2010年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『Maggot baits』(CLOCKUP 2015年)

ハードな陵辱作品が得意なブランドCLOCKUPが放つクルーエルノワールADV『Maggot baits(マゴットベイツ)』。略称は「マゴベ」。
Maggotは”蛆”、baitは”餌”という意味です。
萌ゲーアワード2015フェチ系作品賞受賞。どの辺がフェチだったのかよくわかりませんが。

初めに注意しておきますが、はっきり言ってこの作品は上級者向けです。
というのもこの作品、Hシーンが陵辱一辺倒でいわゆる純愛Hがほとんどありません。
メインである陵辱Hにしても、大勢の男たちによる輪姦や化物による触手陵辱ならまだマシなほうで、あらゆる手を尽くしてヒロインたちを物理的に苦しめ破壊していく、いわゆる”リョナ”描写が多数あります。
顔や腹を殴るのは序の口。ナイフや鉄串を体に突き刺したり、体の一部を切り取ったり、目玉をくりぬいたりすることも当たり前のように行われます。普通の人なら正直ドン引きするレベル。

ただ、この作品が凄いのはリョナ描写だけでなくシナリオも上質であることでしょう。
物語は、無法地帯と化した都市を舞台に、”災禍の魔女(ディザスターズ・ウィッチ)”と呼ばれる不死身かつ超常的な力を持つ謎の女性たちの戦いと過酷な運命を描いているんですが、出てくる魔女や人間の男たちがどいつもこいつもカッコイイ!
むしろ凄惨なシーンがあるからこそ、魔女や人間の男たちによる戦闘シーンでの”カッコよさ”も引き立ちます。

間違っても初心者が手を出してはいけませんが、一般的な作品に飽きてきたときはこういう異色の作品も楽しんでみてはいかがでしょうか。

  • 凄惨な凌辱描写のある抜きゲー的要素
  • 主人公やウィッチたちによる熱い戦闘展開の燃えゲー的要素
  • ウィッチたちの運命に思わず目を覆いたくなる鬱ゲー的要素
ブランドCLOCKUP
ジャンルクルーエルノワールADV
初回発売日2015.11.27
DL版価格7,945円
シナリオ昏式龍也
原画はましま薫夫
おすすめ度80
シナリオ傾向

あらすじ

関東邪法街―― かつて 架上市 と呼ばれていた関東地方の中核都市は、
数年前 一夜にして混沌の魔力が渦巻く “深淵” と接続、超常現象が跋扈する魔界都市と化した。
正体不明の不死身の “魔女” たちの出現により、政府は当該都市圏を外部から隔離封鎖。
遺棄地域として国土上から抹消され、ゴーストタウンとなってしまう。

しかしその後、犯罪者や不法滞在の外国人、シャバでは生きていけなくなった者たちが逃げこんで住みつき、
さらに、それらを食い物とする ヤクザ や イリーガルな商売人、売春婦なども流入。
数年をかけて 15万人ほどが非公式に存在する治外法権都市となった。

そんな “邪法街” で、ある男と一人の魔女が出会い、物語は幕を開ける。
あらゆる法の及ばない邪悪で危険な都市で、彼らの過酷な運命が動き始めるのだった。

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
Maggot baits7 8 102015.11.27

パッケージ版はDVDトールケースサイズものが1つ。
今のところ廉価版の類は出ていません。

パッケージ版には特に特典があるわけでもないので、今から買うならDL版を推奨。
定期的に半額セールの対象になっています。

システム

大まかなシステムは画面下部に文章が表示されるADVタイプと、文章が全画面に表示されるノベルタイプの混成構成になります。画面サイズは1152×720 という16:10の変則的なアスペクト比ですが、ソフト側で比率を固定してフルスクリーン化できるので、通常の16:9のディスプレイでも問題ないかと思います。

かなり完成度の高いシステムで、サウンド面ではBGMや個別音声の調整はもちろんのこと、効果音やBGV(バックグラウンドボイスボイス)の調整もでき、さらにBGF(バックグラウンドフェラ音)の調整まで出来ます。正直私はフェラ音苦手なのでこれは有難かったです。
テキストログはデータロード後も保存され、任意の場所までシーンを戻すシナリオジャンプ機能も搭載されています。ただしジャンプで戻ることが出来るのはテキストログが保存されているところまでで、延々と戻り続けることはさすがに出来ません。

珍しいところではオートモード時にテキストを表示させずに音声だけを再生する「バーチャルオートモード」なる機能があります。どっちかというとHシーン用でしょうか。自分はほとんど使いませんでしたが。

細かいところではプレイ時間も記録されるようになっているんですが、最初に起動してからの総プレイ時間とゲームスタート後からの個別プレイ時間が別々に記録 されます。個別プレイ時間はセーブデータごとに記録されるので、シナリオ分岐前のデータを残しておけば分岐後もそれぞれ別個にスタート時からの時間を継続 して記録することが出来ます。
これと同時にシナリオ既読率も表示されているので(設定により非表示も可能)、終盤になるとあとどのくらいで終わるかの目安になりますね。

またイベントシーンではCGを拡大して見ることも出来ますし、お気に入りの台詞を保存していつでも聴くことのできるボイス鑑賞機能、さらにHシーンでは「あと何クリックで出るのか」を表示する射精カウントダウン機能もあります(非表示&調整も可能)。こういうのはいかにも抜きゲーらしい。

緊急回避システムとしてプレイ中にキーボードのESCキーを押すとウインドウが最小化されデスクトップが表示されますが、バックグラウンド動作をOFFにしておかないと音声はそのまま流れます。気をつけましょう(笑

シナリオ

メインライターはこれまで数々の燃えゲーを手がけてきた昏式(くらしき)龍也さん。サブで栗栖さんと深生是人さん。昏式さんは同じ年に発売されたlightの『シルヴァリオ ヴェンデッタ』も手掛けています。

日本から隔離された”関東邪法街”という退廃的かつ混沌とした街を舞台に、突如出現した”魔女”と呼ばれる圧倒的な力を持つ存在が跋扈する中、主人公・角鹿彰護が彼に付き従う魔女・キャロルと共にある目的のために戦いを挑む、というのが大まかな流れ。
ストーリーは終始暗い雰囲気のシリアス一辺倒で、ギャグシーンや萌えシーンのない硬派な作風です。
また作中では聖書から引用したキリスト教関係の台詞や設定が多く出てきます。そういうのが好きな人にはたまらないかと。

テキストは全て三人称視点で書かれていてキャラの台詞は少なめ。比喩や婉曲的な表現が多く、1つの文章自体も長めです。ゲームよりも小説に近い感じなので、一般的なADVと比べるとちょっと回りくどく思えるかもしれません。『Fate/stay night』とかが好きな人は好みに合うかも。
ゲーム中はADVタイプとノベルタイプに頻繁に切り替わりますが、文体自体はほとんど変わりません。ノベルタイプであってもキャラの台詞は
”キャラ名「○○○、○○○○」”
というように表示されます。

グラフィック

原画担当は過去に名作『ユーフォリア』や『フラテルニテ』を手がけ、元CLOCKUP所属で現在はフリーで活動している”はましま薫夫(しげお)”さん。ちなみにこの方女性です。

CG枚数は差分含めず101枚。そのうち半分強くらいがHシーンになります。CG鑑賞モードでは任意のバックグラウンドボイスを流すことも出来るようになっています。
HシーンのCGは相当気合が入ってますが、戦闘シーンにおいては魔女同士が絡むCGがほとんどないのは残念ですね。魔女の戦闘シーンで使われるのはそれぞれが単独で描かれたキービジュアルのようなCGが使いまわされるのみ。

キャラデザインは青年漫画のような画風で、全体的に硬派な印象を受けます。魔女のデザインもモノトーン調で鮮やかさは少ないんですが、それぞれの魔女にパーソナルカラーのようなものが設定されていて、瞳や体の一部が燐光のように輝いて見えるため、魔女の神秘性が際立ちます。

またグロテスクなシーンでは流血や切り口の断面(多くはモザイク付き)なんかも容赦なく描かれますが、グロ表現が苦手な場合は設定により黒くぼかした表現に切り替えることも出来ます。(どちらで見たとしてもCGモードでは両方登録されます)

キャラクター

キャロル・ザ・ウィッチ
実質メインヒロイン。トレードマークは犬耳。武器は巨大な両手剣。
口数は少ないが忠犬のように主人公に付き従う魔女。
魔力補給でもあるHの相手は主人公のみ。

グロリア・ザ・ウィッチ
筋肉マッチョな魔女。トレードマークは牛の角。武器は重戦斧(バトルアックス)。
細かいことは気にしない、気まぐれで陽気な戦闘狂。
魔力補給のためのHはその辺の男でやりまくり。

ウィルマ・ザ・ウィッチ
冷静沈着の頭脳派魔女。トレードマークはトンボの羽。武器は西洋薙刀。
魔女が生まれた謎を解明するために主人公と行動を共にする。
そもそも戦闘をめったにしないので魔力補給のHはしない。

松丸芹佳
貴重な人間ヒロイン。主人公の仕事仲間で情報収集兼経理担当。角鹿に協力するのは金のため。
中盤まで主人公と行動を共にするが、戦闘力は皆無なのであんまり活躍しない。

無名の魔女
物語のキーパーソンとなる謎のロリ魔女。オッドアイが特徴的。
この種の物語では割とお約束のような存在ですね。

角鹿彰護
本編主人公。元特殊部隊員なので戦闘力はかなりのもの。
目的のためには仲間も犠牲にする冷酷さも併せ持つ。

作中でも言及されますがウィッチ達の名前は北米のハリケーンの名前から取られていて、このほかにサンディ、イザベル、アリソン、エドナ、アイリーンといった ウィッチたちが登場します。特に”魔女狩り”の執行者であるサンディは女とは思えない容姿も相まって強烈な印象を放ちます。
男性キャラは至問やブライアンといった一癖も二癖もある連中が登場しますが、男はおっさんしか出てきません。

ウィッチは人外の強さを持ちますが、血液を大量に失うと力が大幅に失われるので、弱らせれば人間でも陵辱することが可能です。ぐへへ。
そして彼女たちが使う武器は血液を変化させて物質化したものなので、戦闘になった場合は相手の武器を破壊すれば勝利、という形になります。

ボイス

橘まお(キャロル)美空なつひ(グロリア)和葉(ウィルマ)鶴屋春人(芳佳)御苑生メイ(無名の魔女)
爽双葉榎津まお花南愛遙花桔梗
中野まい
松岡武丸(彰護)大凶魔神天誅白威大樹縞馬男爵

主人公含め主要キャラフルボイス。モブキャラ以外は基本的に声がつきます。
キャストを見ても抜きゲーメインの方がほとんどですね。コンシューマ化などハナから考えてない感じ。

彰護役の松岡さんは別に演技は悪くないんですが、声が低くて小さいので台詞がちょっと聞き取りにくいかもしれません。
アリソン役の花南さんは拷問されたときの悲鳴が凄まじかったですね。喉大丈夫か?と心配になるくらい。
無名の魔女役の御苑生メイさんはさすがベテランという名演技。ねっとりと絡みつくようなロリボイスは病み付きになります。

BGM

落ち着いた曲から、激しい戦闘曲、凄惨な陵辱シーンに流れるおどろおどろしい曲まで多種多様。
中でも印象的なのは「アヴェ・マリア」等の宗教音楽が頻繁に使われることでしょうか。

ちょっと困るのがこの作品、なんとBGM鑑賞モードがありません。何でかなと思ったら、この作品のBGMはフリーの音源からとったものらしいんですよね。どうしてそこだけケチったんだ(笑

主題歌

タイトル作詞作・編曲備考
「Tomorrow Never Comes」Richard FairthorneOP
「彷徨う嘘」Takt-W上原一之龍MAMIED

EDムービーで主題歌が流れます。これがまたEDにふさわしい、しっとりとして壮大な曲。
歌詞はかなり物語に沿ったものなので、改めて読むと泣けてきます。
音楽モードで聴けるのはこの曲のみで、shortとFullの両バージョンとそのインストバージョンを聴くことが可能です。

OPムービーにも男性ボーカルによる英詩のロックが流れますが、音楽モードに登録はされません。
歌っているのは海外のロックアーティストで、聞くところによるとSoundCloudにある著作権フリーの楽曲を利用したものらしいですね。

ムービー

OPムービーは作中のイベント絵を使ったものなんですが、上手く加工して非常に動きのあるアグレッシブでカッコイイムービーになっています。ただHCGもふんだんに使われているのであんまり表に出せないのが残念。
一応Youtubeにもアップされていますが、一部修正が入ってる上に年齢制限付き。

攻略

シナリオルートはそれぞれサブタイトルがつけられていて「モンキー・ハウスへようこそ」と「血の収穫」、「灰とダイヤモンド」の3つ。
「モンキーハウス~」は捕まった魔女たちがひたすら陵辱される実質BADエンド。一番最初の選択肢で即分岐します。

「血の収穫」がいわゆるノーマルエンドで「灰とダイヤモンド」がトゥルーエンドになります。
「血の収穫」をクリアしてもう一度初めからプレイすると本編中にいくつかの選択肢が追加され、「灰とダイヤモンド」に分岐できるようになります。新規に二択の選択肢が出てくる関係上、どちらを選んでも未読の文章が表示されるため、1周目の台詞を覚えていないと狙い通りの選択だったのかがわかりにくいかもしれません。2週目は「魔女」に関する選択肢を選ぶようにしましょう。

総プレイ時間はゆっくりやって20~25時間くらい。意外と短めです。

Hシーン

Hシーンの数は全部で56個。このうち和姦と呼べるのはキャロルに数個あるだけで残りはほぼ全て陵辱。登場するほとんどの女性キャラに陵辱シーンがあります。
胸の大きさは大きすぎず小さすぎずのちょうど良い感じ。モザイク無しの陰毛描写とアナル描写があります。(ちなみに魔女の多くは銀髪ですが、アンダーヘアーは黒)
魔女の肌はみんな生気のない灰色っぽい色をしていて初めはちょっと違和感があるかもしれませんが、すぐ慣れると思います。

基本的に1回のHシーンで使われるイベント絵は1枚のみ。差分による変化はたくさんあるものの、ほぼ毎回2回戦まで行われるためちょっとだれちゃう場合もあるかも。
また、魔女の皆さんは最初は快楽に抵抗しようとするんですが、結構早い段階で”堕ちて”しまうので、もうちょっと頑張ってほしかったかなと思わなくもないですね。ちなみにB級エロ漫画並に卑語もバリバリ言うようになりますが、P音等による修正はありません。

そして肝心の陵辱、というより拷問内容なんですが、これがもうドン引きするくらいホント酷い。
大勢の男たちに輪姦されたり触手に孕まされたりするだけならまだ良いほう。犯されながら顔をボコボコに殴られたり、腹を殴られてゲロをぶちまけたり、ナイフで腹を割かれたり、ボウガンの的にさせられたり、耳や乳房を切り取られたり目玉をくりぬかれたり焼き鏝で焼かれたり・・・なんかもう思い出すだけで吐き気がしてきます。これを”使える”人ってちょっとお友達にはなりたくありません・・・。
いや、そういう作品なんだから仕方ないんですが、マジでライターさん頭おかしい(褒め言葉)。

ただこういう猟奇的なシーンというのは他作品だと得てして不自然な構図になったり、通常ありえないような極端な絵(腹や胸がでかくなり過ぎる等)になったり、痛みが快楽に変換されてよがったりすることも多いんですが、この作品では「ホントにやったらこういう感じになるんだうな」というある意味リアルなリョナ描写になっていて、キャラクターとプレイヤーに徹底的な苦痛を与えてきます。

感想

猟奇的な陵辱シーンとダークな世界観、燃える戦闘描写が共存する作品でした。
陵辱シーンのある燃えゲーというのは結構あると思うんですが、ここまで凄惨な描写が連続する作品はそうそうありません。

この作品はどちらかというとシナリオゲーではなく、Hシーンがメインの抜きゲーです。
シナリオの分量としてはHシーンが半分近くを占めている(と思う)のでシナリオゲーと思って読むと頻繁に挿入されるHシーンにやきもきしてしまうかもしれません。正直私も「エロはもういいから話の続きを早く!」と何度も思いました。(未読はスキップしない派)

これでもかと徹底的にヒロインを痛めつけていくシーンは、こういうのが好きな人(いるのか?)にはたまらないかもしれませんが、くれぐれも現実の犯罪には手を出さないように! あとフェミ系団体の人にこの作品が見つかりませんように!

シナリオのほうはボリュームが少ないこともあり、さすがにlightやニトロプラスといった”本職”の燃えゲーメーカーと比べてしまうとやや見劣りしてしまうかもしれません。
でも魅力的なウィッチたちと渋い男性キャラクターが織り成す濃厚な絶望物語は、さすが燃えゲーライター昏式龍也さんぐいぐいと読み手を物語に引き込ませてくれます。
凄惨な陵辱シーンも無理やり入れているわけではなく、ちゃんとストーリー上意味があるのが凄いところ。理不尽すぎる魔女たちの運命には本当に心が折れそうになります。

グロい描写が多数ある上に、エンディングも安易なハッピーエンドとはならないため、プレイヤーに様々な耐性を求められる作品ではありますが、こういうハードな作品もたまには良いもんです。
まぁなんだ、この作品の世界観に比べれば現実の理不尽な世界なんて屁でもないですね。

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