ちょっと前に話題になったドラマ『ラストマン -全盲の捜査官-』。
全盲の捜査官(福山雅治)がアメリカからやってきて、警視庁の刑事(大泉洋)とコンビを組んで事件を解決するというミステリードラマなんですが、主演が福山さんなだけに女性人気も高かった作品でした。
でもギャルゲーオタクはこう考えるわけですよ。
主役の2人が女の子だったらな~と。
…思ってたらそんなギャルゲーが本当に発売されました!
今回紹介する作品は女の子2人のコンビが謎を明かす全年齢向け百合ミステリー作品『リルヤとナツカの純白な嘘』。公式略称はリルナツ。
百合ゲー専門サイト「ゆりりかる」における投票で2024年の百合ゲーム・オブ・ザ・イヤー 1位を獲得した作品です。
ストーリーは盲目の天才画家・リルヤとその助手・ナツカが、依頼に訪れた女性の願いと秘密を解き明かしていくミステリーもの。
調査をするのは主に助手のナツカでリルヤは基本的に部屋から出ない、いわゆる安楽椅子探偵ものの物語です。
ミステリーといっても殺人事件が起こるわけではないので、残酷なシーンもほとんどなくゆったりした気持ちでプレイできるのも特徴的。
制作は今やすっかり全年齢ブランドになったFrontwing。ここは2020年にANIPLEX.EXEから全年齢ノベルゲーム『ATRI -My Dear Moments-』を発表しましたが、今回はブシロードと組んでの制作になりました。最近はこういったアニメ業界からのノベルゲーム参入が増えてきましたね。
タイトル絵やサンプルCGを見てもらえばわかるように、非常に緑豊かでさわやかな作風になっています。
また10代ながらどこか老成した雰囲気のリルヤと、あたふたしながらも子犬のように元気いっぱいのナツカの日常的なやり取りも非常に魅力的。
ロープライス作品なうえに、長すぎず短すぎずのボリュームなので気軽にプレイできるのもいいですね。
さっぱりした百合作品や人の死なないミステリーが好きな方にお勧めの作品です。
- 盲目の画家・リルヤと助手のナツカのバディもの
- 依頼者の過去や秘密の謎を解くミステリー
- ナツカの笑顔の裏に隠された思い

購入ガイド
| タイトル | 対応OS | 発売日 | 入手難度 |
|---|---|---|---|
| リルヤとナツカの純白な嘘 | 10 11 | 2024.7.25 | ― |
PC版はパッケージ版の類は出ておらず、現在のところダウンロード配信のみ。
DMM・DLsite・Steamの各プラットフォームで販売されています。
DMMは18禁サイトのFANZAでも扱われていますが全く同じものです。起動にはDMMGamePlayerを通さなければならないので注意してください。これ、インストール作業は楽なんですが、同じようなシステムであるSteamと比べると微妙に使い勝手が良くないんですよね。
手動で好きな場所にインストールしたい場合はDLsiteから買いましょう。
どのプラットフォームでも基本的に同じ値段ですが、セール対象になることも多いので安い時に買ったほうがお得です。
システム
画面下にテキストが表示されるオーソドックスなADVシステムです。
画面サイズは1920×1080のフルHD。FrontwingがフルHDの作品を出すのは今回が初めてだそうです。ちょっと意外。
テキストは日本語のほかに英語と中国語(簡体字)に対応しています。
エンジンはFrontwing独自のものを使っていますが、普通にプレイするうえで特に問題のないシステムです。
テキスト履歴からのジャンプ機能もあり、使い勝手も良好。履歴画面にあるシーンセレクトボタンを押すとエピソード単位の表示に変わり、いつでも任意のエピソードの先頭に飛ぶことができます。やろうと思えば終了間際からプロローグの一番最初まで戻ることも可能です。
シナリオ
シナリオライターは浅生詠さん。浅生さんといえばCLOCKUPの『euphoria』や『Erewhon』、Liquidの『黒獣』といった結構激しめの凌辱作品が有名ですが、今作は非常にさわやかな純愛ミステリー作品です。
物語は天才画家・リルヤの下でお世話係として住み込みで働く女性・ナツカを中心にして描かれます。
リルヤは盲目で足が不自由なため車椅子を利用していますが、生活するうえで不便はなく、お金にも困っていません。ナツカを雇っているのはあくまで作品を描く上でのインスピレーションを得るためで、ナツカの目を通して得た情報をもとに作品を描き上げます。
そうして依頼者の隠された秘密や本人も知らない過去を明らかにしていく、という流れ。
物語は全4章の章別構成。1章につき一つの依頼をこなしていくので、リルヤはプロローグを含め5つの絵を完成させます。
テキストで特徴としては、文章のほとんどが会話文で構成され、いわゆる”地の文”がほとんどないことが挙げられます。
描写がすべてナツカのセリフとして説明されるため、ボイスドラマのような雰囲気です。
これは目の見えないリルヤに代わってナツカが状況を事細かに説明しなくてはならないことから来てると思うんですが、正直なところ突発的なトラブルが起こったときなどは描写不足で何が起きてるのかわからないことも多かったですね。
一応後から「こういうことがあった」と説明されるんですが、登場人物とプレイヤーとの間で認識のタイミングにズレが生じるのがちょっと気持ち悪かったです。
グラフィック

原画担当は切符さん。ラノベ『のうりん』などにおいてイラストを担当された方ですね。
自然色が中心のやや淡い色彩でアナログ感のあるイラストです。
場面によってはまるでキャンバスに描かれた絵画ような雰囲気のシーンもありますね。
表情のデザインはやや少女漫画寄りでしょうか。
特にまつ毛の描き方が特徴的で、細かく描くのではなく4~5本のまつ毛を強調した少しデフォルメチックなデザインになっています。
ちょっと気になったところとしては、目を見開いて口を大きく開けた表情が多いことでしょうか。ナツカだけなら明るい表情としていいんですが、複数のキャラが同じ表情で並んでいたりすると軽くホラーです(笑
キャラクター

リルヤ・メリ
高級マンションに居を構える盲目の天才画家。北欧の王国のお姫様だが日本で一人暮らしをしている。
常に冷静沈着で、合理性と効率性を重視。大人びていて達観した物言いだがまだ15歳。
空木 夏夏
リルヤの部屋で住み込みで働く女性。よく小中学生に間違えられるが成人済み。
絵に描いたような元気で明るい性格で、難しいことは考えず本能のまま突っ走る。
メインの登場人物はこの2人。その他のキャラとして各章それぞれに依頼者とその近しい人物が登場します。もちろん全員女性で男は出てきません。百合作品の基本ですね。
リルヤとナツカの2人は主人と従者、というよりは飼い主と子犬のようですね。いつも冷静に指示を出すリルヤと、あたふたしながらリルヤのために走り回るナツカ。一見いびつですが慣れてくるとむしろぴったりハマったコンビで、見ているとほっこりする穏やかさがあります。
ボイス
| 高柳知葉(リルヤ) | 伊駒ゆりえ(ナツカ) | ||
| 田中美海 | 長谷川育美 | 田中貴子 | 大久保瑠美 |
| 古賀葵 | 神田みか | 青山吉能 |
主人公含め、全キャラフルボイス。
アニメで活躍する若手声優を集めた感じでしょうか。
リルヤを演じる高柳さんは最近だとウマ娘のオグリキャップ役が有名。
声質やテンポがリルヤという冷静なキャラにピッタリハマっています。
ナツカ役の伊駒さんは【推しの子】のルビー役でブレイクした方ですね。
というか今回の声の雰囲気もまんまルビーです(笑
そのほかのキャストもなかなか豪華。
ただ今作のキャラはいわゆるアニメ声ではなく地声に近い落ち着いた声のキャラが多いので、キャストクレジットを見るまで全く気が付きませんでした。
特にイヌイ役の青山さんは言われてもぼっちちゃんと同じ声とはとても思えません。声優さんすごい。
BGM
BGMの作曲は音楽プロダクション「Peak A Soul+」の安瀬聖さん。これまで数多くのアニメやゲームの曲に携わってきた方です。Wikipediaを見てみたらマブラヴオルタの曲も作られていてびっくりしました。結構なベテランさんですね。
MUSICモードで聴ける曲はボーカル曲とそのインストバージョンを除くと全部で20曲。
いい意味で美少女ゲーム然とした、耳になじむ落ち着いた曲が多いかと。
個人的お気に入りはタイトル画面でも流れる「白鳥の巣立ち」。落ち着いたピアノのイントロで始まり、穏やかな日常を表すようなフルートの音色から一気に盛り上がるサビの部分はまさに鳥が羽ばたくようなイメージを想起させます。
つらい過去を思い出すシーンで流れる「覆水不返」は暗い曲調ながらも力強さを感じる曲。誰にでもそこに至るまでの”物語”があるんだなぁと思わせるような曲です。
主題歌
| タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 「明日の話」 | やなぎなぎ | Tansa | Tansa | やなぎなぎ | OP |
| 「Colors of You」 | 青木陽菜 | 青木陽菜 | YOUSAY | 青木陽菜 | ED |
ボーカル曲を歌うのはアニソンシンガーのやなぎなぎさん。
OP曲「明日の話」は青春アニメの主題歌のような曲調にやなぎさんの優し気な声がミックスされたさわやかな曲。
ED曲「Colors of You」を歌うのは声優としても活躍する青木陽菜さん。(バンドリ「MyGO!!!!!」の楽奈ちゃんですね)
落ち着いた曲でありながら前向きでもあり、リルヤとナツカのその後の幸せを歌ったような曲。歌詞の中にも絵画関係のワードがちりばめられていて物語の余韻に浸れます。
MUSICモードではありがたいことに2曲ともフルバージョンを聴くことができます。
ムービー
プロローグの後にOPムービーが流れます。ムービー制作はyo-yuさん。
Frontwing作品はいつもムービーが凝ってるんですが、今回もおしゃれでさわやかな雰囲気になっています。
単にイベントCGを映すだけでなく、陽の光を意識したエフェクトがかけられていて、前向きで穏やかな気持ちになりますね。
攻略
選択肢のない一本道のシナリオなので分岐や攻略性はありません。
総プレイ時間はオートモードでゆっくりやって15時間くらい。
プロローグを含め、一つの章が大体2~3時間くらいでしょうか。最終章のみ少し長め。
感想
物語としては非常にサッパリしていて、その適度な短さとテンポの良さも相まっていい意味で気楽にプレイできる作品だと思います。
一応ジャンル的には「百合」なんですが、そんなに恋愛メインの物語というわけではないので、女の子同士のバディものとしてプレイした方がいいかもしれません。
物語構成の妙
物語としては各章様々な謎が提示されるんですが、ミステリーとはちょっと違うかも。内容としては依頼者の悩みや本人も知らない過去を明らかにしていくという感じで、特に何か事件が起こったりパズルめいたトリックがあるわけでもありません。
ただこれはこれで先が気になるもので、依頼者の秘められた過去が次々と判明していくのは思わずのめりこんでしまいます。
また物語構成も無駄がありません。
各章序盤の何気ない出来事がちゃんとその後の展開につながっていることが多く、後になってその意味に気付かされることも多々ありましたね。多少強引かなと思うこともありましたけど。
そして最終章である4章はそれまでの物語の集大成。
それまで関わってきた各章の登場人物が集結し、最後の闘い(?)へと向かっていく展開は定番ながらも熱い。それまでは割とゆったりしたムードだったんですが、終盤はすごくドキドキさせられました。こういうの大好きです。
ただ正直なところ、最後の最後でやや納得できないところはあるかも。
というのもこういう物語において、ある種タブーともいえる展開があるんですよね。そういうプレイヤーへの騙し方はちょっと醒めちゃう人はいるかもしれません。一応伏線は張ってあるしフォローもしてるんですが。
ナツカの過去と未来
この物語は何かの事件を解決することがメインではありません。
むしろどちらかというと主人公であるリルヤとナツカ、特にナツカ自身の過去との決別と清算を描いた作品です。
それは作品タイトルにも表れていて、もし事件解決がメインなら『リルヤとナツカの事件簿』みたいなタイトルになってるはずなんですよ。
でもこの作品には『~純白な嘘』というちょっとおしゃれで意味深なタイトルがつけられています。これは特定の出来事を指しているタイトルではないと思うんですが、いろいろな解釈のできる秀逸なタイトルだと思います。
単なる事件解決ものだったらここまでさわやかな読後感は得られないんじゃないかと。
そして物語を〆る終盤のシーン。
実はこの作品は最後の事件が解決した後もちょっと物語が続くんですが、そのときのナツカの感情の発露にはかなり心を揺さぶられました。
普段笑顔が絶えないナツカだからこそのギャップもあり、プレイヤーの胸にグッと刺さるシーンだと思います。
これを見るとそれまでのナツカの笑顔とその後のナツカの笑顔は、(もちろんCG上は変わらないんですが)ちょっと変わって見えるから不思議です。
「悲しい時にはちゃんと悲しんでおけ」みたいなことはよく言われますが、きちんと悲しんだからこその笑顔というものもあるんですねぇ。
・関連作品リンク
Frontwing制作作品
百合ミステリー
浅生詠作品




