2023年の春アニメにおいて話題になった作品といえば『水星の魔女』と、今回紹介する『【推しの子】』でしょうか。
「水星~」はヒットが約束されてるガンダムシリーズだったので話題になるのは当然として、【推しの子】は第1話に3話分の内容を詰め込んだ上に、初見には衝撃の展開だったので一気に引き込まれたという人も多いのではないかと思います。
かくいう私もタイトルとアイドルものであるということしか知らずに1話を見たんですが、1話後半の展開に度肝を抜かされたと同時にボロボロと泣かされました。正直1話の衝撃度で言えば全アニメで一二を争うくらいだと思います。
この作品は原作が『かぐや様は告らせたい』等でおなじみの赤坂アカさん、作画は『クズの本懐』等で有名な横槍メンゴさんによる漫画をアニメ化したもの。漫画連載は今も続いているのでアニメはもちろん完結はしておらず、11話終了と同時に2期の制作が発表されました。
ちなみにタイトルは”【”の部分も含まれていて、もっと正確には二重線になるのが正しい表記だそうです。
監督は平牧大輔さん。00年代から活躍されているアニメーターさんで、動画担当から始まって原画、絵コンテ・演出と順調にキャリアを重ね、2019年以降『私に天使が舞い降りた!』や『恋する小惑星』で監督を務められた実力派の方。
この作品は原作付きでありながらアニメ放送前に本編の内容がほとんど伏せられていたのも特徴的です。
公式から出される情報が「めっちゃ可愛い十代の少女・アイがトップアイドルを目指す」くらいしか公表されておらず、事前に配信されたWebラジオでは1話のあらすじはおろか登場人物すらもろくに紹介できないという異例の態勢で放送されました。
その辺はファンもよくわかっていて、原作組の人たちは「詳しくは言えないけどメッチャ面白いから見て!原作はまだ読むな!」みたいな感じで新規の人たちに配慮した布教をしている人が多かったと思います。そのおかげで私もまっさらな状態で1話を楽しむことができました。
それに倣ってこの記事でもなるべく1話の内容は伏せて紹介したいと思います。
まぁこれほど話題になってるのにこの作品の内容知らない人も少ないかもしれませんが、ひょっとしたらまだ知らない人もいるかもしれないですし。むしろそういう人はラッキーだと思って今からでも1話見ましょう。

| 原作 | 赤坂アカ 横槍メンゴ |
| 監督 | 平牧大輔 |
| シリーズ構成 | 田中仁 |
| キャラクターデザイン | 平山寛菜 |
| 制作 | 動画工房 |
| 放映日時 | 2023.4~(1期) 2024.7~(2期) 2026.1~(3期) |
| おすすめ度 | 90 |
| シナリオ傾向 |
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あらすじ
「この芸能界(せかい) において嘘は武器だ」
地方都市で働く産婦人科医・ゴロー。
ある日”推し”のアイドル「B小町」のアイが彼の前に現れた。
彼女はある禁断の秘密を抱えており…。
そんな二人の”最悪”の出会いから、運命が動き出していく―。公式サイトより
シナリオ
シリーズ構成は田中仁さん。経験豊富な中堅の脚本家さんで、過去にプリキュアシリーズをはじめ、『ゆるキャン△』やラブライブの『ニジガク』等のシリーズ構成を担当された方です。
ア ニメの第1話にあたる原作1巻はやや特殊なストーリー構成をしているんですが、それをアニメ化するにあたってシンプルでわかりやすいストーリーラインにし たうえで、視聴者が驚き、感動するよう上手い具合に再構成されています。この辺は脚本家さんの実力が垣間見えますね。もちろん原作は原作で悪くないですけ ど。
物語は田舎の病院に勤める医師の雨宮吾郎が、大ファンであるアイドルグループ「B小町」のセンター”アイ”ととあるきっかけで出会うところから始まります。
とりあえず第1話を見る前に知っていい情報はここまで。
別に何か凄いトリックがあるとかそういうわけではないのですが、何も知らずに1話を見たほうが新鮮な感動を味わえると思います。
1話は壮大なプロローグのようなものなので、実質的に物語本編が始まるのは2話から。
芸能界の裏事情だったり、新人アイドルがデビューするまでの奮闘だったり、インターネットでの炎上トラブルだったり、ちょっとした三角関係の恋模様だったりと、様々な要素が詰め込まれています。
物語全体としてはサスペンスチックな要素が柱になっていますが、その点に関しては(少なくともアニメ1期の段階では)あまり話が進展しないので、謎を追及していくような展開は期待しないほうがいいかも。
グラフィック

キャラクターデザインは平山寛菜さん。過去に『彼女、お借りします』等でキャラデザを務めた若手のアニメーターさんです。
作画も終始安定していて安心して見ていられます。流石は歴史と技術のある動画工房という感じ。
そういえば先日TVで『風の谷のナウシカ』見てたら、エンドクレジットに動画工房の名前があって驚きました。
最近のアイドルアニメのライブシーンは3Dで描くことが多いと思いますが、この作品のライブシーンはすべて手書き。当然かなり気合の入った作画です。
しかも一部は”手書きの良さ”を生かした演出になっています。3Dも悪くないけどこういう昔ながらの作画もいいですね。
キャラデザの特徴といえばなんといってもトップアイドル・アイの異常なまでにキラキラした星形の瞳。
これはアイのアイドルとしてのカリスマ性を視聴者に示すアニメや漫画ならではの誇張表現だと思うんですが、物語的にもちゃんと意味のあるギミックになっているのは面白いですね。特に7話のラストシーンは衝撃的でした。
キャラクター

キャラをどこまで明かして良いものか迷うところですが、とりあえずアニメ1話(原作1巻)未見の方用にこの辺りまでは大丈夫だろうという人物を紹介します
星野アイ
アイドルグループ「B小町」不動のセンターにして絶対的エース。
とある秘密を抱えながら圧倒的な美貌とカリスマ性でトップアイドルまで上り詰める。
雨宮吾郎
中山間地にある総合病院に勤める医師。
研修医時代に担当した少女の影響で「B小町」の熱狂的なファンとなる。
天童寺さりな
脳の難病で長期入院する少女。
入院中に見た映像をきっかけにアイドルに憧れるようになる。最推しは「B小町」のアイ。
有馬かな
「10秒で泣ける天才子役」と称賛される子役俳優。通称「重曹ちゃん」。
子役としては類稀なる演技力を持つが、スタッフや共演者に対して不遜な態度をとることも。
黒川あかね
実力派の俳優が集う劇団「ララライ」に所属する高校生。
常に努力を怠らず、演じるキャラを徹底的に研究して役作りする天才女優。
MEMちょ
チャンネル登録者数37万人、本名不詳の人気高校生Youtuber。
コミュ力が高くどんな現場もそつなくこなすが、プロフィールはかなり盛ってる模様。
主要キャラはこの辺り。多分間違ってはいないと思う。
キャラの扱いが主要キャラとそれ以外でかなり差別化してる感じですね。アイ以外の「B小町」のメンバーは名前すら出てきません。
メインキャラの中では重曹ちゃんこと有馬かながいいですね。まぁいわゆる「ちょろイン」と言われるようないかにもなキャラなんですけど、1周まわって可愛く見えてきます。潘めぐみさんの声もこれまたベストマッチ。
ボイス
| 高橋李依 | 内山夕実 | 伊駒ゆりえ | ||
| 大塚剛央 | 潘めぐみ | 石見舞菜香 | 大久保瑠美 | Lynn |
人気と実力を兼ね備えた声優陣です。
伊駒ゆりえさんは初メインキャストの新人さんらしく、たしかにちょっと初々しさはありますが、むしろそこが新人アイドルっぽくていいですね。
そしてなんといっても必聴は黒川あかね役の石見舞菜香さん。いやこの人凄い。
特に7話ラストのあのシーン。一声で「切り替わった」ことを視聴者全員に気付かせる圧巻の演技力です。単なるモノマネではなく、完全に「役に入っている」ことがわかる演技になっています。これは正に鳥肌もの。
あと10話の”あのキャラ”の演技も凄かった。あれ本人がやってたのかよ!
エンドクレジット見たときコーヒー噴いたわ! 声優さんスゲーな…。
BGM
BGMの作曲は伊賀拓郎さん。過去に『恋する小惑星』や『スローループ』等の劇伴を手掛けられた方で、平牧監督とも何度か同じ作品で仕事をしているみたいですね。
サントラの曲数も62曲とボリューム満点。エロゲーの日常曲っぽいものから大作映画のような壮大な曲まで様々。
中でも特に印象的なのは「Mother and Children」。曲を聴いただけで1話の”あのシーン”が脳裏によみがえります。試聴動画でもここだけたくさん再生されていますね(笑
そしてその後のシーンで流れる「Begining of the revenge」も記憶に残る曲です。なんというか悲壮な決意がダイレクトに伝わってきます。
主題歌
| タイトル | 作詞・作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 「アイドル」 | Ayase | Ayase | YOASOBI | OP |
| 「メフィスト」 | 薔薇園アヴ | 塚田耕司 | 女王蜂 | ED |
| 「サインはB」 | 大石昌良 | やしきん | アイ(高橋李依) | 劇中歌 |
OPはYOASOBIの『アイドル』。これはもうアニメ見てない人でも聴いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
わずか2ヶ月でYoutubeの再生回数が2億回を超えたという化け物のような曲です。まぁそのうちの200回くらいは私なんですけど。
曲の長さが4分未満というのもサブスク時代を象徴してますね。
1番と2番でメロディの構成が違うのも今風の曲という感じ。
YOASOBIらしい曲でありながら、アイドルソングのような要素も入っていて、ライブで盛り上がりそうな曲ですね。
ご存じの通り、YOASOBIは小説等を”原作”にして曲を作っていることが多いのですが、この曲でも原作漫画1巻、及びスピンオフ小説の『45510』をもとにして歌詞が書かれています。そのままでももちろん良い曲なのですが、アニメ1話を見た後で聴くとより味わい深くなりますね。
特にオーラスの歌詞が印象的。
『あぁ、やっと言えた これは絶対嘘じゃない 愛してる』
これ聴いて泣かない人いるのか…。
あと関係ないですが、同時期に放送された『水星の魔女』最終話ラストでYOASOBIの歌う1期OPの『祝福』が流れたときも結構鳥肌でした。
いや、最終回に1期OPが流れること自体は別によくあることなんですが、曲が流れた直後に『目一杯の祝福を君に』という歌詞の一部を引用した最終話サブタイトルが表示されるんですよね。
物語から曲を作るだけでなく、曲から物語にフィードバックさせる。YOASOBIの曲にはそこまでの魅力があることの証左なのかもしれません。
女王蜂によるED「メフィスト」はOPとは真逆の男性的な曲。
曲調や歌詞も非常に闇を感じる構成です。おそらく2話以降の物語をフィーチャーしたものでしょうか。実際使われるのは2話からですし。
MVがスマホサイズなのも時代を感じますね。あと音割れしているのは仕様です。
ムービー
OPアニメの絵コンテ・演出は山本ゆうすけさん。
最近だと『着せ恋』や『メイドインアビス』、『ぼっち・ざ・ろっく!』のOPを手掛けられた方みたいです。
非常に曲調に合った構成で、終盤の数瞬ごとに切り替わるようなカメラ構成はそれぞれの登場人物の思惑を視聴者に想像させます。
ただ内容は2話以降に即したものなので1話未見の人は見ちゃダメなやつです。
EDアニメの絵コンテ・演出は中山直哉さん。EDの原画は一人で担当されたそうです。
かなりダークな雰囲気を醸していて、とある登場人物の心象を表したかのような構成になっています。
ちなみにこちらも1話見てない人は見ちゃダメ。
エンディングはムービーの入り方も非常に秀逸。
この作品は各エピソードの終わりにEDテーマのイントロが重なる「シティーハンター方式」なのですが、毎回続きが気になるすごく良いところで終わるんですよね。
しかもイントロの「デ・デ・デンデン♪デ・デ・デンデン♪」というリズムが非常に心地よくてクセになります。
感想

なんだか久々に頭をガツンと殴られたようなアニメでした。やはりあの1話は良い意味で卑怯。
1話に3話分を詰め込んでわざわざ特別編成にしたのはちゃんと意味があったんですね。
原作既読組の人たちからは「1話がピーク」とか言われてましたが全然そんなことなかったです。
もちろん1話と2話以降ではかなり毛色の違う物語ではありますが、あの1話があるからこその2話以降だとも思いますし、見どころもいっぱいあって毎週楽しみにして見てました。
ストーリーよし、作画よし、キャラクターよし、演技よし、演出よし、音楽よし、という非の打ちどころのない作品だと思います。
サスペンス展開を期待していた人は確かにちょっと肩透かしだったかもしれませんが、そう簡単に真相にたどり着いたらあっという間に話終っちゃいますしね。そもそもまだ原作も続いているわけだし。
昨今のアイドルアニメとは一線を画しすぎているというか、そもそもこの作品をアイドルものと言っていいかも微妙なところですが、私はむしろこういう芸能界の舞台裏的な部分を見せる物語も大好きです。
むしろこの作品を楽しむうえでは、サスペンス要素は添え物程度に思ったほうがいいかもしれません。
「作者の主張をキャラに言わせるのはやめろ」みたいな批判も赤坂アカ作品にはよく言われることなんですが、私はあんまり気になりませんでした。
まぁ確かに一部の台詞は説教臭さが無きにしも非ずといった感じだったものの、個人的にはは共感できる部分も多いですし、時事ネタや社会問題を扱う以上多少は仕方ないかなと。とりあえずネットの炎上に加担しちゃダメですね。
何はともあれ物語はまだ始まったばかり。
当然のごとく2期の制作も決定したので今後が楽しみな作品がまた一つ増えました。


