雑記

ノベルゲームはゲームと言える?

エロゲー界隈における三大論争と言えば、

  • 「エロゲーにエロはいらない」論争
  • 「キャラゲーvsシナリオゲー」論争
  • 「エロゲーは衰退しているか」論争

でしょうか。大体この辺の論争が定期的にローテーションしてSNSを賑わしていますね。
これに次いでたびたび議論を巻き起こしているのが、

「ノベルゲームはゲームなのか」論争

論争の始まり

先日もXのノベルゲーム界隈において「ノベルゲームはゲームなのか」論争が繰り広げられました。

今回の話はどうも「ゲームの評価にストーリーの良し悪しを入れるのかどうか」という話題から派生してきたもので、そこから「ゲームの評価にストーリー性を入れないならノベルゲームはどうなるんだよ」「いやノベルゲームはゲームじゃないだろ」みたいな流れになった模様。

様々な人が意見を出し合っていますが、全体をざっと眺めると「ノベルゲームもゲームだ」と考えている方が多いみたいですね。
中にはノベルゲーム制作者(商業・同人問わず)の方も発言されていますが、作り手側も基本的に「ゲームを作っている」という認識の方がほとんどのようです。

こういう話に対して「不毛だ」「意味がない」と言う方もいるかと思いますが、個人的には非常に有意義だと思います。ほら、オタクって何かを分類するの大好きだし。

広い意味ではノベルゲームもゲーム

私自身も基本的にノベルゲームはゲームのいちジャンルだと思ってます。だってノベル”ゲーム”という名前ですし、売ってる場所はゲームショップです。少なくとも本や映像作品とは一線を画していると思います。

ただゲームとしての中身を見てみると、「ノベルゲームはゲームじゃない」という意見もわからなくはない。
もともとノベルゲームは基本的に選択肢を選ぶだけのゲームシステムですし、ものによっては選択肢すらなく一本道シナリオの作品も珍しくありません。少なくとも”ゲーム性”はかなり低いでしょう。
『Apex Legends』のような競技性のあるゲームや『エルデンリング』のような高難度なゲームをプレイしている人にとっては、「ただボタンを押してテキストを表示させるだけ」のノベルゲームがゲームと思えないのもある意味当然かもしれません。

この話を突き詰めていくと「何をもってゲームとするか」という根源的な話になってきますね。
なんとなく「eスポーツはスポーツと言えるのか」という話と構造的に似ています。

ゲームの定義とは?

『戦国ランス』(アリスソフト 2006年)
これはどこからどう見ても”ゲーム”

ではそもそも「ゲーム」とは何なのでしょう?

Wikipediaで「ゲーム」の項を見てみると、

  • ゲームと呼ばれているものは、ルールや競争を共通の要素として持っている(ウィトゲンシュタイン)
  • 楽しみのために行なわれること、時間と場所が区切られていること、勝敗が不確定であること、何かを生産するものではないこと、法律やルールに支配されること、現実の活動から意識的に切り離されていることをゲームの参加者が知っていることである(カイヨワ)
  • ゲームとは「充分な情報の下に行われた意思決定 (decision making)をもって、プレイヤーが与えられた資源を管理 (managing resources)しつつ自ら参加し、立ちはだかる障害物を乗り越えて目標 (goals)達成を目指す」ものである(コスティキャン)
  • 遊ぶアクティブなエージェントとの、互いに干渉できるインタラクティブでゴール指向の活動。(クロフォード)
  • ゲームとは目的を達成する為のルールに基づいた敵との楽しい闘い(JUNZO)
Wikipedia ゲーム より

これはTVゲームに限った話ではないのですが、様々な定義がありますね。まさかゲームを調べていてウィトゲンシュタインの名前が出てくるとは思いませんでしたが。

個人的にはどの定義も納得できたりできなかったりしますが、全体を見ると
「ルール」「競争」「資源管理」「意思決定」
「インタラクティブ(相互作用)」「敵」「ゴール」「楽しみ」

辺りがゲームに必要な要素になるでしょうか。

一般的なゲーム(アクション・シューティング・ストラテジー・レース・ロールプレイングなど)はだいたいこのあたりの要素を含んでいます。(必ずしも全部含んでいるわけでもないですが)
スポーツやボードゲームも当然ゲームと言えそうです。
逆に映画や小説はこの要素を含んでいないからゲームではない、と言えるかもしれません。

じゃあノベルゲームはどうかと言うと、

ルール一応ある選択肢を選んでフラグを立てたり好感度を上げたり
競争ない競争相手は基本いませんね
資源管理ない?フラグや好感度の管理は資源とは違う感じ?
意思決定ある選択肢のある場合
相互作用一応ある選択肢の結果が物語に影響を与えるという意味では
敵ないバトルものでは敵が出てきますが、今回の話とはニュアンスが違う
ゴールあるエンディングやフルコンプという目標があるので
楽しみあるめっちゃ楽しい

一般的な選択肢のあるノベルゲームの場合、何とかギリギリゲームの範疇に入りそうです。

みんな大好きチャッピー先生にも訊いてみました。

つまり入力による状態変化があるならゲームと。
うむ、先生が言うなら間違いないな。

ただノベルゲームをゲームたらしめているのは「選択肢」の存在が大きいです。なので選択肢のない一本道シナリオのものや、あったとしても1回の選択でルートを直接選ぶだけのものは、正直ゲームとしての要素はほとんどないかもしれません。どちらかというとデジタルノベルに近いかも。

ノベルゲームと小説・アニメとの違い

『ヒラヒラヒヒル』(ANIPLEX.EXE 2023年)
セリフが小説並に長いノベルゲーム

でも当然ながらノベルゲームと小説は明らかに違います。小説っぽい文体のノベルゲームもあるものの、媒体としては一線を画しています。

よく言われることですが、ノベルゲームには文章のみの小説と違って絵と音とルート分岐があることが最大の違い。ラノベにも挿絵がありますが、せいぜい数十ページに1枚くらいなので、常時立ち絵が表示されるノベルゲームとは圧倒的に量が違います。
例え選択肢のない一本道のノベルゲームであっても、絵と音が存在することで臨場感や没入感が全く違うんですよね。

じゃあ絵と音のあるアニメやドラマと同じかと言われるとそれも違う。
選択肢の有無はもちろんのこと、ノベルゲームにはテキストの存在が大きい。テキストを自分のペースで読めるノベルゲームと、一方的に映像が流れるアニメやドラマとは趣が全く違います。

もちろんアニメにはアニメの、小説には小説の良さや特徴があるので、どちらが上かという話では決してありませんが。

ゲームの世界でも全編アニメーションの作品(『やるドラ』シリーズや『SchoolDays』など)がありますが、これは「ノベルゲームか」と問われたらちょっと違う気がします。ある意味こういう選択肢付きのアニメって究極のエンタメ表現かもしれません。
ただアニメを使ったゲームは制作コストが半端なさそうなので、さすがに主流にはなりませんでした。もしかして今後AIが発達してアニメーションの制作コストが下がれば、スクイズのようなゲームが増えてきたりするんでしょうか。

『School Days』(オーバーフロー 2005年)
全編アニメーション&ルート分岐というアニメとノベルゲームのいいとこどりの作品

1行ずつ進めるストーリー

絵や音の存在意外にノベルゲームにおけるゲーム的な特徴が一つあります。
それは「クリックして物語を進める」ということ。
これはアミューズクラフトの中の人もつぶやかれていますね。

ただマウスやゲームパッドのボタン等を押すことで物語を進めるなら、「それって電子書籍も同じでは?」という疑問がわきます。確かに形の上では似ている。
でも電子書籍との大きな違いに、ノベルゲームは基本的に”テキストが1行ずつ表示される”という特徴があります。実はこれが結構デカいんじゃないかと。

自分のペースで能動的に1行ずつテキストを表示できると、没入感が結構違うと思うんですよ。しかも連動して立ち絵やイベント絵も変化しますし。
私は普段ノベルゲームをプレイしているときはオートモードで流しているんですが、盛り上がるシーンでは通常のクリック進行にすることもよくあります。電子書籍のページ送りとはまた違った没入感や緊張感があるんですよね。何というか、あたかもキャラクターを一歩ずつ前に進める感じで自分が物語を動かしているように思えます。これもノベルゲームのゲームたる特徴のひとつかと。

そういう意味ではもし将来、1行ずつ文章が表示される電子書籍プラットフォームが現れたら、かなりノベルゲームに近いものになりそうです。

ノベルゲームと一般ゲームの違い

今度は一般のゲームとの違いを考えてみたいと思います。
具体的なシステムの違いがあるのは当然として、ノベルゲームとその他の一般的なゲームの違いのひとつとして、「グラフィックやゲームシステムの変化の有無」が挙げられるでしょうか。

一般的なゲームは年を経るごとにグラフィックやゲームシステムがハードウエアと共にどんどん進化してきました。ほんの(?)20年前はPS3のゲームも「すげええええ!!」って驚いていたのに、今やもう半分レトロゲー扱いですからね。今PS3レベルのゲームを出したら「え?ナニコレ?」って言われそう。

また同じジャンルのゲームであってもタイトルが違えばシステムも全く違います。
ドラクエとFFはもはや別物ですし、ストリートファイターと鉄拳、オーバーウォッチとCoDも全く別のゲームでしょう。
加えて同じシリーズであってもシステムが異なることは普通にあります。というか同じシステムで続編を作ることの方が稀ですよね。

でもノベルゲームは基本的にどの作品もシステムは同じ。もちろん昔に比べれば画面サイズは大きくなったし、細かい機能が追加されてたりはしますが、根本的なシステムは20年はおろか30年前とほとんど変わっていません。
異なるブランドであっても基本的なシステムは同じですし、何なら同じゲームエンジンを使っているということも珍しくないんですよね。ノベルゲームファンなら「吉里吉里」や「Ethornell」のようなスクリプトエンジンの名前をよく見るという人も多いのではないでしょうか。

『サクラノ詩 −櫻の森の上を舞う−』(枕 2015年)
使用エンジンはEthornell。もともとこの作品は2004年に発売予定でした。

良くも悪くも、絵とテキストと音を出力するだけの代わり映えのないシステムなので、昔から「紙芝居ゲー」なんて揶揄されてきました。この辺りも「ノベルゲームはゲームじゃない」と言われる所以かも。
でもシンプルなシステムだからこそ、絵とストーリーの制作に特化することができてここまで業界が発展してきたとも言えるんじゃないかと。

結局ノベルゲームはゲームなの?ゲームじゃないの?

広い意味ではノベルゲームはゲームだといって良いと思います。選択肢のあるノベルゲームは特に。
ただ一般的なゲームと比べるとゲーム性は低いと言わざるを得ません。特に選択肢のないものは「ゲームか?」と言われたらちょっと微妙。

でもだからと言って小説とは異なりますし、当然アニメのような映像作品とも違う。そんな微妙な立ち位置がノベルゲームなんじゃないかと。だからこそ人によって「ゲームだ」という人もいれば「ゲームじゃない」という人もいる。

人によってゲームの定義も様々かと思いますが、単に分類の話として私個人の定義でいうなら、
「ゲームとは失敗と成功があるもの」
と考えています。目的やゴールに向かって進めていくうえで、「うまくやらないと失敗してしまう」という要素があるならゲームと言ってもいいんじゃないかと。

なのでこの考えでいうと同じノベルゲームでも、バッドエンドが存在したりルート分岐が複雑だったりするものは”ゲーム的”だと考えてます。うまく選択肢を選ばないと狙ったルートに入れなかったりしてしまう作品ですね。何気に難易度も重要なファクターかも。
逆に一本道だったり、選択肢があっても間違えようがなかったりするものは”ノベル的”なんじゃないかと。

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(elf 1996年)
ゲームシステムとシナリオが融合した「宝玉システム」が特徴的な作品

この辺はグラデーションに分かれているのでハッキリ2つにわけることもできませんが、有名エロゲ・ギャルゲ作品でいえばこんな感じでしょうか。

間違いなくゲーム
(ゲーム性高)
『ランス』『戦女神』『バルド』『マイスター』シリーズ
ほぼゲーム
(選択肢多数 難易度高)
『同級生』『EVE burst error』『YU-NO』
『殻の少女』『魔法少女ノ魔女裁判』
ゲーム的なノベルゲーム
(選択肢多数 失敗あり)
『痕~きずあと~』『かまいたちの夜』
『Fate/stay night』『WHITE ALBUM2』
『君が望む永遠』『STEINS;GATE』
ノベル的なノベルゲーム
(選択肢少数 失敗なし)
『穢翼のユースティア』『アマツツミ』
『ぬきたし』『さくら、もゆ』『とつラバ』
ほぼノベル
(選択肢ほぼなし 分岐なし)
『マブラヴ オルタネイティヴ』『ひぐらしのなく頃に』
『さくレット』『白昼夢の青写真』『終のステラ』

最近のノベルゲーム業界の傾向としては選択肢を減らしてルートを直接選ばせるノベル的な作品が多い感じですね。
多分作ってる側からすればそっちの方が手間がかからないからなんでしょうけど。

個人的にはBADエンドやCG回収を考えなくてもいいノベル的な作品が好みです。いちいち攻略サイト見るのもめんどいですし。
ただゲーム性というか、選択肢やBADエンドに意味を持たせる作品もそれはそれで好き。この辺の好みは分かれそうですね。

『ディメンション凸ラバース!!』(CRYSTALiA 2026年)
選択肢は1ヵ所のみですが激熱の物語でした

よく「こんな議論は無駄」とか「散々語りつくされたネタだからもういいよ」とかいう方もいますが、私はこういう話大好きです。
「またこの話してるのかよ」と言いたくなる気持ちもわからなくはないですが、これだけ盛り上がれるネタもそうありません。さすがに毎日じゃ飽きますが、年に何度かこういう話でワイワイできるのは個人的に楽しい。

何よりいろんな人の意見を見られるのって凄く有意義だと思うんですよ。多分開発者の方も何気によく見てるんじゃないでしょうか。
こういうのって「ノベルゲームがゲームか否か」というより、その人が「何をもってゲームとしているのか」がわかるんですよね。色んな価値観があるからこそ面白い。
特に今回のケースでは他人を否定したり攻撃したりする人がほとんどいなくて、すごく平和なやり取りがされていたように思います。Xにしては(笑)

むしろこういう話題が定期的に出てくる間はノベルゲーム界隈の未来も明るいんじゃないかと。
次は何のネタで盛り上がるんでしょうね。

言ってるそばから「エロゲにエロは必要か」論争が始まりました

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