今回紹介するのは同人サークル「TABINOMICHI」を主宰する鬼虫兵庫さん制作の『シロナガス島への帰還』。
Hシーンのない全年齢向けの同人ゲームになります。
物語は絶海の孤島を舞台にした、いわゆるクローズドサークルミステリー。
主人公の探偵と特殊な能力を持つ少女がとある事件に遭遇し、謎を追っていくうちにストーリーはだんだんとホラーやSF作品のような様相を呈していきます。
何よりの特徴は同人ゲームではありえないくらいフルボイス版の声優さんが超豪華。
井口裕香さんや大原さやかさんといったTVアニメでおなじみの有名声優さんが惜しげもなく出演されています。
これで定価500円(しかも結構な頻度で半額セールになってる)とか作者さん儲ける気なさすぎ(笑
ちなみにフルボイス化の際にはクラウドファンディングで資金調達をしたんですが、最終的に2600万円もの資金が集まったそうです。
演出的にはややグロい表現があったり、ビクッとさせられる怖い展開もあったりしますが、ワンコインで買える良質な物語として文庫本を買う感覚でプレイしていただければと思います。
この作品の特徴
- 絶海の孤島を舞台にしたミステリー
- 物語を彩る超豪華声優陣
- 恐怖を煽るホラーな展開

| ブランド | TABINOMICHI |
| ジャンル | サスペンス |
| 初回発売日 | 2018.12.30 |
| DL版価格 | 500円 |
| シナリオ | 鬼虫兵庫 |
| 原画 | 鬼虫兵庫 |
| おすすめ度 | 80 |
| シナリオ傾向 |
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あらすじ
大富豪の遺書の中に残された『シロナガス島』への招待状。
ニューヨークで探偵業を営む男『池田戦』は特殊な能力を持つ少女『出雲崎ねね子』と共に島へと向かう。
そこで起きる数々の奇怪な殺人事件。
果たしてシロナガス島に隠された真実とは……?
すべての謎を解き、呪われた島から脱出せよ!
購入ガイド
| タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
|---|---|---|---|
| シロナガス島への帰還 | Vista 7 8 10 | 2018.12.30 | 難 |
| シロナガス島への帰還 コンプリートBOX | 7 8 10 | 2022.11.17 | 難 |
| シロナガス島への帰還 コンプリートBOX | Switch | 2022.11.17 | 難 |
| シロナガス島への帰還 | Switch | 2022.11.17 | 易 |
最初に発売されたパッケ版はボイス無しバージョン。
その後Switchに移植される際にPC配信版もフルボイス化されました。
Switch版はダウンロード版とパッケ版の通常版、及びコンプリートボックス版の3つがありますが、ダウンロード版が最も安価。
発売当初はいろいろ不具合があったらしく作者さんもネット上で苦言を呈していたんですが、現在はアップデートされて問題なくプレイできます。
コンプリートボックスはフルボイス化する際にクラウドファンディングの返礼品として配布されたもので、サントラや小冊子が付属しますが、現在はPC版・Switch版共に中古市場で3万前後の値を付けています。
PC のダウンロード版は現在Steam・DMM・DLSite・BOOTHで配信されています。基本的に同じものですが、Steam版はEDテーマが海外仕様になってるっぽいですね。DMMは全年齢サイトと18禁商業サイト(FANZA)、及び18禁同人サイ トで配信されています。
FANZAの同人フロアではなぜか定価が50円高くなっています。セール時期やクーポンの内容が異なっていることもあるので注意してください。
またFANZAでは定額遊び放題の対象にもなっています。
今から買うならダウンロード版を推奨。
パッケージ版は現在プレミア化しているのでお好みで。
システム

システムは画面下にテキストが表示されるADVタイプで、画面サイズは1024×768の4:3。
ちょっと古いゲームエンジンを使ってる感じでコンフィグで調整できるのは音量とテキストの表示速度くらい。UIも90年代を彷彿させるシンプルというか古風な感じですね。
ゲームを終了するときに画面上のタスクバーを表示させる必要があるのも昔のゲームっぽい。
あんまり使わないかもしれませんがスキップがメチャメチャ高速です。(Switch版は激遅らしいけど)
要所で選択肢を選ぶことによってBADENDになったりしますが、普通の選択肢以外に時間制限付の選択肢もあるので緊張感があります。ただ時間制限付の選択肢はのんきに台詞を聞いてるとまず間に合わないので、台詞を聞きたい場合はBADEND前提でプレイする必要があります。
またそれ以外にも画面内の背景をクリックして調べる調査モード的なものもあります。これも昔の推理アドベンチャーっぽいですね。作者さんは「ポリスノーツ」とかが好きだったみたいです。
ただ同じ場所を何度もクリックする必要があるのでちょっとめんどいかも。
シナリオ
シナリオライターはサークルの代表である鬼虫兵庫さん。
物語はニューヨークで探偵をしている主人公・池田戦(せん)がある人物に依頼され、瞬間記憶能力を持つ少女・出雲崎ねね子と共にアリューシャン列島にある”シロナガス島”へ調査に赴いたところ、島にある古びた館で殺人事件が起こる――というミステリー作品。
序盤からかなりおどろおどろしい展開で、プレイヤーの恐怖心を煽る物語になっています。
中盤以降はホラー要素が強くなりますが、音とCGでプレイヤーをびっくりさせるような演出が多いですね。単純な演出ですがマジで怖かったです。
テキストの雰囲気がなんとなく90年代の『EVE』や『YU-NO』のような菅野ゆきひろ作品に似ている感じがしますね。
ただちょっと説明不足なところもあって、主人公の経歴や、ねね子との関係性などはわかりにくいところがあるかも。
グラフィック

原画はシナリオと同じく鬼虫兵庫さん。
イベントCGはオマケシナリオもあわせて92枚。ちょっとした場面にもイベントCGが使われていたりするので、物語の短さのわりに枚数が多いですね。
キャラデザは良くも悪くもクセが強くて「同人っぽい」絵柄です。正直なところあまり上手い絵柄ではありませんが、この絵柄だからこそ恐怖が煽られるような展開もあったりするので、逆に物語の雰囲気に合ってたりします。
コンシューマでもCGを変えなかったのは正解かも。
女性キャラのデザインは少し痩せこけているものが多いですが、これは作者さんの趣味だそうです。新たな性癖に目覚めそう。
また同人ゲームでは珍しく、立ち絵やイベント絵に目パチ口パク機能があります。妙なところにこだわってますね。
キャラクター
池田 戦(せん)
ニューヨークで探偵業を営む青年。意外と年齢は高いっぽい。
黒い噂もあるが探偵としての腕は確か。
出雲崎 ねね子
一度見たものは写真のように記憶することのできる能力を持つ少女。吃音持ちだが二十数ヶ国語を話す天才。
極度のコミュ障&引きこもりで初対面の人間とまともに話すことができない。
この他に良家の令嬢アキラとその従者ジゼル、叔父の代理で来た内科医のリール、青いリボンが特徴的なアウロラ、中性的な雰囲気の少年アレックス、酒好きの男ジェイコブ、太った眼鏡の男性トマスなど、約10人がシロナガス島に集まります。
主人公の池田戦は基本的に本編中は立ち絵もボイスもつかないので、年齢は20代前半かせいぜい中盤くらいかな~と勝手に思ってました。ところがエピローグに 髭面の立ち絵と大塚明夫ボイスが付いたら思いのほかおっさんに見えるため、初期のイメージとのギャップが激しかったです。
立ち絵自体は公式サイトにもあるので先に見ておいたほうがいいかもしれません。
ボイス
| 大塚明夫 | 井口裕香 | 大原さやか | 石原夏織 | 伊藤静 | 田中理恵 |
| 東地宏樹 | 石住昭彦 | 小林ゆう | 茅野愛衣 | 中田譲治 | 小原好美 |
| 平田広明 | かぬか光明 | 中川亜紀子 | 藤野裕規 | 加藤将之 |
主人公以外フルボイス。主人公の戦にもごく一部だけ声が付きます。
アニメファンなら一目見てわかるようにキャストが豪華すぎ。商業ゲームでもここまで揃えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
主人公とかほんのちょっとしか喋らないのに大塚明夫さんですからね。豪勢にもほどがある(笑
なんでも作者さんが声優にあまり詳しくなくて、とりあえず知ってる声優をキャスティングしたら出演料が1000万超えたらしいです。
逆に言えば、声優さんってお金があれば同人でもある程度自由に起用できるんですねぇ。
BGM
最初はフリーの音源を使っていたらしいのですが、フルボイス化の際にBGMも新調されました。
作曲は片岡真悟さん。どれもいい曲だと思うんですが、残念ながら音楽モードが無いので詳しい曲情報がわかりません。
個人的お気に入りはタイトル画面で流れる「Retuen to Shironagasu Island」。壮大なイントロの後に流れる寂しげなピアノやヴァイオリンの旋律が印象的。
サントラが発売されているのでじっくり聞きたい方はそちらで。
主題歌
| タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 「暁の風」 | いとうかなこ | 磯江俊道 | いとうかなこ | ED |
主題歌を歌うのはニトロプラス作品等でおなじみの”いとうかなこ”さん。
エクストラシナリオをクリアすると最後にこの曲が流れます。
落ち着いた曲調ながら力強く、前向きになれる曲。なんというか映画のエンディングテーマみたいな感じですね。
Switch版の特典に収録された曲を含めたボーカルコレクションはSteamで購入可能です。
攻略

シナリオ自体は一本道ですが、所々でBADENDにつながる選択肢があります。
選択の結果もわかりにくいので、重要そうな選択肢のときはセーブ推奨。ただ一部の選択肢はBADENDになっても終了せずに直前からリスタートします。
後半には推理アドベンチャーらしく、事件の「犯人当て」の選択があります。
普通に読んでいればある程度絞れるのでそれほど難しいというわけではないと思いますが、最悪しらみつぶしでいけるかと。
ちなみに自慢するわけじゃないですが、私は一発で正解しました。
本編クリア後はエクストラシナリオを読むことができるんですが、おまけシナリオ的なもので本編とは直接関係ないため、本編の補完ストーリーを期待すると肩透かしを食うかもしれません。これはこれで面白いシナリオですが、あくまでおまけです。
本編のプレイ時間はゆっくりやっても10時間程度。エクストラシナリオは1~2時間くらい。
感想

私はTwitterで話題になってたのでこの作品をプレイしましたが、とても500円のゲームとは思えないほど満足度の高い作品でした。
売り上げも全世界で10万本以上記録したらしいんですが、その割にErogamescapeのデータ数は200ちょっとと、いまいちエロゲーマーには認知されてない感じですかね。
かくいう私もTwitterとか見てなかったら知らなかったかも。こういう同人ゲームは自分からアンテナを広げていかないと名作を取りこぼしてしまったりしかねないなと、改めて思った次第。
プレイした感想としては、前半はミステリー、後半はホラーアドベンチャーという感じで、一粒で二度おいしい作品だと思います。ミステリーからホラーへの切り替えもスムーズで、中盤以降は徐々にホラー要素が強くなり、気が付いたら(いい意味で)序盤とは全然違う物語になっていたという感じ。
また序盤から伏線が張られていたり、中盤ではちょっとSFチックな展開もあったりと、プレイヤーを飽きさせない物語構成になっています。そんなに長い物語ではないとはいえ、止め時が見つからずあっという間に読み終えてしまう人も多いんじゃないかと。
タイトルのつけ方も秀逸で、考えてみれば主人公からすると島から脱出するのが目的なわけですから、本来は『シロナガス島からの帰還』となるはずなんですよね。でも事の真相がわかると『シロナガス島への帰還』というタイトルがぴったりだったことに気付かされます。
こういう「プレイ後にタイトルの意味が分かる」作品って大好き。
物語全体を改めて振り返ってみると、メチャメチャ新規性がある作品というわけではありません。
む しろ「これどっかで見たな~」とか「あの作品に似てるな~」と感じることも多いと思います。でもそれは決してネガティブなものではなく、過去の名作の美味 しいところを詰め合わせて作者さん流に料理したものになっていて、往年のゲームファンならどこか懐かしさを覚える家庭料理のような作品になっています。
こういう作風でやっていけるのも同人ゲームならではですね。
本編はしっかり完結していますし、シナリオの完成度も高いので、同じ主人公で別の事件を描いた続編を期待したいところ。
…と思ったらまさに今、続編の『遙かなる円形世界(仮題)』が開発中なんですね。これは期待大。
何より大塚明夫さんの演技をあれだけで終わらせるのはもったいなさすぎるので、次回作は是非主人公もフルボイスで!


