エロゲ―ブランド”枕”といえば、個性的なシナリオライター・すかぢさんが中心となって制作した『サクラノ詩』シリーズが有名ですが、実は他にも良作を出 していたりします。そのうちの一つが今回紹介する『向日葵の教会と長い夏休み』。略称は「ひまなつ」。
萌えゲーアワード2013BGM賞金賞。
物語は大学生の主人公が8年ぶりに田舎に帰ってきて、閉鎖の決まった海辺の教会でかつての幼馴染たちと最後の夏を過ごしていくという、ノスタルジックな純愛もの。
この作品はルートによってシナリオライターが異なっていて、それぞれのルートでシナリオの雰囲気が違うのも特徴的です。ルートによってはかなりファンタジックな展開もあります。
向日葵の咲き誇るのどかな夏の村を舞台にした、ちょっとした事件やヒロインとの純愛ストーリーを楽しめる良作です。
ノスタルジックな雰囲気が好きな方におすすめの作品かと。
- 夏の田舎の雰囲気が味わえる物語
- 全く異なる4つの個別ルート
- 『うさぎドロップ』を彷彿させる最終ルート

購入ガイド
| タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
|---|---|---|---|
| 向日葵の教会と長い夏休み | 2000 XP Vista 7 | 2013.3.29 | やや難 |
| 向日葵の教会と長い夏休み -extra Vacation- | PS3 PSP | 2013.11.28 | 並 |
パッケージ版は初回版が1種類のみ。特典としてミニ色紙2枚とトレカが付きます。
残念ながら新品在庫はなく、中古品はプレミア化。中古価格はだいたい1万5千円前後でちょくちょくショップでも見かけるので買えなくはないですが、完全にコレクションアイテムです。これちょっと前までは普通に数千円で買えたんですけどね。
CS版はHシーンをカットして、PC版でサブヒロインだった月子のルートを追加したもの。初回版は小説等の特典付き。
今から買うならダウンロード版(FANZA独占)を推奨。通常価格が安い上に定期的に半額セールの対象になっているので、中古で買うより安く済みます。半額&割引クーポンだと2000円ちょっとで買えるかと。
安いといっても元はフルプライスの作品なのでボリュームは十分です。
月子ルートを読みたければCS版で。正直なところこの作品はHシーンがあまり使えるものではない上に結構長いので、シナリオ重視の人はCS版もアリかと。PS3版の中古だと1000円くらいで買えるみたいですし。
システム
使用しているのは汎用ゲームエンジンのEthornell。画面サイズは1280×720のHD。
画面下部にメッセージが表示されるオーソドックスなAVGタイプのシステムです。
修正ファイルの類はありませんが、公式から「演出強化パッチ」が配布されています。これはダウンロード版にも同梱されていますが、自分でパッチを当てないといけないのでインストール後に当ててください。ダウンロードフォルダにある「『向日葵の教会と長い夏休み』演出強化プログラム」フォルダの中の実行ファイルをダブルクリックすると自動で更新されます。
プレイするうえで必要最低限の機能は揃っています。ただシナリオのジャンプ機能や「前の選択肢に戻る」等の機能は無いので、今からプレイすると微妙にかゆい所に手が届かない感じ。
クイックセーブ機能はありますが、クイックロードはタイトル画面やロード画面からはできないので、一度適当なシーンをロードする必要があります。
またオートモードで流すときは、キャラが台詞を喋った後にもウエイト時間があるのでちょっとテンポが悪くなりますね。
シナリオ
シナリオライターは詠ルート担当がJ・さいろーさん、ヒナルート担当が紺野アスタさん、ルカ・金剛石ルート担当が藤倉絢一さんの3人。加えてプロデューサーのすかぢさんもサブとして一部のルートに関わっているらしいです。
物語は大学生の主人公が、幼少の頃(多分小学校高学年くらい)まですごしていた海沿いのある朧白村の教会に、夏休みを利用して帰省するところから始まるノスタルジックストーリー。
過疎により思い出の教会は廃止されることが決まっているので、かつて教会で一緒に活動していた詠(よみ)やルカ、金剛石(ダイヤ)といった”朧白聖歌隊”のメンバーと共に秘密基地を作ったり海で遊んだりして、最後の夏をすごしていきます。
主人公の陽介や幼馴染のルカは両親のいない孤児ですが、今ではちゃんと養父母もいるため別に悲壮感のようなものは無く、明るい雰囲気で物語が進みます。
シナリオライターがルートによって異なっていることもあってか、個別ルートはそれぞれ物語のコンセプトがだいぶ違います。ルートによってはかなりファンタジックな展開にもなりますが、ベースとなる設定は各シナリオで繋がっている感じなので全くバラバラというわけでもありません。
むしろ意味深だった謎や伏線が徐々に明かされていく感じが良かったですね。
グラフィック

原画家もキャラクターによって分かれていて、詠担当が狗神煌さん、ヒナ担当が基4%(もとよん)さん、ルカ担当が硯さん、金剛石担当が高苗京鈴さんの4人。
各キャラそれぞれで原画家さんが違うので、良くも悪くも個性が出ていますね。表情はもちろん体型的にも。
ただ彩色は枕っぽくシックな色合いで統一されているので、そこまで違和感はないと思います。
ダイヤのキャラデザはちょっと安定しないところもあるかも。
右腕を上げるポーズの立ち絵ではなぜか思いっきり右胸も持ち上がっていたりします。そうはならんやろ(笑
イベント絵はキャラの描かれていない情景的なものも含めて全部で120枚。HCGはそのうち1/3くらいでしょうか。
枕らしく、派手さの無い落ち着いた彩色です。そのぶん向日葵の咲き誇るシーンは凄く鮮やかに見えますね。鮮やかな向日葵を引き立てるため、普段は意図的に黄色を使っていないのかもしれません。
特に各ルートラスト近辺のCGはキャラクターと背景との調和が素晴らしい。全部壁紙にしたいくらいです。
また、ヒロインには全員後ろ向きの立ち絵があります。何気に後ろ向きの立ち絵がある作品は名作の証。
キャラクター

夏咲 詠
陽介が最初に再会する2歳年下の幼馴染。教会の裏にあるペット墓地の管理を行う。
どこか抜けたところのある可愛らしい少女。
鷺月 ルカ
詠より2つ年下の朧白学園生。料理が得意な巨乳。
読書が好きで知識が豊富なしっかり者で、陽介に対してやたらお姉さんぶる態度をとる。
朧白・ヒポポ・金剛石(ダイヤ)
ルカと同級生の朧白学園生。変なミドルネームがありますが本名です。
村長の孫娘でお金持ちのお嬢様。一般常識には疎いが行動力のあるムードメーカー。
野々原 雛桜
陽介が帰ってきた日に教会に引き取られた少女。愛称はヒナ。多分小〇1年生くらい。
やんちゃで素直なみんなのマスコット。ヒナゴン可愛すぎ!
明日葉 陽介
本作主人公。両親がおらず幼少期から朧白教会で育てられるが、8年前に養父母に引き取られ東京へ。
その後、関西の大学に進学し、夏休みを利用して朧白村に帰郷。
メインの登場人物はこの他に教会の神父である荒川天海、ルカ達よりさらに年下の幼馴染・鮎ヶ瀬月子、朧白家のメイド・二階堂麗奈など。
神父は一見コメディリリーフ的なキャラですが、陽介たちに対する”大人”のキャラとして重要な役割を担います。大人がカッコイイ作品は名作の証。
ちなみに神父の名前はこの記事書く時に初めて知りました(笑
この作品は各キャラクターに結構年齢差があるんですが、普通に読んでるだけではちょっとわかりにくい部分もあります。
実際の年齢順は、陽介>詠>ルカ=ダイヤ>月子>>>ヒナ、といった感じ。
ボイス
| 夏野こおり(詠) | かわしまりの(ルカ) | 如月葵(金剛石) | 雪都さお梨(ヒナ) | |
| 羽鳥空 | 楠鈴音 | 和葉 | 姫川あいり | 平野響子 |
| 寒上優斗 | 永倉仁八 |
主人公以外主要キャラフルボイス。モブキャラは女性キャラのみ声が付きます。
キャストはベテラン勢を揃えた一分の隙もないド安定の布陣。
ただダイヤ役の方はちょっとキャラを作りすぎてるかな~という気がしないでもないかも。こおりさんやしまりのさんが割と落ち着いた演技だけにやや浮いてる感じ。まぁそのうち慣れると思いますけど。
神父役の寒上優斗さんは使い捨ての名義ですが、アニメファンでなくても一度は聞いたことがあるであろう有名な方ですね。イキュラス・キュオラ!
BGM
作中BGMの作曲は枕といえばこの人、松本文紀さん。
音楽モードで聴ける曲はボーカル曲のインストゥルメンタルも含めて33曲。シナリオのボリュームの割りに曲数は少なめでしょうか。
全体的にまったりした癒し曲が多い感じです。
一番印象的な曲は「この胸をつき動かすのは・・・・・・」ですね。田舎の夏をイメージしたような曲です。『素晴らしき日々』で使われた名曲「夏の向日葵」にも通じるものがあります。
「空に瞬くひかり」は曲名の通り、夏の夜空を見上げたような深みのある曲。
「夏の木陰」は多分メロディ自体はほとんどの人が聴いたことがるであろう、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章のアコギアレンジですね。
主題歌
| タイトル | 作詞 | 作・編曲 | 歌 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 「ヒマワリの教会」 | 藤倉絢一 | 松本文紀 | はな | OP |
| 「希望の前で待ち合わせ」 | 藤倉絢一 | 松本文紀 | はな | ED |
| 「コトバラ」 | 藤倉絢一 | 松本文紀 | はな | ED |
| 「キスキラリ」 | 藤倉絢一 | 松本文紀 | はな | ED |
| 「さくらとことり」 | 藤倉絢一 紺野アスタ | 松本文紀 | はな | ED |
ボーカル曲を歌うのはすべて”はな”さん。
松本文紀さんによる流れるような曲調はほんとうに”はな”さんの歌声と合いますね。
ただ音楽モードで聴くことができないのが残念。枕のゲームって何故かボーカル曲が音楽モードに入ってないんですよね。
OP曲「ヒマワリの教会」は爽やかで優しい感じのする良曲。「夏」や「向日葵」といった物語を象徴するワードが歌詞に散りばめられていて、作品の雰囲気に非常にマッチしています。
EDはルートによってそれぞれ別の曲が流れますが、なんといってもオーラスで流れる「さくらとことり」が一番の名曲。
ED曲でありながら「これから始まる物語」を思わせる、前向きで疾走感のある曲ですね。サビ前のぶつ切りにしたようなメロディが印象的。
しかも歌詞がヒロインの心情を如実に表していて、プレイ後に聴くからこそ素晴らしさがわかります。
ムービー
共通ルートの後にOPムービーが流れます。
ムービー制作はMju:zの癸乙夜(みずのといつや)さん。
作中の立ち絵やイベント絵を加工したものですが、他の作品にあるようなキャラ紹介的なムービーではないのでキャラの名前は表示されません。
また背景絵のみのシーンも多いのでノスタルジックな雰囲気を感じますね。
序盤に出てくる
「変わらないものがある。」「変わっていくものがある。」
という言葉が作品を象徴するメッセージとして印象的です。
プレイした後に改めて見るとまた感慨深くなります。
攻略
OPムービー前の共通ルートに出てくるいくつかの選択肢により個別ルートが分岐します。
ただ選択肢の後にこれといったイベントが起こるわけではなく、選択肢自体も曖昧なものが多いのでちょっと迷うかもしれません。
フラグ管理自体はそんなにシビアなものではないので、なんとなくキャラの好感度が上がるっぽい選択肢を選び続ければ狙ったルートに入ることができるかと思います。
推奨攻略順はダイヤ→ルカ→詠→ヒナ。
できるだけこの順番でプレイしてください。
パッケージ絵を見ると詠がメインヒロインに見えるので最初か最後にしたくなりますが、詠ルートはダイヤ・ルカルートでの伏線を回収していくので3番目にしましょう。
ヒナは実質メインヒロインの扱いなので最後に。ヒナルートはロックがかかっていて詠ルートクリア後に解放されます。
ちなみに詠ルートプレイ後は共通ルートの序盤を飛ばさずに読むのもいいかもしれません。細かい伏線をちゃんと張ってたんだな~ってことがわかると思います。
総プレイ時間はオートモードでゆっくりやって35~40時間。意外とボリュームがあります。
Hシーン

Hシーンはヒロイン1人あたり4~5回、全部あわせて18回。枕作品としてはかなりHに力が入ってます。
そんなに特殊な行為は無く、割とオーソドックスな内容です。伏字・P音による卑語修正が入ります。P音がちょっと大きいので耳障りに聞こえるかも。
胸の大きさは詠とヒナがかなり小さめなのに対し、ルカとダイヤは結構大きめ。なんでちょうどいいおっぱいがないのかな。
この作品は個別ルート後半、特にエンディング後のエピローグにHシーンが集中することが多いです。正直私、こういう構成あんまり好きじゃないんですよね。
シリアスな本編とイチャラブなエピローグを分けたかったのかもしれませんが、エンディング後に4回以上Hシーンが連続するのはさすがにダレます。
ヒナルートに至ってはHシーンの前に選択肢が出てきてシーンそのものが分岐するので、後で回収するのがめんどくさい・・・。せっかく物語が綺麗に終えたと思ったのに後からシーン回収するのはちょっと情緒が無い気がします。
感想
田舎の空気が感じられる、非常に雰囲気の良い作品でした。
内容的にはかなりファンタジックな展開もありますが、良い意味で00年代の作品のような感じなので、そういう意味でもちょっと懐かしさを覚えます。
シナリオ感想

各ルートの構成が前半はややシリアスな内容で後半はイチャラブに特化したキャラゲーのような内容になっているという、かなりメリハリの利いた物語になっています。
物語中の季節は夏なんですが、セミの鳴き声やそそり立つ入道雲みたいな盛夏っぽい描写はあまりなく、みんなで楽しく過ごしてトラブルを乗り越えた先にある「夏休みの終わり」の哀愁や、季節が変わることによる少年時代の終わりみたいなものを強く感じました。
この作品はそれぞれの個別ルートで物語の雰囲気がガラリと変わるので、ルートごとの特徴を。
・金剛石ルート
立場の違いを越えた純愛物語。ある意味王道です。キーワードは夢。
・ルカルート
ミステリチックでオカルトチックな物語。00年代によく見かけた作風です。
・詠ルート
一番ファンタジックな物語。それまでの謎が一気に明らかになります。
・ヒナルート
詠ルートを踏まえたうえで、一番の純愛物語。
この作品のメインはヒナルートですね。時間的にもテキスト量的にも。このルートは言ってみれば宇仁田ゆみの漫画『うさぎドロップ』のエロゲ版。
ヒナルートのシナリオを担当したのは『ころげて』等で有名な紺野アスタさんなんですが、アスタさんらしい爽やかで優しい物語になっています。ちなみにアスタさんはシナリオ執筆当時、『うさぎドロップ』を読んでいなかったそうです。
変わらない幼馴染
また主人公の陽介と各ヒロインは幼馴染という関係なんですが、過去の様子があんまり語られないのでプレイヤーにとってはちょっと幼馴染感が薄いところがありますね。
この種の”幼馴染グループ”って他作品だとだいたい複数の男性キャラも入ってたりするんですが(『リトバス』しかり『マジ恋』しかり)、この『ひまなつ』の場合は主人公以外全員女の子な上に年齢差もあるので、幼馴染としての結束感はやや弱い感じ。
ただそのぶん、最終ルートでは年月を経た後でも変わらない絆のようなものは強く感じる構成です。
特にヒナルート後半では、友情とか恋愛とかを超越した”幼馴染感”を味わうことができました。
この作品のテーマの一つに「変わらないものと変わっていくもの」があるんですが、年齢や立場が変わっても変わらない関係性というのはプレイしていても凄く居心地がいい。エロゲーで”幼馴染たちのその後”を描く作品って意外と少ないんですよね。
公式が「雰囲気ゲー」であることを強調されているように、あまり難しいことを考えず、夏休みの雰囲気に浸るようにプレイするのがいいかも。メチャメチャ感動する、というタイプの物語ではなく、しっとりと世界観に浸る作品なのかもしれません。
そういう意味でもできるだけ夏にプレイしたほうがより雰囲気が感じられると思います。
とりあえずヒナルートでのMVPは月子ちゃんです。
月子ちゃんマジで幸せになってほしい…。


