美少女ゲームレビュー

ギャルゲーレビュー『GINKA』(Frontwing 2023年)

今ではエロゲばっかりやってる私ですが、子供のころは近所に幼馴染の女の子がいたんですよ。
小学校低学年くらいまでは一緒に遊んでましたが、いつのころからか互いに同性の友達と遊ぶことが多くなって、中学以降は話どころか会うこともなく今に至ります。
まぁ現実の幼馴染なんてそんなもんですよね。

今回紹介する作品は夏の離島を舞台にした物語『GINKA』。
Hシーンのない全年齢向けロープライス作品です。

制作はFrontwing、販売はブシロードゲームズ。開発と販売でブランドが分かれているのはCSゲームでは一般的ですが、ギャルゲー界隈でも最近増えてきました。当時はFrontwingがブシロードの子会社だったので、実質Frontwing作品として扱われることが多い作品です。

どんな作品?

物語は小学生時代に住んでいた離島へ5年ぶりに帰ってきた高校生の少年・流星が主人公。
昔の友人たちと再会すると同時に、5年前に神隠しにあって行方不明になったはずの幼馴染の少女・ギンカが当時のままの姿で現れる、というノスタルジックで幻想的なストーリー。
ギンカや友人たちと一緒に島の夏祭の儀式を復活させていくうちに、島の伝説や神隠しの秘密が明らかになっていきます。

ロープライス作品なのでメインヒロインは基本的にギンカのみ。でも物語は意外と複雑で、それなりにボリュームもあり、読み応えのある作品です。

制作スタッフはシナリオライターに紺野アスタさん、メイン原画家に”ゆさの”さん、音楽に松本文紀さんという、同じFrontwing制作の『ATRI』(こちらの販売はANIPLEX.EXE)とほぼ同じメンバーがそろっています。

またメインヒロインのギンカ役には、なぜかエロゲー界隈でも人気の高い声優・長谷川育美さんが担当。アニメの第一線で活躍する育美さんの名演は必聴です。

どんな人におすすめ?

前作『ATRI』とはストーリーや世界観は全く違いますが、空気感のようなものは共通しています。なので『ATRI』が好きな方は問題なくプレイできるかと。

ただ紺野アスタ作品としてはややファンタジーというかオカルト要素が強め。
世界観はKey作品、特に『Summer Pockets』と雰囲気が似ています。サマポケのような夏の離島を舞台にした幻想的な物語が好きな方には特におすすめの作品です。

推奨ポイント
  • ノスタルジックな雰囲気の世界観
  • ”神隠し”をめぐる意外な真相
  • ギンカ役・長谷川育美の名演
注意ポイント
  • イチャラブ要素は少なめ
  • オカルト要素が強め
  • ラストがややご都合主義的
ブランドFrontwing
ジャンルノベルゲーム
初回発売日2023.10.26
DL版価格3,278円
シナリオ紺野アスタ
原画ゆさの
渡辺明夫
おすすめ度80
シナリオ傾向

【購入ガイド】

タイトル対応OS発売日入手難度
GINKA(DL版)10 112023.10.26
GINKA 特装版10 112024.9.19
GINKA (通常版) 10 112024.9.19
GINKASwitch2024.9.19

発売はDL版が先行。その約1年後にパッケージ版が発売されました。
パッケージ版は通常版と特装版があり、特装版には特典としてビジュアルブック・B2タペストリー・サントラCD・アクリルキーホルダーが付属。プラスして抱き枕カバー付きの物も発売されています。
通常版はDVDトールケースのシンプルなもの。

CSではSwitch版が出ていますが、内容はもちろん特典も基本的に同じものです。

今から買うならダウンロード版を推奨。
DMM・DLSite・Steamの各プラットフォームから配信されています。
定期的にセール対象になるので安くなっているときに買いましょう。定価はどこも同じですが、DMMとDLSiteはポイントやクーポンがあるのでそのぶんお得に買えます。Steamではたまに割引率が高い時があるので時期によってはねらい目。まぁちょっとの差でしかないですけど。

DMMでは18禁のFANZAでも販売されていますがどちらも全年齢向けです。またDMMでプレイするときは「DMM GAMES PLAYER」が必須なので注意してください。

ちなみにこの作品に限らず、Frontwingの公式サイトはSSLに対応していない(アドレスの先頭がhttpsになってない)ので、ブラウザの設定によっては見られないかもしれません。というか今どきSSLに対応してない公式サイトってFrontwingぐらいでは?

【システム】タッチパネルにも対応

画面下にテキストが表示される通常のADVシステムです。画面サイズは1280×720。基本的には前作『ATRI』と同じものですね。 操作はマウス以外にタッチパネルでも可能です。
テキストやUIは日本語のほかに英語や中国語(簡体字)に対応、音声は英語にも対応しています。ネイティブの方が声をあてているっぽいのでリスニングの勉強になるかも。

オートモードのウエイト時間はテキストの長さに関わらず一定。長い文章のときは焦ります。

バックログからのジャンプや次(もしくは前)の選択肢に戻る機能、お気に入りボイス登録機能など、昨今のノベルゲームに搭載されている機能はだいたいついている使いやすいシステムです。
バックログではエピソードごとにまとめたシーンセレクト機能もあり、それを使えば任意のエピソードの最初に飛ぶことができます。

便利というか注意点として、マウスジェスチャ機能があります。
ただこれはマニュアルに書いてないうえに、場合によっては操作ミスで機能してしまうので要注意です。自分は1回意図せずにシステムアイコンがタブレットモードに変わってしまって焦りました。
タブレットモードからの切り替えはシステム設定からでもできますが、マウスジェスチャでは右クリック+マウス右になります。(通常モードからタブレットモードへの切り替えは右クリック+マウス左。そこからさらに右クリック+マウス左でスキップモード)

【シナリオ】読みやすくてテンポのいいストーリー

5年前に神隠しにあったはずの少女・ギンカ

シナリオライターは紺野アスタさん。前作『ATRI』はもちろん、『この大空に、翼をひろげて』や『見上げてごらん夜の星を』など、10代の少年を主人公にした爽やかで感動的なストーリーが魅力のライターさんです。

物語は高校生の主人公・青羽流星が夏休みを利用して小学生の時に住んでいた”ひめしま”に原付とフェリーでやってくるところから始まります。
かつての友人たちと会い島内を散策していると、5年前の島の儀式の最中に”神隠し”に遭い行方不明になったはずの少女・ギンカが小学生の姿のまま現れる、というミステリアスで幻想的なストーリー。

島で行う儀式というのは住民の願い事を”カタシロ”と呼ばれる紙細工に書いて、島の巫女である”お役目様”の少女が海にある鳥居を小舟でくぐって神様の住む島に届ける、というもの。その”お役目様”を担っていたのがかつての銀花。銀花が行方不明になった後は儀式も途絶えていたが島の子供たちが復活を画策している、という状況です。

ベテランの域に入りつつある紺野アスタさんのテキストはさすがに読みやすい。
地の文と会話文のバランスが絶妙でテンポよく、かつ分かりやすく物語が進みます。ボリュームも長くもなく短くもないちょうどいい感じなので、ダレずに進めることができるかと。
途中で視点が主人公以外のキャラになることもありますが、口調や雰囲気で誰の視点かすぐわかるようになっていますね。

また適度に笑える日常シーンもはさまれるので、ギンカや友人たちとのやり取りも非常に楽しいものでした。売店でアイスを買い食いしたり、朝のラジオ体操に行ったり、みんなで海で遊んだり。いい感じで”田舎の夏休み感”を味わえます。
年代設定はハッキリ明示はされませんが、ネットやスマホはないけど携帯ゲームはあることから、だいたい2000年代前半くらいの時代でしょうか。テレビも液晶とブラウン管が混在していますし。

ラブコメやイチャラブシーンは少なめ(無くはない)。
もともとヒロインはギンカ一人なうえに、年齢差もあるので友達の妹のような感覚ですね。ギンカ本人は「流星のお嫁さんになる」と無邪気に懐いてきますが、恋愛関係とはちょっと違う感じ。少なくともロリゲーではありません。主人公が他の女の子と仲良くしてるとふくれっ面になるギンカはカワイイけど。

【グラフィック】素朴な味わいの画風

左からギンカ、リン、ひまわり

イベントCGは26枚、SD絵が6枚。SD絵のうち4枚は差分のようなものなので、実質3枚ですね。
メインキャラの原画は”ゆさの”さん、サブキャラはアニメーターの渡辺明夫さん、SD原画にななかまいさん。

あまりゴテゴテせず、いい意味で素朴で透明感のある画風です。夏の離島の雰囲気にぴったり。
メインヒロインのギンカはあまり露出度が高くないですが、そのぶん年上キャラであるリンはおっぱい大きめでエロくていいですね。

イベントCGでは主人公の姿も描かれます。
良くも悪くも没個性的で無難な主人公デザイン。ただ中盤くらいにいきなり出てくるので、初見では「誰?」と思ってしまうかも。

【キャラクター】ひめ島の子供たち

ギンカ本作メインヒロイン。5年前に行方不明になった小学生の銀花と瓜二つの少女。
島の人間からは「姫様」と呼ばれる存在。
記憶を失っているがなぜか流星の名前は知っていて懐いてくる。
謎の少女ギンカと同じ銀色の髪を持つ、見た目は高校生の少女。神様を捜すために島にやってくる。
顔立ちや食べ物の好みもかつての銀花と似ているが、主人公に対してはつれない態度をとる。
海野ひまわり島に住む中学生の少女。子供のころに主人公とよく遊んでいたため、今でも懐いてくる。
明るい性格で、将来は都会へ行ってギャルになるのが夢。
涼代リン主人公より2つ年上の少女で子供たちの面倒見のいいまとめ役。
友人の草二と共に島の祭りの復活を計画する。
青羽流星本作主人公の高校生。原付と一緒にフェリーに乗って島にやってくる。
5年前の”神隠し”の後は島を離れていたが、休みを利用して一人で帰郷する。

このほかに流星と同い年で夏祭り実行委員会の中心人物・七守草二、ひめ島の教師で流星たちの担任でもあった荒羅伎なずなが主な登場人物。このうちメインヒロインは実質一人だけになります。
シナリオ後半でもう一人キャラが追加されますが、結構唐突に出てくるのでもうちょっと序盤から匂わせておいた方が良かったんじゃないかと思わなくもないですね。

個人的お気に入りキャラはリン姉ぇ。
姉キャラではありますが、主人公の姉というより大家族の長女みたいな雰囲気です。流星とは気の置けない幼馴染みたいな関係がいいですね。ていうか嫁にしたい。

【ボイス】長谷川育美ボイスは必聴

長谷川育美(ギンカ)
長縄まりあ(ひまわり)伊藤彩沙(リン)安済知佳(なずな)
大原さやか青木陽菜
森嶋秀太(草二)

主人公以外フルボイス。
一般向け作品とあってTVアニメ等で活躍されている声優さんが中心です。

この作品の聴き所は何といってもメインヒロインギンカ役の長谷川育美さんの演技。
実質一人二役的なところがありますが、違いがありつつ共通点もあるという見事なバランスです。
感情的な演技も素晴らしく、終盤の慟哭シーンではゾクッとしました。

ひまわり役はアニメ『はたらく細胞』の血小板ちゃんなどロリ役に定評のある長縄まりあさん。ひまわりは中学生ですが、”ちょっと成長したロリ”みたいな演技がいいですね。

【BGM】ノスタルジックで神秘的

作中BGMは20曲。作曲は『すば日々』や『サクラノ詩』などのケロQ/枕作品も手掛ける松本文紀さん。 今作もどこかノスタルジックで透明感のある良曲ぞろい。松本さんらしくピアノをメインに使った曲が多いですね。

松本さんの曲ってどこかKey作品とも通じるものがある気がします。BGMを聴いただけで夏の情景がイメージできるというか。
それでいてギャルゲーチックなコミカルな曲があるのもまたKeyっぽい。

個人的お気に入り曲は「カタシロと願い」。悲し気なピアノソロから始まり、民族楽器のような音色が加わりつつ壮大なサビにつながっていきます。島の因習にとらわれる銀花を描いたような、作品を象徴する曲です。

「神様の島」はハーブっぽい音色が奏でる神秘的で悲し気な曲。どことなく”やるせなさ”も感じる雰囲気です。

サントラは特装版の特典のほかに各種音楽サイトでデジタル販売されていますし、Steamでも購入可能です。

【主題歌】疾走感のあるOP曲

タイトル作詞作・編曲備考
「Star Trail」紺野アスタ松本文紀四ノ宮銀花(CV:長谷川育美)OP
「夢浮橋-ユメノウキハシ-」midoUNDER_COVERS青木陽菜ED

OP曲を歌うのは長谷川育美さん。一応銀花が歌うキャラソンという位置づけですが、あんまりキャラっぽさはないかもしれません。銀花って歌うたわなそうだし。
曲自体は前向きで勢いのある曲。松本さんの曲らしく疾走感がありますね。
歌詞は流星と銀花のどちらの気持ちともとれる内容です。プレイ後に聴くと歌詞の意味がよく分かります。

にしても長谷川育美さん歌上手すぎる! この方は基本的にキャラソンしか歌わないっぽいんですが、もしアーティストデビューしたら結構人気でそう。

ED曲はアニメ映画のエンディングのような壮大な曲。今まで縛られていた因習から解放されて大空に飛び立つような雰囲気です。

ありがたいことにクリア後はEXTRAモードで2曲ともフルバージョンを聴くことができます。

【ムービー】夏の雰囲気全開

プロローグの後にムービーが流れます。 青い海や白い雲を強調した夏っぽさ全開の爽やかなムービーです。単なるキャラ紹介にとどまらず、カタシロや篝火、神域の巨木といった物語上の重要ポイントをさりげなく映す上手いつくりになっていますね。

ムービー制作はyo-yuさん。
ムービー中に机の落書きとして端っこにチラッと名前が表示されます。控えめにもほどがある(笑

【攻略】一本道のシナリオ構成

作中に何度か選択肢が出現しますが、基本的には一本道のシナリオ構成です。 選択肢の選び方次第でBADエンドになりますが、ひねくれたものはないので、なんとなく正統派っぽい選択肢を選べば大丈夫。 BADエンド自体も取り立てて重要なものではないので、わざわざ後で回収する必要はありません。

総プレイ時間はオートモードでゆっくりやって12~15時間くらい。ロープライス作品としてはそこそこのボリュームです。
エンディング後のエピローグ的なシナリオは15分程度の短いものなので、そのまま一気にプレイしてください。

【感想】

かつての銀花に似た謎の少女

夏の離島が舞台だったり、要所要所で神秘的な蝶が出てきたり、ノスタルジックなBGMが流れたりと、どことなくKeyの『SummerPockets』を彷彿させる雰囲気ですが、別に二番煎じというわけではないので新鮮な気持ちで楽しめました。むしろサマポケ好きな人はこの作品も楽しめそうですね。 こういうノスタルジックな作品をプレイするとネットやスマホのなかった子供時代を思い出します。そういう意味では昭和~平成初期生まれの人向けの作品かも。

ストーリー構成の妙

物語は実質二部構成になっています。後半のストーリーは結構意外な導入でしたが、先の読めない新鮮な気持ちで楽しめました。前半のストーリーをなかったことにするわけではなく、ちゃんと踏まえたうえで流星たちが決断しているのも良いですね。だからこそすべての決着をつけるラストも凄くカタルシスがあって盛り上がります。

ストーリーの割と早い時期にオカルトチックな展開になったのはちょっと驚きました。それまでの紺野アスタ作品ではあまり見ない展開だったので最初は戸惑う人も多いかも。でもストーリーが進むにつれて慣れてきますし、むしろ作品のテーマと深いつながりのある必要不可欠な要素になっていきます。それなりに戦闘シーンもあって緊迫感がありますし。

ラストシーンは人によってはちょっとモヤっとする気持ちもあるかもしれませんが、私はすっきり終われてよかったと思います。ああいうまとめ方はどこか『STEINS;GATE』を彷彿させますね。

願いと呪い

この物語のテーマは「願い」。
この作品は登場するすべてのキャラの「願い」によって物語が形作られています。物語上でも「カタシロ(折り紙のようなもの)に願い事を書く」という行為によってそれぞれのキャラの願い事が可視化されるため、わかりやすくていいですね。

願い事というのは多かれ少なかれだれしも持っているもの。特に子供のころは短冊や神社の絵馬に願い事を書いたり、卒業文集で将来の夢を書いたりした経験は誰もがあると思います。
ただその願いが本気であればあるほど辛いものになってしまうのもまた事実。スポーツで全国行きたいとか、有名な大学に入りたいとか、プロのクリエイターになりたいとか、並大抵の努力ではなしえないものもあります。血のにじむような努力を続けていると「なんで俺こんなに辛いことやってるんだろう?」と思ってしまうことも一度や二度ではないでしょう。

しかも努力を続けても願いが叶うとは限らない、というか叶う方が少ないわけですから、願いが叶わなかったときの絶望感は想像に難くない。中にはそれで心を病んでしまう人もいるくらい。そこまで行くともう”呪い”と言ってもいいかもしれません。
でもだからと言って夢や願いを持たずにいられないのは、良くも悪くも人間のサガでしょうか。

”願い”が”呪い”に転化する作品と言えばアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』が思い出されます。『GINKA』はそこまで鬱な物語ではありませんが、願いに代償が必要になるという意味ではある種通じるところがあるかも。


またこの作品では流星やギンカたちだけでなく、なずな先生のような大人世代の”願い”も描かれます。私のような年代だとむしろ大人の願いに親近感を抱くことも多かったです。
大人になるといつの間にか自分より若い世代の幸せを優先するようになるんですよね。

自分が子供のころに思う存分夏休みを満喫できたり無邪気な夢を思い描いたりすることができたのも、親や先生たちが守っててくれたからなんだと、大人になってから気付くんですよねぇ。

あなたの子供のころの願い事はなんでしたか?

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