2000年代作品美少女ゲームレビュー

エロゲーレビュー『ななついろ★ドロップス』(ユニゾンシフト:ブロッサム 2006年)

ユニゾンシフト:ブロッサム制作の初恋物語『ななついろ★ドロップス』。
『灼眼のシャナ』や『涼宮ハルヒの憂鬱』等でおなじみのイラストレーター”いとうのいぢ”さんがキャラクターデザインを担当していることでも有名です。

ちなみにですがこの作品、Wikipediaのページが厚生労働省のドメインから編集されたことが判明したため、「厚生労働省推奨」なんて揶揄されてることもあります(笑

物語はどこか少女向けアニメを彷彿させるファンシーな作りになっていて、”魔法のステッキ”で”何かのアイテムを収集”し、傍らには”マスコット”がいると いう魔法少女モノのお約束もしっかり押さえてある、ある意味王道の世界観になっています。

作品のテーマはズバリ”初恋”見ているこっちが恥ずかしくなってしまうほど初々しくて甘酸っぱい恋物語を堪能したい方にお勧めの作品です。

  • 甘酸っぱい初恋を描いた純愛ストーリー
  • 魔法少女モノのお約束を踏襲した設定
  • いとうのいぢさんによる可愛らしいイラスト
ブランドユニゾンシフト
ジャンル恋愛初心者ドキドキADV
初回発売日2006.4.21
DL版価格3,025円
シナリオ@ピース 市川環
風間ぼなんざ
原画いとうのいぢ
おすすめ度80
シナリオ傾向

購入ガイド

タイトル対応OS発売日入手難度
ななついろ★ドロップス98 2000 Me XP2006.4.21
ななついろ★ドロップス pure!!PS22007.9.20
ななついろ★ドロップスDS
タッチではじまる初恋物語
DS2008.5.15
ななついろ★ドロップスMemorialEdition98 2000 Me XP Vista2009.5.9

PC版は通常版とMemorialEditionがありますが、内容は同じもので特に特典がつくわけでもないためどちらを選んでも変わりません。
PS2版は攻略キャラを2人(うち1人は新キャラ)増やしたもの。
この作品は珍しくDS版もあるのですが、これは基本的に別物。アニメ版のストーリーに準拠したミニゲーム集となっています。

今から買うなら攻略キャラの多いPS2版を推奨。Hシーンが見たければPC版で。
今となっては古いソフトなのでどれも中古ショップで投げ売り価格になっています。DL版も定価がかなり安い上に半額セールの対象になることも多いので、入手のハードルはかなり低いかと。

またこの作品はアニメ化もされているんですが、非常によくできているので機会があればぜひ見てほしいところ。深夜アニメ枠で放送されましたが、普通に日曜朝に放送できるクオリティです。

システム

オーソドックスなADVシステム。画面サイズは800×600ですが、立ち絵の表示されるシーンの背景は上下がカットされた形で表示されます。

必要最低限の機能は備えていますが、今から見るとちょっと設定項目が少ないですね。ボイスボリュームも個別に設定することは出来ないですし、オートモードの 調整も”はやい・ふつう・おそい”の3段階しかありません。(”ふつう”だとちょっと遅いんですが、”はやい”だと速すぎる)
また、オートモードの解除がワンテンポ遅れる(解除した次の文で止まる)ので、ちょっともどかしさがあるかもしれません。何でこんな仕様にしたんでしょうね。

それと私の環境では2周目以降は既読スキップが上手く働かず、未読の部分までスキップしてしまうことがありました。なんでかな~と思ったら、どうも2週目でも初めからやらないと上手く未読の判定ができないみたいですね。

シナリオ

企画・原案は@ピースさん。ライターは@ピースさんに加え、市川環さん、風間ぼなんざさん。
シナリオはアニメを意識したエピソード別の構成になっていて、共通ルート5話を含む全10~13話構成。5話までの共通ルートでは各話の間に如月先生によるちょっとした次回予告的な台詞が挿入されます。

物語は星城学園の2年生である主人公・石蕗正晴がひょんなことから喋るぬいぐるみに変身してしまう体質になってしまい、元の姿に戻るために引っ込み思案なク ラスメイト・秋姫すももと共に”星のしずく”を集めることになるというファンタジーストーリー。ぬいぐるみの正体が主人公であることがヒロインに知られて はならないのはお約束。

いわゆる”魔法少女モノ”の要素を多く含んでいますが、昨今の魔法少女アニメにあるようなバトル要素はほとんどありません。一応ライバルキャラも出てきますが、あくまで”星のしずく”を取り合うだけで相手を攻撃することはないため、スポーツのような爽やかさがあります。
この作品においては魔法少女的な要素は言ってみれば添え物で、メインはあくまで主人公とヒロインの初恋物語です。

グラフィック

原画とキャラクターデザインはユニゾンシフトの看板原画家”いとうのいぢ”さん。イベント絵とは別にコミカルなシーンでは3頭身のSDキャラでも描かれます。
物語にあわせたほんわかした可愛らしい絵柄で、なんとなくライトノベルの挿絵のような構図が多いような気がします。のいぢさんだからそう見えるのかもしれませんが。

あとどうでもいいことですが、登下校時に描かれる自転車の形がなんかヘンです。ハンドルの形状がもの凄く鋭角に曲がっていて、ブレーキレバーからはロードバイクみたいにケーブルが2本出ています。構図も押して歩いているようには見えないですし、いくらなんでも雑すぎ(笑

キャラクター

秋姫 すもも
主人公のクラスメイトで引っ込み思案なメインヒロイン。
なんかこういうヒロインを守ってあげたくなるのはオタクのサガなんでしょうか。

八重野 撫子
すももの親友で幼馴染。黒髪ロング。
口数は少ないが言うべきことははっきり言う気の強い一面も。

結城 ノナ
すももたちのクラスにやってくる転校生。メガネ&黒タイツ。
一応キャラ紹介で正体は伏せられているんですが、まぁバレバレですよね。

石蕗 正晴
本編主人公。とある事件により夜はぬいぐるみの姿に。
人付き合いが苦手で鈍感だが思いやりのある主人公。ちょっとデザインがオッサン臭いかも(笑

攻略キャラは3人とかなり少なめなんですが、その分サブキャラは豊富。
同級生だけでも姉御肌の深町、甘味屋の娘の小岩井、天然キャラの雨森、性格が正反対の冬亜&秋野姉妹、さらに男性キャラの圭介と夏樹の2人。集まって登場す ることが多い上に、呼び名が名字だったり下の名前だったりするので、初めのうちはちょっと混乱するかもしれません。すぐ慣れるでしょうけど。

ボイス

佐本二厘/結本ミチル(すもも)宗川梗(撫子)永杜紗枝(ノナ)安玖深音/後藤麻衣(ユキちゃん)
本山美奈/黒河奈美笠原准/久保田恵ありす/あおきさやか野神奈々/本井えみ
杉崎和哉/谷山紀章沖野靖広/高橋広樹小林康介紫華薫/井上和彦 
名義はPC版/CS版

主人公以外フルボイスですが、主人公の変身した姿であるユキちゃんには声がつきます。
キャストは’00年代によく耳にした方々ですので、今から聴くとどこか懐かしさを覚えますね。

撫子役の宗川さんは声が低いので、初めはちょっと聞き取りにくいかもしれません。
注目は麻宮3兄妹を見事に1人で演じ分けた野神奈々さん。全部ひとりでやってるなんて最初全然気がつきませんでした。声優さん凄い!
あと何気に男性声優陣が豪華ですね。

ちなみにアニメ化の際には撫子とノナの声優さんは全くの別人に代わってしまっています。ある程度似てはいるんですが、いわゆる双子の姉妹の方ではありません。なんで変えちゃったんですかね。

BGM

BGM作曲は水月陵さん。ボーカル曲を除いた曲数は23曲。作品にあわせた爽やかで明るい感じの曲が多いですね。
音楽モードでは水月さんによるライナーノーツ的なコメントを読むことが出来ます。

個人的お気に入りは『星の降る丘で』。アコースティックギターが奏でる優しい音色が、まったりした日曜の午後を彷彿させます。
あと数少ない緊迫した場面で流れる『砂嵐と真実と』も良いですね。

主題歌

タイトル作詞・作曲備考
コイスル★フローライト水月陵AkiraOP
虹色のルシア水月陵KIYOED

ボーカル曲は2曲と少なめ。
EDにボーカル曲が流れるのはすももENDのみですが、PS2版では全てのEDに個別の曲が追加されています。
OP曲の『コイスル★フローライト』は明るくて前向きな曲。初恋をテーマにしたストーリーにぴったりです。聴いてるだけで作中の様々なシーンが思い起こされる、正に主題歌といった感じ。

ムービー

ムービー制作は”どせい”さん。
本編中のCGを組み合わせた作りですが、上手く使っているのでキャラの動きを感じるムービーになっています。

攻略

物語中に数回ある選択肢で後半に分岐します。
攻略難度はそんなに高くありませんが、序盤の選択肢も効いてくるので2週目以降も必ず最初からプレイするようにしてください。

推奨攻略順は、すもも→ノナ→撫子。時間がなければすもものみで。ただレビューサイト等を見ていると「すももをラストにした方がいい」と言う方も多いです。
確かにメインとなるシナリオはすももルートなので最後にとっておきたいところですが、共通ルートがすももルートの序章のような感じで進むので、私は最初からすももルートでいいような気がします。すももルートをやった後に撫子ルートをプレイするとより登場人物に感情移入できそうですし。
ノナはまぁ適当に真ん中あたりで(笑

プレイ時間はゆっくりやってだいたい25~30時間くらい。すももルートが共通ルートも含めて全13話、ノナと撫子が全10話で1話あたり1時間くらいのボリュームになります

Hシーン

シーン回想に登録されるのはすももとノナが各3回、撫子は1回のみなんですが、すももとノナも本番行為に至るのは1回のみなので実質的には各ヒロイン1回ずつですね。内容も非常に初々しくて軽いものなので、そっち目的を期待してはいけません。

胸は小さめで、特に立ち絵では胸の膨らみはほとんど確認できません。意外とこういうデザインは少ないいですね。
Hシーンではさすがにちょっと大きく描かれますが、それでも慎ましやかなものです。ノナは他の2人と比べてやや大きいかなというくらい。
ちなみに主人公の男性器も小さめ。これなら初めての娘も安心ですね(笑

感想

「First love that encompasses you」(あなたを包み込む初恋)という副題が示すように、主人公とヒロインの初恋をテーマに描いた作品です。

特にすももに関しては非常に丁寧に描かれています。
初めて2人きりでお話したとき、
初めて部活で一緒になったとき、
初めて一緒に下校したとき、
初めて手をつないだとき、
初めて遊びに行ったとき、
初めて下の名前で呼んだとき、
初めて家に招いたとき・・・。
様々な”初めて”を経験していくうちにゆっくりと2人の距離が縮まっていく様は(引っ込み思案なすももの性格も相まって)ある意味もどかしくもあるのですが、そこがまたこの作品の良いところでもあります。

一般的な作品では終盤に告白してエンディング、という流れが多いのですが、この作品(特にすももルート)に関しては恋人同士になってからが本番。周りの友人たちの助けも借りながら少しずつ愛を育み、互いの気持ちを確かめ合ってさあいよいよ、という段になってすももには辛い現実が立ちはだかります。

初めはファンシーな見た目と設定からもっと萌え萌えっとした話かなと思ったんですが、実際やってみると初々しい初恋物語と魔法少女的な設定を上手く組み合わせた、非常に丁寧に作りこまれた完成度の高い物語でした
欲を言えばすもも以外のルートももっと作りこんで欲しかったところでしょうか。

初めての人から数多くプレイしたベテランプレイヤーまで、たくさんの方にプレイしてもらいたい作品です。

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