2010年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『時計仕掛けのレイライン』(ユニゾンシフト:ブロッサム 2012年)

萌えゲーブランド・ユニゾンシフトのサブレーベルであるユニゾンシフト:ブロッサムが放つファンタジー学園物語『時計仕掛けのレイライン』。2015年Getchu.com美少女ゲーム大賞シナリオ部門第2位。

様々な「魔術」が存在する不思議な学園を舞台にして、主人公たちが数々のトラブルに巻き込まれていくうちに学園をめぐる壮大な謎に挑んでいくという、ファンタジーでありながらも非常にミステリー色の濃い作品になっています。
この作品は全3部作となっていて、第1作『黄昏時の境界線』は言わば序章。第2作『残影の夜が明ける時』で物語が大きく動き出し、第3作『朝霧に散る花』にて数々の謎や伏線が収束していく様は正に圧巻。最初の『黄昏』だけで投げ出すことはせず、文字通り騙されたと思って3作全てプレイしてください。

3部作というとものすごい超大作に思えますが、1作あたりのボリュームはそんなに大きくはなく、DL版が非常に安価で購入できるので、それほど身構えずに気楽にプレイできる作品かと思います。

  • ファンタジー世界が舞台の学園ミステリー
  • 徐々に謎が明かされていく3部作構成
  • 魅力的かつ多種多様なキャラクター
ブランドユニゾンシフト
ジャンル昼と夜の学園
ブレイクスルーAVG
初回発売日2012.7.27
DL版価格13,200円
シナリオ市川環 他
原画うらび ぺろ いいの
いとうのいぢ
おすすめ度85
シナリオ傾向

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
時計仕掛けのレイライン-黄昏時の境界線-XP Vista 7 82012.7.27
時計仕掛けのレイライン-残影の夜が明ける時-XP Vista 7 82013.1.25
時計仕掛けのレイライン-朝霧に散る花-Vista 7 82015.1.30
時計仕掛けのレイライン Limited Trilogy BoxVista 7 82015.1.30やや難
時計仕掛けのレイライン Special Memorial EditionVista 7 82017.2.24やや難
時計仕掛けのレイライン-陽炎に彷徨う魔女-PSVita2017.4.27
時計仕掛けのレイライン-陽炎に彷徨う魔女-Switch2021.3.25

本編は第1作目の『黄昏時の境界線』、2作目の『残影の夜が明ける時』、そして最終章の『朝霧に散る花』で構成される3部作。それぞれの初回版にはサントラや主題歌マキシシングルが付属します。

『Limited Trilogy Box』は本編3作に加えサントラ・ムービー集・ブックレットがセットになったものですが、限定生産なのであまり多くは出回っていません。
『Special Memorial Edition』は3本セットの廉価版という感じですが、最近は中古市場でなぜかプレミア化しています。むしろ限定生産版の方が安いくらい。
Vita版・及びSwitch版は3本パックにほぼ準拠した上でキャラクター及びエピソードが追加されています。

注意点としては単品のパッケ版を購入する場合、”必ず順番どおりに”手に入れてください。くれぐれも3本一緒に買ってしまわないように!!
というのも、『残影』のパッケージ裏には『黄昏』のネタバレが、『朝霧』には『残影』のネタバレが思いっきり書かれているんですよ。仮に同時購入するにしても鉄の意志でパッケージ裏は見ないでください。(同じ理由で『残影』や『朝霧』の公式サイトやレビューサイトも見てはいけません。Wikipediaなどもってのほか。キャラ紹介からしてネタバレのオンパレードです)

今から買うならDL版FANZA独占を強く推奨。単品はもちろん、3本パックも販売されています。
この作品はDL版が定期的にセール対象になっているので、セール時に買ったほうが圧倒的にお得です。最近は1500均一やまとめ買いの対象になることが多いですね。

システム

基本的には画面下部に文章が表示されるスタンダードなシステム。画面サイズは1280×720のワイド画面。セーブ時にはテキストログも保存されます。

要所で選択肢が表示されますが、たとえ選択を間違えたとしても”前の選択肢に戻る”機能があるので必ずしも選択肢でセーブをする必要はありません。ただ選択肢1回分しか戻らない上に、いったんタイトル画面に戻ってからロードして再開するとセーブ前の選択肢に戻ることはできないので注意してください。序盤で選択肢をミスると後々面倒なことになるかも。

音響面は結構凝っていて、画面の右側にいるキャラの声はちゃんと微妙に右から聞こえますし、画面外のキャラが喋ったときは完全に右側(ないし左側)から声が聞こえるようになっています。プレイするときはヘッドホンの使用を推奨。

残念なことに単品パッケージ版の『黄昏』と『残影』に関してはディスクレス起動ができません。(『朝霧』はディスクレス可能。3本パックがどうなっているかは不明)
しかも『残影』のディスクで『黄昏』を起動することができないので、後から『黄昏』をプレイし直したいときはいちいちディスクを入れ替えないといけないのが面倒ですね。

シナリオ

企画・原案は市川環さん。シナリオライターは@ピースさん、西ノ宮勇希さん、風間ぼなんざさん、南愛恵さん。複数ライターによる違和感はほぼありません。
3作品ともメインシナリオはほぼ一本道で、キャラ別の個別ストーリーはハッキリ言ってオマケのようなもの。
最終作の『朝霧』に至っては個別ルートがありません。

物語は昼と夜で全く別の生徒が通う天秤瑠璃学園を舞台にしています。ただ別に夜間学部というわけではなく魔術によって夜の学園が構成されるため、昼の生徒は (一部の生徒を除いて)夜の生徒の存在を知らず、夜の生徒は自分たちが夜に通っているという自覚はありません。まぁあんまり説明するとネタバレになってし まいますが、この学園の謎を”特殊事案調査分室”のメンバーと共に解明していくのが大まかなストーリーの流れになります。

この他にも不可思議な現象を引き起こすマジックアイテム”遺品(ミスト)”や、先天的に高い魔力をもつ存在である”魔女(マギエ)”等が登場するファンタジー色の濃い世界観が特徴的。エピソードによっては夢の世界のようなファンシーな展開になったり、謎が謎を呼ぶミステリー要素の強い展開になったり、魔術を駆使した 熱いバトル要素があったりと、様々な要素が上手く組み合わさった物語になっています。

グラフィック

原画はうらびさん、ぺろさん、いいのさん、そしてユニゾンシフトの看板原画家いとうのいぢさん。(のいぢさんは『朝霧』のみ)
ユニゾンシフトらしいやや淡い感じの色彩が特徴的です。複数原画家による違和感はほとんどなく、雰囲気がしっかり統一されていますね。

服装のバリエーションがほとんどないのがちょっと残念。ほぼ制服Onlyで生徒の中で私服が見られるのは憂緒のみ。

キャラクター

鹿々谷 憂緒(ししがたに うしお)
学園で起こる不可思議な事件を調査・解決する特殊事案調査分室(通称・特査)の中心メンバー。
冷静かつ聡明なメインヒロイン。

風呂屋町 眠子(ふろやまち ねこ)
夜の学園の生徒。
白馬に乗った王子様に憧れる明るい一年生。

壬生 鍔姫(みぶ つばき)
昼の生徒の2年生で、夜の学園の秘密を守る風紀委員のリーダー的存在。

九折坂 二人(つづらおりざか ふひと)
オコジョの”一(ニノマエ)君”と行動を共にする天秤瑠璃学園の学園長。
どう見てもロリ。どういうわけかチェコ語を多用する。

リト
学園の地下図書館で本の管理をする女生徒。
口数が少なく訊かれたことにしか答えない。

久我 満琉(こが みちる)
本編主人公。力が強く大食漢。
序盤はラノベ等でよくある”やれやれ系”の主人公ですが、中盤以降は大活躍。

これ以外に特査メンバーの烏丸小太郎や風紀委員の村雲静香が『黄昏』で登場するメインキャラクター。
この他にも学園の生徒がたくさん出てきますし、『残影』以降でもキャラが増えるので結構大所帯ですね。
それにしてもキャラの名前がかなり特徴的です。なんとなく西緒維新の小説っぽい。

ボイス

森谷実園(憂緒) 萌花ちょこ(眠子) かわしまりの(鍔姫) 小倉結衣(二人) 鶴屋春人(リト)
平野響子中家志穂榛名れん鈴谷まやまきいづみ
倉田まりや白月かなめ有村祥涼屋スイshizuku
藤乃理香柚原みう門倉宗一古河徹人

キャラが多いので声優さんも大所帯。名義はPC版とCS版で共通です。
ベテランさんから最近の人までバリエーションに飛んでいます。ぶっちゃけサブキャラの半分くらいは初めて見る名前です。

今作の助演女優賞は満場一致で小倉結衣さんに決定。特徴的過ぎる学園長の演技は一度聞いたら頭から離れません。

BGM

BGM作曲は水月陵さん。基本的には3作共通のBGMが使われています。(もちろん2・3作目はいくつか追加されていますが)
よく聴くと主題歌のメロディがさりげなく入ってる曲がいくつかあるので探してみるのも面白いかも。
BGM鑑賞モードでは水月さんによるライナーノーツも見られます。

個人的なお気に入りは学園長のテーマとも言える『どぶりぃ~でんっ!』。どこか不思議でどこかコミカルでありながら、高貴さも感じられる変わった曲です。

主題歌

タイトル作詞・作曲備考
「黄昏時のレイライン」水月陵JOH feat.KIYOOP
「黄昏時のレイライン
~from A Clockwork Ley-Line~」
水月陵KIYOED
「残影の夜が明けるとき」水月陵JOH and KIYOOP
「Clockwork Ley-Line -The Last episode-」水月陵JOH + KIYOOP
「Places where you are」水月陵Akira コーラス:KIYOED

ボーカル曲の作詞作曲も全て水月陵さん。ボーカルの”KIYO”さんも水月さんの別名義なのでほとんど1人で創られていますね。
作品全体のメインテーマとなるのが『黄昏時のレイライン』。どこか不安を煽るような曲調です。

ムービー

ムービー製作は”どせい”さん。
3作それぞれにOPムービーがある、・・・らしいのですがウチの環境では何故か朝霧のOPムービーを見ることができませんでした。ムービー鑑賞モードがないのが残念です。

どのムービーも台詞や文章による直接的な描写が多いのは作成者さんの作風なんでしょうか。良くも悪くもプロモーションムービーっぽい雰囲気ですね。

攻略

作中に出てくる選択肢は主に3つに分類されます。

まず推理パートの選択肢。
これは文字通り謎解きの選択になります。選択した後に憂緒が「私もそう思います」的なセリフを言ったら正解。仮に間違えてもシナリオ進行には影響しませんが、全問正解(もしくは1回だけ間違い)するとクリア後に公式サイトからオマケイラストを見ることができます。

次にBADエンド選択肢。
これは各作品終盤の戦闘シーンに出てきます。数は少ないものの選択を間違えるとBADエンドに直行。わかりやすいものが多いですが、選択肢を見ただけではちょっと判別しにくいものもあります。

3つ目は個別ルート分岐選択肢。
要するにヒロインの好感度を上げる選択肢ですね。割とストレートな選択肢が多いので間違えることはそんなにないかと。

『黄昏』におけるおすすめ攻略順は、眠子→鍔姫→憂緒。メインストーリーから分岐していくいわゆる途中下車方式なので、エピソード順に進めていけば良いかと。めんどくさければ憂緒のみでもOK。
難易度はそれほど難しくはないですが、憂緒のみ序盤の選択肢からフラグになっているので全編を通じて憂緒に対しては好意的な選択肢を選んでください。

『残影』も似たような構成で最後は憂緒になります。メインシナリオも基本的に憂緒ルートクリアを前提にして物語が進むので、(他の個別ルートはともかく)憂緒ルートだけはクリアしてください。
『朝霧』は選択肢はありますがのシナリオは完全一本道。クリアするとおまけでアナザーストーリーを読むことができます。

Hシーン

『黄昏』と『残影』ではHシーンは本編中に各ヒロイン1回ずつ。それに加えてクリア後のおまけで1回ずつあるので1作あたり計6回。
『朝霧』では本編中のHシーンは無く、クリア後のおまけで合計9シーンほど。
軽い感じのものが多いので正直実用性は薄いかもしれません。オマケのシーンでは夢オチも多いですし。
胸の大きさは一部のキャラを除いてやや小さめ。個人的にはこのくらいの大きさが好みだったりします。

それにしてもせっかく黒タイツキャラがいるのに、履いたままするシーンがほとんどないのは詐欺だと思います…。
何のために黒タイツ履いてるんだ…。タイツを防寒着か何かと勘違いしてるのか…。

感想

『黄昏』『残影』『朝霧』と続く大作シナリオ。3部作というとちょっととっつき難いかもしれませんが、シナリオの長さは全体として長すぎず短すぎずちょうどいい長さなので、間延びすることなくプレイできると思います。

プロローグの『黄昏』、物語が大きく動き出す『残影』、一気に物語が収束する『朝霧』の3作は正に序・破・急といった感じで3部作のセオリー通りに展開します。
序盤ではどこか日常ミステリのような雰囲気ですが、段々と学園にまつわる謎が提示されていき、残影』終盤からは怒涛の展開。一気に物語に引き込まれていきます。

魔 法や特殊能力を扱ったお話は、ともすると設定に懲りすぎたために終盤になるにつれて構成に無理が出てきたりしがちなんですが、この作品にはそれがほとんど ありません。ちゃんと結末を考えて設定が練られてあるので、一度すべてクリアしてから改めてプレイし直すと、序盤からしっかり伏線が張られていて綿密に作 られていることがわかるかと。ホントよく出来てます、この作品。

謎解きがメインの物語なのでヒロインとの恋愛描写は少なめなのですが、絡み合った線が一本に収束する快感は他の作品ではなかなか味わえない作品かと思います。

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