが本編と微妙に変わってしまうことも良くあるんですが、この作品のムービーは本編CGに忠実にデザインされているので全く違和感がありません。むしろこの絵でTVアニメ化しろと言いたくなるくらい。

ムービー鑑賞モードではOPはもちろん、すべてのEDムービーも見ることができます。

攻略

共通ルートにいくつか出てくる選択肢を選ぶことにより分岐します。いくつか展開が想像しにくい選択肢もありますが、前の選択肢に戻る機能もありますし、実質4章最後の選択肢でルートが決まるので攻略難易度は低いと思います。

推奨攻略順としては、必ず寧々を最後にするようにしてください。寧々ルートクリア後に他のルートをプレイすると、「このルートでの寧々はどうなったの?」と後味の悪い印象が残ってしまいます。
寧々以外の順番は特に気にしなくて良いと思いますが、あえて薦めるなら、紬→めぐる→和奏→憧子→寧々の順で。紬ルートが一番魔法少女っぽいシナリオなので最初にやるのが良いかなと。憧子ルートはやや重い話なので後半で。

総プレイ時間は30~40時間くらい。私はゆっくり目のオートモードでやってたので結構時間がかかりました。デフォルトの速度ならもう少し短くなるかもしれませんが、それでもそこそこボリュームがあります。

Hシーン

Hシーンの数は、めぐる・紬・憧子が4回、和奏が3回、オナ地さんもとい寧々は多めで9回。そのうち各キャラ1回はクリア後に見られるアフターシナリオです。
内容はオーソドックスなものがほとんどで、多くが着衣Hなのも特徴的。下着の濡れるCG差分があるのが個人的にグッドです(笑

また行為の最中は各キャラ結構乱れます。音声・テキスト表示共に卑語修正は無し。
行為の最後に「中に出す/外に出す」の選択肢が出てくる古風な構成ですが、それによって展開が変わったりはしません。

感想

こ の『サノバウィッチ』という作品は、萌えゲーメーカーとして不動の地位を築く<ゆずソフト>の代表作で、「ゆすソフトなのにシナリオも面白 い」などと失礼な褒め方をされることもあったりするんですが、実際プレイしてみると確かにキャラ萌えと良質なシナリオが上手く絡み合った良作であることを 実感します。

普通この手の作品というのは、おせっかいな幼馴染とかタカピーなお嬢様とか無口な文芸部員とか、そういった良くも悪くもわかりやすいキャラクターを登場さ せがちなんですが、この作品ではそういうテンプレ的なキャラには頼らず、あくまで純粋なキャラ造形と会話の掛け合いで良質なキャラ萌えゲーとして昇華して いるのが凄いところ。

会話の内容にしてもマニアックなオタクネタや不条理なギャグもほとんど無いですし、ヒロインの言葉遣いにしてもフィクションで良くある「~だわ」とか「~かしら」といったいわゆる”女の子言葉”をあえて使わずに、等身大の可愛いらしさを強調してるように思えます。

そういったキャラ造形に”魔女”というファンシーな要素を適度に加えることにより、学園ラブコメと魔法少女要素が絶妙なバランスで混ざり合っています。(どうして”サノバウィッチ”というタイトルなのかも作中でわかるようになってます)

シナリオに関しても非常によく出来てはいるんですが、あえて気になるところを言わせてもらえれば、一部のルートが若干手放しで喜べないエンディングになっているんですよね。
これは各種レビューサイト等を回ってみても同様の感想を抱く人が多いみたいで、正直私も「え?これで終わって良いの? あのキャラほっといて良いの?」と喉に小骨が刺さったようなもどかしさがあるルートもありました。
主人公とヒロインはちゃんと幸せになるので問題はないんですが、なんというか作品の方向性として”関係する全てのキャラ”が幸せになってほしかったな、とは思いますね。

とはいえ作品全体のクオリティはかなり高く、難しいことは考えず甘くて優しい作品をお望みの方には安心して薦めることのできる鉄板ソフトであることには間違いないので、初心者さんの最初の一本としても最適な作品かと思います。

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