衣笠彰梧(シナリオ)×トモセシュンサク(原画)コンビが 送るハイテンションラブコメシリーズ『暁の護衛』3部作。
一応『暁の護衛』(無印)だけでも楽しめなくはないですが、一部の伏線や設定が明かされないため、『プリンシパルたちの休日』と『罪深き終末論』まで一気にプレイすることをお勧めします。
この作品は当初、あかべぇ系列のブランドである「しゃんぐりら」から発売されましたが、後のブランド整理により3本セットの『暁の護衛トリニティ』は新ブランド「あかべぇそふとすりぃ」から出ています。
物語は超お嬢様学園である憐桜学園を舞台に、ボディーガード候補生である主人公・朝霧海斗と、その警護対象者(プリンシパル)の二階堂麗華たちを中心としたドタバタ劇が前半、後半の個別ルートはややシリアスな展開というオーソドックスな構成。
超人的な能力を隠し持つ主人公の設定、無法者を一箇所に集めて治安を保つ特殊な世界観、シュールなギャグでテンポの良い会話劇、どれをとっても実にライトノベル的な要素が詰まっているので若い世代には取っ付きやすい作風になっていると思います。
- ヒロインとの漫才のような日常シーン
- 様々なキャラクターが登場する長編3部作
- 緊迫感のあるバトルシーン
ブランド | あかべぇそふとすりぃ |
ジャンル | お嬢様お守りADV |
初回発売日 | 2008.3.27 |
DL版価格 | 7,124円 |
シナリオ | 衣笠彰梧 |
原画 | トモセシュンサク |
おすすめ度 | 80 |
シナリオ傾向 |
購入ガイド
タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
---|---|---|---|
暁の護衛 | 2000 XP Vista | 2008.3.27 | 易 |
暁の護衛~プリンシパルたちの休日~ | 2000 XP Vista | 2008.12.25 | 易 |
暁の護衛~罪深き終末論~ | 2000 XP Vista 7 | 2010.4.22 | 易 |
暁の護衛 トリニティ | PSP PS3 | 2012.9.20 | 易 |
暁の護衛 トリニティ コンプリートエディション | XP Vista 7 8 | 2014.2.18 | 易 |
この作品は本編である無印の『暁の護衛』と、本編の後日談と前日譚を収録した『~プリンシパルたちの休日』、そして完結編である『~罪深き終末論』の3部作になっていて、3作それぞれに初回版と通常版があり、各初回版にはブックレットが付きます。
CS版の『~トリニティ』はその名が示すように3部作を一つにまとめたもの。当然Hシーンは削除されますが、本編中にオリジナルエピソードがいくつか追加されます。
PC版の『~トリニティ コンプリートエディション』はCS版の内容にHシーンを復活させたもの。これにも初回版にはブックレットが付きます。
今から買う場合は3部作全てがセットになった『トリニティ』を推奨。3本セットであることを考えれば新品でもかなりお得なんですが、ぶっちゃけ中古なら個別パッケージ版を買い揃えたほうがかなり安く上がります。
ダウンロード版はFANZAで『トリニティ』がちょくちょく半額セールの対象になってるのでこちらを推奨。3500円くらいですべて揃えることができます。
ちなみにこの作品の世界観を受け継いだ『レミニセンス』という作品も出ていますが、そちらはまぁお好みで。
システム
一通りの機能を備えたオーソドックスなAVGスタイル。セーブ時にテキスト履歴も保存されるのは助かります。
「トリニティ」では3部作全てをひとつのシステムに統合していて、スタート直後にプレイする作品を選ぶ仕様になっています。(無印をプレイしていなくても『プリンシパル~』や『~終末論』を選ぶことができます)
音楽モードは3作品共通、CG及びシーン回想モードもワンクリックで切り替え可能。どのENDを見たのかが一目でわかるクリアーリストも搭載されています。
ただシステム統合をするにあたって、個別版では800×600だった画面サイズが「トリニティ」では1280×720のワイド画面になっています。この変更がちょっと強引で、元の4:3の比率で描かれたCGをそのまま拡大しているため、結果的にCGの上下が見切れている形になってしまっています。ゲーム中は演出としてCGを拡大・平行移動することによって見切れている部分を表示させてはいますが、CGモードでは動かすことはできません。なんでこんな仕様にしたんですかね。
シナリオ
企画&シナリオライターは衣笠彰梧さん。
無印『暁の護衛』は主人公である海斗と警護対象者(プリンシパル)となるヒロインとの物語。『プリンシパルたちの休日』は各ヒロインのアフターストーリーと海斗の生い立ちを描いた前日譚。『罪深き終末論』は作品世界における日本の暗部”禁止区域”を巡る壮大な事件を描いた完結編になります。
お嬢様ヒロインとそれを守るボディーガードの物語ですが、無印では”ボディーガードっぽい”イベントがほとんどないので、「主人公がヒロインを体を張って守る」というシーンを期待していると肩透かしを食らうかもしれません。
本格的にバトルシーンが展開されるのは、『終末論』の後半になります。(その後半にしても「ヒロインを守る」という展開はほとんどありません)
テキストはギャグの多い日常シーンとシリアスな展開のメリハリが利いている上に、余計な修飾句のない読みやすい文章なので、深く考えず気楽に進めることができます。
日常シーンではキャラのほとんどがノリが良く、一見真面目なお嬢様でも華麗にノリツッコミまでこなすので何度も笑わせてくれます。特にメイドのツキが毎回主人公とこなす夫婦漫才のようなやり取りには抱腹絶倒。
ただ『プリンシパル』以降ではいわゆる”メタ”なネタが時折はさまれるので、やや好みが分かれるかもしれません。(「お前らには立ち絵もねぇよ」「ええ~っ! 俺たちモブキャラだったんすか?」みたいな)
また、これはライターさんの特徴なのかもしれませんが、テキストが会話文中心で、いわゆる”地の文”が非常に少なくなっています。テンポがよくてサクサク進むという意味では良いのですが、やや描写不足であることは否めません。
日常シーンはその場に誰がいるのか台詞が出るまでわからないことが多々ありますし、バトルシーンに至ってはキャラの叫び声ばかりで何をやってるのかよくわからないことも多かったですね。バトルの決着直前になって相手が武器を持っていたことを描写されたときにはさすがに戸惑いました。それくらい先に書いといてくださいよ・・・。
グラフィック
原画及びキャラデザインはトモセシュンサクさん。口角を上げてニヤリと笑うような、ちょっと強気な表情が特徴的です。
特に尖ったところはなく、万人受けするキャラデザインだと思います。
無印や『プリンシパル』ではなんでもない日常シーンのイベント絵が多いのですが、『終末論』では血の滴るシーンも出てくるので、苦手な方はご注意を。
ちなみに作中には佐竹というスキンヘッドのおっさんキャラがいて、最初に発売された個別パッケージ版では佐竹に対して主人公が「髪をつかんで押し倒す」というありえないテキストミスを犯してしまいネットでも散々ネタにされました。後に『トリニティ』が発売された際はテキストを修正すると思いきや、「佐竹の後頭部に弁髪を追加する」という予想の斜め上を行くCGが差し込まれファンの度肝を抜くことに(笑
キャラクター
二階堂 麗華
超がつくほどの資産家である二階堂家の令嬢で主人公の警護対象者(プリンシパル)。
自信にあふれるお嬢様で他者に対してきつくあたる、絵に描いたようなツンデレ娘。そして貧乳。
二階堂 彩
麗華の双子の妹だが性格は正反対でおしとやか。そして巨乳。
ボディーガードは成績トップで自信家の宮川尊徳。
倉屋敷 妙
倉屋敷重工創業者の一人娘。生粋の馬鹿で空気が読めない。
ボディーガードは自社が作ったほとんど人と変わらないアンドロイド錦織侑祈。
神崎 萌
憐桜学園理事長の孫娘。いつもボーっとしている無口な大食漢。
祖父譲りの古武術は超一流。ボディーガードは主人公の親友でもある南条薫。
ツキ
二階堂家に住み込みで働くメイド長。掃除の腕前は超一流。
やる気なさげの口調で下ネタからブラックジョークまで何でもこなすギャグも超一流。
「てぃんこてぃんこ」とか平気でぬかすヒロイン(笑
朝霧 海斗
本編主人公。ひょんなことから二階堂家に住み込んで麗華を警護するようになる。
エロゲ史上最強とも思える実力を持つが、学園では目立たないように劣等性を演じる。
「やれやれ○○だぜ」みたいな台詞の多い典型的なラノベ的主人公。
この他にも多くのキャラが登場します。特に尊徳をはじめとする男性陣は個性の強いキャラが多く、しかも全員がそれなりの実力者。海斗との絡みも多彩で普通に裸の付き合いをしてたりもします。
『終末論』になるとさらにキャラが倍増し、立ち絵のあるキャラだけでも総勢40人近くにのぼります。正直、ここまでになるとちょっと多過ぎという気もしなくはないですね。最終盤で一堂に集結するならカタルシスも得られますが、そういうわけでもないですし。むしろ「こいつ必要か?」と思ってしまうキャラも少なくないような・・・。
ボイス
大波こなみ(麗華) | 榊原ゆい(彩) | 如月葵(妙) | 成瀬未亜(萌) | 大花どん(ツキ) |
芹園みや(薫) | 金田まひる(鏡花) | 大野まりな (杏子) | ||
羽高なる | 楠鈴音 | 金松由花 | 渋谷ひめ | 春城学幸 |
小池竹蔵 | ほうでん亭ガツ | 植木亨 | こんつ | 立花十四朗 |
さくらはづき | 稲狩裕子 | 澤田なつ | 古閑ゆき | 春乃伊吹 |
佐々留美子 | 星垣みく | 日立このみ | なかせひな | 涼森ちさと |
北都南 | 子太明 | 本多啓吾 | ルネッサンス山田 | 藤流水 |
空乃太陽 | 原田友貴 | 舞幸運 | 北条賢 | 南戸武治 |
機知通 |
主人公以外フルボイス。
キャラが多いこともあってキャストの数もハンパではありません。
しかも結構有名どころを揃えています。名義がCS版と共通なのでわかりにくいのですが、尊徳役の春城学幸さんはエロゲ界隈(リトバスとか沙耶の唄とか)でよく耳にするあのお方。相馬役の子太明さんはおそらく日本でいちばん有名な埼玉県春日部市在住のサラリーマン。さすがにアニメファンでなくても一声でわかるかと。オラの父ちゃんが以下略
また、終末論から登場する稲狩裕子さん(舞)・古閑ゆきさん(詩音)・星垣みくさん(小春)は使い捨ての名義ですが、慣れてる方なら一発でわかるほどおなじみのキャストさんです。
難点を言えば佐竹役の人があんまり上手くないってことですかね。結構重要キャラで台詞も多いのにちょっと無理しておっさん声を出してるような気がします。
それと、『トリニティ』ではプレイ中に突然台詞の音質が変わることがよくあります。おそらく追加で収録した際に録音環境が変わったせいなのでしょうけど、ヘッドホンで聴いてると結構気になりました。
BGM
音楽担当はゲーム音楽制作チーム”Angel Note”の伊福部武史さん。曲数は3作品あわせて55曲。コミカルな曲が多いですが、お嬢様ヒロインが多いこともあって落ち着いた曲も少なくないですね。全体的に曲の長さが短めなのはちょっと残念。
個人的お気に入りはタイトル画面でも流れる「ロマンス」。3拍子のリズムが癒されます。
他にもウクレレと口笛の音色が印象的な日常曲「風に吹かれて」、終末論のバトル曲である「Master Of War」「More Battlefield」も外せない良曲です。
主題歌
タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
---|---|---|---|---|
「Together」 | 中山♥マミ | 不知火つばさ | 榊原ゆい | OP |
「パーソナルスペース」 | kala | 椎名俊介 | 榊原ゆい | ED |
「Guardian Heart」 | wight | wight | Barbarian On The Groove feat.真理絵 | OP |
「明日へ」 | wight | mo2 | Barbarian On The Groove feat.古都美珠 | ED |
「幻想の城」 | kala | 井ノ原智 | 榊原ゆい | OP |
「OWN JUSTICE」 | 片霧烈火 | 片霧烈火 | 神月社 | OP |
「永遠の孤独」 | wight | mo2 | Barbarian On The Groove feat. 璃杏 | ED |
「永劫回帰」 | wight | wight | Barbarian On The Groove feat. カヒーナ | ED |
「Judge of a Life」 | kala | 井ノ原智 | 榊原ゆい | OP |
「Heart of Mind 」 | kala | 椎名俊介 | 榊原ゆい | ED |
3作品分+αということもあってたくさんのボーカル曲が使われています。
中でもお気に入りは『終末論』OPである「幻想の城」ですね。榊原ゆいさんに相応しく情熱的でカッコイイ曲になっています。
『終末論』の2ndOPである「OWN JUSTICE」はエロゲでは珍しい男性ボーカル曲。しかも歌っているのは何故かムービークリエイターの神月社さん、そしてコーラスに片霧烈火さんという、言われなきゃ気付かない謎の組み合わせ(笑
ムービー
OPムービーは無印と『休日』1つずつ、『終末論』に2つ。トリニティの追加要素として無印と『終末論』に新たなムービーが1つずつで計6つ。制作は神月社さん。トリニティで追加されたムービーは16:9で作られています。
EDムービーは手が回らなかったのかただひたすらスタッフロールが流れるのみ。しかもEDテーマがフルコーラスで流れるほど長いので、さすがに2回目以降はスキップしました。
攻略
構成が異なるので別々に説明します。
まず無印『暁の護衛』は1回の選択肢でその後の個別ルートが決定します。序盤のイベントでヒロインを選択するだけなので迷うことはないかと。
推奨攻略順は妙→彩→萌(薫)→麗華→ツキ。麗華とツキは主人公の生い立ちに関わる謎が解明されるので最後に残しておいたほうがいいと思います。萌ルートから分岐する薫ルートは続きがそのまま『終末論』に繋がるので最後にするのもアリかもしれません。あえて繋がりを重視するなら(無印)麗華→(無印)ツキ→『休日』→(無印)薫→『終末論』という流れがいちばんスッキリしますが、まぁめんどくさいですね。
『休日』はスタート直後にルート選択をするだけ。全てのエピソードを見ると主人公の過去ルートに入ることができます。
『終末論』はこれまでとは少し違うというかむしろ一般的なエロゲに近いんですが、序盤の共通ルートでいくつか選択肢を選んだ後、中盤で分岐します。選択肢を選んだ後すぐ分岐するわけではないためどの選択肢がフラグになっているのかわかりにくく、選択肢自体も曖昧なので戸惑うこともあるかもしれません。しかも1周目には選べない選択肢もあり、スキップするのも結構時間がかかるため、序盤の選択肢ではこまめにセーブしておくことをお勧めします。
推奨攻略順は大まかに、清美→麗華→禁止区域→朱美。朱美ルートはいちばんスッキリしたENDなので最後にしましょう。
禁止区域ルートは実質舞ルートなのですが、舞以外にも5人のサブヒロインのENDがあります(Hシーンとエピローグが違うだけ)。ちなみに禁止区域ルートは麗華エンドを見ていないと入ることができません。
他のルートにもサブヒロインのENDがあり、『終末論』だけで計13個のENDがあります。全部見るのはちょっとめんどくさいですが、時間がなければメインの4つでもいいかと。
プレイ時間は無印『暁の護衛』が20~25時間、『休日』が15~20時間、『終末論』が30~40時間ほど。全部あわせると60~80時間ほどかかるボリュームになります。ちなみに私はいつものようにゆっくりやって110時間もかかりました・・・。
Hシーン
無印『暁の護衛』では各ヒロイン3回ずつで計15回。かなり短めで淡白なHです。なんというか、脱がすまではじっくり描写しますが、挿入した後はあっという間に終わります。海斗さん早すぎです(笑
胸の大きさは大きいキャラはより大きく、小さいキャラはより小さくという極端なデザイン。あと乳首がちょっと陥没気味。
「トリニティエディション」ではアスペクト比の関係上CGの上下がカットされるため、キャラの顔と下半身が同時に画面内に収まらなくなってる場面が多いのは残念です。
『休日』ではおまけも含めて計13回、『終末論』では計28回。サブキャラにも律儀にHシーンが用意されているので回数はかなり多くなります。立ち絵のある女性キャラは(明らかな子供を除き)ほとんどHシーンがあると思ってもらっていいかと。ちなみに主人公以外のHシーンも少しあります。おっさんの喘ぎ声とか誰得やねん・・・。
さらに衝撃的なことに『休日』では主人公が男に襲われるシーンまであります。さすがにCGこそありませんが、ちょっと吐き気を催すレベルです。襲われる側の心情ってこういう感じなんですね・・・。
また『休日』以降のHシーンはほとんど地の文による描写がなくなり、ただヒロインが喘ぐだけというなんとも使い辛いシーンになっています。ライターさん手ぇ抜きすぎ。
感想
尋常でない実力を隠し持つ主人公が劣等生を演じつつも、いざというときには「やれやれこんなことはしたくなかったんだが・・・」などと呟きながら圧倒的な力で相手をねじ伏せる。そんな漫画やライトノベル等で幾度となく使われてきた定番設定を恥ずかしがることなく真正面からど真ん中に投げ込んできたような作品、それが『暁の護衛』。
ある意味テンプレ的な展開を「ありがちでつまらない」と切り捨てるか、「お約束キター!」と楽しむかによってこの作品の評価は真っ二つに分かれると思います。私は好きです、こういうの。
ただ、ただ、惜しむらくは完結編である『終末論』における最後の終わらせ方。多分プレイした多くの方が「えっ? これで終わり?」と拍子抜けしてしまったことでしょう。実際レビューサイト等を回ってみてもそんな感じです。何度「我竜点睛を欠く」という言葉を目にしたことか。
結末は悪くないと思うんです。スッキリした大団円です。でも、もうちょっと他にやりようがあったんじゃない?と思わざるを得ません。特に物語の集大成とも言える禁止区域ルートでは、せっかくここまで溜めに溜めておいて、さあラスト!というときに突然梯子を外されたような感じです。ライターさんは最後の最後で力尽きてしまったんでしょうか。もったいない!
最後さえ目をつぶれば、軽快なギャグシーンに大笑いし、バトルシーンに熱くなり、そしてデレたヒロインに萌え転がる。そんな難しいことを考えずに楽しめる良作だと思います。